交通事故の被害に遭った際、加害者の保険会社から送られてくる『同意書』に「サインしても大丈夫だろうか」と不安を感じる方もいるかもしれません。
この同意書は、主に「一括対応のための同意書」と「個人情報を取得することの同意書」の2種類があり、それぞれ異なる意味合いを持っています。
本コラムでは、これら2種類の同意書の内容について詳しく解説します。特に、任意保険会社が被害者の代わりに治療費を病院に直接支払う「一括対応」の仕組みや、個人情報に関する同意書の中でも注意が必要な「医療照会・医療調査のための同意」が持つリスクについて掘り下げていきます。
同意書にサインする・しないにかかわらず、不利益を被らないために知っておくべき対処法についてもご紹介します。
この記事を読んでわかること
- 任意保険会社による「一括対応」とは、被害者に代わって治療費を病院に直接支払うサービスであり、この同意書にサインすることは基本的に被害者にとって不利益はない。
- 「個人情報取得の同意書」の中でも、医療調査・医療照会への同意は、保険会社が治療費の支払いを打ち切るための判断材料にされる可能性があるため、そのリスクを理解し、打ち切りを打診された場合の対処法を知っておくことが重要である。
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保険会社が求める『同意書』とは?
交通事故の被害にあってすぐの頃に加害者の保険会社から送られてくる『同意書』には、主に次の2つがあります。
- 「一括対応』のための同意書
- 個人情報を取得することの同意書
※別々の書面になっていることもあれば1枚の同意書でまとめてあるものもあります。
(1)『一括対応』のための同意書とは
交通事故の被害にあった際、本来は、治療のための費用は被害者自身が支払った上で、後から加害者や加害者の保険会社(自賠責保険会社+自賠責の負担を超える分は任意保険会社)に損害として請求することになります。
ですが、それでは被害者が治療費の支払の負担を一時的に負わされることになりますし、最終的に保険会社に請求できるとしても手間がかかります。
そこで、交通事故の加害者が自賠責保険に加えて任意保険に加入している場合、通常は、被害者の治療費は任意保険会社が直接病院に支払います。その上で、自賠責保険の負担分を任意保険会社から自賠責保険会社に請求することが多いです。
このように加害者の任意保険会社が病院に直接治療費を支払い続ける限り、被害者は一時的にでも治療費を負担せずに済みます。
これを任意保険会社による『一括対応』と言います。
一括対応は、被害者の負担を軽くするために、任意保険会社が行っているサービスの1つです。
一括対応に同意するということは、基本的には次の行為を任意保険会社に任せるということになります。
- 病院に対する治療費の支払
- 自賠責保険会社に対する自賠責負担分の請求
- 後遺障害等級認定の申請 など
一括対応のための同意書にサインをすると、当面の治療費の支払を自分でする必要がありません。
ですから、任意保険会社が治療費の支払のために同意書を求めてくる場合、同意書にサインをすることを特に断るべき理由はないでしょう。
一括対応をしてもらえないこともあるんですか?
その場合は、どうしたら良いのでしょう。
被害者側の過失が大きい場合には、任意保険会社が一括対応をしないケースもあります。
その場合には、ご自身で治療費を支払って治療をした上で、加害者の自賠責保険会社に対して「被害者請求」をして治療費を請求しなければいけません。健康保険を使える場合は、健康保険を使うとよいでしょう。
一括対応による治療費の支払を同意したからと言って、後々の示談に不利になるということはありません。
(2)個人情報を取得することの同意書とは
ここまで「一括対応のための同意書」についてご説明してきましたが、「個人情報を取得することの同意書」、というものもあります。
次に「個人情報を取得することの同意書」ついてご説明します。
任意保険会社は、一括対応により被害者に代わって病院に治療費を支払う際、被害者の診断書や診療報酬明細書を確認しなければいけません。
ですが、診断書や診療報酬明細書は被害者の個人情報に関わるものですので、病院から開示を受けるにあたり、被害者の同意が必要になるのです。
診断書や診療報酬明細書を取得するための同意書については、一括対応による治療費の支払のための必要な書面ですので、特段同意をしても不利益はありません。
問題は、個人情報を取得するための同意書が、診断書や診療報酬明細書などを超えて、「医療照会・医療調査のための同意」を求めている場合です。
医療照会・医療調査とは、被害者の治療内容・治療経過・具体的症状などを知るために、保険会社が医師と面談の上で確認をしたり、カルテや検査画像などの資料の提出を求めたりすることです。
これに同意すると、任意保険会社が直接病院に問い合わせして被害者の症状などを確認することができるようになります。
何のためにそんなことをするんですか?
