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離婚後に妊娠が分かったけど誰の子になる?前夫の子にはしたくない方へ

作成日:更新日:
s.miyagaki

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「離婚した後に妊娠が分かったけど、父親は前夫ではない。生まれてくる子どもの父親は誰になるの?法律上、前夫を子どもの父親にしないための方法はある?」

法律上、離婚後300日以内に生まれた子の父親を前夫と推定するという規定があります。そのため、前夫が法律上父親になってしまうことを避けようとして、出生届を提出しない母親が一定数おり、無戸籍児が社会問題となっていました。

そこで、2022年12月の民法改正により、再婚後に生まれた子の父親は、再婚相手(現夫)と推定する、という例外規定が追加されました。(2024年の夏ごろまでに施行される予定です。)
したがって、この改正民法の施行後は、離婚後300日以内に生まれた子であっても、再婚後に生まれたのであれば、法律上、父親は現夫と推定されることになります。

また、同改正により、女性だけにあった100日間の再婚禁止期間の規定も廃止されます。
なお、再婚以外にも、前夫を父親にしないための方法は存在しますので、ご安心ください。

参考:民法等の一部を改正する法律について|法務省

この記事を読んでわかること
  • 今回の改正で変わった点
  • 子どもの父親を前夫にしない方法
この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。

離婚後300日以内に生まれた子の法律上の父親は、前夫が原則だった

2022年の民法改正前は、離婚後300日以内に生まれた子は、法律上は前夫の子として推定されるのが原則でした。
そのような規定が設けられた目的と、それによって生じていた弊害は、次でご説明するとおりです。

子の身分を安定させるための規定

結婚している(していた)女性が出産した場合、母子関係は出産により当然に発生するとされていますが、父子関係は父親が認知しない限り、法律上当然には発生しません

しかし、子が生まれるたびに父子関係が問題となり、「結婚しているが自分の子ではないから扶養しない(生活費を出さない)」という主張が許されるのあれば、あまりに子の地位や身分を脅かします。
そこで、次の場合には、(前)夫の子であることが法律上推定されます(民法772条)。この法律上の推定のことを「嫡出推定(ちゃくしゅつすいてい)」といいます。

  • 婚姻中に妻が妊娠したとき
  • 結婚後200日を経過した後に子が生まれた場合
  • 離婚後300日以内に子が生まれた場合

【嫡出推定のイメージ(改正前)】

無戸籍者が生じるという弊害も

しかし、この推定により、嫡出推定が及ぶ期間に出産した母親が、(前)夫が子の父親として法律上扱われる事態を避けるために出生届を提出せず、子の戸籍が作成されなかった結果、無戸籍者が生じるという弊害がありました。
法務省の調査によると、無戸籍者のうち約78.2%が、嫡出推定を避ける目的で戸籍に記載されていませんでした。

参考:無戸籍者問題の解消のための法務省の取組|法務省

離婚後300日以内に生まれた子の父親を、前夫ではなく実際の父親とすることが可能に!

今回の民法改正により、このような弊害を減らすことが期待されています。
なお、改正法は2024年夏ごろまでに施行される予定であり、対象となるのは施行後に生まれた子となります。

改正前改正後
嫡出推定の範囲・離婚から300日以内に生まれた子は、前夫の子と推定する・離婚から300日以内に生まれた子は、前夫の子と推定する

・離婚から300日以内に生まれた子であっても、母の再婚後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定する
再婚禁止期間・女性だけに100日間の再婚禁止期間が存在した・女性の再婚禁止期間を廃止
嫡出否認制度・否認権者は、(前)夫のみ・否認権者を、母子にも認める

・(再婚後の夫の子と推定される子がいる場合には)母の前夫にも否認権を認める
嫡出否認の訴えの出訴期間・1年・原則として3年

再婚後に生まれた子の父親は、前夫ではなく再婚相手

たとえ前夫と離婚した後300日以内に生まれた場合であっても、女性が(前夫と別の男性と)再婚した後に生まれた子の父親は、現在の夫であると法律上推定されることになりました。
(改正民法の施行日後に生まれた子が対象です。)
ただし、女性が再婚していない場合には、従来と同様に前夫が父親であると推定されます

【嫡出推定のイメージ(改正後)】

女性だけにあった再婚禁止期間は廃止

今回の改正前は、法律上の父性の推定が重複することを避けるために、女性だけに原則として100日間の再婚禁止期間がありました(民法733条1項)。
過去には、300日間の再婚禁止期間があった時代もあったのですが、女性に不当な不利益を与えているとして、民法改正により原則100日に短縮された経緯があります。
しかし、再婚後に生まれた子の父親は、現夫である再婚相手と推定するという今回の改正により、父性の推定が重複することはなくなりました。
そのため、再婚禁止期間が廃止され、女性も離婚後すぐに再婚することができるようになりました(施行日後の結婚に適用されます。)

再婚しなければ前夫が父親となるが、母子から嫡出否認を求めることができる

今のところ再婚予定はないのですが、その場合は、前夫が父親ということになってしまうのでしょうか?

