「任意整理したけど、返済が苦しい…。このまま返済できなくなったらどうしよう?」
私たちの生活状況は、日々、さまざまな事情で変化します。
借金をするときには「絶対に返す!」と思っていても返せなくなることがあるように、弁護士に依頼して任意整理をした後にお金を返せなくなることもありえます。
任意整理でまとめた和解(支払約束・支払計画)どおりに返済できなくなったとき、そのままにしておくと、残額を一括請求されたり、裁判を提起され、給与などの財産を差し押さえられてしまうリスクなどが生じます。
返済が苦しいと感じても、一度任意整理をした債権者ともう一度返済の条件について話し合う「再和解」などをすることで、一括請求などのリスクを下げることができます。
この記事では、次のことについて弁護士が解説します。
- 任意整理でまとめた和解どおりに返済できなくなった場合のリスク
- 任意整理の再和解がおすすめなケース、不要なケース、別の方法を選ぶべきケース
ここを押さえればOK!
任意整理の再和解とは、一度任意整理をした債権者と再び交渉し、返済の条件を再調整することです。再和解に応じてくれない債権者もいますが、一度任意整理をした弁護士に再度相談することで、返済条件を再調整できる可能性があります。
再和解が難しい場合や返済ができない場合には、個人再生や自己破産を検討する必要があります。個人再生は裁判所から認可を受けて借金の減額を行い、自己破産は原則全ての借金の免除を受ける手続きです。どちらの手続きも借金の負担を減らすことができます。
任意整理後に返済ができなくなっても、再和解をすることで差押えなどのリスクを回避する可能性があります。返済が難しくなった場合には、早めに弁護士に相談し、適切な解決策を見つけることが重要です。
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早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
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任意整理とは?
任意整理とは、次のような手続きです。
取引開始時にさかのぼって利息制限法の上限金利(15~20%)に金利を引き下げて再計算すること(引き直し計算)により借金を減額
→今後発生するはずだった利息(将来利息)のカットや、返済期間を長くすることで毎月の返済額を減らすことを目指して個々の債権者と交渉
→返済方法について債権者と交渉がまとまれば(和解)、和解内容に沿って返済
任意整理の特徴として、弁護士に依頼する債権者を選ぶことができます。そのため、 一部の債権者を手続きから除外しても確実に返済していける見込みがあれば、保証人のいる債権者、自動車や住宅のローンに関する債権者を対象から外すことも可能です。
任意整理について詳しくはこちらをご覧ください。
任意整理をしたらどのように返済していくの?
任意整理として弁護士に依頼するのは、引き直し計算をして、債権者と交渉し、和解をすることです。
和解をまとめた後の対応は弁護士によって異なり、依頼者から送金されたお金を和解どおりに返済しておいてくれる(送金代行)弁護士もいれば、依頼者に返済を任せる弁護士もいます。
送金代行を引き受けている弁護士であれば、債権者への返済が終了するまでの間、依頼者の代理人となって活動するので、返済期間中に急な事情によって和解した返済計画通りの返済が一時的に困難になってしまった場合などでも、依頼者が直接、債権者とやり取りをする必要はありません。
任意整理でまとめた和解どおりに返済できなくなったらどうなる?
任意整理は、原則として3~5年間返済を続けていく手続きです。
任意整理をすると信用情報機関に事故情報が登録されてしまうため、貸金業者から借入れをして生活費にしたり別の債権者に返済したりすることはできず、基本的に自身の収入によってやりくりをしなければなりません。そのため、収入が途絶えてしまったり減少してしまったりすると、返済が難しくなってしまうことがあります。
それでは、 任意整理でまとめた和解どおりに支払えなくなったらどうなるかをご説明します。
(1)一括請求
任意整理の和解では、一定以上の返済の遅れがあれば、残額を一括請求するという「期限の利益喪失条項」が定められているケースが多いです(期限の利益喪失条項について、詳しくはのちほどご説明します)。
そのため、 返済できないまま放置していると、残額を一括請求されてしまうおそれがあります。
(2)そのまま放置すると、差押えを受けるおそれも
一括請求後も任意整理の和解どおりに返済できないまま放置していると、債権者は差押えによって残額を回収しようとします。
差押えのターゲットとなりやすい財産は、主に次の2つです。
- 給与
- 預貯金
和解どおりの返済すら大変だった状況で、給与や預貯金が差し押さえられれば、生活は一層苦しくなってしまいます。
特に、給与の差押えの場合、債権者は勤務先から直接お金を回収します。そのため、勤務先に借金の事実がバレるおそれがあります。
給与や預貯金への差押えについて、詳しくはこちらをご覧ください。
任意整理後に返済が難しくなったら早めに弁護士に相談!
