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離婚の調停調書とは?公正証書との違いや確認すべき7つのポイント

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「離婚調停をすることになったけど、調停調書っていったい何?公正証書とは何が違うの?」

夫婦間の話し合いによって離婚する場合を協議離婚と呼びますが、夫婦だけの話し合いで合意できない場合には、調停離婚の手続きへ移ることになります。この手続きの中で、家庭裁判所の調停室で、夫婦双方と、調停委員で話し合いを行うことを、離婚調停と呼んでいます。
この離婚調停で、当事者間に合意が成立し、調停機関がその合意を相当と認めて、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとされます。この調書が、調停調書と呼ばれています。
そして、調停調書は、確定判決と同一の効力を有することとなります。
したがって、調停調書は非常に重要な書面といえます。

今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 調停調書の内容
  • 調停調書の内容で確認すべき7つのポイント
この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

調停調書とは?

調停調書(離婚調停調書)とは、どのような文書なのかを解説します。

(1)調停調書は調停での合意内容をまとめた文書

調停調書は、調停成立時に作成されるもので、当事者同士が話し合って合意した内容が記載されています。
離婚調停の成立時には、原則として(DV等のおそれがない場合)、申立人・相手方・調停委員会が一堂に会して、調停調書に記載する合意内容を確認することになります。
合意内容が読み上げられ、当事者がその内容に間違いがないかを確認し、異論がなければ離婚調停が成立し、裁判所で調停調書が作成されて、後日当事者へ郵送されるという流れになります。

(2)調停調書の効力

調停調書には、判決と同じ効力があります
調停調書作成後には不服を申立てることはできないので、調停調書の内容に誤りや記入漏れがないかしっかり確認する必要があります。したがって、内容に納得できないなら合意すべきではありません

調停調書に記載されている合意内容が守られない場合には、権利者側が裁判所に調停調書に執行文付与をしてもらい、裁判所に申し立てることで、強制執行を行うことが可能です。
例えば、次のような合意内容について、強制執行を行うことができます。

  • 養育費の支払い
  • 慰謝料の支払い
  • 財産分与

※養育費と財産分与については、別表二事件のため、執行文は不要です(家事事件手続法268条1項、75条)。

強制執行とは、勝訴判決を得たり、相手方との間で和解が成立したにもかかわらず、相手方がお金を支払ってくれない場合などに、相手方に対する請求権を、裁判所が強制的に実現する手続です。
執行文とは、強制執行を行うことができる効力(執行力)があることを公的に証明する文書のことをいいます。
この執行文をもらうためには、家庭裁判所に対し、執行文付与の申立てという手続きを行うことになります。

養育費の未払いについてはこちらの記事もご覧ください。

調停調書と混同されやすい文書

調停調書と間違えられやすい文書に、公正証書と和解調書があります。
次に、それぞれの違いを解説します。

(1)公正証書

公正証書とは、公証役場の公証人が作成する公文書のことをいいます。
一方、調停調書は、裁判所が作成するものになります。
公証人は、公証役場で事実や行為などの証明・認証を行う公務員で、公証役場は、全国に約300ヶ所ある、法務局の管轄する公の機関です。

協議離婚(調停や裁判によらない、話し合いによる離婚)の際には、2人で決めた離婚条件を記した「離婚協議書」を作り、それを公正証書にすることができます。
それに対して、調停調書は、離婚調停で離婚する際に作成するものになります。
調停離婚は、家庭裁判所が関与して当事者間で離婚の合意がまとまると離婚が成立する手続きをいいます。

公正証書について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

公正証書とは?作成するメリットや種類・作る手順を弁護士が詳しく解説

(2)和解調書

和解調書とは、離婚裁判となり、裁判上の和解が成立したときに作成されるものです。
それに対して、調停調書は、離婚調停で離婚する際に作成するものです。
離婚の条件が夫婦間の協議でも解決できなかったとき、裁判で離婚するかどうかや離婚条件を決めることができます。
離婚裁判では、裁判所の判決を受けることもできますが、裁判の途中で双方が歩み寄って和解をすることも可能です。このときに和解調書が作られます。
調停調書と、和解調書は、ほぼ同じ効力を有しています。

調停調書の内容で特に確認すべき7つのポイント

調停調書には、基本的に当事者同士が話し合って合意した内容が記載されることになりますが、絶対に間違いがない内容であるとは限りません。
調停調書の内容はどの箇所もしっかり確認すべきですが、特に慎重に確認すべきポイント7つを解説します。

(1)調停離婚であることが記載されているか

調停調書には、「申立人と相手方は、本日、調停離婚をする」と記載されます。
調停離婚は、調停が成立した瞬間に離婚が成立しますが、役所に戸籍上の届出(報告的届出)をする必要があります。調停で離婚が成立したとしても、10日以内に離婚届を役所に提出することは忘れないようにしましょう。

