この記事では、共依存関係といった、アルコール依存症の夫を持つ妻の特徴や心理状態、夫婦関係の問題点について解説しています。
離婚を考える際の注意点や具体的な手順についても触れ、問題解決への道筋を提示します。苦しい状況にある妻の方々が、自身の幸せと健康を取り戻すための一助となれば幸いです。
この記事を読んでわかること
- アルコール依存症の夫を持つ妻の特徴や心理状態
- アルコール依存症の夫との離婚を考える際の注意点
- アルコール依存症の夫と離婚するための方法
ここを押さえればOK!
夫婦間では共依存関係が形成され、健全なコミュニケーションが失われがちです。妻は夫のために自己犠牲を払い、夫は妻に依存して自立心を失います。
妻の心理状態としては、不安と恐怖に苛まれ、自責の念と罪悪感を抱きやすくなります。これにより精神的に疲弊し、うつ状態に陥ることもあります。
離婚のプロセスとしては、まず意思を伝え、別居を検討し、それでも解決しない場合は離婚調停を申し立てます。
自身の健康と安全を守りつつ、適切な支援を受けながら問題に向き合うことが大切です。
離婚でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
アルコール依存症の夫を持つ妻の特徴
アルコール依存症の夫を持つ妻には、一般的に次のような特徴があるようです。
もちろん、あくまで一般的な特徴であり、すべての妻があてはまるわけではありません。
(1)過剰な献身
アルコール依存症の夫を持つ妻の特徴として、過剰な献身が挙げられます。
妻は夫の飲酒問題を何とか解決しようと、献身的に尽くす傾向があります。例えば、酔いつぶれた夫の帰りを深夜まで起きて待ち、帰宅後の世話をしたり、飲酒による失態を周囲に隠したりします。
また、夫の体調を気遣い、仕事や家事に支障が出ないよう細やかな気配りをすることもあります。
このような行動は、一見愛情深く見えますが、夫のアルコール依存症を悪化させ、問題の解決を遅らせてしまう可能性もあります。
それだけでなく、妻自身も疲弊し、心身の健康を損なうリスクが高まることでしょう。
(2)社会的孤立と秘密主義
アルコール依存症の夫を持つ妻の特徴として、社会的孤立と秘密主義があります。
夫の飲酒問題を恥じ、周囲に知られることを恐れるあまり、友人や親族との交流を避けるようになるのです。
また、夫の酔った姿や暴言を隠すために、来客を断ったり外出を控えたりすることで、徐々に社会から孤立していきます。
さらに、職場や子どもの学校などでも夫の問題を隠そうとするため、常に緊張状態にあり、本音を誰にも打ち明けられない孤独感に苛まれることもあるようです。
この秘密主義は、問題の深刻化を招くだけでなく、妻自身のメンタルヘルスにも悪影響を及ぼし、支援を受ける機会を逃してしまう可能性があります。
アルコール依存症の夫と妻との関係性
アルコール依存症である夫との関係性には、一般的にどのような特徴があるのでしょうか。
(1)共依存関係の形成
アルコール依存症の夫と妻の間には、しばしば共依存関係が形成されます。妻は夫の飲酒問題を解決しようと必死になり、夫の世話や言い訳作りに奔走します。
一方、夫は妻の献身的な態度に甘え、自身の問題に向き合わなくなります。
この関係性の中で、妻は夫のために自分の人生を犠牲にし、夫は妻に依存することで自立心を失います。
結果として、両者ともに健全な関係性を築けなくなり、問題解決から遠ざかってしまうのです。
(2)夫婦間のコミュニケーション崩壊
アルコール依存症により、夫婦間における健全なコミュニケーションが失われがちになります。
夫の飲酒問題を巡って口論が絶えず、建設的な対話が困難になるかもしれません。
妻は夫の言動に不信感を抱き、本音を伝えることを恐れるようになることもあります。
一方、夫は自己防衛のために嘘をつき、責任転嫁をすることも少なくないようです。
このような状況下では、互いの気持ちや考えを共有することが難しくなり、夫婦間の信頼関係が崩壊しかねません。
アルコール依存症の夫を持つ妻の心理状態
次に、アルコール依存症の夫を持つ妻が陥りがちな心理状態について紹介します。
(1)不安と恐怖の日々
アルコール依存症の夫を持つ妻は、常に不安と恐怖に苛まれることがあります。
夫の飲酒量や帰宅時間、酔った際の言動に対する予測不可能性が、妻に強いストレスを与えます。暴言や暴力への恐怖、経済的破綻への不安など、さまざまな不安要素が妻の心を蝕みます。
