「結婚しているけど、別々に暮らす」—— そんな新しい夫婦のカタチをご存知ですか?
近年、注目を集めている「別居婚」。従来の結婚観にとらわれず、個人の生活や自由を大切にしながらも、法律上の夫婦関係を維持する新しいライフスタイルです。
「仕事に集中したい」
「自分の時間を大切にしたい」
「でも、パートナーとの絆も大切にしたい」
そんな、一見相反する願いを叶える選択肢として、別居婚が注目されています。しかし、その実態や法的な側面については、まだ多くの疑問が残されているのではないでしょうか。
このコラムでは、弁護士の視点から、別居婚の定義、メリット・デメリット、必要な手続き、そして起こりうる問題とその解決策まで、包括的に解説します。あなたやあなたの大切な人が、より良い夫婦関係を築くためのヒントが、きっと見つかるはずです。
さあ、新しい夫婦のカタチ、「別居婚」の世界をのぞいてみましょう。
この記事を読んでわかること
- 別居婚のメリット・デメリットとは
- 別居婚をするにあたって必要な手続とは
- 別居婚が子どもに与える影響とは
- 別居婚がうまくいかないときの対処法とは
ここを押さえればOK!
主なメリット:
1.個人の時間と空間の確保
2.夫婦関係の新鮮さの維持
3.法律婚のメリットを享受
主なデメリット:
1.生活費の増加
2.コミュニケーション不足のリスク
3.不倫の可能性の増加
別居婚を選択する際は、以下の点に注意が必要です:
・必要な法的手続きの確認(婚姻届、健康保険、子ども手当など)
・子どもへの影響の考慮
・生活費の分担方法の明確化
・定期的なコミュニケーションの維持
別居婚がうまくいかない場合は、夫婦での話し合い、カウンセリングの利用、生活スタイルの見直しなどを検討しましょう。別居婚は個々のニーズに合わせた選択肢の1つですが、メリットとデメリットを十分に理解し、慎重に検討することが重要です。
別居婚とは
別居婚とは、法律上の婚姻関係を維持しながら、夫婦が別々に生活することをいいます。従来の同居を前提とした結婚生活とは異なり、個人の生活や自由を重視しつつ、夫婦関係を維持する新しいライフスタイルです。
別居婚は、あくまでも夫婦円満で夫婦が別居に同意していることが前提なことが多いです。夫婦仲が悪くなり別居に至った場合や離婚を前提に別居している場合とは区別されます。
別居婚のパターンとは
一口に別居婚といっても、住居の距離や会う頻度などでパターンが分かれます。
- 遠距離で暮らし時々会うパターン
- 遠距離で暮らし時々会うパターンは、仕事や個人の事情により遠距離に住み、定期的に会う形態です(例:東京と大阪で別々に暮らし、月に1回程度会うケースなど)。
- 近距離に住み頻繁に会うタイプ
- 同じ市内や近隣地域に別々に住み、頻繁に会う形態です(例:同じマンションの別の部屋や近所のアパートに住み、週に数回会うケースなど)
- 週末だけ一緒に過ごすタイプ
- 平日は別々に暮らし、週末のみ一緒に過ごす形態です(例:平日は仕事の都合で別々に暮らし、週末は共同の家で過ごすケースなど)
別居婚のメリットとは
別居婚には、個人の自由と夫婦関係の維持を両立できる様々なメリットがあります。ここでは、別居婚による主な3つのメリットを紹介します。
(1)個人の時間と空間が確保できる
別居婚のメリットの1つは、個人の時間と空間を確保できることです。パートナーの都合を気にすることなく、自分のペースで生活し、趣味や仕事に集中できます。
例えば、同居をしていると何かと相手の予定や仕事に配慮する必要があります。しかし、別居婚であれば、お互いの生活リズムを尊重しながら関係を続けられます。
