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児童扶養手当はいくらもらえる?金額をシミュレーションしてみよう

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

離婚率の上昇の影響もあり、シングルマザー・シングルファザーの家庭が増えています。
母子家庭の貧困は社会問題化していますが、父子家庭もまた慣れない家事に追われ今まで通りの仕事ができなくなることから経済的な苦労を抱えることも多いようです。

国や自治体は、このようなひとり親家庭を対象にさまざまな支援を行っています。ひとり親家庭支援として最もポピュラーなのが「児童扶養手当」です。

児童扶養手当では、ひとり親家庭で子供が一人の場合、4万4140円(全部支給の場合)貰える可能性があります(2023年4月時点)。

例えば父子家庭の場合、父の所得がいくらか、母から養育費を貰っているかなど様々な事情によって児童扶養手当の金額が決まります。
いくつかのパターンでの金額のシミュレーションをしてみましょう。

この記事では、

  • 児童扶養手当を受給するための要件
  • 児童扶養手当の所得制限
  • 児童扶養手当の金額(パターン別シュミレーション)

について弁護士が詳しく解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

児童扶養手当とは

「児童扶養手当」とは、父母の離婚などが原因で、父親または母親と暮らしている児童が育成される家庭(ひとり親家庭等)に対して支給される手当のことです。

父または母に代わって祖父母やおじ・おばなどの親族が養育者になっている場合も受給権者となれます。

(1)児童扶養手当の受給要件

児童扶養手当は基本的に、次のいずれかに該当する子どもを監護する母や、次のいずれかに該当する子どもを監護し、かつ、その子どもと生計を同じくする父が、児童扶養手当を受けることができます。

  1. 父母が婚姻を解消した子ども
  2. 父又は母が死亡した子ども
  3. 父又は母が政令で定める障害状態にある子ども
  4. 父又は母が生死不明の子ども
  5. 父又は母が1年以上遺棄している子ども
  6. 父又は母が裁判所からのDV保護命令を受けた子ども
  7. 父又は母が1年以上拘禁されている子ども
  8. 婚姻によらないで生まれた子ども
  9. 父母がいるかいないかが不明な子ども

なお、ここでいう子どもとは0~18歳までの子どものことです。
子どもに一定の障がいがある場合は20歳まで受給可能となっています。

(2)児童扶養手当の受給が制限されるケース

児童扶養手当の請求者または子どもが次のいずれかに当てはまる場合は、請求しても受給できないのでご注意ください。

  1. 請求者及び児童が、日本国内に住所がないとき
  2. 児童が里親に委託または、母子生活支援施設などを除いた児童福祉施設などに入所したとき
  3. 父又は母の配偶者(事実上の配偶者を含む)に養育されているとき
  4. 児童が父及び母と生計を同じくしているとき(父又は母が政令で定める障害状態にある場合を除く)

参考:児童扶養手当|東京都福祉保健局

その他、児童扶養手当は、受給者の扶養する子どもの人数に応じた所得制限があります(所得制限については後で説明します)。

(3)児童扶養手当の受給方法

児童扶養手当を受給するためには、居住している自治体の役場の窓口で必要書類を添えて請求し、市区町村長の認定を受けると支給が開始されます。

窓口では次の書類が必要となることが多いですが、支給要件は各自治体によって異なるため各自治体に問い合わせをするのが確実です。

  1. 請求者と児童の戸籍謄・抄本
  2. 請求者と児童が含まれる世帯全員の住民票の写し(続柄・本籍が分かるもの)
  3. 前年の所得証明書
  4. 請求者本人名義の預貯金通帳(普通口座)
  5. 個人番号が確認できるもの(マイナンバーカード)
  6. 身分証明書

児童扶養手当の所得制限と計算方法

児童扶養手当は、受給者の扶養する子どもの人数に応じた所得制限があります。そのため、児童扶養手当を受給するためには、養育者の前年の所得が一定以下であることが条件になります。

