近年、夫婦別姓を巡る議論が日本でも活発化しています。結婚後もそれぞれの姓を保持することで、個人のアイデンティティやジェンダー平等を尊重しようという動きが高まる一方で、法律や社会的な課題も多く存在します。
この記事では、夫婦別姓の基本的な概念から、選択的夫婦別姓や例外的夫婦別姓、そして事実婚との違いについてくわしく解説します。また、夫婦別姓の具体的なデメリットや、日本と海外の現状についても取り上げています。
一緒に夫婦別姓について深く学んでみましょう。
この記事を読んでわかること
- 夫婦別姓とは(選択的夫婦別姓・例外的夫婦別姓・事実婚)
- 夫婦別姓のデメリットとは
- 夫婦別姓に関する日本と海外の現状
ここを押さえればOK!
選択的夫婦別姓は、同姓にするか別姓にするかを選べる制度で、例外的夫婦別姓は特定の条件下でのみ夫婦別姓を許可する制度です。
夫婦別姓のデメリットとして、子どもの姓の問題や生活上の不便さ、家族の一体感の喪失が挙げられます。例えば、公的機関での手続きの際に夫婦関係を証明する書類が多く求められる可能性もあります。
日本の現行法では夫婦は同じ姓を選択する必要があり、夫婦別姓を希望するカップルは事実婚を選択せざるを得ません。この場合、法的な相続権や税制上の優遇が受けられません。
海外では、夫婦別姓が法的に認められている国が多く、国連からも日本に対して夫婦別姓の導入を求める勧告が出されています。
夫婦別姓の導入にはデメリットもありますが、個人のアイデンティティを尊重し、ジェンダー平等を実現するためには重要な意義があります。日本における夫婦別姓の導入は急務といえるでしょう。
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
夫婦別姓とは
夫婦別姓とは、結婚後も夫婦がそれぞれの姓を保持する制度です。
日本の現行法では、夫婦は結婚時にどちらか一方の姓を選択する必要があり、夫婦別姓は認められていません。
日本で夫婦別姓を導入するにあたって検討されているのは「選択的夫婦別姓」と「例外的夫婦別姓」の2つの制度です。
(1)選択的夫婦別姓とは
選択的夫婦別姓とは、夫婦が結婚後に同姓を選択するか、それぞれの姓を保持するかを自由に選べる制度です。選択的夫婦別姓は、あくまでも同性にするか別姓にするかを選べる制度ですので、必ず別姓というわけではありません。
(2)例外的夫婦別姓とは
例外的夫婦別姓とは、特定の条件下で夫婦別姓を許可する制度です。
この制度では、夫婦別姓となるのはあくまでも例外的であって、夫婦同姓が原則となります。
(3)夫婦別姓と事実婚の違いとは
夫婦別姓と事実婚の違いは、法的な婚姻関係の有無です。
夫婦別姓は法的に結婚しているが姓が異なるケースを指し、事実婚は法的に婚姻関係がないが実質的に夫婦として生活している状態です。
ただし、事実婚はあくまでも内縁関係に過ぎず、法律上は夫婦として認められていません。そのため、事実婚には次のデメリットがあります。
- 法的な相続権が認められない。
- 配偶者の医療同意ができない。
- 公的なサービスや税制上の優遇が受けられない。 例えば、配偶者控除が適用されず、経済的な負担が増すことが考えられます。
夫婦別姓のデメリットとは
夫婦別姓を導入することで、姓を変えるのに必要な手続きが不要になるほか、仕事上での支障を防ぐことができます。しかし、夫婦別姓にはデメリットもあります。
ここでは、夫婦別姓のデメリットについて紹介します。
(1)子どもの姓
夫婦別姓にすると、子どもの姓をどうするのかという問題が発生します。
さらに、学校や社会生活でのアイデンティティ形成にも影響を及ぼす可能性があります。例えば、友達や先生から「なぜお父さんとお母さんの姓が違うのか」と尋ねられることが増えるかもしれません。これにより、子どもが心理的にストレスを感じる可能性があります。
(2)生活上の不便さ
夫婦別姓を選択すると、日常生活でさまざまな不便が生じる可能性があります。
例えば、同じ姓であれば、すぐに夫婦であることがわかります。しかし、夫婦別姓をとった場合、夫や妻に関する公的機関や医療機関での手続きの際に、夫婦関係を証明する書類が多く求められる可能性があります。
(3)家族の一体感が損なわれる不安
夫婦別姓を選択することで、家族としての一体感が損なわれるという懸念があります。
例えば、家族旅行や学校行事などで、姓が異なることで周囲からの誤解や不便が生じる可能性があります。これにより、家族の一体感や結束力が弱まると感じるかもしれません。
ただし、姓が違うからといって一体感が損なわれるということはないでしょう。実際、結婚し姓が変わった娘や息子と親子関係が薄れるという人はいません。
夫婦別姓に関する日本の現状とは
次に、夫婦別姓に関する日本の現状について説明します。
(1)法律上の現状
日本の現行法では、夫婦は結婚時に同じ姓を選択する必要があります。 日本で夫婦別姓を希望するカップルは事実婚を選択せざるを得ません。
この場合、法的な相続権や税制上の優遇が受けられないなどのデメリットが発生します。 例えば、事実婚では配偶者控除が受けられず、経済的負担が増す可能性があります。
(2)社会的な動きと議論
日本でも夫婦別姓に関する社会的な動きと議論は活発化しています。
特に、ジェンダー平等や個人のアイデンティティ尊重の観点から、夫婦別姓を求める声が高まっています。
近年では、政府や立法府でも議論が進んでいます。
しかし、保守的な意見も根強く、家族の一体感や伝統を重視する声も多いです。これにより、社会全体での合意形成が難航しています。
夫婦別姓に関する海外の現状とは
次に、夫婦別姓に関する海外の現状について説明します。
(1)海外での夫婦別姓の実情
夫婦同姓を強制している国は、先進国のなかでは日本だけであり、世界的に見ても夫婦別姓を選択できる国がほとんどです。
例えば、アメリカやカナダ、イギリスなどでは、結婚後も夫婦がそれぞれの姓を保持することが法的に認められています。さらに、ドイツでは子どもの姓を両親が自由に選択できる制度があり、家族全体の意思を尊重する仕組みが整っています。
(2)国連からの勧告と国際的な視点
国連は日本に対して、夫婦別姓を認めるよう複数回勧告しています。
国連の女性差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本の現行法がジェンダー平等を阻害していると指摘し、夫婦別姓の導入を強く求めています。国際的な視点から見ると、夫婦別姓の認められない日本は、ジェンダー平等や人権の観点で後れを取っているとされています。
【まとめ】夫婦同姓は日本だけ|デメリットはあっても早めの導入が期待される
夫婦別姓の導入には、子どもの姓や生活上の不便さ、家族の一体感が損なわれる不安などのデメリットがあります。しかし、夫婦別姓を導入することで、個人のアイデンティティを尊重したり、ジェンダー平等を実現したりする意義も大きいといえます。
法律上の現状や社会的な動き、海外の実情を考慮すると、日本における夫婦別姓の導入は急務といえるでしょう。