このような状況下で精神的に疲弊し、うつ状態に陥ることも少なくありません。安心して生活できる日常が失われ、常に緊張状態が続くのです。
(2)自責の念と罪悪感
アルコール依存症の夫を持つ妻は、しばしば自責の念と罪悪感に苛まれることもあります。
夫の飲酒問題を自分の責任だと考え、「もっと上手く対応できていれば」と自分を責めてしまいます。
また、夫の言動に耐えかねて怒りを表すと、後悔や罪悪感に苛まれることも多いようです。
さらに、離婚を考えることすら罪悪感をおぼえさせ、決断を迷わせる原因となり得ます。
このような感情は妻の自尊心を低下させ、問題解決への行動を妨げる要因にもなってしまうでしょう。
アルコール依存症の夫との離婚を考える際の注意点
アルコール依存症の夫との離婚を検討しはじめた場合に、知っておきたい点について解説します。
(1)離婚が認められない可能性がある
日本では、夫婦双方が合意すれば、どんな理由でも離婚することは可能です。
しかし、どちらかが離婚を拒否している場合、離婚するには最終的に家庭裁判所が離婚を認めなければ、基本的に離婚できません。
夫のアルコール依存症が理由の場合だと、「婚姻を継続し難い重大な事由(民法第770条1項5号)」の有無が争点になるでしょう。
上記事由の存在を証明するためには、例えば、アルコール依存症によるDV、経済的破綻、子どもへの悪影響などの具体的な事実を示すことがポイントです。
(2)DV被害がある場合
夫がアルコール依存症の場合、DVをともなうことも少なくありません。
DVは深刻な人権侵害であり、自分や子どもの安全を最優先すべきです。
この場合、まず警察や配偶者暴力相談支援センターに相談したり、場合によっては裁判所に保護命令の申立てをすることを検討したりすべきです。
保護命令について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
また、DVがある場合、当事者だけでの話合いには危険がともなう可能性があるため、弁護士に相談・依頼することも検討しましょう。
アルコール依存症の夫と離婚するための方法
段階的にご説明します。
(1)離婚の意思を伝える
アルコール依存症の夫と離婚するための最初のステップは、離婚の意思を明確に伝えることです。
この際、冷静かつ毅然とした態度で、具体的な理由とともに伝えることが重要です。夫の飲酒問題が改善されない限り、離婚を避けられないことを明確にします。
ただし、夫の反応によっては危険が伴う可能性もあるため、安全な環境で伝えることや、必要に応じて第三者の立ち会いを求めることも検討しましょう。
また、この会話の内容を記録しておくことは、裁判になった場合など、あとあと役立つ場合があります。
(2)別居してみる
離婚に応じてもらえなければ、別居するのも一つの手段です。
別居は、アルコール依存症の夫との関係を客観的に見つめ直す機会にもなるでしょう。
もっとも、別居する際は、経済的な準備や子どもへの配慮などを十分に検討する必要があります。
また、一方的な別居は同居義務(民法第752条)違反になる可能性があるため、必要に応じて、弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。
(3)離婚調停を申し立てる
離婚の意思を伝えても、配偶者が離婚に応じてくれない場合、離婚調停を申し立てることが次のステップとなります。
離婚調停は裁判所で行われる話合いの場で、調停委員が仲介役となり、離婚の条件や財産分与、慰謝料、子どもの親権などについて協議します。
原則として、いきなり離婚裁判を提起することはできず、まずは離婚調停を申し立てることとなっています(調停前置主義)。
離婚調停について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【まとめ】
アルコール依存症の夫を持つ妻は、過剰な世話や社会的孤立、共依存関係など、さまざまな困難に直面することがあります。
離婚を考える際は、法的な課題や安全面に注意を払いつつ、段階的に進めていくことが重要です。
まずは弁護士などの専門家に相談し、自身の状況を客観的に評価することから始めましょう。
離婚は決して簡単な選択ではありませんが、自身の幸せと健康を守るために必要な場合もあります。適切なサポートを受けながら、慎重に判断し行動することが大切です。
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