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自己破産のデメリットと7つの誤解|弁護士がわかりやすく解説

作成日:
s.miyagaki

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

借金の返済に追われ、自己破産という言葉が頭をよぎるものの、「全財産を失う」「家族に迷惑がかかる」といったデメリットを考えると、不安で一歩を踏出せずにいませんか。

自己破産には、実は多くの誤解が存在します。

このコラムでは、自己破産に関する7つの誤解と7つの本当のデメリットを明確に区別し、ご家族や仕事への具体的な影響、手続後も支払い義務が残るものまで、弁護士が網羅的に解説します。
自己破産以外の解決策も紹介し、あなたの人生の再スタートを後押しする正しい知識をお伝えします。

自己破産に関する7つの誤解

自己破産には「人生の終わり」といった深刻なイメージや、多くの誤解がつきまといます。しかし、そのほとんどは事実と異なります。

自己破産は、借金に苦む方を救済し、人生の再スタートを支援するための法律で認められた手続です。
まずは、多くの方が抱きがちな誤解を解き、正しい知識を身につけましょう。

全財産を失う

自己破産をしても、すべての財産を失うわけではありません。

今後の生活に必要な最低限の財産は「自由財産」として手元に残すことが法律で認められています。
具体的には、99万円以下の現金や、生活に不可欠な家具・家電、衣類などは処分されません。

自己破産は、無一文になることではなく、生活を立て直すための基盤を残しながら、借金の返済義務を免除してもらう手続ですのでご安心ください。

会社をクビになる

自己破産したことだけを理由に、会社から解雇されることは法律上ありません。

自己破産は、労働契約の解雇事由として認められておらず、もし解雇された場合は不当解雇にあたります。
また、自己破産の事実を会社に知られるケースは限定的です。給与の差押えを受けている場合などを除き、ご自身から話さない限り、会社に通知がいくことは基本的にありません。

戸籍や住民票に載る

自己破産をした事実が、戸籍や住民票、マイナンバーカードなどに記載されることは一切ありません。

これらの公的な書類は、身分関係や居住関係を証明するためのものであり、個人の負債や破産手続の履歴が記録されることはありません。
したがって、行政手続や子どもの学校関連の書類提出などで、第三者に自己破産の事実を知られる心配はありません。

選挙権を失う

自己破産をしても、選挙権や被選挙権といった公民権が停止されることはありません。

以前の法律では一時的に公民権が停止される時期がありましたが、法改正により現在はそのような規定は撤廃されています。
自己破産手続中であっても、これまでどおり選挙で投票したり、立候補したりする権利が失われることはないので、ご安心ください。

海外旅行に行けない

自己破産をすると、生涯海外旅行に行けなくなるわけではありません。

ただし、「管財事件」という種類の手続になった場合、裁判所の許可なく居住地を離れることが制限される期間があります。これには海外旅行も含まれます。
この制限は、破産手続中の数ヵ月間に限定されるものであり、手続が完了すれば、以前と同様に自由に海外へ渡航できます。

家族の財産も差し押さえられる

自己破産は、申立てた本人のみが対象となる手続です。

したがって、配偶者やお子さまなど、ご家族が所有している財産や給料が差し押さえられることは原則としてありません。たとえ生計をともにしていたとしても、法的には別人格であるため、家族に返済の義務がおよぶこともありません。
ただし、ご家族が借金の保証人になっている場合は、その限りではありません。

年金がもらえなくなる

自己破産をしても、将来受け取る公的年金(国民年金や厚生年金など)の受給資格がなくなることはありません。

また、年金受給権は、法律で差押えが禁止されている財産(差押禁止債権)であり、破産手続によって処分される対象外です。

自己破産の7つのデメリット

自己破産は借金問題を解決する強力な手段ですが、法的な手続である以上、いくつかのデメリットも存在します。
これらを正しく理解し、ご自身の状況と照らし合わせることが、後悔のない選択をするために不可欠です。
ここでは、自己破産に伴う具体的なデメリットを7つ解説します。

信用情報に登録される(いわゆるブラックリスト)

自己破産をすると、信用情報機関に事故情報として登録されます。これがいわゆる「ブラックリストに載る」状態です。

登録される期間は5年~7年程度で、この間は新たにクレジットカードを作成したり、ローンを組んだり、他人の保証人になったりすることが原則としてできなくなります。
これは、経済的な再生を図るための一定の制約であり、期間が経過すれば再び金融サービスの利用が可能になります。

財産が処分される

自己破産では、生活に最低限必要な財産(自由財産)を超える高価な財産は、原則として処分され、債権者への配当に充てられます。

たとえば、不動産(持ち家)や多額の預貯金、生命保険の解約返戻金、また裁判所の運用によっては評価額20万円を超える自動車などが対象となります。
ただし、すべての財産を失うわけではなく、あくまでも一定基準を超えるものに限られます。

