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勝手に離婚届を出されたら?無効確認の4つの手順と戸籍の戻し方

弁護士 林 頼信

監修弁護士:林 頼信

(アディーレ法律事務所)

特に力を入れている分野:現在は離婚事件をメインに扱っているほか、不貞慰謝料事件もこれまでに多数の解決実績あり。

作成日:
LA_Ishii

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

離婚するつもりがないのに、パートナーに勝手に離婚届を出されてしまった場合、その離婚は法律上「無効」となります。
しかし、そのまま放置してしまうと、後からその離婚を認めた(追認した)として、本当に離婚が成立してしまうリスクがあるため注意が必要です。

本記事では、なぜ役所は無効なはずの届出を受理してしまうのかという仕組みから、調停・裁判を経て戸籍を正しい状態に戻すための4つの手順、さらに相手への刑事告訴や慰謝料請求の方法までを弁護士がわかりやすく解説します。
泣き寝入りせず、法的に正しい証拠の集め方と対処法を知り、あなたの大切な戸籍と権利を取り戻しましょう。

ここを押さえればOK!

勝手に離婚届を提出された場合、当事者に離婚の意思がなければ法律上は無効ですが、戸籍上離婚は反映されてしまいます。役所は書類の形式のみを審査するため、表面的に不備がなければ受理されるためです。

戸籍を元に戻すには、まず役所で「離婚届の記載事項証明書」を取得して証拠を確保し、家庭裁判所へ「協議離婚無効確認調停」を申し立てます。調停で合意できなければ訴訟へ移行し、無効の判決確定後1ヶ月以内に役所で訂正申請を行うという手順を踏む必要があります。署名を偽造した勝手な提出は有印私文書偽造罪などの刑事罰や、慰謝料請求の対象となり得ます。無効が認められれば親権も共同親権に戻りますが、子供を連れ去られた場合は別途、監護者指定などの保全処分を急ぐべきです。

トラブルを未然に防ぐには、役所に「離婚届不受理申出」を提出しておくことが非常に有効です。一度提出すれば本人が取り下げない限り無期限に有効であり、知らない間に受理される事態を阻止できます。

勝手に提出された離婚届による離婚は「無効」だが放置してはいけない理由

話し合いによる協議離婚が成立するためには、届出をするときに、当事者双方に離婚する意思が必要です。
離婚する意思がないのに、その配偶者が勝手に提出した離婚届による離婚は、本人の意思に基づいていないため、法律上は無効です。
しかし、一度役所で離婚届が受理されてしまうと、その届出が法令に違反したとしても、離婚は戸籍上反映されてしまい、離婚の効力には影響しません。

これは、民法で離婚届が法令に違反して受理されたときであっても、離婚の効力には影響しないと定められているためです(民法765条2項)。

(離婚の届出の受理)
第七百六十五条 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定及び第八百十九条第一項の規定その他の法令の規定に違反しないことを認めた後でなければ、受理することができない。
2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。

引用:民法|e-gov

そのままにしておくと離婚が既成事実化して、離婚を追認したとされる恐れがあるため、早急に法的な手続きを行い、戸籍を訂正する必要があります。

まずは、なぜ無効な届出が通ってしまうのか、その仕組みについて解説します。

役所が受理してしまうのは「形式的審査」しかできないため

日本の戸籍実務において、市区町村の窓口担当者は「形式的審査」しか行えません。これは、届出書に記入漏れがないか、証人がそろっているかといった「書類上の形式」が整っているかを確認するだけの権限です。担当者は、夫婦の間に本当に離婚する意思があるかといった「内面」まで調査することはありません。
そのため、たとえ署名が偽造されていたとしても、書類に不備がなければ、役所としては受理せざるを得ないのが現状なのです。

署名の偽造と署名後翻意の2つのパターンと違法性の違い

勝手な届出には、大きく分けて2つのパターンがあります。

(1)署名を偽造するパターン

1つ目は、相手があなたの署名を偽造して提出するパターンです。
押印した離婚届を偽造したら「有印私文書偽造罪」(刑法159条1項)、その偽造した離婚届を提出したら「偽造有印私文書行使罪」(刑法161条)、公務員に虚偽の申し立てをし、戸籍に虚偽に離婚の記録をさせたら「公正証書原本不実記載等罪」(刑法157条1項)に該当する可能性があります。

さらに勝手に離婚届を提出された配偶者は、相手に対して損害賠償を請求できる可能性もあります。

(2)署名したが翻意したパターン

2つ目は、過去にあなたが署名した離婚届を、あなたの気持ちが変わった後に、相手が無断で提出するパターンです。

この場合、署名自体は本物ですが、提出する時点での「離婚する」という意思が欠けているため、やはり離婚は無効となります。
ただし、「出した時に離婚に同意していたはずだ」と反論される可能性があるため、届出時に離婚意思がないことを示す慎重な証拠集めが必要になります。

