交通事故で後遺症が残った場合、「後遺障害等級」の認定を受けることで、後遺症慰謝料を受けとれる可能性があります。
後遺障害等級とは、後遺症の内容によって振り分けられている等級で、1~14級があります(1級の症状がもっとも重く、症状が軽くなるに従って2級、3級……と等級が下がっていきます)。
交通事故で腕や肩、手首の関節が曲がらなくなった場合には、次の後遺障害等級に応じた後遺症慰謝料が受けとれる可能性があります(弁護士の基準による金額)。
- 後遺障害1級:2800万円
- 後遺障害5級:1400万円
- 後遺障害6級:1180万円
- 後遺障害8級:830万円
- 後遺障害10級:550万円
- 後遺障害12級:290万円
ただ、適切な金額の慰謝料を受けとるためには、被害者側が後遺障害の認定基準や慰謝料の相場についてきちんと理解していることが必要となります。
この記事では、次のことについて弁護士がくわしく解説します。
- 腕・肩・手首の関節が曲がらない場合の後遺障害慰謝料の相場
- 腕・肩・手首の関節が曲がらない場合の後遺障害等級の認定基準
- 後遺障害等級認定を受けるための3つのポイント

東京大学法学部卒。アディーレ法律事務所では北千住支店の支店長として、交通事故、債務整理など、累計数千件の法律相談を対応した後、2024年より交通部門の統括者。法律を文字通りに使いこなすだけでなく、お客様ひとりひとりにベストな方法を提示することがモットー。第一東京弁護士会所属。
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腕・肩・手首の関節が曲がらない場合に受けとれる可能性のある後遺症慰謝料の相場とは

まず、腕・肩・手首の関節が曲がらない場合に受けとれる可能性のある後遺症慰謝料の相場について見ていきましょう。
後遺症慰謝料の相場を知るには、まず、後遺症慰謝料の相場を決める3つの基準を知っておく必要があります。
なぜなら、どの基準を使うかで、大きく金額が変わってくるからです。
後遺症慰謝料の金額(相場)を決める基準は次の3つです。
- 自賠責の基準:自動車保有者が加入を義務付けられている「自賠責保険」で採用されている基準
- 任意保険の基準:各保険会社が独自に設定している非公開の算定基準
- 弁護士の基準:弁護士に示談交渉を依頼した場合などに使われる過去の裁判例を参考にした算定基準
3つの基準を金額の小さい順に並べると、一般的に次のようになります。

