DV(ドメスティック・バイオレンス)は、家庭内や恋愛関係において行われる暴力や虐待を指します。
DVは被害者に深刻な影響を及ぼし、長期的なトラウマを引き起こすことがあります。
この記事では、DVの種類やDV男の特徴、対処法や相談先などについて詳しく解説します。
DVに悩んでいる方や、身近な知り合いにDVの被害者がいる方にとって、この記事が一助となることを願っています。
この記事を読んでわかること
- DVとは
- DVの種類
- DV男の特徴
- DVにあったときの被害者の対処法
- DVの相談窓口
ここを押さえればOK!
身体的DVは殴る、蹴るなどの行為で、精神的DVは言葉や態度で相手を傷つけます。性的DVは相手の意思に反して性的行為を強要し、経済的DVは相手の経済的自由を制限します。子どもがDVを目撃することも心理的虐待とされます。
DV加害者の特徴として、コントロール欲求が強い、爆発的に怒る、過度な嫉妬、自己中心的な態度、反省したふりを見せるがDVを繰り返すことが挙げられます。これらの特徴を持つ人は、パートナーを支配しようとし、暴力を繰り返す傾向があります。
DV被害に遭った場合は、安全な場所へ避難し、警察や市区町村の相談窓口に連絡することが重要です。また、退去命令や接近禁止命令などの法的手続きを利用して身を守ることも検討しましょう。配偶者暴力相談支援センターや女性相談支援センターなどの相談窓口を利用し、適切なサポートを受けることが大切です。相談することが、自分や子どもを守る第一歩となります。
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
DVとは
DV(ドメスティック・バイオレンス)とは、domestic violence=家庭内の暴力の略です。
一般的には、「配偶者や交際相手からふるわれる暴力(離婚後または交際関係がなくなってからふるわれた暴力も含む)」という意味で使われることが多いです。
配偶者(事実婚を含む)からの暴力については、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律1条により、下記のように定義されています。
第一条 この法律において「配偶者からの暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(以下この項及び第二十八条の二において「身体に対する暴力等」と総称する。)をいい、配偶者からの身体に対する暴力等を受けた後に、その者が離婚をし、又はその婚姻が取り消された場合にあっては、当該配偶者であった者から引き続き受ける身体に対する暴力等を含むものとする。
DVの種類とは
DVにはさまざまな形態があります。以下に代表的な5つの種類を紹介します。
参考:暴力の形態 | 内閣府男女共同参画局 (https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/e-vaw/dv/02.html)
(1)身体的DV
身体的DVは、殴る、蹴る、押し倒す、物を投げつけるなどの身体的な暴力行為を指します。これにより、被害者は怪我を負うケースもあります。
身体的DVにより、被害者に目に見える傷や打撲跡が残ることがあるため、比較的周囲の人が発見しやすいです。しかし、被害者が加害者への恐怖心から、傷を隠したり、傷の理由を問われても本当の理由を言わないことも多いです。
身体的DVの被害を受けた場合は、すぐに警察に通報し、医療機関で診察を受けることが重要です。
(2)精神的DV
精神的DVは、言葉や態度で相手の心を傷つけるDVです。怒鳴る、侮辱、無視、脅迫、無視などが含まれ、被害者の自尊心を傷つけ、心理的なダメージを与えます。
長期的な精神的DVは、被害者の自己評価を低下させ、うつ病や不安障害などの精神的な病気を引き起こすことがあります。
精神的DVは外部からは見えにくいため、被害者自身が気づきにくいこともあります。
言動がひどすぎる、精神的DVを受けていると感じた場合は、信頼できる友人などに相談し、客観的な意見を聞いてみることも大切です。
(3)性的DV
