「子の親が病気や離婚などで不在になり、孫の世話を全面的に行っている」「将来のために、私(祖父母)が孫の親権者になりたいけれど、それは可能なのだろうか?」
様々な事情から孫を育てている祖父母にとって、「親権」は孫の未来を守るために重要な問題です。しかし、法律上、祖父母が孫の親権者になることは原則として認められていません。親権はあくまで親に与えられる権利だからです。
ただし、例外的な方法を使えば、祖父母でも孫の親権者になることは可能です。また、親権者に近い立場で孫を育てる法的な権利を得ることもできます。
ここを押さえればOK!
・監護者指定や未成年後見人について
親権とは
親権とは、未成年の子を育て、財産を管理し、子どもの法律行為を代理する権利のことです。
親権は「権利」という呼び方がされていますが、社会的に未熟な子どもを保護して、子どもの精神的・肉体的な成長を図っていかなければならない親の「義務」という側面が強いものです。
ここでは、親権があるとできることと親権者になれる条件について説明します。
(1)親権があるとできること
親権があるとできることは、法律上、主に次の2つに分けられます。
- 子どもの監護・教育や身分行為の代理など:身上監護権
- 子どもの財産管理:財産管理権
それぞれ説明します。
(1-1)子どもの監護・教育や身分行為の代理など:身上監護権
身上監護権とは、子どもの心身の健全な発達のために監護・教育を行ったり、身分行為の代理をしたりして、社会的に未熟な立場にある子どもを守ることです。
例えば、親には身上監護権を行使するにあたって、次のような権利があります。
- 身分行為の同意権・代理権(民法775条、787条、804条など)
例:未成年の子が養子縁組をする際や、身分に関する訴え・請求を行うには、親権者の同意・代理が必要です。 - 居所指定権:親が子供の住居を指定する権利(民法822条)
- 職業許可権:子どもが職業を営むにあたって親が職業を許可する権利(民法823条)
(1-2)子どもの財産管理:財産管理権
財産管理権とは、子どもの財産を親権者が管理することです。
社会的に未熟な子どもが財産を自分で管理することは難しいため、親権者が代理人として管理を行います。
そこで、法律行為(例:部屋を賃貸で借りるなど)を子供が行う場合には親の同意が必要とされています。
(2)親権者になれる条件
原則として親権者は父母に限られることになります。
そのため、祖父母は原則として親権者になることができません。
そもそも、子の父母が婚姻中の間は、父母双方に親権があるとされます(民法818条2項)。
そして、父母が離婚する場合には、2026年4月施行の改正民法により、父母双方の「共同親権」とするか、どちらか一方の「単独親権」とするかを協議や裁判で定めることになりました(民法819条)。
いずれの形であっても、原則として親権は父母に帰属するため、ただちに祖父母が親権者になることはできません。
祖父母が親権者になるには
祖父母が孫の親権者となるには「養子縁組」という方法があります。
養子である子に対しては、養親が親権を持つことになります(民法818条3項)。
養子縁組は、祖父母または孫の本籍地か住所地を管轄する市区町村役場に対して、養子縁組届や必要書類を提出することで行います。
ただし、養子として迎える孫が「未成年者」である場合には祖父母双方との養子縁組が必要となります。また、場合によっては、現親権者や現監護権者の承諾が必要となります。
(1)祖父母双方との養子縁組が必要
孫が未成年の場合は祖父母のどちらかではなく、祖父母双方との養子縁組を行う必要があります(民法795条)。
なお、2022年4月1日から18歳が成人とされます。18歳が成人となることで変わること・変わらないことについてはこちらの記事をご覧ください。
(2)現親権者の承諾が必要なケース
さらに、未成年の孫が15歳未満の場合は現親権者である父または母の承諾が必要になります(民法797条1項)。つまり、15歳未満の孫自身が養子になりたいと願っても、親権者である親が承諾しなければ祖父母は孫を養子にすることができません。
(3)現監護者の承諾が必要なケース
また、15歳未満の孫に、親権者とは別に「監護者」がいる場合は現親権者である父または母の承諾に加えて現監護者の承諾も必要になります(民法797条2項)。
<コラム>監護者は親権者とは違う!?監護者って何?
