あなたの法律のお悩み一発解決サイト
リーガライフラボ

債権に時効はあるの?民法改正による時効の変更点や中断方法などを解説

作成日:更新日:
リーガライフラボ

借りたお金は返す、私たちはそれが常識であるかのように教えられてきました。
15年前に借りたお金であれ、20年前に借りたお金であれ、借りた以上返すべきと思うかもしれません。では、「借りたかもしれないお金」「借りた後返したかはっきりしないお金」を返す必要はあるでしょうか。
今回は、「債権の時効」について弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2010年弁護士登録。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。現在、東京弁護士会所属。

債権(さいけん)とは

そもそも、債権とは、

特定人が特定人に対して一定の財産上の行為を請求することを内容とする権利

引用:三省堂編修所(編集)『デイリー法学用語辞典』三省堂

です。

たとえば、次のようなものが「債権」です。

  • コンビニで(お金を支払う代わりに)肉まんを受け取る権利
  • 駅で(お金を支払う代わりに)目的地まで電車に乗る権利
  • 映画館で(お金を支払う代わりに)映画を視聴する権利
  • 病院で(お金を支払う代わりに)診療を受ける権利
  • 中古CDショップで(自身のCDを差し出す代わりに)お金を受け取る権利

このように私たちは、日常生活においてさまざまな債権を得ています。
上記の例では、その場で商品やサービスを受け取っているため、その場で債権は消滅します。
たとえば、肉まんを受け取る権利は、肉まんを受け取れば消滅します。

これに対して、なかなか債権が消滅しないことも少なくありません。

1ヶ月後に返すとの約束でAさんに100万円を貸したBさん。ところが、1ヶ月経っても、3ヶ月経っても、1年経っても、一向にAさんはBさんにお金を返そうとしません。

Bさんは、Aさんに対して100万円を受け取る権利(債権)を持っています。
一部の例外を除き、この債権は100万円を受け取るまで消滅しません。
例外があるということは、貸したお金を返してもらっていないのにお金を受け取れなくなる(債権が消滅する)ことがあるということです。その1つが「消滅時効」です。

債権にも時効制度は適用される

消滅時効とは、債権者が権利を行使できる状態だったのに権利を行使しなかった結果、権利を失うことを定めた制度です(民法166条)。

民法166条1項では、次のように規定されています。

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 権利者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

引用:民法166条1項

消滅時効は、期間の経過で自動的に成立するものではなく、援用によって初めて効力を生じます(民法145条)。援用とは、時効による利益を受ける旨の意思表示のことです。

先ほどのケースの11年後をみてみましょう。

Aさんからお金を返してもらえないまま、11年が経過しました。引っ越しの準備をしているときにAさんの借用書を見つけたBさんは、Aさんに対して「11年前に貸した100万円を返してほしい」と伝えました。

このとき、Aさんには2つの選択肢があります。

  1. 「10年以上過ぎているのでもう時効だ!支払わない」と支払いを拒絶する
  2. 「あのときはありがとう。ちゃんと返すよ」と100万円を返済する

債務者(この場合、お金を借りたAさん)が消滅時効制度を利用するかを決められるというわけです。消滅時効を援用されてしまうと、債権者はお金の回収を諦めざるを得ません。

民法改正による債権の消滅時効期間の変更点

2020年4月の民法改正によって、消滅時効制度がどのように変わったのかをみてみましょう。

(1)短期消滅時効制度や商事時効は廃止された

2020年4月までは、1~3年で消滅するものがいくつか決められていました(改正前民法170~174条)。たとえば、料理店におけるツケ払いは1年経つと時効消滅することになっていたのです(改正前民法174条4号)。しかし、これらについて消滅時効期間を短くする意味がないため、2020年4月の民法改正によって廃止されました。

また、会社との取引によって生じた債権には、5年の短期時効が設けられていました(改正前商法522条)。しかし、2020年4月の民法改正に合わせて、商事時効も廃止されました。

債権の消滅時効について、期間に関する例外規定が設けられているものとして、「生命・身体の侵害による損害賠償請求権」があります(民法167条)。この場合、次のうちいずれか早いほうだとされています。生命・身体を侵害された場合について、手厚く保証されることになりました。

  • 権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき
  • 権利を行使することができる時から20年間行使しないとき

(2)消滅時効の中断に関する変更点

法律上、債権者には、消滅時効の完成を防ぐために採りうる手段が定められています。
代表的なものは次の4つです。

  • 裁判上の請求、支払督促(民法147条1項1号、2号)
  • 強制執行(民法148条1項1号)
  • 催告(民法150条1項)
  • 債務者の承認(民法152条1項)

従来、このように消滅時効の完成を防ぐ手段は「中断」や「停止」と呼ばれていました。
「中断」というと一時停止をイメージする人が多いかもしれませんが、消滅時効における中断は、リセットを意味していました。一般的な意味合いとズレがあったため、2020年4月の民法改正によって「更新」と「完成猶予」に改められることになりました。