性的DVは、相手の意思に反して性的な行為を強要することです。これには、相手が嫌がっている特定のプレイを強要したり、避妊して欲しいと伝えても協力しないことも含まれます。
夫婦や交際中の相手であっても、性交は自分の意思で決められます。性交を求められても嫌だったら拒否できますし、強要に我慢する必要はありません。
性的DVは、被害者の性的自由を侵害し、自己肯定感を下げるものです。深刻な心理的トラウマを与えることもあります。
(4)経済的DV
経済的DVは、相手の経済的な自由を制限する行為です。お金を全面的に管理し、生活費を渡さなかったり、仕事を辞めさせたり、仕事をさせなかったりして、被害者が自由に使えるお金をなくし、経済的な依存を強制します。
経済的DVは被害者の生活の質を低下させ、経済的な自立を妨げます。被害者がそれを受け入れ、「働いていないのだからしょうがない」「私が悪いからしょうがない」という思考になってしまうと、自己肯定感も失ってしまうでしょう。
被害者は経済的な自由を奪われることで、精神的にも依存してしまうことがあります。またお金がないために逃げる手段を失い、DVから抜け出すことが難しいと感じてしまいます。
(5)子どもへの心理的虐待
親のDVを子どもが目撃することは、子どもへの心理的虐待のひとつと考えられています。
子どもの心身の成長の過程において、さまざまな影響が出ることもあります。
DV男の特徴とは
DV男が有する主な特徴について、主な5つを説明します。
夫やパートナーに次の特徴がない場合にはDV男ではない、という事ではありません。あくまでも目安として参考にしてください。
(1)コントロール欲求が強い
DV男はパートナーを肉体的・精神的に支配し、コントロールしようとすることがあります。
行動や交友関係を細かく監視し、制限することが多いです。
例えば、パートナーのスマートフォンをチェックしたり、外出先を逐一報告させたりします。これにより、被害者は自由な行動が制限され、常に監視されているという感覚に陥ります。コントロール欲求が強いDV男は、パートナーを自分の所有物のように扱い、独立した個人として尊重しません。
(2)爆発するように怒る
些細なことで激しく怒り、暴力的な行動に出ることがあります。感情のコントロールができずいつ怒り出すかわからないので、パートナーは常に恐怖を感じます。
例えば、食事の準備が遅れたり、少し部屋が散らかったり、返事が遅かったりなどという些細なことで、怒鳴り散らしたり、物を投げつけたりします。
怒りの爆発は予測不可能であり、被害者は常に相手の機嫌を伺いながら生活することになってしまいます。
爆発的な怒りは、DV男が自分の感情をコントロールできないことを示しており、対処しないでいると暴力的な行動がエスカレートする危険性もあります。
(3)過度な嫉妬
DV男は、パートナーに対して過度な嫉妬心を抱くことがあります。他の異性と話したり、連絡をとったりするだけで激しく嫉妬し、疑い深くなります。
例えば、パートナーが職場の同僚と仕事上の連絡を取り合っているだけで浮気を疑い、激しく詰問したりします。過度な嫉妬により、スマホを絶えずチェックしたり、外出した際のレシートを確認したり、外出して会った人に確認を求めたりする人もいるようです。
それにより、パートナーは友人や知人との連絡を避けるようになり、孤立するようになってしまいます。
このように、被害者は友人や家族との関係を断たれ、DV男に依存せざるを得ない状況に追い込まれます。
(4)自己中心的な態度
DV男は、自分の欲求や感情を最優先し、パートナーの気持ちや意見を無視することがあります。
自己中心的な態度は、パートナーを軽視し、尊重しない行動として現れます。例えば、自分の都合でパートナーの予定を変更させたり、パートナーを尊重せずパートナーの意見を無視して一方的に決定を下したりします。
自己中心的なDV男は、パートナーを対等な存在として見ておらず、自分の支配下に置こうとします。
(5)反省したふりを見せるがDVを繰り返す
DV男は、一時的に反省したふりを見せることがありますが、根本的な行動は変わらず、再び暴力を振るうことが多いです。