(2)夫婦関係の新鮮さを保ちやすい
別居婚では、日常的なマンネリ化がなくなり、会う時間を大切にすることでパートナーに対して新鮮さを保ちやすくなります。
例えば、週末だけ会うカップルが、その限られた時間を特別なデートの時間として楽しむことで、パートナーに対してドキドキ感を忘れることなく、長期的に良好な関係を維持しやすくなります。
(3)法律婚のメリットを享受できる
別居婚でも法律上の夫婦であるため、法律婚のメリットを享受できます。
例えば、別居をしていても法律上の配偶者としての相続権を得られたり、配偶者控除、社会保険の扶養などの制度を利用したりすることができます。
別居婚のデメリットとは
別居婚には多くのメリットがある一方で、考慮すべきデメリットもあります。ここでは、別居婚による主な3つのデメリットを紹介します。
(1)生活費が増加する可能性がある
別居婚では、二つの生活拠点を維持するため、生活費が増加する可能性があります。
例えば、家賃、光熱費、日用品などが二重にかかり、月々の出費が通常の同居生活と比べて20〜30%増加するケースもあります。
(2)コミュニケーション不足のリスク
物理的な距離があるため、日常的なコミュニケーションが不足しがちです。
例えば、夫婦に起こった些細な出来事や感情を共有する機会が減り、徐々に心理的な距離が生まれる可能性があります。
夫婦の心理的な距離が開くと、「パートナーは私の心を何もわかってくれない。わかってくれるのは、あの人だけ(近くにいる職場の同僚など)だ」となってしまい、不倫などに発展するケースもあります。
(3)不倫される可能性が高まる
別居婚では、自分のペースで生活できるため、パートナー以外の異性とデートをしたり、外泊をしたりしやすい環境にあります。
またパートナーの日常生活を把握しにくいため、パートナーの不倫に気づきにくいというデメリットもあります。
別居婚をするにあたって必要な手続とは
別居婚をするにあたって必要な手続きを見ていきましょう。ここでは、主な3つの手続きについて説明します。
(1)婚姻届はどうすればいい?
通常の結婚と変わりません。別居こんだからといって、特別な手続きは必要ありません。婚姻届の提出をするだけです。夫婦が同居するかにかかわらず、婚姻届が受理されれば法律上夫婦となります。
婚姻届はどこの市区町村役場でも提出することができます。ただし、夫婦どちらかの本籍地や夫婦どちらかの居住地以外の場所に提出する場合には、夫婦の戸籍謄本が必要になります。
婚姻届には「同居を始めたとき」という欄があります。別居婚の場合には空欄でも大丈夫です。空欄だからと言って婚姻届が受理されないということはありません。
また住民票の手続は住所が変わる時に必要なものです。結婚しても夫婦の住所が変わらない場合には住民票に関する手続を行う必要はありません。
(2)健康保険の扶養はどうすればいい?
別居婚の場合であっても、収入などの要件を満たせば配偶者を健康保険の扶養に入れることができます。手続きとしては、扶養者の勤務先に「扶養控除等申告書」を提出します。
(3)別居婚中の子ども手当や扶養はどうすればいい?
子どもがいる場合、児童手当は原則として子どもと同居している親が受給します。ただし、別居中の親が主に子どもを養育している場合は、その親が受給することも可能です。
扶養控除については、主に生計を維持している親が申告できます。具体的な手続きは、居住地の自治体窓口で確認してください。
別居婚は子どもに影響がある?