監護者とは「監護権」を持つ者のことで、子どもと生活を共にして身の回りの世話をする者のことです。
親権は、これまで説明した通り、「身上監護権」と「財産管理権」に分類することができます。ただし、離婚の際に身上監護権のみを分離して「親権者」と「監護者」に分けることも可能であるため、親権者とは別に「監護者」がいる場合もあるのです。
祖父母が子の親権者に近い立場になるには
祖父母が子の親権者に近い立場になるには、「養子縁組」以外にも次のような制度を利用することができます。
- 監護者になる
- 未成年後見人になる
- 親権を代行する
それぞれ説明します。
(1)監護者になる
祖父母に「親権」が認められないとしても、孫を養育することが目的なのであれば監護者になることができます。監護者になると、法的に孫を育てる権利が認められます。
家庭裁判所にて監護者指定を受けることで監護権の取得ができます。
家庭裁判所に監護者指定の調停(または審判)の申立てを行なえるのは、原則、父母に限定されていますが、例えば虐待があるなど子の利益の観点から相応の事情がある場合は祖父母からの申立てもできます。
(2)未成年後見人になる
孫に親権者が存在しない場合は、家庭裁判所で未成年後見人に指定されることで親権とほぼ同等の権利を行使することができます。
一方、現親権者が存在する場合は、親の親権を制限する手続き(親権喪失や親権停止)が必要になります。
親権を完全に奪う「親権喪失」は非常に強力な措置であり、認められるハードルが高いのが現実です。しかし、現在は最長2年間親権を止める「親権停止」という制度もあります。親による育児放棄など、孫の利益を著しく害する事情がある場合、家庭裁判所に親権停止を申し立てて未成年後見人に就任し、孫を保護するという選択肢も検討できます。
そのため、親権を喪失する手続きを申立てる場合には、慎重な検討が必要です。
なお、未成年後見人に指定された場合は、家庭裁判所にきちんと後見ができているのかを定期的に報告する必要があります。例えば、財産目録や年間収支予定表の定期的な提出の義務を負います。
(3)(親が未成年の場合)親権を代行する
祖父母にとっての娘さんに子供(祖父母にとって孫に当たります)がいるが、娘さんが未成年である場合には、その娘さんの親権者である祖父母が、孫に対する親権を代行することになります(民法833条:子に代わる親権の行使)。
なお、以前は婚姻によって親が未成年者である場合にも成年としてみなす制度がありました。しかし、2022年4月1日からは、民法改正によって1.成年年齢が18歳に引き下げられたこと、2.女性の婚姻開始年齢が18歳に引き上げられたことから、18歳未満の未成年者は婚姻ができなくなりました(未成年者を成年としてみなす必要はなくなりました)。
【2026年4月】祖父母と孫が会うためのルールができました
離婚後も「祖父母」など両親以外の親族と子どもが会うためのルールも新しくできました。2026年4月の民法改正により、子どものために特に必要があるといった場合は、家庭裁判所は離婚後の父母以外の親族との交流について定められるようになりました。
家庭裁判所への申立てを行うのは、原則として父母ですが、父母が死亡した場合などのときは、祖父母、兄弟姉妹、それ以外で過去にこどもを監護していた親族などが、自ら家庭裁判所に申立てをすることができるようになります。
【まとめ】養子縁組で祖父母も孫の親権者になれる!
親権問題は、家族内の問題でもあり、気軽に他人に相談できないデリケートな問題です。なかなか相談する相手も見つからず、ご苦労も多いことでしょう。
守秘義務がある弁護士に相談することで、心の荷が軽くなるかも知れません。
親権問題についてお困りの方、これまで説明した制度を利用したいが、どういった手続きが必要かわからないという方は、親権問題を取り扱う弁護士への相談がおすすめです。


























