債務名義とは、債権者が債務者に対して強制執行を行うための法的な根拠となる公文書のことです。
借金問題に悩んでいる方にとっては、裁判などによって債権者が債務名義を取得するということは、強制執行(差押え)が間近に迫っていることを意味するといえるでしょう。
債務名義を取得される前に、債務整理など借金問題を解決するための対策を講じることをおすすめします。
ここを押さえればOK!
債務名義が取得されると、時効期間は債務名義の取得から10年となります。
債務名義を取得されないためには、早期返済が最も確実な方法です。それが困難な場合は、債務整理(任意整理、個人再生、自己破産)を検討しましょう。各方法にはメリット・デメリットがあるため、弁護士に相談して最適な解決策を見つけることが重要です。
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債務名義の概要
債務名義とは、簡単に言うと債権者が債務者に対して強制執行を行うための法的な根拠となる公文書のことです。
たとえば借金の返済を滞納した場合なら、債務名義がなければ、債権者は債務者の財産や給料を差し押さえることはできません。
債務の存在と内容を明確に示す債務名義には、後述するようにさまざまな種類があり、法的な効力が認められています。
債務者にとって、債務名義の存在は非常に重要です。
なぜなら、債権者が債務名義を取得すると、すぐに強制執行の手続きを進めることができるようになるからです。
債務名義の種類
債務名義には、さまざまな種類があります。
ここでは、よく使われる主な債務名義をご紹介します。
(1)確定判決
債権者が債務者に裁判を起こして勝訴判決を得た場合(一部勝訴を含む。以下同じ)に、上訴期間の経過により不服を申し立てられなくなった判決のことです。
(2)仮執行宣言付判決
債権者が勝訴判決を得た場合に、判決に「仮執行宣言」がついていると、判決確定前でも、強制執行することが可能になります。
(3)仮執行宣言付支払督促
支払督促とは、裁判所書記官が、債務者に対して支払いを督促する簡易な手続きのことです。
債務者が期限内に異議を申し立てなければ、債権者が債務名義として書面を取得することになります。
(4)和解調書
債権者と債務者が支払いについて合意し、その内容を裁判所がまとめたものです。
(5)執行認諾文言付きの公正証書
公正証書とは、公証人が法律に従って作成する公文書のことです。
「債務者が本契約の債務を約束通りに履行しなかったときは、直ちに強制執行を服することを承諾する」という、強制執行認諾文言を公正証書に入れておくと、公正証書が債務名義になります。
債務名義に基づく強制執行とは
債務名義に基づく強制執行とは、債権者が債務者から任意に支払いを受けられない場合に、法的な手続きを通じて債務の回収を行うことです。
具体的には、債務名義を根拠として、裁判所や執行官の力を借りて、債務者の財産を強制的に差し押さえ、換価(現金化)して債務の弁済に充てる過程を指します。
主に差押えの対象になる財産は次のとおりです。
- 給料
- 預金
- 不動産
- 自動車
債権者は債務名義があれば、債務者の意思に関わらず、これらの財産を差し押さえることができるのが原則です。
ただし、強制執行には厳格な法的手続きが定められており、債務者の生活の基盤を奪わないよう一定の制限も設けられています。 差押えの範囲について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
債務名義が取得された場合の時効は10年
債務名義が取得されると、通常の債権の消滅時効とは異なる扱いを受けます。一般的な金銭債権の消滅時効は基本的に5年ですが、債務名義が取得された場合、時効期間は債務名義が取得された日の翌日から10年となります。
債務者にとって、この10年という期間は非常に長く感じられるかもしれません。
しかし、この期間中に債務を返済できない場合でも、時効の完成によって債務が消滅する可能性があることは知っておく必要があります。
ただし、時効の援用(時効を主張すること)が必要なため、自動的に債務が消えるわけではないことにご注意ください。
債務名義を取得されないためにできること
借金の返済でお悩みなら、債務名義を取得される前に何らかの対策をすることが必要です。
(1)借金の早期返済
当然のことながら、債務名義を取得されないための最も確実な方法は、借金を早期に返済することです。
早期返済のためには、まず自身の収支状況を把握し、可能な限り支出を抑えて返済に充てる資金を捻出することが重要です。
また、複数の借金がある場合は、金利の高いものから優先的に返済するなど、効率的な返済計画を立てることが有効です。
もっとも、色々と手を尽くしてはいるけれど、借金を早期返済することはなかなか難しい、という方も多いことでしょう。
(2)債務整理の検討
借金の返済が困難な状況に陥った場合、債務整理を検討しましょう。
債務整理には、主に任意整理、個人再生、自己破産の3種類があります。
任意整理は、将来利息のカットや原則3年間(場合によっては5年間)の長期分割払いの交渉をカード会社等と個別に行い、毎月の返済の負担を減らす手続きです。
個人再生は、借金が返済できないおそれがあることを裁判所に認めてもらい、一定の条件を満たした場合には、住宅などの財産を維持したまま、大幅に減額された借金を3年(原則)から5年で返済していく手続きです。
自己破産は、財産がないために支払いができないことを裁判所に認めてもらうことにより、借金の支払義務を免除してもらう手続きです。
そして、各方法にはメリット・デメリットがあるため、弁護士に相談のうえ慎重に検討することが大切です。
(3)まずは弁護士に相談
弁護士は債務整理に関する専門的な知識と経験を持ち、あなたの状況に最適な解決策を提案することができます。
弁護士に相談・依頼することで、債務名義の取得を防ぐための具体的な方策や、既に債務名義が取得されている場合の対応についてアドバイスを受けることができます。
また、債権者との交渉や法的手続きの代行など、専門的なサポートを受けられるのも大きな利点です。
借金問題は一人で抱え込まず、まずは弁護士に相談してみましょう。
【まとめ】
債務名義は、債権者が強制執行を行うための法的根拠となる重要な文書です。
借金の早期返済や債務整理の検討、そして弁護士への相談など、状況に応じた適切な対策を講じることが重要です。
債務名義が取得された場合でも、10年の時効があることを覚えておきましょう。ただし、時効を待つよりも積極的に問題解決に取り組むことが望ましいです。
債務問題は一人で抱え込まず、弁護士などの専門家のアドバイスを受けながら、自分に最適な解決策を見つけることが大切です。
適切な対応により、借金問題を解決し、新たな生活のスタートを切ることができるでしょう。
借金問題でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。