任意整理の和解どおりに返済できなくなった場合は、すぐに弁護士に相談してください。
弁護士に送金代行を依頼している場合、返済が滞ると法律事務所から状況を確認するための電話がかかってきますので、絶対に無視しないようにしてください。
返済が滞り、連絡も無視していると弁護士から辞任される可能性もあります。
一方、
送金代行を依頼している弁護士にきちんと相談すれば、
弁護士から債権者に返済を猶予してもらえるように交渉してもらえることがあります。
また、和解をまとめるまでの間に弁護士に支払った預り金があれば、返済が滞ったときにその
預り金から返済をしてくれることがあります。
会社を退職した、病気になって失職したなど、やむを得ない事情で返済ができなくなってしまった場合は、債務整理の方針を変更することも必要です。返済ができない状況になったら、ひとりで悩まずにすぐ弁護士に相談してください。
任意整理の再和解とは?
任意整理の再和解とは、 いちど任意整理で和解した債権者と、返済方法について再び交渉し、もう一回和解をまとめることです。
例えば、(仮名)X社と(仮名)Y社の2社から借入れをしていた人が、X社のみ任意整理をした後、もう一度X社相手に任意整理をすることが「任意整理の再和解」に当たります。
それでは、
- 任意整理で再和解をしたほうがよいケース
- 任意整理の再和解をしなくてもよいケース
- 任意整理の再和解ではなく、より大きな負担減につながる手続きをすべきケース
に場合分けしてご説明します。
任意整理で再和解をしたほうがよいケース
任意整理で再和解をしたほうがよいケースとは、どのようなケースなのでしょうか。
典型例としては、和解どおりに支払えなくなりそうだけれども、「自己破産」や「個人再生」(後ほどご説明します)を避けたい事情がある場合です。
(1)任意整理の再和解を検討すべきタイミング
一般的な任意整理では、次のような「期限の利益喪失条項」が設けられます。
乙が前項の支払いを〇回分怠ったときには、乙は期限の利益を失い、残額を一括で支払う。この場合は、期限の利益を失った日の翌日から支払完済まで、年14.6%の割合による遅延損害金を支払う。
期限の利益喪失条項は、和解で決められた回数分のお金を返済できなかった場合には、一括でお金返済しなければならないことを定めています。この回数は、当事者間の話合いによって決まるものの、多くの場合2回と決められています。
1回分の返済さえ困難な状況で、残額をまとめて返済するのは簡単ではありません。そうなると、差押えまで秒読みの段階となりますので、なるべく早く任意整理の再和解などを検討するべきです。
任意整理で再和解をするためには、一定期間必要です。
そのため、期限の利益を喪失してから再和解をしようとしても、再和解を試みたときにはすでに裁判を提起されてしまっている可能性があります。
滞納しないように心掛け、1度滞納してしまった場合にはすぐに弁護士に相談しましょう。
期限の利益について詳しくは、こちらの記事もご確認ください。
(2)任意整理後の再和解は可能?
任意整理の回数を規制する法律は存在しないため、債権者がOKしてくれる限り、何度でも任意整理をすることができます。しかし、債権者に債務者の要求通りに任意整理に応じる義務はないため、債権者との交渉は難航するおそれがあります。
一般的に2回目の任意整理にあたって、1回目の任意整理のときよりもさらに月々の返済額を下げるため、返済期間を長くしてくれるように交渉します。債権者は返済期間が延びれば利息を受け取れるはずですが、任意整理では利息のカットをお願いするので、返済期間を延ばすメリットが特にありません。
確かに債務者が自己破産ではなく任意整理をすることによって、債権者はいくらかお金を受け取れるメリットはありますが、貸し倒れの処理ができないというデメリットがあります。
加えて、 1回目の任意整理をするにあたって債権者は、その返済額であれば完済してくれるだろうと思って返済計画に同意しているので、いったんその 計画どおりに返済できなかった場合に再び信頼してもらうことは難しいといえます。
返済期日に返済できずに遅延損害金が発生している場合、2回目の任意整理にあたって遅延損害金をカットしてもらうことはできないと考えた方が良いでしょう。
任意整理で再和解をしなくてもよいケースとは
それでは、逆に
任意整理で再和解をしなくてもよいケースとはどのようなケースでしょうか。
何とかしのげていても事態が悪化してしまうことはありえるので、再和解をせずに済む場合でも借金を完済するまで浪費はしないようにしてください。
(1)返済できなかったのが1ヶ月分だけだった場合
