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再婚禁止期間とは?規定の目的や例外となるケースについて解説

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リーガライフラボ

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「夫とようやく離婚できることになった。離婚届を提出したら、その場で次の結婚相手との婚姻届を提出したい!」
「彼女の離婚が成立したら、すぐにでも結婚したい!」

このように、自分又は相手が離婚後にすぐ再婚したいと考えている方は、「再婚禁止期間」に注意する必要があります。

日本には、民法上、女性に対して再婚禁止期間という規定があり、原則として女性は離婚後すぐに再婚することはできず、100日経過するのを待たなければなりません。なぜ女性にだけこのような規定が設けられているのでしょうか。

今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 再婚禁止期間の規定の目的
  • 例外的にすぐに再婚できるケース
この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。

再婚禁止期間とは

民法には次の規定が設けられています。

民法

第733条1項(再婚禁止期間)

女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

引用:民法|e-Gov法令検索

つまり、女性は、原則として、「前婚の解消又は取消しの日」から100日を経過した後でなければ、再婚することができないのです。

これを、「再婚禁止期間」といいます。「前婚の解消」は、夫が死亡又は夫と離婚したことを指し、「取消し」は何らかの事情により婚姻が取り消されたことを指します。

一方男性には、このような再婚禁止期間の定めはありません。

なぜ女性にだけ再婚禁止期間が定められているのか

なぜ、女性だけこのような再婚禁止期間があるのでしょうか。

その理由を理解するためには、再婚禁止期間が定められた目的を考える必要がありますので、詳しく解説します。

(1)再婚禁止期間の目的

再婚禁止期間が定められた目的は、子の父を特定し、子の身分関係を早期に確定するという子の利益を確保する点にあります。

身分関係を早期に確定…利益を確保…?具体的にどういうことでしょうか?

まず前提として、親は子を養わなければいけないという「扶養義務」を負っています(民法877条1項)。

ですが、夫婦であっても子の父親が誰かということは、本当のところ、科学的なDNA検査をしなければ確認できませんよね。

そんな時、夫から「自分の子かわからないから父親の責任を負いたくない」という言い分を許せば、子の身分関係は著しく不安定になり、父親からの必要な扶養が得られない事態となりかねません。

そこで、結婚している期間に妻が妊娠した子は、客観的な証拠がなくても、法律上夫の子と推定されているのです(民法772条1項)。

また、婚姻成立から200日を経過した後に生まれた子は、婚姻中に妊娠したものと推定されますので、夫の子として推定されます(民法772条2項、1項)。

さらに、婚姻解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子も、婚姻中に妊娠したものと推定されますので、夫の子として推定されます(民法772条2項、1項)。

このような、法律で父子関係を生じさせる規定を、「嫡出(ちゃくしゅつ)推定」といいます。

嫡出推定

再婚禁止期間と、嫡出推定の関係を図で表すと、次のようになります。
下の図を見れば分かる通り、離婚から再婚までに100日間あれば、子どもがいつ生まれたとしても、法律上父親と推定される人物が重なることはありません。

しかし、次のような場合はどうでしょうか。

仮に女性に再婚禁止期間が定められておらず、女性が離婚後すぐ再婚して妊娠した場合には、次の図のように、再婚後200日を経過したが300日以内に生まれた子の父親の推定が、前夫と今夫で重複することになります。

結果、どちらも父親であることを否定したり、今夫の子だが前夫が父親であることを主張したりするなど、父子関係をめぐる争いが生じて子の身分が不安定となってしまいます。

このような法律上の父性の推定の重複を避け、扶養義務を負う父親を明確にして子の身分の安定を図る目的で、再婚禁止期間が定められているのです。

(2)なぜ女性だけに再婚禁止期間があるのか

再婚禁止期間が定められた目的は、生まれた子の父性(父親)の推定の重複を避け、子の身分関係の安定を図るためです

なぜ、法律が嫡出推定という規定で、法律上の父子関係の推定を定めているのでしょうか。
母子関係は分娩の事実(出産したということ)により明らかと考えられていますが、「生物学的な父親が誰か」ということは、DNA検査により特定しなければ本当のことはわからないからです。

