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祖父母は孫の親権者になれる?祖父母が孫を育てるために必要なこと

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

いろいろな家庭の事情から、子どもの面倒を見ているのが親権者である「親」ではなく「祖父母」であることも珍しくありません。

そのようなご家庭では、孫の幸せや将来を考え、祖父母が自ら親権者になりたいと考えることもあるでしょう。

しかし、残念ながら、原則、祖父母は孫の親権者になることはできません。
なぜなら、親権者になることができるのは、あくまで親だけだからです。

ただし、祖父母が親権者になる方法がないわけではありません。さらに、法律の制度を利用することで、親権者に近い立場(親権者が持つ権利を一部行使することができる)になることもできます。

この記事では、次のことについて弁護士がくわしく解説します。

  • 親権があることでできること
  • 祖父母が親権者になる方法
  • 祖父母が親権者と近い立場になる方法
この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

親権とは

親権とは、未成年の子を育て、財産を管理し、子どもの法律行為を代理する権利のことです。

親権は「権利」という呼び方がされていますが、社会的に未熟な子どもを保護して、子どもの精神的・肉体的な成長を図っていかなければならない親の「義務」という側面が強いものです。

ここでは、親権があるとできることと親権者になれる条件について説明します。

(1)親権があるとできること

親権があるとできることは、法律上、主に次の2つに分けられます。

  1. 子どものしつけや身分行為の代理など:身上監護権
  2. 子どもの財産管理:財産管理権

それぞれ説明します。

(1-1)子どものしつけや身分行為の代理など:身上監護権

身上監護権とは、子どものしつけや身分行為の代理など、社会的に未熟な立場にある子どもを守ることです。

例えば、親には身上監護権を行使するにあたって、次のような権利があります。

  • 身分行為の同意権・代理権(民法737条、775条、787条、804条)
    • 未成年の子の結婚には同意が必要
    • 身分に関する訴え・請求を子が行うには同意・代理が必要
  • 居所指定権:親が子供の住居を指定する権利(民法821条)
  • 懲戒権:子どもに対して親がしつけする権利(民法822条※)
  • 職業許可権:子どもが職業を営むにあたって親が職業を許可する権利(民法823条)

※2022年12月、懲戒権を廃止するなどの改正民法が成立しました。改正民法は2024年夏ころまでに施行される予定です。

(1-2)子どもの財産管理:財産管理権

財産管理権とは、子どもの財産を親権者が管理することです。

社会的に未熟な子どもが財産を自分で管理することは難しいため、親権者が代理人として管理を行います。

そこで、法律行為(例:部屋を賃貸で借りるなど)を子供が行う場合には親の同意が必要とされています。

まとめると次のイラストのようになります。

(2)親権者になれる条件

原則として親権者は父母に限られることになります。
そのため、祖父母は原則として親権者になることができません。

そもそも、子の父母が婚姻中の間は、父母双方に親権があるとされます(民法818条1項・同条3項)。

また、一方の親が亡くなった場合は、もう一方の親に親権者となります(民法818条2項)。そして、父母が離婚した場合には、父母のどちらか一方が親権者となります(民法819条1項)。

祖父母が親権者になるには

祖父母は原則として親権者にはなれないのですが、祖父母と孫が養子縁組をすることで例外的に親権者となることができます。

養子縁組をすることで祖父母でも親権者に

祖父母が孫の親権者となるには「養子縁組」という方法があります。
養子である子に対しては、養親が親権を持つことになります(民法819条2項)。

養子縁組は、祖父母または孫の本籍地か住所地を管轄する市区町村役場に対して、養子縁組届や必要書類を提出することで行います。

ただし、養子として迎える孫が「未成年者」である場合には祖父母双方との養子縁組が必要となります。また、場合によっては、現親権者や現監護権者の承諾が必要となります。

(1-1)祖父母双方との養子縁組が必要

孫が未成年の場合は祖父母のどちらかではなく、祖父母双方との養子縁組を行う必要があります(民法795条)。

なお、2022年4月1日から18歳が成人とされます。18歳が成人となることで変わること・変わらないことについてはこちらの記事をご覧ください。

2022年4月1日からは18歳が成人に!変わること・変わらないことを解説

(1-2)現親権者の承諾が必要なケース

さらに、未成年の孫が15歳未満の場合は現親権者である父または母の承諾が必要になります(民法797条1項)。

つまり、15歳未満の孫自身が養子になりたいと願っても、親権者である親が承諾しなければ祖父母は孫を養子にすることができません。

(1-3)現監護者の承諾が必要なケース

また、15歳未満の孫に、親権者とは別に「監護者」がいる場合は現親権者である父または母の承諾に加えて現監護者の承諾も必要になります(民法797条2項)。

<コラム>監護者は親権者とは違う!?監護者って何?