(2)離婚届出義務者

調停調書には、申立人と相手方のうちどちらに離婚届を提出する義務があるかということを記載します。
一般的には、「姓の変更」や「本籍地」を決める妻側が離婚届を提出するケースが多いです。夫が提出する場合、妻へその都度問い合わせなければならないからです。
なお、届出義務者が10日以内に届出をしないときは、他方も届出ができるようになります。

(3)財産分与

離婚調停で財産分与について取り決めた場合は、金額や支払い方法などがきちんと記載されているか、間違いがないかなどを確認しておきましょう。
金額の支払いを受ける場合、一番確実なのは、調停の席で一括してお金を受け取る方法です。
あとで受け取る場合や分割で受け取る場合、約束通り支払わなかった場合には強制執行することになります。
約束通り支払わなかった場合のペナルティ(遅延損害金など)を定めておくことも検討しておきましょう。

不動産や自動車などを受け取る場合、通常は調停調書だけで名義変更できますが、内容によっては相手方の協力がないと名義を変えられないこともあるため、この点も確認しておきましょう。
生命保険や学資保険を受け取る場合、通常は調停調書だけでは契約者を切り替えてもらえないので、「名義変更の手続きに協力する」などの条項を入れる方がよいでしょう。
なお、調停の席や期日間に保険の名義変更書類を作成してもらう方法もあります。
弁護士が代理人になっていると、スムーズにやり取りしやすいです。

(4)慰謝料

財産分与と同様に、金額や支払い方法をしっかり確認しておきましょう。
約束通り支払わなかった場合のペナルティを記載しておくことも有効です。

(5)養育費

子どもがいる場合には、養育費も重要な項目です。
養育費については、金額、支払い方法、いつまで支払ってもらうかなどを確認しておくべきです。
養育費は、未払いや滞納も多いお金です。調停調書の内容が強制執行の内容に重要になりますので、子どもの未来のためにも、特に慎重にチェックしておきましょう。

(6)親権や面会交流

「どちらを親権者とするのか」が間違っていないか、面会交流の内容は取り決めたとおりになっているか、しっかりと確認しておきましょう。
面会交流の約束が守られなかった場合には、「間接強制」という対処法を取ることがあります。これは、相手方に制裁金を課すことで、間接的に面会交流の実現を目指す方法です。
ただし、この対処法を可能にするには、面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子の引渡しの方法などを具体的に決めておかなければなりません。

調停調書には、「面接交渉の具体的な日時、場所、方法等は、子の福祉に慎重に配慮して、双方協議して定める」や「1ヶ月に1回『程度』」のように、記載されることがあります。
しかし、このような記載では、約束の内容や、相手方の果たすべき義務の内容が明確ではないため、調停調書に基づいて間接強制の手段を採ることはできない、と判断される可能性が高いので注意しましょう。

面会交流について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

後悔しないために!面会交流のルール策定のポイント

(7)年金分割の割合

年金分割には合意分割と、割合が当然に2分の1となる3号分割とがあります。
合意分割をする場合、分割割合について合意ができたか、家庭裁判所の決定があった場合には、その旨が調停調書に記載されることになります。

年金分割は、離婚成立の翌日から2年以内に請求しなければならないのが原則です。
調停に伴い年金分割をする場合、離婚から2年以内に調停を申立て、年金分割を受ける人が調停成立の翌日から6ヶ月以内に、年金事務所に対して年金分割の請求をする必要があります。その際、合意分割の場合には、分割割合を記載した調停調書が必要になりますので、年金分割の割合が記載されているか、調停調書を確認するようにしましょう。

年金分割について詳しくはこちらの記事をご覧ください。

年金分割についてはこちらもご覧ください。

調停が成立し、調停調書が作成されたあとの流れ

調停調書が作成されたあとの流れを、次で解説します。

(1)調停調書の謄本を請求する

調停調書の謄本(または省略謄本)を請求して交付してもらいます。
※これは、この謄本を添えて離婚届を提出する必要があるためです。
調停証書の謄本の申請方法には、郵送で申請する方法(郵送申請)と、裁判所に足を運んで申請する方法(来庁申請)があります。

調停が成立したら、引き続いて書記官室に行って謄本申請するのが通常です。帰宅前に申請書を提出して帰れば、2、3日で郵送してもらえます。
ちなみに、謄本申請には1ページにつき150円の費用(申請書に収入印紙を貼付して納付することが一般的です)がかかります。
こうしておけば、わざわざ後日に裁判所へ出向いたりホームページから申請書をダウンロードして郵送したりする必要がありません。

