交通事故により脳や脊髄が損傷した場合、身体に麻痺の症状が残ることがあります。麻痺については、後遺障害認定を受けることにより、加害者に対して後遺症についての損害賠償を請求することができます。
交通事故により麻痺が残った場合、どのくらいの後遺障害等級が認定されるのでしょうか?
交通事故により麻痺が残った場合には、麻痺の範囲や程度に応じて重度の場合には1級、軽度の場合には14級の後遺障害等級が認定される可能性があります。
後遺障害等級認定の申請をする前に、どういった症状があれば後遺障害等級が認定されるのか、どのくらいの後遺障害等級が認定されるのかを知っておきましょう。
この記事を読んでわかること
- 交通事故による麻痺の症状
- 麻痺の後遺障害等級認定

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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交通事故で麻痺が起こる原因となる損傷と症状
交通事故による麻痺の症状の原因は、大きく分けて、「1.脊髄損傷」「2.外傷性脳損傷」「3.末梢神経障害」の3つです。
(1)脊髄損傷
脊髄は、小脳から、頸椎、胸椎、腰椎からなる脊柱管を通っている中枢神経です。小脳と体の部分をつないで信号を伝達する回路の役割をはたしています。
したがって、頸椎部の損傷を受けた場合には頸椎損傷、胸椎部の損傷を受けた場合には胸椎損傷と呼ばれますが、これらも脊髄損傷の類に含まれます。
交通事故により生じた、脊椎の骨折や脱臼、事故の衝撃による脊髄断裂などが原因で、脊髄損傷が生じます。そして、脊髄が損傷し、脳からの信号を身体に伝達できなくなった結果、身体に麻痺が生じることになります。
脊髄損傷には、完全損傷と不完全損傷があります。
(1-1)完全損傷とは?
脊髄が断裂する完全損傷は、損傷部以下の体躯が完全に動かなくなり、重篤な麻痺が生じます。
麻痺が表れる身体の部位は、脊柱が断裂した箇所によって異なります。
脊柱は脳に近い方から頸椎、胸椎、腰椎、仙椎、尾椎に分かれていて、どこを損傷したかで麻痺が残る身体部位が異なります。
例えば、脊髄の上位(脳に非常に近い頸椎)で完全損傷となると、意識があっても呼吸麻痺や四肢麻痺が生じ、人工呼吸が必要となることがあります。脊髄の下位で完全損傷(胸椎や腰椎など)となると、両上肢と両下肢、四肢の麻痺が生じることがあります。麻痺した部位に感覚はありませんので、触ってもそれを感じ取ることはできません。
脊髄の完全損傷の場合、再生はほぼ不可能で、麻痺した身体部分の機能の大幅な回復は期待できず、後遺障害の認定を目指すことになります。
治療は主にリハビリテーションとなりますが、これは麻痺した部分の身体機能の回復を目的とするものではなく、残存した身体機能を鍛えて、失った身体機能を補うことを主たる目的としています。
(1-2)不完全損傷とは?
脊髄の一部が損傷する不完全損傷は、脳から信号を伝達される機能が完全には失われていない状態をいいます。
例えば、損傷部位以下の身体機能が無くなって動かせないけれども、感覚知覚機能は残っていて、触られるとそれを感じることができたりします。
不完全損傷の場合、完全損傷とは異なり、リハビリによって身体的機能が回復し、ある程度動かせる可能性があるとされています。
(2)外傷性脳損傷
交通事故により頭に強い衝撃を受け、頭蓋骨が骨折したり脳が出血したりして、脳が損傷を受けることを外傷性脳損傷といいます。
損傷した脳の部位によって、症状は異なります。
性格の変化や失語などの症状が生じることもありますし、半身麻痺など身体に麻痺が生じることもあります。
(3)末梢神経障害
人の神経には、大きく分けて中枢神経と末梢神経の2つがあります。
末梢神経とは、脳や脊髄から出て感覚器官や筋肉、皮膚などを走る神経です。脳からの命令を、体の各部位に伝え、感覚信号を中枢神経に戻す役割をします。
末梢神経には、大きく分けて、次の3つがあります。
- 運動神経:全身の筋肉を動かし運動を行う神経
- 感覚神経:痛みや感触などを感じる神経
- 自律神経:呼吸や血液の循環など、体の無意識の活動を調整する神経
交通事故によるケガで末梢神経に損傷を受けると、皮膚の感覚麻痺や手足の運動障害、慢性的な疼痛(とうつう)などが生じることがあります。
後遺障害認定に関わる交通事故の麻痺の範囲と程度
交通事故により麻痺が生じた場合、麻痺の範囲とその程度を考慮して後遺障害等級を認定することになります。
(1)麻痺の範囲と程度
後遺障害等級認定の際に考慮される麻痺の範囲の程度については、次の表のとおりです。