別居婚が子どもに与える影響については、慎重に考慮する必要があります。ここでは、別居婚によって子どもに与える主な2つの影響について説明します。
(1)子どもがストレスを感じることも
別居婚により、子どもが両親と一緒に過ごす時間が減少することで、心理的なストレスを感じる可能性があります。
例えば、「なぜ両親が一緒に住んでいないのか」という疑問や不安を抱くことがあります。これに対しては、子どもの年齢に応じた丁寧な説明と、両親からの変わらない愛情の表現が重要です。
(2)学校でいじめられる可能性がある
別居婚という非典型的な家族形態が、学校でのいじめの原因になる可能性があります。
例えば、「両親が離婚しているのでは」という誤解を受けることがあります。これを防ぐためには、学校の先生や他の保護者に対して、別居婚の状況を適切に説明し、理解を求めることが重要です。
このように別居婚は子どもの成長に悪影響を及ぼすおそれがあります。しかし、親や家族間の不仲こそ子どもにとって一番の悪影響ともいえます。別居婚でこそ夫婦や家族間の仲を保つことできるということであれば、別居婚の方が子どもに望ましい状態ともいえるでしょう。
別居婚がうまくいかないときはどうすればいい?
夫婦円満で、夫婦が望んで始めた別居婚であっても、別居婚を始めると思ったようにはうまくいかないこともあります。別居婚がうまくいかない場合、次の対応を検討してみてもいいかもしれません。
(1)夫婦で話し合う
夫婦がうまくいなかい問題点を率直に話し合い、互いの気持ちを理解し合うことが重要です。夫婦で話し合うことで、別居婚によって開いてしまった心理的な距離を埋めることができるでしょう。
(2)知人・友人やカウンセリングに相談する
知人・友人や専門家のアドバイスを受けることで、客観的な視点から問題解決の糸口を見つけられることがあります。カウンセラーは夫婦の話をしっかり聞いてくれ、夫婦も気づいていなかった不仲の原因などを探るなど夫婦仲の改善に向けてカウンセリングをしてくれるでしょう。
(3)生活スタイルの見直し
別居婚が夫婦仲悪化の原因である場合には、夫婦で会ったり連絡したりする頻度を変えてみたり、別居婚をやめて同居してみるなど生活スタイルを変えることで、夫婦仲が改善する可能性があります。
夫婦仲の改善のために重要なのは、互いの幸せを第一に考え、十分な話し合いを重ねることです。
別居婚に関するよくある質問(Q&A)
最後に、別居婚に関して、よく寄せられる質問とその回答を紹介します。
(1)別居婚中の生活費はどうすればいい?
別居婚中の生活費については、夫婦間で明確な取り決めをすることが重要です。やはりお金は夫婦であってももめる原因ですので、別居婚を始める前にきちんと話し合っておきましょう。
【例】
- 完全に別会計:各自の収入で各自の生活費を賄う
- 共同口座の設置:共通の支出のために共同口座を設け、定期的に入金する
- 収入に応じた分担:収入の比率に応じて生活費を分担する
別居中であっても夫婦は助け合って生活する必要があります。夫婦どちらか一方の収入が少ない場合には、収入が多い方が生活費(婚姻費用)を出す必要があります。別居中の相手が生活費を支払ってくれない場合には、「婚姻費用分担請求」をすることもできます。
(2)別居婚中の不倫は慰謝料請求できる?
別居婚中であっても、法律上は夫婦関係が継続しているため、不倫があった場合は慰謝料請求できる可能性があります。ただし、別居中夫婦仲が冷めきっていた場合などには慰謝料請求できない可能性もあるので、注意が必要です。
【まとめ】別居婚は個々のニーズに合わせた選択肢の1つだが、デメリットに注意
別居婚は、個人の自由と夫婦関係の維持を両立させる新しい選択肢です。ただし、生活費の増加、コミュニケーション不足、不倫リスクの上昇といったデメリットにも注意が必要です。
別居婚は万能の解決策ではありませんが、個々のニーズに合わせた選択肢の1つとして考えることができます。自分たちにとって最適な関係性を模索し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、より良い夫婦関係を築いていくことが大切です。
ただ、別居婚をしていても、夫婦仲がどうしてもうまくいかず、「離婚」を選択する夫婦もいます。夫婦を続けることで辛い思いをするのであれば、「離婚」を選択するのも1つです。
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