例えば児童扶養手当の全額を支給する「全部支給」の場合には、子どもが1人であれば、所得ベースで87万円が所得制限額となります。

表にすると、次のようになります。

扶養人数受給資格者本人の所得(全部支給の場合)
0人49万円
1人87万円
2人125万円
3人163万円
参考:「児童扶養手当」についての大切なお知らせ|厚生労働省

扶養人数4人以降については、扶養人数が1名増えるごとに38万円が加算されます。

なお、東京都の場合、災害で住宅や家財などが一定以上の損害を受けたときは所得制限が解除され、全部支給の金額が受け取れることがあるといった措置がとられています。所得制限を理由に支給が受けられない方でも一度、お住いの各自治体に確認すると良いでしょう。

児童扶養手当における「所得」の計算方法

児童扶養手当の支給額計算で用いる「所得」は以下の計算式で計算します。

それぞれの項目について説明します。

(1)計算の基礎になる「所得」とは

計算の基礎となる「所得」とは、前年(1~12月)の収入全額からその収入を得るのに必要な経費を差し引いた額となります。
給与所得者であれば、源泉徴収票の中の「給与所得控除後の金額」となります。自営業など、ご自身で確定申告されている方は、確定申告書の控えの中の「所得金額の合計」となります。

(2)「控除額」とは

計算式のうち「控除額」とは、請求者の属性に応じて本当の所得から一定程度控除される金額のことをいいます。本当の所得では児童扶養手当を受給できない場合でも、控除されることで児童扶養手当を受給できるケースがあります。

例えば、次のような人が控除を受けることができます。

  • 医療費控除等地方税法で控除されておる人
  • 老親や障がい者などの被扶養者がいる人
  • 勤労学生やひとり親などである人

所得額から差し引ける控除額については、次の通りになります。

控除項目控除額
老人扶養親族10万円
老人控除対象配偶者10万円
特定扶養親族及び控除対象扶養親族15万円
特別障害者控除40万円
障害者控除27万円
勤労学生控除27万円
寡婦控除27万円
ひとり親控除35万円
雑損控除控除相当額
医療費控除控除相当額
小規模企業共済等掛金控除控除相当額
配偶者特別控除控除相当額
参考:児童扶養手当|横浜市

(3)「養育費」とは

計算式のうち「養育費」とは、申請者である母または父および子どもが、別れた子どもの親から、子どもの養育のために受け取る金品などをいいます。

つまり、元夫や元妻から受け取っている養育費のことです。
受け取るものは、金銭のみならず、商品券や小切手などの有価証券も含まれます。また、「生活費」「仕送り」などの名目で支払われたものも含みます。

元妻や元夫から養育費を受け取っている場合、その養育費の8割の金額を所得に加算します。

<コラム> 児童扶養手当と公的年金の併給調整
公的年金等(遺族年金、障害年金、老齢年金など)を受給している場合には、児童扶養手当の全部または一部を受給することができません。

障害年金を受給している方は、2021年3月分(2021年5月支払い)から、児童扶養手当の額と障害年金の子の加算部分の額との差額を児童扶養手当として支給されます。

障害年金以外の公的年金を受給している方は、その額が児童扶養手当額より低い場合に、差額分を児童扶養手当として支給されます 。

参考:「児童扶養手当」が変わります|厚生労働省
参考:児童扶養手当法の改正Q&A(障害基礎年金等と合わせて受給する場合)|厚生労働省

児童扶養手当はいくら貰える?【シミュレーション】

では、児童扶養手当はいくらもらえるものでしょうか。

児童扶養手当は請求者の所得や扶養する児童の人数によって受け取れる金額が変わってきます。金額は固定ではなく、物価の変動などによって毎年変わるので毎年確認が必要です。

(1)全部支給と一部支給で貰える金額

児童扶養手当は、請求者の所得により、児童の人数により定められている金額を全額もらえる場合(全部支給)と一部もらえる場合(一部支給)があります。

【2023年4月~】

  • 全部支給の場合、子供1人目:4万4140円となります。一部支給の場合は、所得に応じて1万410円~4万4130円まで10円単位で変動します。
  • 子供2人目の加算額は、全部支給の場合1万420円となります。一部支給の場合は、所得に応じて5210円~1万410円まで10円単位で変動します。