戸籍を元に戻すための具体的な4つのステップ【フローチャート】

受理されてしまった離婚届による協議離婚は、法律上当然無効と考えられています。

しかし、戸籍を訂正するためには、裁判上の手続きが必要です。
離婚の無効が戸籍上明らかでない場合には、判決又は審判を経て、戸籍訂正の申請をすべきと考えられているためです(戸籍法116条1項)。当事者同士の話し合いや、役所への抗議だけでは戸籍を訂正することはできません。

戸籍法第百十六条 確定判決によつて戸籍の訂正をすべきときは、訴を提起した者は、判決が確定した日から一箇月以内に、判決の謄本を添附して、戸籍の訂正を申請しなければならない。

引用:戸籍法|e-gov

ここでは、証拠の確保から戸籍の訂正完了まで、具体的な4つのステップをご紹介します。

(1)【Step1 証拠保全】役所で「離婚届の記載事項証明書」を取得する

まず最初に行うべきことは、役所が受理した離婚届のコピーを入手することです。
離婚届は、戸籍の記載が終わった後に、トラブルの証拠書類などの資料として一定期間保管されます。
利害関係人は、この離婚届の閲覧や証明書を請求することができます(戸籍法48条2項)。
届出が行われた市区町村又は本籍地の市区町村の戸籍の窓口で、請求方法について問い合わせてください。

この「記載事項証明書」により、配偶者がいつ離婚届を提出したのか、証人は誰か、どのような筆跡で署名を偽造したのかなどを確認できます。特に、筆跡が明らかに自分のものではない場合、その証明書自体が裁判において有利な証拠となり得ます。ご自身の日記や契約書の控えなど、普段の筆跡がわかる資料もあわせて保管しておくと、後の筆跡鑑定で役立つ場合があります。

(2)【Step2 調停】家庭裁判所へ「協議離婚無効確認調停」を申し立てる

次に、配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所(又は合意で定める家庭裁判所)に、「協議離婚無効確認調停」を申し立てます。
日本では「調停前置主義」というルールがあり、一定の事件については原則としていきなり裁判を起こすことはできず、まずは話し合い(調停)を行う必要があります。
調停では、裁判所の調停委員を介して、相手に「勝手に離婚届を出したこと」を認めさせます。相手が事実を認め、調査官による調査でその合意が正当だと判断されれば、「合意に相当する審判」が下されます。
この審判の確定により、戸籍訂正の申し立てが可能となります。調停・審判この段階で解決できれば、裁判をするよりも費用と時間を抑えることができます。

申立てには、一定の費用がかかり、必要書類の準備が必要です。
詳しくは下記の裁判所のサイトをご確認ください。

参考:協議離婚無効確認調停|裁判所

(3)【Step3 裁判】調停不成立なら「協議離婚無効確認訴訟」へ移行する

相手が「承知していた」などと嘘をついて偽造であることの合意ができなかったり、調停に出席しなかったりして不成立となった場合は、裁判を行うことになります。
具体的には、「協議離婚無効確認訴訟」を提起することになります。

訴訟では、裁判官が法廷で証拠の確認を行います。
ここで重要になるのが、Step1で集めた離婚届の筆跡の違いや、別居の有無、直前のメールやLINEでのやり取りといった客観的な証拠です。
原告であるあなたが「離婚する意思はなかった」ことを証明する必要があるためです。
署名が偽造されていない場合には、届出時にあなたに離婚する意思がなかったことを、細かく事実を積み上げて主張・立証する必要があります。
主張が認められ、勝訴判決が確定すれば、相手の同意がなくても戸籍の訂正は可能です。

(4)【Step4 訂正】判決確定後に役所で戸籍の訂正申請を行う

裁判所での審判や判決が確定しても、自動的に戸籍が修正されるわけではありません。
確定した日から1ヶ月以内に、あなた自身が市区町村役場の戸籍係へ行き、「戸籍訂正申請」を行う必要があります。
この際、裁判所で発行される「審判書謄本」または「判決書謄本」と「確定証明書」を持参します。
手続きが完了すると、戸籍上の離婚の記載は訂正され、離婚していなかった状態に戻ります。

勝手に出した相手への「刑事告訴」と「慰謝料請求」

勝手に離婚届を出す行為は、民事上その離婚が無効になるだけでなく、刑法上の犯罪にも該当しうる悪質な行為です。被害を受けた方は、相手に対して刑事責任の追及や、受けた精神的苦痛に対する慰謝料請求ができる可能性があります。