はい。

しかし、今回の民法改正により、以前は父親と推定された男性にのみ認められていた嫡出否認の権利が、母子にも認められることになりました。嫡出否認の訴えが認められれば、父親は前夫とはならず、戸籍上の父親は空欄となります。

今回の改正前は、嫡出推定のある父子関係を否定できるのは前夫に限られていました。そのため、前夫が嫡出否認を希望しなかったり、連絡が付かなかったりして手続きへの協力が得られなければ、法律上の父子関係が成立したままになってしまう状態でした。

今回の改正によって、再婚後に生まれた子については、再婚相手が法律上の父親となります。しかし、再婚しない場合には、(離婚後300日以内に生まれた場合に)法律上の父親が前夫となるのは、改正前と同様です。
そのため、再婚はしないが、法律上の父親を前夫にはしたくない場合、無戸籍の問題はなお残ってしまうことになります。

そこで、改正前は嫡出推定により父親とされた(前)夫にしか認められていなかった嫡出否認の手続きが、母子にも認められることになりました
ただし、推定された父親、あるいは母親が、子が生まれた後にその嫡出を承認してしまうと、その者が否認権を行使することはできなくなります

また、嫡出否認の訴えは、基本的に「子の出生を知った時から1年以内」に提起する必要がありましたが、この期間も「原則として3年間」に伸びることになりました。

出生届の父親の欄に、前夫の名前を書いてしまったのですが、嫡出を承認したことになりますか?

嫡出を承認したとされる行為が法律ではっきりと定められているわけではありませんので、具体的事情により判断するしかありません。
もっとも、嫡出否認をすることができなくなるという強い効果があることから、出生届を提出しただけでは、「承認」したとはいえないと考えられています。

※今回の改正までは、嫡出を承認する主体としては(前)夫しか想定されていなかったため、同様に扱われるかはっきりとはわかりませんが、承認したといえるかの判断は厳格になされるべきである、という考え方自体は変わらないでしょう。

嫡出否認の手続きは、具体的に何をするのでしょうか?

嫡出否認のためには、まず嫡出否認の調停を申し立てる必要があります(調停前置主義:家事事件手続法257条1項)。
そして、調停で解決できず不成立となった場合には、嫡出否認の訴えを提起する必要があります(※)。

※当事者双方の間で子が(元)夫婦の子ではないという合意ができ、その合意が正当であると認められれば、合意に従った審判がなされます。合意に至らない場合や、合意が正当であると認められない場合は、調停が不成立となります。

改正法施行前に、子どもが生まれてしまいます。戸籍上、前夫を父親にしないために、何をしたら良いでしょうか?

施行日前に生まれた子やその母も、施行日から1年間に限り、嫡出否認の訴えを提起して、本当の父親ではない(前)夫が、子の父と推定されている状態を解消することができます。
詳しくは、法務省のホームページをご覧のうえ、全国の法務局・地方法務局またはお住まいの市区町村の戸籍窓口にお問い合わせください。

参考:無戸籍でお困りの方へ|法務省

なお、離婚後に妊娠した証明があれば、子が前夫の嫡出子と扱われることはありません
次の事実が医師の証明書によって確認できる場合は、その証明書を添付して出生届を提出すると良いでしょう。

  • 離婚時点で妊娠していなかった事実
  • 離婚後に妊娠した事実

【まとめ】民法改正により、前夫が法律上の父親と推定されないケースが拡大した

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 現行の民法には、離婚後300日以内に生まれた子の父親を前夫と推定するという規定がある
  • 前夫が子の父親として法律上扱われる事態を避けるために、母親が出生届を提出せず、無戸籍者が生じるという弊害が存在した
  • 今回の改正により、女性が再婚した後に生まれた子の父親は、たとえ前夫と離婚した後300日以内に生まれた場合であっても、現在の夫が父親であると法律上推定されることになった(施行日後に生まれた子が対象)
  • 今回の改正により、女性の再婚禁止期間も廃止された
  • 今回の改正により、嫡出の否認権が母子にも拡大され、嫡出否認の訴えの出訴期間も、1年から原則として3年に伸長された

今回の民法改正により、再婚した場合には、前夫が法律上父親と推定されてしまうという事態はなくなりますが、再婚しない場合には、やはり法律上は前夫が父親として扱われることになります。(離婚後300日以内に生まれた場合)

もっとも、現行法では父親と推定された男性にしか認められていなかった嫡出否認の権利が、母子にも認められるようになりました
(施行日前に生まれた子やその母も、施行日から1年間に限り、嫡出否認の訴えを提起することができます。)

再婚する予定はないけれど、離婚後300日以内に出産予定であり、法律上の父親を前夫にしたくない方は、嫡出否認の手続きなどを取り扱っている弁護士に相談することをおすすめします。

この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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