お電話では土日祝日も休まず朝9時~夜10時まで(Webでは24時間対応)法律相談のご予約を受付けています。 万全な管理体制でプライバシーを厳守していますので、安心してお問い合わせください。

シングルマザーの貧困化|母子世帯の現状や受けられる支援について

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「離婚したいけど、子どももいるし、経済的にやっていけるのか心配。」
「子どもも小さくて働けないし、離婚したいけど、今はできない。」

夫婦関係に終止符を打ちたくても、経済的な問題から離婚を踏みとどまっている女性は多いのではないでしょうか。
シングルマザーの貧困は社会問題になっており、そこには、構造的な問題も指摘されています。
今回は、母子世帯の現状や受けられる支援などにについて解説していきます。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

軽視できないシングルマザーの貧困化

父子世帯が約14万8000世帯であるのに対し、母子世帯は約119万5000世帯に上ります(世帯数は推定値)。
ひとり親世帯のうち、約89%が、母子世帯でシングルマザーということになります。

参考:令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果|厚生労働省

そして、シングルマザーの貧困率の高さは深刻です。
貧困率を図る指標として、「相対的貧困」という考え方があります。
これは、国の経済的・文化的指標を考慮して、生活に困窮している状態を指す言葉です。
厚生労働省が公表した「平成28年度の国民生活基礎調査」によると、世帯別の相対的貧困率は次の通りです。

全体平均15.7%
子どもがいる現役世代で大人が二人以上の世帯12.9%
子どもがいる現役世代で大人が一人の世帯50.8%

「大人一人と子どもの世帯」、つまりひとり親世帯の相対的貧困率は、50.8%と極めて高く、全体平均や大人が二人以上いる世帯と比べて、際立っています。

参考:国民生活基礎調査(平成28年)の結果から グラフで見る世帯の状況|厚生労働省

ひとり親世帯の約89%が母子世帯ですから、日本では、シングルマザーのうち半数以上が貧困状態に陥っていることになります。
これは、社会問題となっており、早急に対応が望まれる課題となっています。

シングルマザーが貧困になる理由は?

なぜシングルマザーが貧困に陥ってしまうのか、その理由について考えてみましょう。

(1)シングルマザーは就労時間が限られている

シングルマザーは、基本的に仕事と子育て・家事を一人で両立しなければならないので、働ける時間が限られていると考えられます。
フルタイムで働く正規雇用を避け、非正規雇用のパート・アルバイトなどで生計を立てている女性も少なくありません。
厚生労働省が公表している「平成29年度母子家庭の母及び父子家庭の父の自立支援施策の実施状況」によれば、シングルマザーの81.8%が何らかの仕事をしており、うちパート・アルバイトの割合は、43.8%です。

シングルマザーは8割以上が何らかの仕事をしていますが、4割以上が非正規採用のパート・アルバイトとなっています。

対して、シングルファザーについて、同じ資料を見てみます。シングルファザーは85.4%が何らかの仕事をしており、うちパート・アルバイト等の非正規の割合は、6.4%です。

シングルファザーも同じく8割以上が何らかの仕事をしていますが、非正規採用のパート・アルバイトの割合は低く、6%程度にすぎません。

一般的に非正規雇用は、正規雇用の場合よりも給与は低額になる傾向がありますので、その仕事についている割合の多いシングルマザーの世帯は、貧困に陥りやすいということができるでしょう。

参考:平成29年度母子家庭の母及び父子家庭の父の自立支援施策の実施状況|厚生労働省

(2)男性と女性では収入の差がある現状も

職場での男女の平等は進んできてはいますが、給与には男女間で歴然とした差があるのが現状です。
独立行政法人労働政策研究・研修機構が、男女間賃金格差を公表しています。
これによれば、男性の賃金を100としたときの女性の賃金は74程度にすぎません(2019年)。

参考:図6 男女間賃金格差|独立行政法人労働政策研究・研修機構

厚生労働省の統計によっても、シングルファザーとシングルマザー仕事で得た収入にはかなりの格差があることが分かります。

平均年間就労収入
父子世帯398万円
母子世帯200万円

参考:平成29年度 母子家庭の母及び父子家庭の父の 自立支援施策の実施状況|厚生労働省

公的な手当など、仕事以外の収入を含めると、父子世帯の収入は420万円、母子世帯は243万円となります。

(3)養育費が支払われていない世帯も多い・養育費の受給状況は低く、シングルマザーは1人で生計を担っているケースが多い

シングルマザーの貧困率の高い理由として、父親から養育費を受領していない女性が多いということもあげられます。
厚生省のデータによれば、現在も養育費を受けているのは、シングルマザーのうち28.1%にすぎません。
なぜ、こんなにも養育費を受け取ることができないのでしょうか。
理由はいくつか考えられます。