さらに、完成猶予の1つとして「権利についての協議を行う旨の合意」が新設されました(民法151条)。
当事者間で権利についての協議を行う旨の合意が書面で(メールも可)できれば、以下の3つのうちもっとも早い時期まで時効の完成が猶予されることになります。

  1. 合意時から1年が経過した時
  2. 合意した協議期間(1年未満)を経過した時
  3. いずれかが協議の続行を拒絶する旨を書面で通知したときは、その通知の時から6ヶ月が経過した時

時効の完成が猶予されているときに、再度合意をすれば、時効が完成すべき時から通じて5年を超えない範囲で、再度時効の完成を猶予することができます。

改正前民法に類似の制度はなく、もう少しで話し合いがまとまりそうな状況でも消滅時効の完成が間近になると、裁判を提起する必要がありました。この制度により、時効の完成を阻止するためだけに請求側が裁判を提起する必要はなくなり、省エネにつながったといわれています。
債務者からすれば消滅時効は完成したほうがいいので、債務者が消滅時効を完成させない方向で協力することに違和感があるかもしれません。しかし、この制度がなければ債権者は裁判を提起するでしょうから、裁判の準備費用が必要になるなど負担が増します。そのため、この制度は債務者にもメリットをもたらす可能性があるのです。
もっとも、どのような書面の内容にするかについては慎重に考えたほうが良いでしょう。
特に消滅時効によって権利が消滅したと主張する場合には、債務の承認と捉えられないように注意しなければなりません。たとえば「借金の支払方法について協議する」とすると、借金の存在を前提としていると受け取られかねません。場合によっては、裁判の準備費用をかけてでも、裁判で争ったほうがよい場合もあるでしょう。

(3)改正後の消滅時効期間

従来、債権の消滅時効期間は原則10年でした(改正前民法167条1項)。
現行民法においても166条1項2号では、

債権は権利を行使することができる時から10年間行使しないときに時効によって消滅する

引用:民法166条1項2号

と規定されています。
ところが、2020年4月の改正によって、消滅時効期間は半分に短縮されたといわれています。

半分に短縮されたといわれる由縁が、166条1項1号が新たに設けられたことにあります。

1 債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 権利者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

引用:民法166条1項1号

消滅時効の起算点について、もう少し詳しく解説しましょう。

債権の消滅時効期間はいつから起算されるか?

「権利を行使することができる時」とは、権利を行使するのに法律上の障害がなくなったときです。会社の同僚だから「返して」と言いにくいなど事実上の障害があっても関係ありません。
現行民法によって新たに設けられた「権利を行使することができることを知った時」というのは、権利の発生原因や権利行使の相手方などを知ったときだとされています。
お金の貸し借りでいえば、貸主がお金を貸した事実(権利の発生原因)や貸した相手を貸主が知らないはずありません。
そのため、貸主は返済期日には権利を行使することができることを知るのです。

具体例でみてみましょう。

Bさんは、2020年12月20日に返してもらう約束でAさんに100万円を貸しました。

この状況でBさんがAさんに「100万円返して」と言えるのは2020年12月20日です。
改正前民法では、このときから10年でしたので、2030年12月20日に時効期間が満了しました。それに対して、現行民法では2020年12月20日には権利を行使することができることを知ったといえるので、2025年12月20日には時効期間が満了するというわけです。

参照:消滅時効の在り方に関する検討の補足資料|厚生労働省

【まとめ】債権の時効に関するご相談はアディーレ法律事務所へ

借りたお金であっても、消滅時効期間を過ぎた場合には、消滅時効を援用することによってその支払いを免れられることになります。2020年4月の民法改正によって、新たに「権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」には時効消滅すると定められたため、従来よりも貸金債権の消滅時効は完成しやすくなったといえます(ただし、2020年4月1日以降に契約したものに限られます)。もっとも、債権者には時効を更新したりその完成を猶予したりする方法が認められていますので、契約から一定期間が過ぎているからといって、消滅時効を援用できるとは限りません。
消費者金融や銀行などの債権者から10年近く前のお金を返すように求められたときには、消滅時効を検討するため、アディーレ法律事務所へご相談ください。

債務整理に関するご相談は何度でも無料

費用の不安を安心に。気軽に相談!3つのお約束をご用意

国内60拠点以上,弁護士140名以上。ご相談・ご依頼は、安心の全国対応

もしくは

ゼロイチニーゼロ サイム ナシニ

0120-316-742

朝9時〜夜10時・土日祝も受付中

新型コロナウイルス感染対策における電話での債務整理相談実施について
(1月14日更新)

お気軽にお問い合わせください

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2010年弁護士登録。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。現在、東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。