離婚は人生の大きな転機であり、その後の生活に多くの変化をもたらします。
その中でも特に重要なのが、離婚後の生活全般で関わってくる、離婚後の苗字の扱いです。旧姓に戻すか、婚姻時の苗字をそのまま使い続けるか、どちらを選ぶべきか悩む方も多いでしょう。
本記事では、離婚後の苗字変更に関する手続き方法やメリット・デメリット、そして子どもへの影響について詳しく解説します。
この記事が、あなたの状況にあった最適な選択肢を見つける手助けとなれば幸いです。
この記事を読んでわかること
- 離婚後の苗字はどうなるのか
- 離婚後の苗字をそのままにするメリットとデメリット
- 子どもへの影響
- 離婚後の苗字を旧姓に戻すための手続
- 離婚後も婚姻時の苗字を使い続けるための手続
ここを押さえればOK!
旧姓に戻す場合、特別な手続きは不要ですが、婚姻時の苗字を維持するには離婚後3ヶ月以内に「婚氏続称の届出」を役所に提出する必要があります。
苗字をそのままにするメリットとして、キャリアの一貫性を保てることや子どもへの影響を最小限に抑えられること、身分証明書や各種契約の名義変更手続きが不要であること、社会的に離婚がわかりにくいことが挙げられます。
一方、デメリットとしては新しい生活のスタートが難しくなること、親戚と苗字が異なること、再婚後に旧姓に戻れないこと、元配偶者やその家族が反対する可能性があることがあります。
子どもの苗字は両親が離婚しても自動的には変わらず、変更するには家庭裁判所の許可が必要です。離婚後の苗字変更にはそれぞれメリットとデメリットがあるため、離婚前に十分に検討し、最適な選択をすることが重要です。
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
離婚後の苗字はどうなる?
結婚により苗字が変わった側は、離婚後の苗字について、旧姓に戻るか、婚姻時の苗字をそのまま使い続けるかの選択肢があります。
法律上の離婚後の苗字の扱いについて、説明します。
(1)旧姓に戻る
結婚により苗字が変更した側は、離婚により、法律上当然に結婚前の姓に戻ります。
旧姓に戻したい方は、戻すための手続は特に必要ありません。
(2)そのまま苗字を使いたいときには手続きが必要
結婚により名字が変更した側が、婚姻時の苗字を維持したい場合には、離婚の日から3ヶ月以内に「婚氏続称の届出」を居住地の役所へ提出する必要があります。
この手続により、原則として結婚している間の苗字を離婚後も名乗ることができます。
離婚届を出して婚氏続称手続をとらないと、旧姓に戻ってしまいますので、離婚前によく検討したうえで、離婚届を提出する際に婚氏続称の届け出も提出するとスムーズです。
婚姻期間が長い場合、婚姻前の姓に戻ることで、さまざまな面で影響が出る可能性があります。自分にとって最適な選択をするために、離婚後の生活状況や社会的な影響を考慮して決定することが重要です。
離婚後の苗字をそのままにする(旧姓に戻さない)メリット
離婚後の苗字をそのままにし、旧姓に戻さないことには、次のようなメリットがあります。
(1)キャリアの一貫性を保てる
離婚後に苗字をそのままにすることで、職場や取引先での混乱を避けることができます。
また苗字が変わることがありませんので、離婚前後のキャリアの一貫性を保つことができるでしょう。
(2)子どもへの影響を最小限に抑える
離婚しても子どもの苗字は変わりません。自分が婚姻中の苗字を離婚後も名乗る場合、子どもと同じ苗字を名乗ることができます。
子どもは自分の苗字が変わりませんので、子どもへの影響を最小限に抑えることができます。
苗字が変わらないことで、子どもは「苗字が変わることで生じる学校や友人関係などの対応」からは離れることができ、いつもの日常生活を送りやすくなるでしょう。
(3)身分証明書や各種契約などの名義変更手続きの簡便さ
苗字が変わらないので、パスポートや運転免許証、マイナンバーカードなどの氏名の変更手続きを避けることができます。
また、銀行口座や各種契約で、氏名変更手続きを行うことも避けることができるでしょう。
これにより、時間や労力を節約することができます。
(4)社会的に離婚したとわかりにくい
離婚に伴い旧姓に戻すと、周囲には「苗字が変わったという事は離婚したんだな」と、離婚したことがすぐにわかるでしょう。
一方、離婚後も苗字を変更しなければ、周囲には「離婚した」ことはわかりにくいです。
あまり離婚の事実を周囲に知られたくない、プライバシーを守りたいという方は、苗字を変更しないことにはメリットがあります。
離婚後の苗字をそのままにする(旧姓に戻さない)デメリット
離婚後の苗字をそのままし、旧姓に戻さないことには、次のようなデメリットがあります。
(1)新しい生活のスタートが難しくなる