(1)「有印私文書偽造罪」など成立しうる3つの犯罪と刑罰

相手があなたの署名を勝手に書いた場合、刑法の「有印私文書偽造罪」に該当する可能性があります。さらに、その偽造した届出を役所に提出する行為は「偽造有印私文書行使罪」、それによって戸籍という公文書に嘘の記録をさせたことは「電磁的公正証書原本不実記録罪」にあたる可能性があります。

(2)警察に動いてもらうための「告訴状」と民事不介入の壁

警察に被害を相談しても、家庭内の問題には深入りしない「民事不介入」の原則を理由に、単なる相談として処理されてしまうこともあるようです。
一方で、警察が事件として捜査するケースもあります。

警察に本格的な捜査を求めるためには、相手への処罰を強く求める意思を示した「告訴状」を提出することが有効な手段となります。告訴状が受理されると、警察には捜査を行う義務が生じるため、相手への責任追及として大きな意味を持ちます。
ただし、告訴状の作成には法的な専門知識が必要となりますし、作成したとしても受理されないこともあります。

(3)離婚無効そのものに対する慰謝料の相場と請求のポイント

勝手に離婚届を出されて権利を侵害されたことで受けた精神的苦痛に対して、相手に慰謝料を請求できる可能性があります。
慰謝料額は具体的な事情によって異なり、かなり幅があります。目安としては、数十万円から200万円程度と考えるとよいでしょう。

離婚が無効になれば「親権」も共同親権に戻る

勝手に離婚届を出されることで生じる大きな問題の一つが、親権の喪失です。
離婚届には親権者を記載する欄があり、相手が勝手に自分を親権者として届け出ているケースもあるためです。 しかし、離婚が無効となれば、法的には「離婚していなかったこと」になるため、親権も当然に離婚前の状態、つまり父母による共同親権に戻ることになります。

ただし、戸籍が戻るまでの間に、相手が子どもを連れて別居したり、転校させたりするリスクがあるため、判決を待っているだけでは不十分な場合があります。

(1)子どもを連れ去られた場合は「監護者指定審判」等の保全処分を急ぐ

もし相手が子どもを連れて別居し、勝手に離婚届を出した場合は、離婚無効確認調停や裁判の結果を悠長に待っていてはいけません。
子どもが相手との生活に馴染んでしまい、親子の交流ももてなければ、子どもがあなたがいない生活に慣れて、親子間の絆に傷が入ってしまうかもしれません。せっかく離婚無効を勝ち取ったとしても、親子関係が悪化してしまうのは避けたいところです。

そこで、家庭裁判所に対して、子どもの引き渡しを求めるとともに、子どもの監護者であることの指定を求める審判と、審判前の保全処分の申立てを検討しましょう。

子を取り戻すのは、時間との勝負です。子を連れ出しての別居に気づいたら、すぐに子の取戻しについて動く必要があります。

まだ出されていないなら「離婚届不受理申出」で阻止する

もし、現時点ではまだ離婚届が出されていないものの、相手が勝手に出すかもしれないという不安がある場合は、「離婚届不受理申出」という制度を利用することで、提出を未然に防ぐことができます。
これは役所に対して「離婚届は受理しないでください」とあらかじめ頼んでおく、非常に強力な予防策です。

(1)最寄りの役所で可能な「不受理申出」の手続き方法

離婚届不受理申出は、原則として本籍地の市区町村役場に提出しますが、居住地などの役場でも受け付けてもらえます。
必要なものは、運転免許証やマイナンバーカードなどの本人確認書類です。手数料はかかりません。
窓口で申出書に記入して提出するだけで手続きは完了します。

(2)申出の有効期限は無期限だが取り下げも可能

一度提出した不受理申出には有効期限がなく、申出人本人が役所に行って「取下書」を提出しない限り、効果は無期限に続きます。
つまり、一度手続きをしておけば、将来にわたって勝手な離婚届が出される心配がなくなります。 もし夫婦関係が修復して不受理申出が不要になったり、正当に話し合って協議離婚をすることになった場合は、本人が窓口に出向いて取り下げの手続きを行う必要があります。

【まとめ】勝手に離婚届を提出されても離婚は無効だが、戸籍訂正のためには裁判手続きが必要

勝手に出された離婚届による離婚は無効ですが、戸籍を訂正するためには裁判手続きが必要になります。
無効とはいえ、形式的に戸籍上離婚が成立していますので、元に戻すためには労力が
かかります。勝手に離婚届を出されるリスクがある場合には、はやめに離婚届不受理申出を行っておくようにしましょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

弁護士 林 頼信

アディーレ法律事務所

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

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