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債権に時効はある?民法改正による時効の変更点や中断方法などを解説

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「債権が時効で消滅するって本当?」

たとえばお金の貸し借りの場面を考えてみます。お金を貸した人には、「お金を返してもらう権利=債権」があります。

しかし、債権は一定期間行使しないでいると消滅してしまう可能性があります。これが「消滅時効」です。 債権が消滅時効にかかると、お金を借りた人は、「消滅時効にかかったから返済しません」と伝えることで、法律上、返済をせずに済みます。これを、 「時効の援用」と言います。

この記事では、

  • 債権の概要
  • 債権は時効で消滅すること
  • 民法改正による債権の消滅時効期間についての3つの変更点
  • 債権の消滅時効期間の起算点

について弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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債権(さいけん)とは

そもそも、債権とは、

特定人が特定人に対して一定の財産上の行為を請求することを内容とする権利

引用:三省堂編修所(編集)『デイリー法学用語辞典』三省堂

です。

たとえば、次のようなものが「債権」です。

  • コンビニで(お金を支払う代わりに)肉まんを受け取る権利
  • 駅で(お金を支払う代わりに)目的地まで電車に乗る権利
  • 映画館で(お金を支払う代わりに)映画を視聴する権利
  • 病院で(お金を支払う代わりに)診療を受ける権利
  • 中古CDショップで(自身のCDを売る代わりに)お金を受け取る権利

このように私たちは、日常生活においてさまざまな債権を得ています。
上記の例では、その場で商品やサービスを受け取っているため、その場で債権は消滅します。
たとえば、肉まんを受け取る権利は、肉まんを受け取れば消滅します。

これに対して、なかなか債権が消滅しないことも少なくありません。

1ヶ月後に返すとの約束で仮称Aさんに100万円を貸した仮称Bさん。ところが、1ヶ月どころか3ヶ月経っても、1年経っても、一向にAさんはBさんにお金を返そうとしません。

Bさんは、Aさんに対して、「(貸した)100万円を受け取る権利(債権)」を持っています。
一部の例外を除き、この債権はBさんが100万円を受け取るまで消滅しません。
例外があるということは、貸したお金を返してもらっていないのにお金を受け取れなくなる(債権が消滅する)ことがあるということです。その1つが「消滅時効」です。

債権も時効で消滅する

消滅時効とは、債権者が権利を行使できる状態だったのに権利を行使しなかった結果、権利を失うことを定めた制度です(民法166条)。

民法166条1項では、次のように規定されています。

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

引用:民法166条1項

消滅時効は、期間の経過で自動的に成立するものではなく、「援用」によって初めて効力を生じます(民法145条)。援用とは、時効による利益を受ける旨の意思表示をすることです。

先ほどのケースの11年後をみてみましょう。

Aさんからお金を返してもらえないまま、11年が経過しました。引っ越しの準備をしている時にAさんの借用書を見つけたBさんは、Aさんに対して「11年前に貸した100万円を返してほしい」と伝えました。

このとき、Aさんには2つの選択肢があります。

  1. 「10年以上過ぎているのでもう時効だ!支払わない」と支払いを拒絶する
  2. 「あの時はありがとう。ちゃんと返すよ」と100万円を返済する

1.が時効の援用です。

債務者(この場合、お金を借りたAさん)が消滅時効制度を利用するかを決められるというわけです。 消滅時効を援用されてしまうと、債権者はお金の回収を諦めざるを得ません。

時効の援用は、口頭で伝えるだけでは後々争いになってしまうおそれがあります。時効の援用を行ったことを証拠にしておくため、内容証明郵便で行いましょう。

時効の援用の注意点について、詳しくはこちらをご覧ください。

時効援用は失敗するとリスクが大きい!弁護士が時効が伸びる更新事由等も解説

民法改正による債権の消滅時効期間の変更点3つ

2020年4月の民法改正によって、消滅時効制度が変わりました。主な変更点は次の3つです。

  1. 「短期消滅時効制度」や「商事消滅時効」が廃止された
  2. 消滅時効の完成を防ぐ方法についての規定が変更された
  3. 一定の場合に、消滅時効期間が短くなった

