「一度離婚した元配偶者と、また結婚したい」
同じ相手との再婚は、法的には禁止されていません。通常の結婚と同じように再婚することが認められており、手続き上のハードルは低いといえます。
しかし、真のハードルは法的な手続きの有無ではなく、「なぜ前回離婚に至ったのか」という根本的な問題を解決できているかという点にあります。
このコラムでは、同じ相手との再婚を検討する方が抱える法的な疑問(再婚の可否、戸籍、子どもの手続き)にお答えします。さらに、特に「二度目の失敗は避けたい」という方のために、衝動的な感情に流されないための動機分析や、将来の相続・財産管理のリスクヘッジなどを解説します。
ここを押さえればOK!
真のハードルは、「なぜ前回離婚に至ったのか」という根本問題が解決されているかという点にあります。再度の失敗を避けるためには、以下の点が重要です。
1. 動機の冷静な分析: 孤独感や経済的不安など、一時的な感情による衝動的な判断ではないか、じっくり時間をかけて見極めること。
2. ハイリスクな原因の根本解決: DV、モラハラ、浮気が原因だった場合、相手の表面的な変化に惑わされず、問題の根源が完全に解決し、変化が継続的であるかを客観的に評価すること。
3. 成功のためのポイント: 前回の離婚原因を明確にし、完全に解決すること。お互いに精神的・経済的に自立し、依存関係を断つこと。焦らず、時間をかけて信頼関係を再構築すること。
また、子どもがいる場合は、再婚後の子どもの氏(名字)を夫の姓に変更するために、「入籍届」を市区町村役場に提出する手続きが必要です。
将来のリスクヘッジとして、再婚による相続権の発生を念頭に、独身時代の財産と再婚後の財産の分別管理や、万が一の再離婚に備えた婚前契約の作成も有効な手段です。
幸せな再婚を成功させる鍵は、一時的な感情に流されず、前回の失敗を教訓に対策を講じ、慎重に検討することにあります。
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離婚した同じ相手との再婚は可能か?【法的な基本知識】
同じ相手との再婚は、法的には何ら問題なく実現可能です。
ここからは、再婚を検討する際に知っておくべき、法制度や戸籍の取り扱いについて解説します。
(1)再婚回数に制限はない:同じ相手とは何回でも再婚できる
日本において、結婚や離婚の回数について制限を設けている法律はありません。
したがって、元配偶者と再婚する場合であっても、何回でも婚姻届を提出することが可能です。
法的に同じ人と再婚することは可能ですが、衝動的な離婚や再婚を繰り返さないよう、今回の決断は慎重に行うことが重要です。
(2)女性のみに存在した再婚禁止期間は撤廃された
過去、女性は離婚後すぐに別の相手と再婚する際、子の父親がだれであるかを明確にするために、一定期間の再婚禁止期間が定められていました。ただし、再婚相手が離婚した元夫である場合に限り、この再婚禁止期間は適用されませんでした。
これは、再婚相手が元夫であるため、子の父親が誰であるかの混乱が生じないからです 。
しかし、2024年4月1日よりこの再婚禁止期間は撤廃されましたので、相手がだれであれ、女性も男性と同じように、離婚後すぐに再婚することが可能です。
(3)再婚しても戸籍上の離婚歴(バツ)は消えない現実
「離婚した人と再婚すれば、戸籍にある前回の離婚歴が消えるのではないか」と期待する方もいますが、残念ながら、前回の離婚歴が戸籍から削除されることはありません。
なお、昔の戸籍は、離婚すると戸籍に×が記載されたため、離婚歴があることを「バツイチ」などと表現することがあります。
しかし、現在の戸籍は、離婚したとしても戸籍にバツ印は記載されません。
戸籍の筆頭者の場合は、離婚の事実が記載され、筆頭者でない場合は、離婚の事実と除籍が記載されます。
復縁再婚で失敗を繰り返さないための動機分析
「再度の離婚」という事態を避けるためには、復縁の動機について客観的に分析することが重要です。
まずは、再婚に至る主なきっかけと、特に注意が必要な衝動的な判断について見ていきましょう。
(1)復縁を望む主なきっかけ:後悔、経済的不安、子どもの存在など
離婚した相手と再婚する主なきっかけとしては、勢いで離婚したことへの後悔や、離れてみて初めて相手の大切さに気づいたケース、子どものために復縁をするケースが見られます 。
特に、これまで夫婦で生活していた状況から一転して一人になると、孤独感や寂しさが強くなることがあります。