しかし、先ほども述べたように、結婚をしている夫婦の間で、子が生まれるたびに父子関係が問題となり、夫の「結婚しているが自分の子ではないから扶養しない(生活費を出さない)」という主張が許されるのであれば、あまりに子の利益・身分を脅かします。
したがって、法律によって父子関係を推定するという嫡出推定という規定が設けられたのです。

その結果、女性に再婚禁止期間を設けないと、法律上の父子関係が重複してしまうケースがでてしまうことになり、それを防ぐために女性だけに再婚禁止期間が定められました。
男性には再婚禁止期間はありませんので、すぐに再婚することができますが、原則として、前妻が離婚日から300日以内に出産した子については、法律上自分の子として推定されることになります。

100日間の再婚禁止期間、以前はもっと長かった!法改正により短縮

法律上女性にだけ再婚禁止期間を設けることは、古くから、男女平等に反する、女性の結婚する自由を侵害するなどという理由で批判されてきました。しかも、以前、再婚禁止期間は現在の100日よりも長い6ヶ月(180日間)だったのです。

ですが、再婚禁止期間を定める法律は憲法の規定に反するとして訴訟が提起され、最高裁判所は、再婚禁止期間の目的からして、100日を超える期間については不当な制約で平等や自由を侵害し、違憲であると判断しました。

参考:最高裁判所大法廷判決平成27年12月16日・民集69巻8号2427頁|裁判所 – Courts in Japan

最高裁判所は、再婚禁止期間の父性の重複を避けて子の身分関係の安定を図るという目的からすれば、再婚禁止期間は100日間あれば足り、それを超える180日間もの間再婚を禁止するのは、合理性を欠いている、と判断したのです。
この最高裁判決を受けて、2016年、民法の一部改正により再婚禁止期間が短縮され、現在の100日となりました。

しかしながら、再婚禁止期間は、短縮されたとしてもやはり平等性や女性の結婚の自由を制限すること、父親が誰であるかはDNA鑑定ですぐに分かることから制限する合理性がないなどの批判があり、再婚禁止期間は不要であるという考え方もあります。
実際に、再婚禁止期間の定めを撤廃する国が増加しており、ドイツ、フランス、スペイン、韓国等では再婚禁止期間の定めはすでに撤廃されています。

最初に再婚禁止期間が設けられた時代だと、DNA鑑定のような科学技術がなかったから仕方ないのかもしれないけど、今は事情が違いますからね。

そうですね。法律も、時代の流れに従って、柔軟に変わっていくべきだという考え方もあります。現に今、女性の再婚禁止期間をなくし、再婚後に生まれた子は離婚後300日以内であっても再婚した夫の子と推定するという改正をしようという動きがあります(2022年2月現在)。

再婚禁止期間には例外がある

再婚禁止期間中でも、例外的に再婚が認められる場合について説明します。

参考:民法の一部を改正する法律(再婚禁止期間の短縮等)の施行に伴う戸籍事務の取扱いについて|法務省

(1)離婚時に妊娠してない場合

前婚の解消又は取消しの時に妊娠していなかった場合には、父性推定が重複するおそれはありませんので、再婚禁止期間中であっても再婚することができます(民法733条2項1号)。

この場合、医師が作成した「民法733条第2項に該当する旨の証明書」を添付して婚姻届を提出する必要があり、証明書を添付しないと婚姻届は受理されません。

証明書の様式は、次のとおりです(上記の法務省のウェブサイトに掲載されています)。

参照:法第733条第2項に該当する旨の証明書|法務省

(2)離婚後に出産した場合

例えば前婚の解消又は取消しの前から妊娠しており、離婚後に出産した場合には、その出産の日以降は、再婚禁止期間中であっても再婚することができます(民法733条2項2号)。
出生した子の父親は前婚の夫と推定されますので、出産後は父性推定が重複するおそれがないためです。