例えば、暴力を振るった後に「もう二度としない」などと泣きながら謝罪し、しばらくは優しく接することがあります。しかし、時間が経つと再び暴力的な行動に戻ることが多いです。
反省したふりを見せることで、被害者は一時的に安心しますが、根本的な問題が解決されない限り、DVは繰り返される可能性があります。
DVの被害に遭ったときの対処法とは
DVの被害に遭ったときは、次の対処法を参考に、心身の安全を確保するようにしましょう。
(1)安全な場所へ避難する
まずは自分の安全を確保することが最優先です。
友人や実家などに避難できる場所があれば、そちらに避難しましょう。警察や市区町村役場の相談窓口から、一時保護してもらえることもあります。
緊急時には、躊躇せずに警察(110番)に通報しましょう。
避難先を事前に決めておき、最小限の必要な持ち物(身分証明書、現金、薬など)を準備しておくとスムーズに避難できるでしょう。
(2)身を守るための法的手続きをとる
DVから逃れるために、次のような法的手続きの利用を検討しましょう
- 退去命令
- 夫と同居している場合、裁判所に申立てをし、命令の効力が生じた日から2ヶ月間、被害者と同居している住居から夫を退去させ、住居の周りを徘徊することを禁止してもらえる場合があります(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律第10条1項2号)。
- 接近禁止命令
- 夫と別居している場合には、裁判所に申立てをし、命令の効力が生じた日から6ヵ月間、夫が妻やその同居する未成年の子ども、親族等につきまとうことや、住居や職場等の近くを徘徊することを禁止してもらえる場合があります(同法第10条1項1号、同条3項4項)。
- 電話等禁止命令
- 裁判所に申立てをし、生命身体に危害が加えられることを防止するために、面会要求、著しく粗野又は乱暴な言動、無言電話、緊急やむを得ない場合を除いた連続の電話、名誉を害する事項を告げることなどの行為を禁止してもらえることがあります(同法10条2項各号)
DVの相談窓口とは
DV被害者は、以下の相談窓口を利用して適切なサポートを受けましょう。
まずは、相談する事が大きな第一歩です。自分や子どもを守るために、勇気をもって相談しましょう。
(1)配偶者暴力相談支援センター
配偶者暴力相談支援センターは、全国の各市区町村に設置されている公的な相談窓口です。相談、アドバイス、シェルターの紹介、法的手続きをサポートしてくれるでしょう。
各市区町村役場に連絡窓口を問い合わせてみましょう。
(2)女性相談支援センター
女性相談支援センターは、各都道府県に1つ設置されています。夫からのDV被害に遭った女性を含め、様々な問題を抱える女性の相談を受け付け、状況に応じた支援を行っています。
相談先は#8778です。全国の直接の電話番号は、下記サイトでご確認ください。
参考:困難な問題を抱える女性の相談窓口(女性相談支援センター)|厚生労働省
(3)警察
緊急時には迷わず警察に通報し、夫との分離と、保護を求めます。深夜でも早朝でも、警察に電話はつながりますので、暴力を振るわれたとき、身の危険を感じたときは躊躇せず連絡しましょう。
また、警察はDV被害者に対して必要なサポートをしてくれる相談窓口とつなげてくれるでしょう。
【まとめ】
DV被害に遭っていると思ったら、まずは支援機関に相談しましょう。必要なアドバイスや避難できる場所があるかどうかなどを教えてもらえるでしょう。
DVは一人で解決するのが難しい問題です。DVに悩んでいる方は、一人で抱え込まず、専門の相談窓口に連絡して助けを求めましょう。今すぐ行動を起こし、身の安全と安心を取り戻すための第一歩を踏み出してください。
離婚を希望する場合、自分でDV夫と話し合うのは困難が予想されますので、弁護士への依頼をご検討下さい。アディーレ法律事務所では、離婚のご相談をお受けしています(※なお、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます)。
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