※ただし、自賠責保険金額は、交通事故の70%未満の過失については減額対象にしませんので、過失割合が大きい場合には、自賠責の基準がもっとも高額となることもあります。
腕・肩・手首の関節が曲がらないことが後遺障害と認定された場合の後遺症慰謝料(相場)を、自賠責基準と弁護士基準で比べてみると、下の表のようになります。
等級 | 自賠責の基準(※) | 弁護士の基準 |
---|---|---|
1級4号 | 1150万円 | 2800万円 |
5級6号 | 618万円 | 1400万円 |
6級6号 | 512万円 | 1180万円 |
8級6号 | 331万円 | 830万円 |
10級10号 | 190万円 | 550万円 |
12級6号 | 94万円 | 290万円 |
この表のとおり、保険会社が提示する金額よりも弁護士の基準の方が高額になりやすい傾向にあります。
弁護士の基準を使うには弁護士へ依頼することがおすすめです。
被害者本人が加害者側の保険会社と示談交渉しても、加害者側の保険会社が弁護士の基準による増額に応じてくれることはなかなかありません。
これに対し、弁護士が被害者本人に代わって示談交渉を行う場合には、訴訟も辞さない姿勢で交渉に臨むため、加害者側の保険会社も弁護士の基準もしくはそれに近い金額での示談に応じることが期待できます。
腕・肩・手首の関節が曲がらない場合に認定される可能性がある後遺障害等級とその認定基準
腕・肩・手首の関節が曲がらない場合に認定される可能性のある後遺障害等級は、次のとおりです。
等級 | 認定基準 |
1級4号 | 両上肢の用を全廃したもの |
左右両方の「上肢の用を全廃したもの」のことです。 「上肢の用を全廃したもの」とは、肩関節・ひじ関節・手首の関節のすべてが強直(※1)し、かつ、手指の全部の用を廃したもの(※2)をいいます。 (※1) 強直:関節が完全に動かない、またはそれに近い状態 (※2) 手指の用を廃したもの:手指の末節骨の半分以上を失い、または中手指節関節もしくは近位指節間関節(親指では指節間関節)に著しい運動障害の残すもの | |
5級6号 | 1上肢の用を全廃したもの |
左右どちらかの「上肢の用を全廃したもの」のことです。 「上肢の用を全廃したもの」の意味は1級の場合と同じです。 | |
6級6号 | 1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
左右どちらかの肩関節・ひじ関節・手首の関節のうち2つの「関節の用を廃したもの」のことです。 「関節の用を廃したもの」とは、次のいずれかに当てはまるものをいいます。 ア 関節が強直したもの イ 関節の完全弛緩性麻痺(※1)またはこれに近い状態(※2)にあるもの (※1)完全弛緩性麻痺:体を動かそうとしても筋肉を動かせず、常にだらんとした状態 (※2)これに近い状態:外から力を加えると動くものの、自力では関節の可動域が健側(=正常な側)の可動域角度の10%程度以下となったもの ウ 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの | |
8級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
左右どちらかの肩関節・ひじ関節・手首の関節のうち1つの「関節の用を廃したもの」のことです。 「関節の用を廃したもの」の意味は6級の場合と同じです。 | |
10級10号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
左右どちらかの肩関節・ひじ関節・手首の関節のうち1つの「関節に著しい障害を残すもの」のことです。 「関節に著しい障害を残すもの」とは、次のいずれかに当てはまるものをいいます。 ア 関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているもの イ 人工関節・人工骨頭を挿入置換した関節のうち、その可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されていないもの | |
12級6号 | 1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
左右どちらかの肩関節・ひじ関節・手首の関節のうち1つの「関節の機能に障害を残すもの」のことです。 「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健側の可動域角度の4分の3以下に制限されているもののことをいいます。 |
ただし、腕・肩・手首の関節が曲がらない場合に上記の後遺障害認定を受けるためには、原則として、画像などにより、上肢の器質的な損傷(骨折、脱臼や神経の損傷など)が原因となり、関節などへの影響が認められることが必要です。
なお、上腕神経叢(腕から手の部分の5つの神経が集まっている部分)が完全麻痺状態(全く動かない状態)にある場合も「上肢の用を全廃したもの」に含まれます。
腕・肩・手首の関節が曲がらない場合に必要とされる検査とは
腕・肩・手首の関節が曲がらない場合、後遺障害等級の認定を受けるためには、関節がどれくらい曲がるのか(関節の可動域)について検査する必要があります。
関節の機能障害の検査は、関節の可動域を測定し、健側(=正常な側)の可動域または参考可動域の角度と比較することによって評価します。
原則として、他動運動(=医師が外部から力を加えて動かす)により測定します。ただ、他動運動による測定が適切でないものについては、自動運動(=自力で動かす)による測定値を参考にします。
(1)肩関節の可動域測定
肩関節は、「屈曲」と「外転・内転」が主要運動、「伸展」と「外旋・内旋」が参考運動となります。「外転・内転」、「外旋・内旋」は合計値で評価します。

測定の対象となる運動には主要運動と参考運動がありますが、関節の機能障害は、原則として主要運動の可動域制限の程度によって評価します。
【肩関節の参考可動域角度】
運動方向 | 屈曲 | 伸展 | 外転 | 内転 | 外旋 | 内旋 |
---|---|---|---|---|---|---|
参考可動域角度 | 180 | 50 | 180 | 0 | 60 | 80 |
(2)ひじ関節の可動域測定
ひじ関節は、「屈曲・伸展」が主要運動となります。「屈曲・伸展」の合計値で評価します。なお、ひじ関節には参考運動はありません。

【ひじ関節の参考可動域角度】
運動方向 | 屈曲 | 伸展 |
---|---|---|
参考可動域角度 | 145 | 5 |
(3)手首の関節の可動域測定
手首の関節は、「屈曲・伸展」が主要運動、「橈屈」と「尺屈」が参考運動となります。
「屈曲・伸展」は合計値で評価します。

【手首の関節の参考可動域角度】
運動方向 | 屈曲 | 伸展 | 橈屈 | 尺屈 |
---|---|---|---|---|
参考可動域角度 | 90 | 70 | 25 | 55 |
(4)前腕(3大関節に準じて扱われます)の可動域測定
前腕は、「回内・回外」が主要運動となります。「回内・回外」の合計値で評価します。
なお、前腕には参考運動がありません。