まず、養育費をもらうためには、まず養育費の額などについて取り決めをする必要がありますが、シングルマザーのうち、51.2%が取り決め自体をしていません。
次に、養育費の取り決めをして、一時期は養育費を受領していたけれども、支払いが途絶えて受け取れなくなってしまう方が、14.2%もいます。

多くのシングルマザーは養育費を受領できていないことになり、シングルマザーの貧困の大きな理由といえるでしょう。

参考:令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果|厚生労働省

シングルマザーの貧困の背景には社会的な問題がある

シングルマザーの収入が少ない大きな要因は、いくつか考えられます。

  • 子どもの世話をしなければならず、長い時間働くことができない
  • 子どもが病気になると仕事を休まなければならず、働ける日が少ない
  • 子どもを預けられる先がなく、働くことができない
  • 小さい子供がいると、なかなか正規雇用されない
  • 男女間に賃金格差が存在し、収入が低い など

小さい子どもがいる場合、仕事をするためには、子どもを預ける必要があります。
保育園や幼稚園、同居・近くに住む親族に預けることができればよいですが、預けられない場合は、働くことは難しくなるでしょう。
ベビーシッターや家事代行のサービスが普及してきましたが、人口の少ない地域では、サービス自体利用できなかったり、希望した日に依頼できなかったりすることもあります。
また、依然として、働きたくても、小さい子どもがいるために採用を断られたりすることもあるようです。

児童手当、児童扶養手当、乳幼児医療費助成など、シングルマザーを支援する公的な金銭的援助は複数ありますが、さらなる拡充が望まれます。
また、社会全体も、シングルマザーが働きやすい環境を作っていく必要がありそうです。

シングルマザーが受けられる支援について

シングルマザーが受けることのできる様々な支援について紹介します。支援については積極的に活用していただきたいと思います。

参考:ひとり親家庭等の支援について|こども家庭庁

(1)貧困世帯を救う児童扶養手当や児童手当などの「経済的支援」

ひとり親世帯では、児童扶養手当や児童手当(※)・医療費助成制度など公的な経済的な支援があります。
自分がどのような経済的支援を利用できるかは、個人の状況や地域によって異なる場合があります。
具体的にどのような支援があり、自分は何を利用できるのか、居住している市町村役場に問い合わせるようにしましょう。

また、生活するうえで資金が必要になった場合(事業開始、継続、子どもの進学費用・就学費用、仕事のための資格取得、生活資金の不足、引っ越しなど)には、「母子父子寡婦福祉資金貸付制度」を利用して資金を借りることができるかもしれません。
利用を希望する方は、市町村役場の福祉担当に問い合わせてみるとよいでしょう。
これは、ひとり親世帯の生活を支えるための貸付金制度ですので、借り入れの限度額はありますが、基本的に保証人がいれば無利子で、保証人がいなくても年1%程度の低利子で資金を借りることができます。

※児童手当法の改正により、令和4年10月期支給分から、所得上限限度額以上の所得の方に支給されていた特例給付が、所得上限限度額を超えている場合には支給されなくなりました。ただし、この児童手当の所得制限は批判も多かったところ、法改正により2024年10月分(支給は12月)からは、児童手当の所得上限を撤廃し、受給時期も18歳まで引き上げることになりました。

参考:母子父子寡婦福祉資金貸付金制度|内閣府・男女共同参画局

(2)家事や育児をサポートする「子育て・生活支援」

(2-1)ホームヘルパーの利用

地域によっては、ひとり親世帯の保護者が傷病や冠婚葬祭などで、子育てや家事ができない理由がある場合には、ホームヘルパーに家事や育児をお願いできるサービスがあります。

参考:ひとり親家庭ホームヘルパーの派遣|西東京市役所

(2-2)ひとり親家庭等日常生活支援事業

ひとり親世帯が、修学や病気などの理由により、一時的に家事・保育サービスが必要な場合などに、家庭生活支援員が、子どもの世話や食事・掃除などの家事を手伝ってくれるサービスです。
地域によっては行われておりませんので、居住する市町村役場に確認するとよいでしょう。