監護者とは「監護権」を持つ者のことで、子どもと生活を共にして身の回りの世話をする者のことです。
親権は、これまで説明した通り、「身上監護権」と「財産管理権」に分類することができます。ただし、離婚の際に身上監護権のみを分離して「親権者」と「監護者」に分けることも可能であるため、親権者とは別に「監護者」がいる場合もあるのです。

祖父母が子の親権者に近い立場になるには

祖父母が子の親権者に近い立場になるには、「養子縁組」以外にも次のような制度を利用することができます。

  1. 監護者になる
  2. 未成年後見人になる
  3. 親権を代行する

それぞれ説明します。

(1)監護者になる

祖父母に「親権」が認められないとしても、孫を養育することが目的なのであれば監護者になることができます。監護者になると、法的に孫を育てる権利が認められます。

家庭裁判所にて監護者指定を受けることで監護権の取得ができます。
家庭裁判所に監護者指定の調停(または審判)の申立てを行なえるのは、原則、父母に限定されていますが、例えば虐待があるなど子の利益の観点から相応の事情がある場合は祖父母からの申立てもできます。

(2)未成年後見人になる

孫に親権者が存在しない場合は、家庭裁判所で未成年後見人に指定されることで親権とほぼ同等の権利を行使することができます。

一方、現親権者が存在する場合は、両親の親権を喪失する手続きが必要になります。

ただ、親権喪失は親権を完全に剥奪するものであり、戸籍に「親権喪失宣告の裁判確定」と記載されるといった強力な方法ですので、申立てれば必ず認められるわけではありません。家庭裁判所が「父母が親権を濫用し又は著しく不行跡である」と認められた場合に、親権喪失の判断が下されることになります。

そのため、親権を喪失する手続きを申立てる場合には、慎重な検討が必要です。

なお、未成年後見人に指定された場合は、家庭裁判所にきちんと後見ができているのかを定期的に報告する必要があります。例えば、財産目録や年間収支予定表の定期的な提出の義務を負います。

(3)(親が未成年の場合)親権を代行する

祖父母にとっての娘さんに子供(祖父母にとって孫に当たります)がいるが、娘さんが未成年である場合には、その娘さんの親権者である祖父母が、孫に対する親権を代行することになります(民法838条)。

なお、以前は婚姻によって親が未成年者である場合にも成年としてみなす制度がありました。しかし、2022年4月1日からは、民法改正によって1.成年年齢が18歳に引き下げられたこと、2.女性の婚姻開始年齢が18歳に引き上げられたことから、18歳未満の未成年者は婚姻ができなくなりました(未成年者を成年としてみなす必要はなくなりました)。

【まとめ】養子縁組で祖父母も孫の親権者になれる!

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 親権とは、未成年の子を育て、財産を管理し、子どもの法律行為を代理する権利のこと。

  • 祖父母は原則として親権者にはなれないが、祖父母と孫が養子縁組をすることで親権者となることができる。

  • 養子として迎える孫が「未成年者」である場合には、1.祖父母双方との養子縁組が必要。さらに、2.孫が15歳未満の場合には現親権者(現監護者)の承認が必要。

  • 祖父母が子の親権者に近い立場になるには、「養子縁組」以外にも次の方法がある。
  1. 監護者になる
  2. 未成年後見人になる
  3. 親権を代行する

親権問題は、家族内の問題でもあり、気軽に他人に相談できないデリケートな問題です。なかなか相談する相手も見つからず、ご苦労も多いことでしょう。

守秘義務がある弁護士に相談することで、心の荷が軽くなるかも知れません。

親権問題についてお困りの方、これまで説明した制度を利用したいが、どういった手続きが必要かわからないという方は、親権問題を取り扱う弁護士への相談がおすすめです。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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