配偶者との死別という辛く悲しい経験を経た人は少なくありません。
平均寿命は長くなっており、死別後の人生を考え、他の人と恋愛し再婚するケースもあります。
本記事では、死別再婚の心構えと具体的な手続きについて詳しく解説します。再婚に向けた心理的な準備や子どもとの関係構築、法律的な手続きのポイントを記載していますので、死別後の人生を前向きに歩むために役立てば幸いです。
この記事を読んでわかること
- 死別再婚とは
- 死別再婚の心構え6つ
- 死別再婚の法的手続
ここを押さえればOK!
死別再婚には心理的な心構えが必要です。まず、自分自身の感情を整理し、新しい恋愛関係を築く準備ができているかを確認します。また、再婚までの期間については、法律的にはすぐに再婚可能ですが、心理的・社会的には一定の期間を置く方がよいと考えられます。
子どもがいる場合、再婚について子どもの意向を尊重することが重要です。また、再婚相手に子どもがいる場合、法律上の親子関係を生じさせるためには養子縁組が必要です。新しいパートナーとの関係を円滑に築くためには、過去のパートナーに対する嫉妬を避けることが重要です。
以前の配偶者の親との関係についても考慮が必要です。再婚に伴う戸籍や姓の変更についても、適切な手続きを行うことが求められます。再婚の際には、市区町村役場への婚姻届の提出が必要です。子供の姓を変更する場合は、養子縁組や家庭裁判所の許可を得る方法があります。
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
死別再婚とは
死別再婚とは、配偶者が亡くなった後に新たなパートナーと再婚することを指します。
国立社会保障・人口問題研究所の統計によれば、再婚率(離婚後・死別後の再婚を含む)は、男性の方が女性よりも高く、また男女ともに若い方が高くなっています。
しかし、一番再婚率の高い年代でも、男性で約21%、女性で約14%に過ぎません(2015年の統計)。多くの年代の再婚率は数%かそれ以下にとどまります。これは離婚後の再婚を含む数値ですので、死別後の再婚だけに限れば、割合はさらに低くなるでしょう。
それでも、死別再婚する方がいるのは、例えば、人生を再スタートさせたいという希望や、子供のために新しい家庭を築きたいという思いが挙げられます。しかし、死別再婚には心理的な心構えが必要です。以下では、死別再婚に関する具体的な心構えや手続きについて詳しく解説します。
参考:表6-10性,年齢(5歳階級)別死・離別者に対する再婚率:1930~2015年|国立社会保障・人口問題研究所
死別再婚の心構えとは
死別後に再婚するにあたり、大切な心構えを説明します。
(1)死別後の恋愛
死別後に新しい恋愛を始めることに、当然ですが法的な制限はありません。
しかし、心理的な準備が必要です。
まず、自分自身の感情を整理し、新しい恋愛関係を築く準備ができているのかを自問自答してみましょう。
死別した配偶者と心理的に決別する必要はありません。思い出を大切にしながらも、新しい関係を前向きに進めていき、相手が自分にしてくれるように相手にも配慮することができるのかどうか、時間をかけて考えましょう。
(2)死別後再婚できるまでの期間
法律的には、男女ともに、配偶者との死別後すぐに再婚することは可能です。女性について、以前は再婚禁止期間が定められていましたが、法改正により禁止期間がなくなりました(2024年4月から)。
ただし、心理的・社会的には、死別後の再婚は一定程度期間を置いた方がいいと考えられます。
大切な人と死別した後は、感情的にも深く落ち込み心理的な負担がかかりますので、新しい生活をスタートさせるストレスや労力に耐えられず、新生活がうまくいかないリスクがあるためです。
また、社会的にも死別後すぐの結婚は、理解されなかったり、浮気を疑われたりすることがあります。
一般的には、死別後の再婚は少なくとも1年~2年程度の期間が必要と考えられます。この期間中に、自分自身の感情を整理し、新しい生活に向けた準備を進めることが重要です。
(3)死別再婚と子どもの意向
子どもがいる場合、再婚について子どもの意向を尊重することは非常に重要です。
子どもの年齢にもよりますが、子どもが新しいパートナーを受け入れる準備ができているかどうかを確認し、子どもの気持ちを尊重しながら話し合いましょう。
(4)連れ子と養子縁組をするか
再婚相手に子どもがいる場合、結婚しただけでは、その子どもと法律上の親子関係は生じません。
法律上の親子関係を生じさせるためには、養子縁組する必要があります。養子縁組をすることで、法律上の親子関係が生じ、養親として扶養義務が生じたり、自分が亡くなったときに遺産を連れ子にも相続させたりすることができます。