それぞれについて説明します。

(1)「短期消滅時効制度」や「商事消滅時効」が廃止された

2020年4月までは、1~3年で時効が完成するものがいくつか決められていました(改正前民法170~174条)。「短期消滅時効制度」です。

たとえば、料理店におけるツケ払いは1年経つと時効消滅することになっていたのです(改正前民法174条4号)。しかし、これらについて消滅時効期間を短くする意味がないとされ、2020年4月の民法改正によって廃止されました。

また、会社との取引によって生じた債権には、5年の短期時効が設けられていました(改正前商法522条)。「商事消滅時効」です。しかし、2020年4月の民法改正に合わせて、商事消滅時効も廃止されました。

消滅時効の期間についての例外

債権の消滅時効について、期間に関する例外規定が設けられているものとして、「人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権」があります(民法167条)。この場合、次のいずれか早い方に時効消滅するとされています。 生命・身体を侵害された場合について、通常の債権よりも手厚く保証されることになりました。

  • 権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
  • 権利を行使することができる時から20年間行使しないとき

(2)消滅時効完成を防ぐ方法についての規定が変更された

法律上、債権者には、消滅時効の完成を防ぐために採りうる手段が定められています。
代表的なものは次の4つです。

  • 裁判上の請求、支払督促(民法147条1項1号、2号)
  • 強制執行(民法148条1項1号)
  • 催告(民法150条1項)
  • 債務の承認(民法152条1項)

従来、このように消滅時効の完成を防ぐ手段は「中断」や「停止」と呼ばれていました。
「中断」というと一時停止をイメージする人が多いかもしれませんが、消滅時効の制度における「中断」は、リセットを意味していました。一般的な意味合いとズレがあったため、2020年4月の民法改正によって「更新」と「完成猶予」に改められることになりました。

<完成猶予>(改正前:停止)

<更新>(改正前:中断)

「完成猶予」の方法が新設された

さらに、 完成猶予の1つとして「権利についての協議を行う旨の合意」が新設されました(民法151条)。
当事者間で権利についての協議を行う旨の合意が書面で(メールも可)できれば、次の3つのうちもっとも早い時期まで時効の完成が猶予されることになります。

  1. 合意時から1年が経過した時
  2. 合意した協議期間(1年未満)を経過した時
  3. いずれかが協議の続行を拒絶する旨を書面で通知したときは、その通知の時から6ヶ月が経過した時

時効の完成が猶予されている時に、再度合意をすれば、時効が完成すべき時から通じて5年を超えない範囲で、再度時効の完成を猶予することができます。

改正前民法に類似の制度はなく、もう少しで話し合いがまとまりそうな状況でも消滅時効の完成が間近になると、裁判を提起する必要がありました。この制度により、時効の完成を阻止するためだけに請求側が裁判を提起する必要はなくなり、省エネにつながったといわれています。

でも、債務者からしたら消滅時効は完成してくれた方がいいですよね?

だとしたら、請求側がいちいち裁判を起こさないといけなかった改正前民法の方がよくないですか?

そうは言っても、実際に裁判を起こされてしまったら、債務者側も裁判に対応することとなります。対応する手間も費用もかかるので、裁判を起こされると債務者にもやはり負担はあります。

そのため、この制度で債務者にもメリットがもたらされる可能性はあるのです。

もっとも、どのような書面の内容にするかについては慎重に考えた方が良いでしょう。
特に消滅時効によって権利が消滅したと主張する場合には、債務の承認(債務があると認める言動。時効が更新されてしまいます)と捉えられないように注意しなければなりません。たとえば「借金の支払方法について協議する」とすると、借金の存在を前提としていると受け取られかねません。場合によっては、裁判の準備費用をかけてでも、裁判で争った方がよい場合もあるでしょう。

(3)一定の場合に、消滅時効期間が短くなった

従来、債権の消滅時効期間は原則10年でした(改正前民法167条1項)。
現行民法においても166条1項2号では、

権利を行使することができる時から10年間行使しないときに時効によって消滅する

引用:民法166条1項2号

と規定されています。
ところが、2020年4月の改正によって、消滅時効期間は半分に短縮されたといわれています。
半分に短縮されたといわれる理由は、166条1項1号が新たに設けられたことにあります。

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

引用:民法166条1項1号

消滅時効の起算点について、もう少し詳しく解説しましょう。

債権の消滅時効期間はいつから起算されるか?