この場合も、先ほどの医師が作成した「民法733条第2項に該当する旨の証明書」を添付して婚姻届を提出する必要があり、証明書を添付しないと婚姻届は受理されません。

(3)その他

その他にも、父性推定の重複を避けるという再婚禁止期間の目的からすれば、次のような場合も再婚禁止期間の制限はないと考えられています。

  • 前婚と同一人物と再婚する場合
  • 前婚が夫の生死3年以上不明という理由で離婚判決があった場合
  • 夫の失踪宣告を受けて婚姻を解消した場合 など

再婚禁止期間に違反したら罰則はあるのか?

通常、例外的事情がないのに再婚禁止期間中に役所に婚姻届を提出しても、「再婚禁止期間中である」という理由で受理されないので結婚することはできません。

ただし、万が一、再婚禁止期間中に再婚できたとしても、法律上の罰則はありません。事実上、父性推定が重複する期間に子が生まれた場合には、子の父親が前婚の夫なのか、後婚の夫なのかの特定が困難になるという不利益があります。

最終的に法律上の父親がどちらかになるのかは、裁判所の判断によることになるでしょう。
再婚禁止期間に反する婚姻は不適法な婚姻ですので、当事者など一定の関係者は、家庭裁判所にその取消しを請求することもできます(民法744条1項、2項)。

再婚禁止期間に関するQ&A

再婚禁止期間に関するよくあるQ&Aを紹介します。

再婚期間についてよく理解しておらず、誤って婚姻届けを出したらどうなるのですか?

例外事情がない限り、再婚禁止期間中に役所に婚姻届を提出しても、役所は受理しません。
婚姻届は、その婚姻が再婚禁止期間に反するなどの規定に違反しないことを確認した後でなければ、受理することができないためです(民法740条)。

万が一、誤って婚姻届が受理された場合は、再婚することができます。

しかし、法律に反した不適法な婚姻で、父性推定が重複するおそれがありますので、本人の他、前婚の配偶者及び後婚の配偶者及び後婚の当事者の親族、又は検察官から、後婚の取り消しを請求することができます。

ただし、前婚の解消又は取消の日から100日を経過した場合、女性が再婚後に出産した場合には、後婚の取り消しを請求することはできなくなります(民法746条)。

外国籍の女性と日本で再婚する場合も、日本の再婚禁止期間が必要なのですか?

外国籍の女性の本国法に再婚禁止規定が存在しなくても、日本の再婚禁止期間の規定が外国籍の女性に適用されるのか、についても気になるところですね。
この点、結婚相手が外国籍の女性であり、その国の法律には再婚禁止期間の定めがなくても、離婚後日本民法上の再婚禁止期間を経過しなければ、原則として結婚することはできない、と考えられています。

【まとめ】再婚禁止期間は、生まれた子のために設けられた規定、例外的に再婚禁止期間であっても再婚ができるケースもある

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 再婚禁止期間は、女性が離婚後まもなく出産した場合に、子の父親の推定の重複を避け、子の利益を守るための規定である。
  • 再婚禁止期間には例外があり、次のケースでは、離婚後100日以内であっても再婚ができる。
    1. 離婚時に妊娠していない場合
    2. 離婚後に出産した場合
    3. その他再婚禁止期間の目的に反しない場合
  • 再婚禁止期間中に再婚しても罰則はない。しかし、生まれた子の父親の推定が重なる場合には、扶養義務のある父親が不明確であるため、事実上、子にとって不利益となってしまう。

再婚禁止期間や、嫡出推定規定についてお悩みの方は、再婚禁止期間に伴う法的問題について取り扱っている弁護士への相談を検討してみるとよいでしょう。

この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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