離婚して新しい人生のスタートを切る際に、苗字がそのままだと、心理的な区切りがつきにくく、新しい生活のスタートが難しくなることがあります。
旧姓に戻すと、行政手続きや各種契約の名義変更などで、何度も名前を変更する手続きを行いますので、労力と時間はかかりますが、その過程で心理的な区切りもついていきます。
しかし、苗字が変わらなければ、名前の変更に伴う手続きはないかもしれません。また、離婚したと伝えない限り、周囲の人もあなたが離婚したとは分かりませんので、婚ししていることを前提に話をしてくるかもしれません。
いちいち「離婚した」というのも大変ですし、相手の反応も気になります。
このような生活の中で、心理的、社会的な離婚の区切りがつけにくく、過去の結婚生活を引きずってしまうことになるかもしれません。
(2)自分の親など親戚とは違う苗字になる
旧姓に戻りませんので、離婚に伴い実家に帰ることになった場合、同居の両親とは苗字が異なることになります。
また、両親が離婚により旧姓に戻すことを期待している場合、しっかり話し合っておかないと、関係がぎくしゃくすることがあります。
(3)再婚後に離婚した場合、旧姓には戻れない
再婚する際に、苗字の変更が再度必要になる可能性があります。
離婚後も婚姻時の姓を名乗ることにして、再婚後に苗字を変更した場合、離婚するとなると、離婚により当然戻るべき苗字は初婚時に変更した苗字になりますので、生まれた時に親から引き継いだ旧姓にはもどれません。
旧姓に戻るためには、家庭裁判所に対して「氏の変更許可の申立て」を行い、裁判所に変更を認めてもらう必要があります。
初婚の離婚時に旧姓に戻っていれば、再婚して離婚した時には、当然に旧姓に戻ります。
(4)元配偶者やその家族が反対する可能性
離婚後に旧姓に戻るのか、婚姻時の姓を名乗り続けるのかは、本人が決めることができます。
しかし、離婚時の元配偶者との関係によっては、元配偶者やその家族が、あなたが婚姻時の姓を名乗り続けることを反対するかもしれません。
反対されたからと言って従う必要はありませんが、離婚後も円滑な関係を維持したい場合には、苗字を維持することについて、一度話し合っておくとよいでしょう。
離婚後の苗字を旧姓に戻すための手続
離婚後の苗字を旧姓に戻すための手続は、不要です。
離婚届を提出すれば、法律上当然に、婚姻により苗字を変更した側は、旧姓に戻ります。
離婚後の苗字をそのままにするための手続
離婚後に苗字をそのままにするためには、離婚後3ケ月以内に、本籍地又は所在地の市区町村役場の窓口で「婚氏続称の届け出」を提出します。
離婚届を市区町村役場に取りに行く際に、同時に婚氏続称の届け出の書式も入手しておきましょう。離婚届の提出と同時にこの届出を行えますので、同時に手続するとスムーズでしょう。
この手続きにより、婚姻時の苗字を離婚後もそのまま使用し続けることができます。
子どもの苗字はどうなる?
夫婦が離婚後、子どもの苗字がどうなるのかについて説明します。
(1)両親が離婚しても、子どもの苗字は自動的に変わらない
両親が離婚してどちらかの苗字が旧姓に戻っても、子どもの苗字は変わりません。
離婚により苗字が変わるのは、結婚で姓が変わった者だけです。
結婚する際に苗字を変えた側は、離婚により従来の戸籍からは「除斥」されます。一方、両親が離婚しても、子どもの戸籍はそのままです。
もし、子どもの苗字を旧姓に戻った自分と同じにしたうえで、同じ戸籍に入れようと思うのであれば、別途手続きが必要です。
(2)家庭裁判所に「氏の変更許可」の申立てを行う
子どもの苗字を変更するためには、家庭裁判所に「子の氏の変更許可申立書」を提出して、裁判所に子どもの氏を自分の氏と同じにすることを認めてもらう必要があります。
子どもが15歳以上の場合には、子ども自身が家庭裁判所に申立てをします。
子の福祉の観点から、子の氏の変更に問題がないかを審査することになります。
例えば、父母が離婚し、親権者となる母と子の苗字が異なる場合で、特に母親の戸籍に子の戸籍を移すケースであれば、特に問題なく即日で認められることがほとんどです。
(3)子どもを同じ戸籍に入れる方法
子の氏の変更許可により、子どもの苗字が変わっても、自動的に戸籍は移動しません。
子どもを同じ戸籍に入れるためには、子どもの本籍地か、届出人の住所地の市区町村役場に入籍届を提出する必要があります。
入籍届提出の際には、子の氏の変更許可謄本なども必要になりますので、事前に必要書類について確認しておくとよいでしょう。
離婚後の苗字についてよくある質問と回答
離婚後の苗字について、よくある質問と回答をまとめましたので参考にしてください。
(1)離婚後3ヶ月過ぎてしまいましたが、婚姻時の苗字を名乗ることはできませんか?