主に、一括対応による治療費の支払を続けるのか、打ち切るのか判断するためです。
そもそも、交通事故の被害者が加害者やその保険会社に請求できる『治療費』は、いつまでも支払ってもらえるわけではありません。
基本的には、治療によりけがが完治した場合には完治まで、後遺症が残ってしまった場合には症状固定時までに限られます。

症状固定とは何ですか?
交通事故のけがが完治せずに後遺症が残ってしまった場合に、それ以上治療を継続しても効果がなく、回復は見込めない状態のことです。
基本的には、任意保険会社は「症状固定」と判断すると、一括対応による治療費の支払を打ち切ります。
ですから、医療照会・医療調査のための同意書にサインをすると、任意保険会社は治療内容や症状等を調査した上で「『症状固定』と考えますので、治療費の支払を打ち切ります」と言えるようになるのです。
もちろん、本当に症状固定に至っており、それ以上治療を継続しても効果が見込めないのであれば治療を終了し、後は後遺障害等級認定を受けるかどうかという話になります。しかし、医師と任意保険会社の言い分が食い違うことも少なくありません。
任意保険会社としては、症状固定時期が早まれば支払うべき治療費が抑えられますので、症状固定を早めたいという心理があることは否定できません。
任意保険会社が治療費の支払を打ち切ったとしても、治療の必要性が認められれば通院・治療を継続して後からその治療費を加害者側に請求することは可能です。
ただし、その場合には、いったんは自分で治療費を支払わなくてはいけませんので、金銭的な負担がかかります。また、自分で支払った治療費を、後に加害者側から回収できるとも限りません。
加害者側としては、打ち切り後の治療について「必要性がなかった」などと主張して支払いを拒む可能性があります。
それでは、医療照会・医療調査に対する同意を求める同意書にはサインをしない方が良いのでしょうか。
同意書を提出しない場合、やはり治療費の支払を打ち切られてしまう可能性があります。
一括対応は任意保険会社のサービスなので、一括対応をするかしないか、するとしてもいつまで治療費を支払うかは、あくまでも任意保険会社の判断になるのです。
ですから、ここで大切なのは同意書にサインをするかしないかということではなく、同意書にサインをした時のリスクを知ったうえで、任意保険会社が治療費の支払の打切りを打診したらどうすべきか知っておくことなのです。
治療費の打ち切りを打診された場合の対処法
任意保険会社から治療費の打切りを打診された場合は、まずは医師と治療継続の必要性があるかないか、しっかりと話をすることが大切です。
客観的な状況からみて(医師の見解等を参考にします)、治療の継続の必要性がある場合には保険会社にそのことを伝え、治療費の支払の継続を求めましょう。
また、ご自身で任意保険会社と対応することが難しければ、弁護士に治療費の支払を延長するよう交渉を依頼することをお勧めします。
他方、客観的な状況からみて(医師の見解等を参考にします)治療継続の必要性がない場合には、治療を終了して後遺障害等級認定の申請を検討すべきです。
後遺障害等級認定とは何ですか?
交通事故によるけがのせいで、症状固定に至った時に残った症状を、「後遺障害」として認めてもらう手続きです。後遺障害等級認定を受けると、基本的に後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できるようになります。
【まとめ】一括対応による治療費の支払のための同意書であれば、サインをしても特段不利益はない
交通事故の被害に遭った際に保険会社から求められる同意書には、主に「一括対応」のためのものと「個人情報取得」のためのものがあります。
治療費の支払いを任意保険会社に任せる一括対応は被害者の負担軽減となるサービスであり、そのための同意書へのサインは基本的に問題ありません。一方、個人情報取得の同意書の中でも、治療内容や症状を調査する「医療照会・医療調査」への同意は、治療費の支払いを打ち切る判断材料にされるリスクがあるため、そのリスクを理解しておくことが重要です。
治療費の打ち切りを打診された際には、医師との相談や、弁護士への交渉依頼を検討しましょう。
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