図にすると次のようになります。

児童数全部支給一部支給
児童1人のとき4万4140円1万410円~4万4130円
児童2人のとき1万420円を加算5210円~1万410円を加算
児童3人以上のとき3人目以降1人につき
6250円を加算
3130円~6240円を加算
参考:児童扶養手当法施行令等の一部を改正する政令の施行について | 厚生労働省

なお、児童扶養手当の額は、物価の変動等に応じて毎年額が改定されます(物価スライド制)。

(2)一部支給の場合に貰える金額(パターン別)

一部支給の場合にいくら貰えるかは、次の計算式により計算します。

(※) 「所得制限係数」は2023年4月以降、次のようにされています。

  • 児童1人のときが0.0235804
  • 2人目の加算額を算出するときが0.0036364
  • 3人目以降の加算額を算出するときが0.0021748

しかし、これらは固定された係数ではありません。物価変動等の要因により、毎年変わるので注意が必要です。

参考:児童扶養手当法施行令等の一部を改正する政令の施行について | 厚生労働省

(2-1)児童1人・給与所得控除後の所得額100万円・養育費月5万円のケース

この場合に、児童扶養手当が月額いくらになるか計算してみましょう。
まずは、このケースで児童扶養手当が受給できるのか(所得制限を下回るのか)を見てみる必要があります。

児童扶養手当で審査する所得
=所得(収入-必要経費)+養育費の8割-8万円(一律控除)-控除額
=100万円+養育費年額60万円×0.8-8万円(一部控除)-控除なし
=140万円

児童1人の場合の所得制限限度額は、全部支給87万円、一部支給230万円ですので、このケースの場合、審査所得が140万円となっており、全部支給は受けられません。しかし、所得額が一部支給の所得制限限度額を下回るので一部支給が受けられます。

次に、一部支給の場合、児童扶養手当をいくら貰うことができるのかを計算します。

児童1人のときの月額
=一部支給の上限額-{(受給資格者の所得額–全部支給の場合の所得制限限度額)×所得制限係数}(※)
=4万4130円-{(140万円–87万円)×0.0235804}
=4万4130円-1万2500円=3万1630円
※ {}の内の額については、10円未満四捨五入

したがって、このケースの場合、3万1630円となります。

(2-2)児童2人・給与所得控除後の所得額200万円・養育費月3万円のケース

次に、この場合に児童扶養手当がいくら貰えるのかを計算してみましょう。
先ほどと同じく、児童扶養手当を審査する所得をまず計算する必要があります。

児童扶養手当で審査する所得
=所得(収入-必要経費)+養育費の8割-8万円(一律控除)-控除額
=200万円+養育費年額36万円×0.8-8万円(一部控除)-控除なし
=220万8000円

そして、児童2人の場合の所得制限限度額は、全部支給額125万円、一部支給268万円ですので、このケースも、審査所得220万8000円が全部支給の所得制限限度額を上回ります。しかし、一部支給の所得制限限度額を下回るっていますので一部支給を受けることができます。

児童1人目の月額
=一部支給の上限額-{(受給資格者の所得額–全部支給の場合の所得制限限度額)×所得制限係数}(※)
=4万4130円-{(220万8000円–125万円)×0.0235804}
=4万4130円-2万2590円=2万1540円

児童2人目の月額
=一部支給の上限額-{(受給資格者の所得額–全部支給の場合の所得制限限度額)×所得制限係数}(※)
=1万410円-{(220万8000円–125万円)×0.0036364}
=1万410円-3480円=6930円
※ {}内の額については、10円未満四捨五入