債権の消滅時効期間のカウントがスタートするのは(このスタートする時点のことを「起算点」と言います)、「権利を行使することができる時」からです。

「権利を行使することができる時」とは、権利を行使するのに法律上の障害がなくなった時です。会社の同僚だから「返して」と言いにくいなど、事実上の障害は含まれません。
現行民法によって新たに設けられた「権利を行使することができることを知った時」というのは、権利の発生原因や権利行使の相手方などを知った時だとされています。

お金の貸し借りで言えば、通常、貸主がお金を貸した事実(権利の発生原因)や貸した相手を貸主が知らないはずはありません。
そのため、貸主は返済期日には権利を行使することができることを知るのです。

具体例でみてみましょう。

Bさんは、2020年12月20日に返してもらう約束でAさんに100万円を貸しました。

この状況でBさんがAさんに「100万円返して」と言えるのは2020年12月20日です。

改正前民法では、消滅時効はこの時から10年でしたので、2030年12月20日に時効が完成しました。

それに対して、現行民法では2020年12月20日に「権利を行使することができることを知った」といえるので、この時から5年の時効が進行し、2025年12月20日に時効が完成するのです。

参照:消滅時効の在り方に関する検討の補足資料|厚生労働省

【まとめ】債権は、一定期間が経つと時効で消滅する可能性がある

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 債権とは、特定人が特定人に対して、一定の財産上の行為を請求することのできる権利。
  • 債権は、次のいずれか早い時点で時効により消滅する(債務者が時効消滅の効果を受けるためには、「時効の援用」が必要)。
    • 権利者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
    • 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき
  • 民法改正による、債権の時効消滅期間についての変更点は主に次の3つ。
    • 「短期消滅時効制度」や「商事消滅時効」が廃止された
    • 消滅時効の完成を防ぐ方法についての規定が変更された
    • 一定の場合に、消滅時効期間が短くなった
  • 債権の消滅時効期間は、基本的に「権利を行使することができる時」から起算される。

借りたお金であっても、消滅時効期間を過ぎた場合には、消滅時効を援用することによってその支払いを免れられることになります。もっとも、債権者には時効を更新したりその完成を猶予したりする方法が認められていますので、契約から一定期間が過ぎているからといって、消滅時効の援用により債権が消滅するとは限りません。
消費者金融や銀行などの債権者から10年近く前のお金を返すように求められたときには、消滅時効の完成により時効の援用ができないかを慎重に判断する必要があります。

自分の抱えている債務が消滅時効にかかっているか気になる方は、民事事件を扱っている法律事務所にご相談ください。

また、金融機関から借金をしている場合、「債務整理」をすることで返済の負担を軽くしたり、無くすことができる可能性があります。 借金の中で消滅時効が完成していると見込まれるものがあれば、時効の援用を図ることのできる余地もあります。

アディーレ法律事務所では、債務整理を取り扱っており、債務整理についての相談は何度でも無料です。 アディーレ法律事務所にご依頼いただいた所定の債務整理手続きにつき、所定の成果を得られなかった場合には、原則として、当該手続きに関してお支払いただいた弁護士費用を全額ご返金しております。

また、債務整理の過程で、完済した業者への過払い金が発生していることがわかることがあります。完済した業者への過払い金返還請求の場合は、原則として過払い金を回収できた場合のみ、弁護士費用をいただいておりますので、弁護士費用をあらかじめご用意いただく必要はありません。(2022年8月時点)

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