参考:ひとり親家庭等日常生活支援事業について|こども家庭庁

(2-3)子ども食堂

行政や企業、個人の支援で各地に広がった「子ども食堂」では、低料金で食事をすることができます。

参考:子ども食堂ネットワーク|こども食堂ネットワーク事務局

(3)子どもの学習や進路をサポートする「学習支援ボランティア事業」

お住いの自治体によっては、学習支援ボランティア事業により、塾形式や家庭教師形式で学習のサポートを受けられる場合があります。
利用できる家庭の条件、対象となる子どもの年齢、支援の形式、実施場所などは、地域によって異なりますので、直接問い合わせてみましょう。
ボランティアですので、利用料金は原則無料のケースが多いようですが、交通費などの実費負担がある場合があります。

少し古いですが(2015年度)、厚生労働省が各地の支援事業をまとめて公表しています。

参考:ひとり親家庭への支援施策に関する事例集|厚生労働省

(4)シングルマザーの仕事をサポートする「就業支援」

各市町村にあるハローワークや就職支援を担当する部署では、就職希望者一人一人に合わせて、就職相談や就職支援を行っています。
失業保険を受給しながら、就職に必要なスキルについて学べることもありますので、具体的には、ハローワークに直接尋ねてみましょう。

また、次のように、就職に必要な資格取得に必要な学校への入学金の貸付を受けられたり、自立するために総合的な支援を受けられたりできる、様々な事業があります。

  • ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業
  • 母子家庭等就業・自立センター事業
  • ひとり親家庭の在宅就業推進事業
  • 母子・父子自立支援プログラム策定事業
  • 高等学校卒業程度認定試験合格支援事業
  • 母子家庭等自立支援給付金事業
  • ひとり親家庭への相談窓口の強化事業

参考:ひとり親家庭の方への就業支援|内閣府・男女共同参画局

事業を利用できるかどうかは、地域によって異なりますので、お住いの市町村役場に直接聞いてみるとよいでしょう。

別れた夫から養育費をもらうには

本来であれば、離婚しても親である以上、自主的に子どものための養育費を支払ってもらいたいものですね。
ですが現状は、養育費を受け取れないシングルマザーが4人中3人います。
別れた夫に養育費を支払ってもらうためには、どうすればよいのでしょうか。
まず大切なのは、きちんと養育費の取り決めをすることです。
取り決めをしても支払ってもらえない方は、取り決めた通り支払うよう、督促して支払ってもらう必要があります。

各地方自治体のひとり親家庭支援窓口には、無料で養育費について相談できる相談員がいますので、気軽に相談してみるとよいでしょう。メール相談も行っています。

参考:養育費相談支援センター|厚生労働省

相手方の姿勢によっては、話し合い自体困難だったり、督促しても効果がなかったりする場合もあるかもしれません。
しかし、養育費は、相手方が支払うかどうかを自由に決められるものではなく、法律上、子どものために相手が支払う義務を負っているものです。
簡単ではないかもしれませんが、支援を利用しながら、養育費を受け取ることができるように行動してみましょう。

【まとめ】シングルマザーで養育費などでお困りの方は弁護士に相談を

シングルマザーの貧困問題は深刻で根が深く、個人の努力だけでは抜け出せないところもあります。
社会にはシングルマザー支援の輪が広がってきていますが、不十分だと感じられる場面もあると思います。
現状は、今回紹介したような様々な支援をうまく利用しながら、一つずつ自立のために歩んでいくことが大事になるのかもしれません。
養育費を受領していない方は、子供のために、放置することなく養育費を受け取るための行動をとるようにしましょう。
養育費について、当事者同士の話し合いが進まないなどお困りの際には、お気軽に弁護士にご相談ください。

アディーレ法律事務所では、現在養育費を受け取れておらず、養育費を請求したいという方からのご相談を承っています。 

適切な額の養育費を請求することは、お子様の将来のためにもとても重要です。 

養育費のご相談はお電話で可能ですので(フリーコール|0120-554-212)、一度ぜひお問い合わせください。 

よく見られている記事

離婚、浮気・不倫の慰謝料に関するご相談はアディーレへ

朝9時〜夜10時
土日祝も受付中
まずは電話で相談 0120-554-212
Webでお問合せ
ご来所不要

お電話やオンラインでの法律相談を実施しています