養子縁組と、養子縁組の解消について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(5)死別した相手に嫉妬しない
新しいパートナーとの関係を円滑に築くためには、過去のパートナーに対する嫉妬を避けることが重要です。
新しいパートナーの過去の人生は、死別した相手と過ごした日々を含むものです。その過去の経験や体験を経て、現在のパートナーが存在します。新しいパートナーの過去そのままを受け入れる大きな気持ちを持つ必要があります。
ただし、どうしても気になる点については我慢せず話し合うようにしましょう。
夫婦は他人同士で価値観も性格異なります。夫婦生活を安定させるためには、話し合いによりすり合わせをすることが必須です。話し合う時には、相手を責めることはせず、相手の意見も聞きながら、なるべく冷静に気になる点について「こうしてもらえると嬉しい」などと伝えるようにしましょう。
(6)死別再婚後の以前の配偶者の親との付き合い方
以前の配偶者の親との関係をどう保つかは、再婚後の重要な課題です。
死別後も、配偶者の親と定期的に連絡を取り合ったりあったりしている場合には、再婚することを伝えた方がよいでしょう。
子どもが祖父母になついていて定期的に面会しているような場合には、再婚するからと言ってその関係を断ってしまうのは子どもへの精神的負担が大きいです。子どもには子どもの社会的な人間関係がありますので、それを尊重するようにしましょう。
また、以前の配偶者との親と法的な関係を断ちたい、という場合には「死後離婚」という方法があります。正式には「姻族関係終了届」といい、これにより配偶者の死後、配偶者の親族との姻族関係(親戚関係)法的に終わらせることができます。
死後離婚する理由、メリット・デメリット、手続きなど詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(7)死別再婚した場合の戸籍と姓
死別再婚した場合の戸籍と姓について見ていきましょう。
(7-1)死別した男性が戸籍の筆頭者で、結婚して女性がその男性の戸籍に入るケース
男性が筆頭者である戸籍には、死別した配偶者や子どもの記録があります。結婚により、新しい妻がこの戸籍に入ってくることになります。
心機一転、新しい家族の戸籍を作りたいという場合には、別の市区町村に転籍(本籍を移す)をして新しい戸籍を作ったうえで再婚する方法があります。そうすると、死別した配偶者や結婚して戸籍を抜けた子どもの情報は残らず、自分と新しい妻のみの戸籍となります。
ただし、転籍により一度移されなかった内容は、再度同じ市区町村に転籍しても復活しませんので注意が必要です。
(7-2)死別した女性が前の戸籍に残っており、結婚して男性の戸籍に入るケース
このケースでは、再婚により、再婚相手となる男性を筆頭者として新たな戸籍が編成されますので、新しい二人の戸籍が作られます。
再婚では、外国人との結婚など例外的場合を除いて、姓は同一になります。男性の姓にするケースが圧倒的に多いですが、法的な決まりはありません。どちらの姓にするのか話し合って決めましょう。
死別再婚の手続きとは
死別再婚で必要な法的な手続きについて、説明します。
(1)婚姻届の提出
再婚をする際には、市区町村役場への婚姻届の提出が必要です。
届出地は、住所がある場所か、本籍のある場所の役場になります。
必要なものは、記入済みの婚姻届と、提出する者の本人確認書類です。
婚姻届けには成年(18歳以上)の証人2名の署名が必要ですので、事前に探して依頼しておくようにしましょう。
(2)子どもの姓
子どものいる親が、再婚して親の姓が変わる場合であっても、当然に子どもの姓は変更されません。
同じ姓でなければ同じ戸籍に入れませんので、子どもは以前の戸籍に残ることになります。
このような子どもが親と同じ姓を名乗り、親と同じ戸籍に入るためには、次の方法があります。
(2-1)養子縁組する
再婚相手と養子縁組すれば、再婚相手と子どもの間に法律上の親子関係が生じますので、親と子の姓は同じになり、同じ戸籍に入ることができます。
(2-2)家庭裁判所の許可を得る
養子縁組しなくても、家庭裁判所に「氏の変更許可」の申立書を提出し、子どもの姓の変更が許可されれば、氏を変更することができます(民法791条1項)。
その後、市区町村役場の窓口で入籍届を提出することで、子どもも同じ戸籍に入ることができます。
【まとめ】
死別再婚は、一定の時間をかけて心理的な準備が必要ですが、新しい人生をスタートさせるための大切な一歩です。この記事では、死別再婚に関する具体的な手続きや心構えについて解説しました。
再婚を考えている方は、この記事を参考にして、新しいパートナーと再スタートを切るための準備を進めていただければと思います。