また、離婚後の生活で経済的な不安を抱えたり、子どもの幸せを最優先に考えて再婚を望んだりすることも、有力な動機となります 。
(2)一時的な感情や孤独感による衝動的な判断ではないか
復縁再婚で最も失敗しやすいのは、一時的な感情や孤独感、または経済的な不安のみを理由に再婚を焦ってしまうケースです。
そのような理由で再婚を決めてしまうと、離婚の原因となった根本的な問題が未解決のまま残ってしまいます。
本当に再婚したいのか、将来ずっと一緒にいたいと思えるのか、前回離婚の原因となった問題などついて、冷静に分析し、じっくり時間をかけて判断することが重要です。
「再度の離婚」につながるハイリスクなケース
再度の離婚に至りやすいと考えられる「ハイリスク・ケース」には次のようなケースが考えられます。
(1)DV、モラハラ、浮気が離婚原因で根本解決していない場合
DV(ドメスティック・バイオレンス)やモラハラ(モラル・ハラスメント)、または浮気が前回の離婚原因であった場合、相手の根本的な性格や価値観、行動パターンが変わっていなければ、再発率が高いと考えるべきでしょう。
DVやモラハラの被害者は、肉体的・精神的苦痛を伴うものであり、あなたはその被害者であったということを再度認識すべきです。
またその被害に遭う可能性があるのであれば、自分を守るためにも、再婚はしない方がいいでしょう。
また、浮気は夫婦間の信頼関係の崩壊を示すものであり、単に「やっぱり好きだから」という感情的な未練や寂しさから再婚に踏み切ることは非常に危険です。
再婚を決断する前に、信頼できる第三者に相談したり、カウンセリングを受けたりして、根本的な問題解決が行われたかを客観的に評価する必要があるでしょう。
(2)相手のうわべの変化に惑わされている場合
再度の離婚につながる典型的な失敗例として、元配偶者の表面的な謝罪や、一時的に態度が良くなった「うわべの変化」 だけで再婚を決めてしまうケースが挙げられるでしょう。
離婚原因が元配偶者にある場合、その離婚原因が本当に解決しているかを見極めるためには、相手の変化が継続的で、問題の根源に対する真摯な向き合いに基づいているかを確認する必要があります。
感情的な決断は避け、相手が本当に変わったのか、信頼できる人なのかどうかを時間をかけて再確認することが、失敗を避ける鍵となります。
自分だけで決断せず、信頼できる第三者やカウンセラーに相談してもよいでしょう。
幸せな再婚を叶えるためのポイント
離婚経験がある夫婦だからこそ、過去の失敗を教訓として意識的に努力することで、より強固で幸福な関係を築けると考えることもできます。
幸せな再婚とするためのポイントを3つ確認しましょう。
(1)前回の離婚原因が明確かつ完全に解決しているか
再婚を成功させる最低限の条件は、前回の離婚原因が明確に特定され、かつ完全に解決されていることです。
例えば、金銭問題が原因であれば、その金銭問題が再婚前に解消されている必要があります。
不倫が原因であれば、不倫関係が完全に解消され、相手は二度と不倫しないという確信を持てる必要があります。
もし未解決のまま再婚すれば、同じ原因で再び関係が破綻するリスクは避けられません。
(2)お互いに精神的に自立し、依存関係を断っていること
お互いに依存するのではなく、お互いが精神的に自立した上で、関係を再構築することも大切です。
自立した関係性であれば、相手に過度に期待したり、自分を犠牲にして相手に尽くしたりする依存的な傾向を防ぐことができます。また、残念ながらまた離別の道を選ぶことになっても、精神的かつ経済的に自立していれば、スムーズに新たな道を選ぶことができるでしょう。
自立した上で、お互いに歩み寄る気持ちと相互理解があることが、持続可能な関係の基盤となります。
(3)再婚を焦らず、じっくりと信頼関係を再構築する重要性
離婚を経験した夫婦は、過去の失敗を活かし、同じ過ちを繰り返さないよう意識的な努力が不可欠です。
再婚を焦るのではなく、関係が終わってしまった原因を冷静に振り返り、相手を尊重する、コミュニケーション、思いやり、価値観の違いといった具体的な問題点を認識することが大切です。
じっくり時間をかけて信頼関係を再構築するプロセスこそが、二度目の結婚生活の質を向上させます。
再婚後の手続きと子どもの戸籍・氏名(法的手続き編)
同じ相手と再婚する場合、婚姻届を提出すれば結婚手続は終了ですが、子どもがいる場合は、戸籍と氏名に関して追加の手続きが必要となります。
手続きに関する疑問を解消し、円滑に再婚後の生活に移行しましょう。