官報に掲載される

自己破産をすると、手続の開始決定時と免責許可決定時に、氏名と住所が「官報」という国の機関紙に掲載されます。

官報は誰でも閲覧可能ですが、一般の方が日常的に見ることはほとんどありません。金融機関や一部の職業の方が確認する程度で、官報掲載が原因で周囲の人に自己破産の事実を知られる可能性は極めて低いと言えます。
過度に心配する必要はないでしょう。

一部の職業に就けなくなる

自己破産の手続中は、一部の資格や職業に就くことが制限されます。これを「資格制限」と呼びます。

たとえば、弁護士、司法書士、税理士といった士業や、警備員、生命保険募集人、旅行業務取扱管理者などが該当します。
ただし、この制限は手続中の数ヵ月間に限られる一時的なものです。免責許可が確定すれば、資格は元どおりに回復し(復権)、再びその職業に就くことが可能になります。

保証人に請求がいく

自己破産をすると、申立人本人の返済義務は免除されますが、借金の保証人(連帯保証人)になっている人の返済義務はなくなりません。

債権者は、保証人に対して残りの借金全額を一括で請求することになります。
保証人がいる借金がある場合、自己破産手続を進める前に、必ず保証人に事情を説明し、迷惑をかける可能性があることを正直に伝える必要があります。

引っ越し・旅行が制限される

自己破産手続のなかでも、一定以上の財産がある場合などに適用される「管財事件」になると、手続中に裁判所の許可なく居住地を離れることができなくなります。

これには、長期の旅行や出張、引っ越しなどが含まれます。
この制限は、財産調査などを行う破産管財人との連絡を密にし、手続を円滑に進めるためのものです。手続が終了すれば、この制限は解除されます。

郵便物が転送される

自己破産手続が「管財事件」として進められる場合、申立人宛ての郵便物は、一時的に破産管財人に転送されます。

これは、申告していない財産や債権者がいないかなどを確認するために行われるものです。プライベートな手紙なども開封されてしまいますが、手続に関係のない郵便物は本人に返却されます。
この措置も、手続が終了すれば解除され、通常どおり自宅に郵便物が届くようになります。

自己破産の家族への影響

ご自身の手続によって、大切なご家族にどのような影響がおよぶのか、もっとも心配される点だと思います。

自己破産はあくまで個人の手続であり、原則として家族に直接的な影響がおよぶことはありません。しかし、間接的な影響がまったくないわけではありません。
ここでは家族への影響について具体的に解説し、ご不安を解消します。

家族の財産・給料

自己破産で処分されるのは、あくまで申立人本人名義の財産のみです。

したがって、配偶者や親、子どもなど、家族名義の預貯金や給料、不動産などが差し押さえられることはありません。家族が働いて得た収入は、その方の固有の財産だからです。
ただし、破産する方の財産を隠す目的で、直前に家族名義に変更したような場合は、財産を取り戻される可能性があります。

家族の返済義務

自己破産は個人の債務を整理する手続のため、家族が保証人になっていない限り、家族に返済義務が生じることはありません。

たとえ夫婦や親子であっても、法律上は別人格であり、本人の借金を家族が肩代わりする法的な義務はないのです。
債権者が家族に対して返済を要求してきても、応じる必要はありません。ただし、家族が保証人・連帯保証人等になっている場合は、返済義務を負うことになります。

持ち家・車を失う影響

本人名義の持ち家や車は、原則として処分の対象となるため、失うことになります。

これにより、ご家族は引っ越しを余儀なくされたり、車での移動が不便になったりといった生活上の影響を受ける可能性があります。
ただし、持ち家が家族との共有名義である場合や、ローンが残っている車の場合は、その状況によって対応が異なります。事前に弁護士に相談し、生活への影響を最小限に抑える方法を検討することが重要です。

子どもの進学・就職・結婚

親が自己破産したという事実が、子どもの進学や就職、結婚に直接的な影響をおよぼすことはありません。

自己破産の情報は戸籍や住民票には記載されず、一般に知られることはないため、学校や就職先、結婚相手に知られる可能性は極めて低いでしょう。
進学や就職の際に、親の経済状況が問われることはあっても、破産の事実自体が不利に働くことはないのでご安心ください。

奨学金の保証人になれない

自己破産をすると、信用情報に事故情報が登録されるため、一定期間、子どもの奨学金の保証人になることはできません。

保証人には安定した返済能力が求められるため、信用情報に問題があると審査に通らないからです。
この場合、配偶者など他の親族に保証人になってもらうか、日本学生支援機構が提供する「機関保証制度」を利用するなどの代替手段を検討する必要があります。