離婚後3ヶ月経過してしまうと、婚氏続称の届出を行うことはできません。
婚姻時の苗字を名乗りたい場合には、家庭裁判所に対して「氏の変更許可」の申立を行ったうえで、裁判所に氏の変更を認めてもらう必要があります。
ただし、氏の変更が認められるためには、「やむを得ない事由」が必要です。
個人的に「こちらの苗字がいい」というだけでは足りず、現在の苗字で社会生活上で不利益・不便が生じているなど、社会的客観的に見て氏の変更が必要、という状況がなければなりません。
「離婚により旧姓に戻ったが、婚姻時の苗字に変えたい」という場合の「氏の変更」は、一般的にほかのケースよりも認められやすいといえます。
しかし、家庭裁判所への申立てには時間と労力がかかり負担が大きく、氏の変更が許可されないおそれもあるため、婚姻時の氏をそのまま名乗りたい場合には、よく検討したうえで、期間内に婚氏続称の届出をするようにしましょう。
(2)一度婚氏続称の届け出をしましたが、やはり旧姓に戻りたいときにはどうすればいいですか?
婚氏続称を選んでも、仕事など婚姻中の苗字を名乗る必要がなくなったのであれば、旧姓に戻る方法はあります。
家庭裁判所に対して「氏の変更許可」の申立を行ったうえで、裁判所に氏の変更を認めてもらうのです。その後、市区町村役場の戸籍担当窓口で「氏の変更届」などを提出します。
ただし、氏の変更が認められるためには、「やむを得ない事由」が必要です。
個人的に「こちらの苗字がいい」というだけでは足りず、現在の苗字で社会生活上で不利益・不便が生じているなど、社会的客観的に見て氏の変更が必要、という状況がなければなりません。
「婚氏続称をしたが旧姓に戻りたい」という場合の「氏の変更」は、一般的にほかのケースよりも認められやすいといえます。
しかし、家庭裁判所への申立てには時間と労力がかかり負担が大きく、氏の変更が許可されないおそれもあります。
離婚後の苗字をどうするのかは、離婚前に時間をかけてよくメリットとデメリットを検討したうえで、離婚後後悔のないように準備しておくようにしましょう。
(3)子どもが成人後、元の苗字に戻りたいといっていますが、できますか?
親の離婚の離婚に伴い、親と子の苗字が異なることになったために、子が苗字を変更したケースでは、成人後1年以内であれば、市区町村役場に入籍届をすることで、以前の苗字に戻ることができます。
戸籍は、以前の戸籍に戻るか、自分が筆頭者となる新たな戸籍を作ることになります。
成人した子どもが結婚しているときは、配偶者とともに入籍届を行う必要があります。
【まとめ】
離婚後の苗字変更には、それぞれメリットとデメリットがあります。
旧姓に戻すことで新しい生活のスタートを切りやすくなる一方、苗字をそのままにすることではキャリアの一貫性を保つことができます。
子どもへの影響も考慮し、最適な選択をすることが重要です。具体的な手続き方法や必要な書類については、離婚前に調べて理解しておくようにしましょう。
アディーレ法律事務所では、婚姻費用の請求や離婚したいと考えている方からのご相談を承っております(※)。
(※なお、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。)
「婚姻費用がもらえない」「離婚したいができるかどうかわからない」人によって抱えるお悩みは様々です。
一度そのお悩みを、アディーレにお聞かせいただけませんか。
ご相談はお電話で可能ですので、こちら(フリーコール0120-554-212)までご連絡ください。