児童2人の児童扶養手当の合計額は、
2万1540円+6930円=2万8470円
になります。

児童扶養手当を貰うときの3つの注意点

児童扶養手当を請求するタイミングにより支給される金額が変わったり、途中で半額になったり支給自体がされなくなることがあるので注意が必要です。

児童扶養手当をもらうときには、次の3つの点に注意しましょう。

  1. 申請のタイミングにより所得の基準となる年が違う
  2. 貰い始めてから5年もしくは7年超えると支給額が半額になる
  3. 支給がなくなってしまうことがある

それぞれ説明します。

(1)申請のタイミングにより所得の基準となる年が異なる

支給額の基準となる所得は請求するタイミング(月)によって異なります。

  • 1~9月までに請求をする場合は一昨年の所得
  • 10~12月までに請求をする場合は前年の所得

で支給額が計算されることになります。

どの年の所得で計算されるかによって全部支給になるか一部支給になるかが変わる可能性があります。例えば、前年の所得であれば全部支給ができるけど、一昨年の所得であれば全部支給ができないという方は、申請のタイミングにも注意してください。

(2)5年または7年超えると支給額が半額になる

手当を支給し始めたときから5年、もしくは、支給要件となる事由が発生した日から7年を経過した場合(どちらか早い方)、手当の額が半額になることがあります。

これは、ひとり親の就業・自立を促すため、就業が困難な事情(障害、病気、介護等)がないにも関わらず、就労や就職活動をしていない場合には支給額の2分の1を支給停止とする制度によるものです。

ただ、適用除外事由(就労している、就職活動をしている、就職が困難な事情があるなど)に該当するときは、指定された期限までに届出をすれば減額されません。

対象となる人には、5年または7年経つ頃に自治体から「児童扶養手当の受給に関する重要なお知らせ」等の案内があるので適用除外事由があることを役所に届け出れば、引き続き同額の児童扶養手当をもらうことができます。

参考:児童扶養手当の支給制限について(児童扶養手当法13条の3による一部支給停止制度について)|江戸川区
参考:児童扶養手当の受給開始から5年等を経過する方へ|調布市

(3)支給がなくなってしまうことがある

児童扶養手当を受けている間に、受給資格を失った場合には、児童扶養手当を受けることができません。

例えば、次のような場合です。

  • 手当を受けている父または母が婚姻(内縁関係なども含む)し、その配偶者に養育されるようになったとき
  • 対象児童を養育しなくなったとき(児童の施設の入所、里親委託など)
  • 行方不明だった父または母が帰って来たとき(電話や手紙の連絡が遭ったときも含む)
  • 国内に住所がなくなったとき    など

この場合には、役所に届け出ることが必要です。役所に届け出いなかった場合、その期間の児童扶養手当の返還を求められる可能性もあります。

【まとめ】児童扶養手当(子供一人の場合)には、最大4万4140円貰える可能性あり(2023年4月時点)

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 児童扶養手当の所得制限
扶養人数受給資格者本人の所得(全部支給の場合)
0人49万円
1人87万円
2人125万円
3人163万円
  • 児童扶養手当における「所得」は、所得(収入-必要経費)+養育費の8割-8万円(一律控除)-諸控除額で計算する。
  • 全部支給と一部支給で貰える金額
児童数全部支給一部支給
児童1人のとき4万4140円1万410円~4万4130円
児童2人のとき1万420円を加算5210円~1万410円を加算
児童3人以上のとき3人目以降1人につき
6250円を加算
3130円~6240円を加算
  • 一部支給額は、一部支給の上限額-(受給資格者の所得額–全部支給の場合の所得制限限度額)×所得制限係数で計算する。

児童扶養手当は、請求するタイミングにより支給される金額が変わったり、途中で半額になったり支給自体がされなくなることがあるといった少々厄介な手続きです。

けれども、経済的に困難な状況にあるひとり親家庭を支援するためにせっかく設けられている制度ですから、該当するご家庭はぜひ利用したいところです。

弁護士は離婚の手続きの相談のみならず、離婚後の生活に関する相談にも応じていますので、児童扶養手当を受けずに収入を増やすべきか、児童扶養手当をもらえる収入の範囲で働くべきか、といったことで迷うことがあれば、離婚問題などを取り扱う弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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