自己破産の仕事への影響

借金問題を解決したいけれど、自己破産が原因で職を失ったり、職場で不利益を被ったりするのではないかと不安に思う方は少なくありません。

しかし、法律は労働者の権利を保護しており、過度な心配は不要です。ここでは、自己破産が仕事に与える影響について解説します。

会社に知られる可能性

自己破産をした事実が、会社に知られる可能性は低いと言えます。

裁判所から会社へ連絡がいくことは、原則としてありません。
ただし、会社から借金をしている場合、退職金見込額証明書の発行を会社に依頼する場合、あるいは給与の差押えを受けている場合には、手続の過程で知られる可能性があります。
また、官報を常にチェックしているような特殊な金融系の職種でない限り、発覚するリスクは限定的です。

自己破産を理由に解雇はされない

万が一、会社に自己破産の事実を知られたとしても、破産したことだけを理由に解雇することは原則として認められません。

自己破産は、労働者の解雇理由として正当なものとは認められません。もし、自己破産を理由に解雇や降格などの不利益な扱いを受けた場合は、不当解雇として法的に争うことができます。
労働者の権利は、労働契約法によって守られているため、安心して手続を進めることができます。

支払い義務が残るもの(非免責債権)

自己破産をして免責が許可されると、原則としてすべての借金の支払い義務が免除されます。

しかし、特定の種類の債務は、その性質上、支払い義務を免除するのが適切でないと法律で定められており、これらを「非免責債権」と呼びます。
どのようなものが該当するのか、具体的に見ていきましょう。

税金・社会保険料

所得税や住民税、固定資産税などの税金、そして国民健康保険料や年金保険料といった社会保険料は、自己破産をしても支払い義務が免除されません。

これらは国や地方自治体の運営に不可欠な公的な債権であるため、個人の借金とは区別されています。
滞納している場合は、自己破産手続とは別に、役所と相談して分割払いなどの交渉を行う必要があります。

養育費

離婚した相手に支払う子どもの養育費や、親族に対する扶養義務に基づく支払いも、非免責債権にあたります。

これらは、子どもの生存権や生活を支えるための非常に重要な義務と考えられるため、自己破産によって支払い義務を免れることはできません。
過去の未払い分も、将来の支払い分も、免責の対象外となります。

損害賠償金

悪意や重大な過失によって他人の生命や身体を害した不法行為に基づく損害賠償金は、支払い義務が免除されません。

被害者の保護を優先するという考え方に基づいています。
ただし、すべての損害賠償金が対象となるわけではなく、たとえば通常の過失による交通事故の損害賠償などは、免責の対象となる場合があります。

罰金

刑事事件で科された罰金や追徴金なども、非免責債権です。

これらは、国の秩序を維持するための制裁的な意味合いをもつため、自己破産によって支払いを免れることはできません。
滞納している罰金がある場合は、自己破産後も支払い義務が残りますので注意が必要です。

自己破産以外の解決策

借金の返済が困難になった場合の解決策は、自己破産だけではありません。

あなたの収入や財産、借金の総額、そして何より「どうやって生活を再建したいか」というご希望に応じて、他の選択肢も検討できます。
自己破産のデメリットを回避したい場合には、個人再生や任意整理といった手続が有効な場合があります。

個人再生

個人再生は、裁判所に申立てて、借金を大幅に(通常は5分の1程度に)減額してもらい、その減額後の金額を原則3年(最長5年)で分割して返済していく手続です。

持ち家などの財産を手放さずに手続を進められる「住宅ローン特則」という制度があるのが大きな特徴です。
安定した収入があることが条件となりますが、自己破産のような資格制限もなく、財産を守りながら生活再建を目指したい方に適しています。

任意整理

任意整理は、裁判所を通さず、弁護士が債権者(貸金業者など)と直接交渉し、今後の利息カットや返済期間の見直しをすることで、月々の返済額を減らす手続です。

交渉する相手を選べるため、保証人がついている借金や住宅ローンを除外して手続を進めるなど、柔軟な対応が可能です。
自己破産や個人再生に比べて、手続が簡易で周囲に知られにくいというメリットがあります。

まとめ

自己破産には信用情報への登録といったデメリットはありますが、「全財産を失う」「会社をクビになる」といった不安の多くは誤解です。
家族への直接的な影響も限定的であり、自己破産はあくまで人生を再建するための法的な救済制度です。状況によっては、財産を守れる個人再生や任意整理といった他の選択肢もあります。

借金問題の解決は、早めの相談が何よりも重要です。
アディーレ法律事務所では、自己破産に関するご相談を無料で承っております。一人で悩まず、まずは私たち弁護士にお話しください。あなたにとって最善の解決策を一緒に見つけます。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2025年5月時点。

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