なお、脳の損傷による麻痺については、四肢麻痺、片麻痺又は単麻痺が生じ、通常対麻痺が生じることはないとされています。
麻痺の範囲 | |
---|---|
四肢麻痺 | 両側の四肢すべての麻痺 |
片麻痺 | 片側の上下肢の麻痺 |
単麻痺 | 上肢又は下肢の一肢のみの麻痺 |
対麻痺 | 両下肢又は両上肢の麻痺 |
麻痺の程度 | |
---|---|
高度 | 傷害のある上肢又は下肢の運動性・支持性がほとんど失われ、基本動作(歩行や立位、物を持ち上げて移動させるなど)ができないもの |
中等度 | 傷害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が相当程度失われ、基本動作にかなりの制限があるもの |
軽度 | 傷害のある上肢又は下肢の運動性・支持性が多少失われており、基本動作を行う際の巧緻性及び速度が相当程度損なわれているもの |
(2)交通事故による麻痺で認められる後遺障害の等級
交通事故により麻痺の症状が残存した場合には、後遺障害等級の認定を受けることになります。ここでは、具体的にどのような麻痺がどの等級に認定されるのかについて説明します。
(2-1)第1級1号(別表第1)
1級1号は、「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」が認定されます。
生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、常に他人の介護を要する場合を指します。
具体的には次のとおりです。
脊髄損傷の場合 |
|
外傷性脳損傷の場合 |
|
(2-2)第2級1号(別表第1)
2級1号は「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの」が認定されます。
生命維持に必要な身の回りの処理の動作について、随時他人の介護を要する場合を指します。
具体的には次のとおりです。
脊髄損傷の場合 |
|
外傷性脳損傷の場合 |
|
(2-3)第3級3号
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの」は、3級3号に認定されます。
これは、生命維持に必要な身の回りの所作の動作は可能であるが、労務に服することができないものを指します。
具体的には次のとおりです。
脊髄損傷の場合 |
|
外傷性脳損傷の場合 |
|
(2-4)第5級2号
「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」は5級2号に認定されます。
具体的には次のとおりです。
脊髄損傷の場合 |
|
外傷性脳損傷の場合 |
|
(2-5)第7級4号
「神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの」は7級4号に認定されます。
具体的には次のとおりです。
脊髄損傷の場合 | 一下肢(片足)の中等度の単麻痺 |
外傷性脳損傷の場合 | 軽度の片麻痺、中等度の単麻痺 |
(2-6)第9級10号
「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」は9級10号に認定されます。これは、通常の労務に服することはできるが、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるものを指します。
具体的には次のとおりです。
脊髄損傷の場合 | 一下肢(片足)の軽度の単麻痺 |
外傷性脳損傷の場合 | 軽度の単麻痺 |
(2-7)第12級13号
「局部に頑固な神経症状を残すもの」は、12級13号に認定されます。
これは、通常の労務に服することはできるが、多少の障害を残すものを指します。
具体的には次のとおりです。
脊髄損傷の場合 |
|
外傷性脳損傷の場合 |
|
(2-8)第14級9号
「局部に神経症状を残すもの」は14級9号に認定されます。
これは、身体の一部に神経症状を残し、医学的に説明可能なものを指します。
なお、身体の一部に神経症状を残し、自覚的所見の他に他覚的所見がある場合(客観的な資料に基づく医師の診断がある場合)については第12級13号に認定される可能性があります。
末梢神経障害の場合には第12級13号または第14級9号に認定される可能性が高いといえます。第12級13号と第14級9号の違いについてさらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
交通事故による麻痺の後遺障害慰謝料の相場