(1)再婚後の子どもの氏(名字)を元夫の氏に変更する手続きの流れ
離婚時に親権者であった母親が旧姓に戻り、子どもも母親の旧姓になった場合、母親が同じ相手と再婚して相手の氏になったからといって、子どもの氏が自動的に夫と同じ氏になるわけではありません。子どもは、母親の戸籍に残されるからです。
この場合、市区町村の担当窓口で、戸籍法に基づく入籍届を提出する必要があります。
ただ、裁判所の許可までは必要ありません。
民法791条1項により、子が父と氏を異にする場合は、原則として、氏を父と同じに変更するは裁判所の許可が必要です。しかし、同条2項により、母が結婚して氏が変わったことにより、子と父母の氏が異なるときには、父母が婚姻中であれば、裁判所の許可不要で、届出により子の氏の変更が可能となるからです。
(子の氏の変更)
引用:民法791条|e-gov
第七百九十一条 子が父又は母と氏を異にする場合には、子は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父又は母の氏を称することができる。
2 父又は母が氏を改めたことにより子が父母と氏を異にする場合には、子は、父母の婚姻中に限り、前項の許可を得ないで、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その父母の氏を称することができる。
3 子が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、前二項の行為をすることができる。
4 前三項の規定により氏を改めた未成年の子は、成年に達した時から一年以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、従前の氏に復することができる。
なお、母が離婚後も婚姻時の氏をそのまま名乗っていたとしても、子が母親の戸籍に入っている場合には、再婚して母が父の戸籍に入る場合、子の入籍届が必要です。表面的には父母と子は同じ氏でも、離婚後は母子と父は別々の戸籍になりますので、子の入籍届を提出しないと、子は母親の戸籍に残されることになるためです。
(2)婚姻届提出時におけるその他の注意点
同じ相手との再婚であっても、提出する婚姻届の様式自体は一般的なものと同じです。
一度経験があるとはいえ、婚姻届提出の際には、届出には事実を正確に記載し、届出人の本人確認書類や戸籍謄本(本籍地以外に提出する場合)など、必要書類を事前に確認しておく必要があります。
将来のリスクヘッジ
再婚は、将来の財産管理や相続権に大きな影響を及ぼします。
特に再婚後の万が一の事態に備え、リスクを最小限に抑えるために備えが必要です。
(1)再婚による相続権の発生
再婚によって、元配偶者は再びあなたの法的な配偶者としての地位を得ますので、あなたが亡くなった場合、相続権を持つことになります。
離婚してから再婚までにあなたが得た財産は、再度離婚しても、財産分与の対象とはならない固有財産として認められます。ただし、再婚期間中に築いた財産と混ざってしまうと、全体として固有財産性が認められないリスクがあります。
再婚後の家計は、独身期間中に得た財産と分離するために、給与振込口座を分ける、家計に利用する口座を新しく解決するなどの対策をとるとよいでしょう。
(2)万が一の再離婚に備える「婚前契約」のすすめ
再度の離婚という最悪の事態を避けるためのリスクヘッジとして、婚前契約の作成を検討するのも一案です。
婚前契約とは、結婚前の財産関係の明確化や、万が一の離婚時の財産分与、慰謝料などのルールを事前に合意しておくための法的文書です。感情的なもつれを避け、事前にルールを定めることは、二度目の失敗を防ぐ上で有効な手段となりえます。
婚前契約に記載できる内容など、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【まとめ】同じ相手との再婚は、法律上は制限なし|再失敗しないよう慎重に検討を
同じ相手との再婚は、日本法上何回でも可能で、手続は容易です。
しかし、幸せな再婚を成功させるための真の鍵は、「二度目の失敗を避ける」ためにどれだけ準備し、対策を講じたかという点にあるといえます。
一時的な感情や孤独感に流されることなく、DVや浮気、金銭問題など前回の離婚原因が根本的に解決されているか、お互いに精神的・経済的に自立した上で歩み寄れるかなどを冷静に見極めることが重要です。
