(2)調停調書の謄本と併せて離婚届を提出

調停調書の謄本と離婚届を役所に提出します。
この際には、夫婦の本籍地または所在地の市区町村役場に提出することになります。
本籍地以外の役場に提出する場合には、戸籍謄本も提出します。
離婚届は、離婚調停の成立した日を含めて10日以内に提出します。
10日を過ぎると、5万円以下の過料が課されてしまう可能性があります。

こんなときどうする?調停調書に関してよくある困りごと

次に、調停調書に関連した困りごとのうち、よくあるものについて解説します。

(1)調停調書の謄本が届かない

調停調書の謄本の交付を郵送で申請した場合、通常は申請書が裁判所に届いてからから2、3日で届けられます。
5日ほど待っても届かない場合は、申請先の家庭裁判所に問い合わせるほうがよいでしょう。

(2)調停調書の内容を相手が守ってくれない

調停で取り決めて調停調書に記載した約束を相手方が守らない場合、「履行勧告」と「強制執行」という対処法があります
履行勧告とは、裁判所が調停調書の内容を守るよう無料で相手に注意してくれるもので、金銭問題以外にもつかえますが、強制力はありません。

履行勧告でも相手が約束を守らない場合は、強制執行に踏み切ることになります。
強制執行には、相手の給与や銀行口座を差し押さえる直接強制と、制裁金を課す間接強制があります。
直接強制するケースは、お金や不動産といったケースです。
間接強制するケースは、面会交流などになります。

(3)調停調書の内容を変更してほしい

「計算違い、誤記その他これらに類する明白な誤りがあるとき」(家事事件手続法269条1項)に限って、家庭裁判所の更正決定によって調停調書の内容を変更することが可能となります。
調停調書の内容の変更は非常に困難なので、よく確認をしてから合意することが大切です。
ただし、調停で決めた内容について双方が話し合って合意し、変更内容を公正証書に記載することで、たとえば養育費などの条件を変更することが可能となります。
話し合いがまとまらない場合は、再び調停を利用することも1つの手段です。

(4)DVの不安があり、調停調書に現住所を載せたくない

相手がDV加害者である場合などに現住所などの情報が知られることを防ぐため、家庭裁判所に「秘匿申出」をすることができます。ただし、この申出は、裁判所が秘匿の必要性なしと判断した場合には認められないため、相手に情報を知られることを完全に防ぐことはできません。
また、家庭裁判所に提出する書面は、事件記録に綴じられ、相手はこの記録を閲覧謄写できるので、提出する書類に住所などの隠したい情報を記載しないように気をつけましょう。

(5)調停調書を再発行してほしい

次の文書は再発行が可能です。

  • 調停で合意が成立した場合の合意の内容を記載した調書の正本、謄本または抄本
  • 調停が不成立だった場合の、事件が終了した旨を記載した調書の正本、謄本または抄本

また、記録の閲覧または謄写については、家庭裁判所の許可を得る必要があります。
正本とは、原本(文書の作成名義人が作成したオリジナルの文書)の写しのうち、公証権限のある者が作成したものをいいます。法令によって、原本と同じ効力を与えられています。
謄本とは、原本の記載内容の全部の写しのことをいいます。
抄本とは、原本の記載内容の一部の写しのことをいいます。

【まとめ】調停調書とは調停での合意内容をまとめた文書であり、裁判所が作成する

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 調停調書は調停での合意内容をまとめた文書であり、調停成立時に作成される
  • 調停調書には判決と同じ効力がある
  • 公正証書は公証役場の公証人が作成し、調停調書は裁判所が作成する
  • 和解調書は離婚裁判において裁判上の和解が成立したときに作成される
調停調書の内容で特に確認すべき7つのポイント
  1. 調停離婚であることが記載されているか
  2. 離婚届出義務者
  3. 財産分与
  4. 慰謝料
  5. 養育費
  6. 親権や面会交流
  7. 年金分割の割合
  • 調停調書が作成されたら謄本を請求し、謄本とともに離婚届を提出する
  • 調停調書に記載した約束を相手が守らない場合、「履行勧告」と「強制執行」という方法がある
  • 「履行勧告」とは裁判所が調停調書の内容を守るよう相手に注意してくれるもの
  • 「強制執行」には、相手の給与や銀行口座を差し押さえる「直接強制」と、制裁金を課して警告する「間接強制」がある

調停調書は判決と同じ効力を持つ重要な文書であり、あとから内容を変更することが難しいので、きちんと内容を確認することが大切です
適切な内容になっているかを確認するには専門知識が必要です。また、弁護士に依頼すれば調停を有利に進められることになります。
調停調書の内容についてお悩みの方は、一度弁護士に相談してみることをおすすめします。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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