次に、交通事故により麻痺の後遺障害が残った場合に受け取れる後遺障害慰謝料の相場について見ていきましょう。
まず前提として、慰謝料の相場を知るために、慰謝料の金額を決める3つの基準を知っておく必要があります。次の3つの基準のうち、どの基準を使うかによって慰謝料の金額が大きく変わってきます。
算定基準 | 概要 |
---|---|
自賠責の基準 | 自動車保有者が加入を義務付けられている「自賠責保険」で採用されている基準です。 自賠責の基準は被害者への最低限の補償を目的として設けられているので、慰謝料の基準額は基本的に3つの算定基準のうち最も低くなります(※)。 |
任意保険の基準 | 各保険会社が独自に設定している算定基準です。 加害者側の任意保険会社は、通常は任意保険の基準をもとにして慰謝料を提示してきます。基準額は一般に公開されていませんが、自賠責の基準と同程度か、やや高い程度であることが多いです。 |
弁護士の基準 | 過去の裁判例をもとに設定された基準です。弁護士に示談交渉を依頼した場合などに使われる算定基準です。 弁護士の基準による慰謝料金額(目安)は3つの算定基準のうちでは基本的に最も高額となります。 |
※ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、被害者側にも一定程度の過失が認められる場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。
ご紹介した3つの基準で定められている金額(目安)を比べると、次のようになることが一般的です。

後遺障害慰謝料について自賠責の基準と弁護士の基準の相場は次のとおりになります。

自賠責の基準と弁護士の基準どちらの基準を使うかによって後遺障害慰謝料の金額が大きく変わることがわかります。
弁護士の基準を使うには弁護士へ依頼することをおすすめします。
被害者本人が加害者側の保険会社と示談交渉すると、加害者側の保険会社は自賠責の基準や任意保険の基準による低い慰謝料額を提示してくるのが通常です。
これに対し、弁護士が被害者本人に代わって示談交渉や裁判を行う場合は、基本的に最も高額となる弁護士の基準を使いますので、弁護士の基準に近い金額での示談が期待できます。

交通事故の麻痺で後遺障害等級認定されるためのポイント
交通事故が原因で麻痺の症状が残り、後遺障害等級認定の申請をする際には、自身の症状について適切な後遺障害等級が認定されるために、準備が必要です。
等級が一つ違うと、受け取ることのできる損害賠償の額も変わってきますし、麻痺の程度が重ければ重いほどこの差異は大きくなります(等級が一つ違うと、何百万~数千万円の差になることもあります)。
したがって、後遺障害等級認定を受ける際には、適切な等級の認定を受けるために、積極的に必要な資料を揃えるという姿勢が重要です。
(1)専門医の診断を受ける
事故直後に、専門医の診察を受け、必要な検査(MRIやCTなど)を受けるようにします。
認定を受けるためには、基本的に麻痺の原因となっている損傷について、画像で確認できることが必要です。また、麻痺の範囲や程度を把握するための必要な神経学的検査も受けるようにします。
事故当初診察を受けた医師から紹介を受けたり、転院することもできますので、自身の症状に応じた適切な専門医の診断を受けられるようにしましょう。
後遺障害等級の認定のためには、自覚症状が、受傷直後から一貫・継続して存在することが必要ですので、「毎回言わなくてもわかるだろう」「勘違いかもしれない」と思ったりせず、具体的な症状を診察の度にしっかり伝えることが重要です。
(2)弁護士に依頼する
後遺障害等級認定申請や、損害賠償を請求する際には、法的な知識も必要になってきますので、後遺障害認定申請は弁護士に依頼することをお勧めします。
医師は病やケガを治す専門家ですが、後遺障害等級認定は、交通事故実務における法的な評価ですので、精通しているとは限りません。
後遺障害等級認定申請をする際には、医師に記載してもらった後遺障害診断書の提出が必要ですが、医師によっては後遺障害診断書の記載に慣れていない場合もあります。
麻痺が残ると分かったら、比較的早い段階で弁護士に相談し、対応を依頼することをお勧めします。
【まとめ】交通事故による麻痺は症状の程度・範囲で後遺障害等級が決まる
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 交通事故による麻痺は、脊髄損傷と外傷性脳損傷、末梢神経障害が主な原因
- 麻痺の範囲及び程度に応じて、重度の場合は1級・軽度の場合は14級に認定される可能性がある
- 適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、等級に認定される要件を把握して積極的に資料を準備する
麻痺について、後遺障害等級認定手続や損害賠償請求でお困りの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
交通事故の被害による賠償金請求をアディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、弁護士費用をあらかじめご用意いただく必要はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様にあらかじめご用意いただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。
弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各法律事務所へご確認ください。
(以上につき、2023年10月時点)
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