【前腕の参考可動域角度】
運動方向 | 回内 | 回外 |
---|---|---|
参考可動域角度 | 90 | 90 |
腕・肩・手首の関節が曲がらない場合に後遺障害等級認定を受ける3つのポイント
次に、腕・肩・手首の関節が曲がらない場合に後遺障害等級認定を受けるために必要な3つのポイントを説明します。
後遺障害等級認定を受けるための3つのポイント
専門医に受診し、早めに検査を受ける
交通事故による後遺症について後遺障害認定を受けるためには、その後遺症が交通事故によって生じたものであるということを証明することが必要になります。
交通事故と検査の間で期間があいてしまうと、本当に交通事故が原因なのか因果関係を疑われてしまいます。腕・肩・手首の関節が曲がらない場合には、レントゲンやCT、MRIといった精密検査を、事故後すみやかに受けるようにしましょう。
漏れのない後遺障害診断書を作成してもらう
後遺障害等級の認定は書類審査のため、後遺障害診断書の内容が認定の可否を左右するため、漏れのない後遺障害診断書を作成してもらう必要があります。
医師に自覚症状を具体的、かつ正確に答え、後遺障害診断書に記載してもらうことが重要です。また、後遺障害診断書の記載漏れを防ぐためにも、日頃から医師とコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことも大切です。
特に、腕・肩・手首の関節が曲がらないことで仕事に支障が出ている場合には、どのような支障が出ているのか記載があるとよいでしょう。
後遺障害等級認定の申請を自分で行う
後遺障害等級の認定申請には、加害者側の保険会社に任せる「事前認定」と被害者自身が行う「被害者請求」という方法があります。
「事前認定」は提出する資料を被害者自身が選ぶことができず、後遺障害等級の認定が不利なものになってしまうことがあります。一方、「被害者請求」は、被害者の負担になりますが、提出する資料を選ぶことができるため、後遺障害等級の認定が有利になる可能性があります。
後遺障害等級認定について不安がある方は、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士は、後遺障害診断書の内容をチェックしたり、受けるべき検査・資料収集のアドバイスをしたりします。弁護士がアドバイスすることで、後遺障害等級認定される可能性を高めることができます。
【まとめ】腕・肩・手首の関節が曲がらない場合は後遺障害1~12級に認定される可能性あり
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 腕や肩・手首の関節が曲がらないことで認定される可能性のある後遺障害等級と慰謝料の相場(弁護士の基準)
- 1級:2800万円(自賠責の基準では1150万円)
- 5級:1400万円(自賠責の基準では618万円)
- 6級:1180万円(自賠責の基準では512万円)
- 8級:830万円(自賠責の基準では331万円)
- 10級:550万円(自賠責の基準では190万円)
- 12級:290万円(自賠責の基準では94万円)
- 後遺障害等級認定を受けるための3つのポイント
- 専門医に受診し、早めに検査を受ける
- 漏れのない後遺障害診断書を作成してもらう
- 後遺障害等級認定の申請を自分で行う
後遺障害認定の申請にはポイントがあります。後遺障害認定の申請手続きを弁護士に任せることで、弁護士が、診断書の記載内容をチェックしたり、提出する資料を精査したりしますので、適切な後遺障害等級認定の可能性をさらに高めることができます。
交通事故による腕や肩・手首の関節障害でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
アディーレ法律事務所にご相談・ご依頼いただいた場合、原則として手出しする弁護士費用はありません。
すなわち、弁護士費用特約が利用できない方の場合、相談料0円、着手金0円、報酬は、獲得できた賠償金からいただくという成功報酬制です(途中解約の場合など一部例外はあります)。
また、弁護士費用特約を利用する方の場合、基本的に保険会社から弁護士費用が支払われますので、やはりご相談者様・ご依頼者様に手出しいただく弁護士費用は原則ありません。
※なお、法律相談は1名につき10万円程度、その他の弁護士費用は300万円を上限にするケースが多いです。
実際のケースでは、弁護士費用は、この上限内に収まることが多いため、ご相談者様、ご依頼者様は実質無料で弁護士に相談・依頼できることが多いです。
弁護士費用が、この上限額を超えた場合の取り扱いについては、各弁護士事務所へご確認ください。
(以上につき、2022年9月時点)
交通事故の被害にあって賠償金請求や後遺障害等級認定のことでお悩みの場合は、交通事故の賠償金請求を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。