たまたまひと月だけ収入が減って返済ができなかったけれども、それ以降再び返済できるようになった場合には、期限の利益を喪失せず、 再和解をしなくても済む可能性があります。次回の返済日に遅延損害金を含めた金額を返済する、1ヶ月遅れの状態をしばらく続けてボーナスの時期にまとめて返済するなどして、滞納を解消しておきましょう。
返済が2回遅れたとしても、債権者が裁判を提起してくるとは限りません。返済が2回分遅れたとしても、そのまま毎月返済を続けて、最終的に全額返済すればそれでよい場合もあります。
しかし、この場合、期限の利益は失われており、いつ債権者から裁判を提起されてもおかしくない状況なので、弁護士に相談しておくことをおすすめします。
(2)追加介入という方法もある
先ほどもご説明したように、任意整理の特徴は、どの債権者に対する対応を弁護士に任せるかを自由に選べる場合があることです。
借金の残高が少ない債権者や将来利息をカットしてくれない債権者をあえて任意整理の対象から外すこともできます。しかし、 任意整理の和解どおりに返済できなくなったときに、 自身で対応していた債権者に関する任意整理を弁護士に依頼することによって、 なんとか任意整理の和解どおりに支払えるようになることがあります。
たとえば、借金の残高が30万円で1万5000円ずつ返済している債権者がいるとします。
この債権者に関する任意整理を弁護士に任せたところ、将来利息をカットすることに成功し、60回払いで和解が成立したとすれば、月々の返済額を5000円にまで下げることができます(送金代行を依頼する場合には、別途送金代行の手数料がかかります)。浮いた1万円を他の債権者に対する返済に充てることによって、再和解しなくても済む可能性があります。
初回の依頼で弁護士に対応を依頼しなかった債権者について、弁護士に任意整理を依頼することは再和解にはあたらず、一般に「追加介入」と呼ばれています。
再和解や追加介入ができない場合は個人再生や自己破産を検討!
再和解は簡単ではなく、債権者によっては全く聞く耳をもってくれないことがあります。また、任意整理後に無職になったなど状況の変化次第では、任意整理では到底完済できないこともあります。そのような場合には、 任意整理よりも大幅に返済の負担を減らせる可能性がある「個人再生」や「自己破産」を検討する必要が出てきます。
個人再生や自己破産を視野にいれましょう
個人再生とは、裁判所から認可を得て、基本的に大幅に減額された借金を(※)、原則として3年間で分割して返済していくという手続きです。
※減額の程度は、借金の額、保有している財産によって異なります。任意整理よりも大幅に減額できるケースが少なくありません。
個人再生は、自己破産よりも、高価な財産を手元に残しやすいです(ローンの残った車などは、債権者から引き揚げられるおそれがあります)。
また、一定の条件を満たしていれば、住宅ローンの残った自宅を手放さずに済む可能性もあります。
自己破産とは、財産、収入が不足し、借金返済の見込みがないこと(支払不能)を裁判所に認めてもらい、原則として、全て(※)の借金の返済義務を免除してもらえる可能性がある手続きです。
※ただし、公租公課など一部の支払義務は自己破産の手続き後もそのまま残ります。
任意整理の再和解の手続きの流れ
それでは、改めて任意整理の再和解の流れをご説明します。
受任通知の送付
債権者との和解交渉
返済開始
2回目の任意整理も、基本的な流れは1回目の任意整理と異なりません。
1回目の任意整理のときにお願いした法律事務所に再度依頼すると、事情をある程度わかっているので手続きがスムーズになると予想されます。送金代行を依頼しておらず、すでに前の弁護士と接触がないならば、ほかの法律事務所に相談するのも良いでしょう。
(1)弁護士が受任通知を送る
弁護士から債権者宛てに受任通知を送ってもらいます。債権者から取立てを受けていた場合、この時点で取立てが一切ストップするので、ストレスが軽減されるはずです。
(2)債権者と和解交渉
債権者から開示された取引履歴をもとに、上限金利(15~20%)に基づく引き直し計算を行い、借金の額を確定します。そして、
和解案を提示し、債権者と和解内容について交渉します。話し合いがまとまると、和解内容を確認するため合意書を作成します。
弁護士に任意整理を依頼した場合、借主自ら債権者と話し合う必要はなく、弁護士から随時報告を受け、弁護士と相談することになります。
(3)返済開始
合意書で確認された 和解内容に基づき、毎月貸金業者の指定する口座に分割金を振り込みます(弁護士が送金代行してくれる場合には、その法律事務所から指定された口座に振り込みます)。
【まとめ】任意整理後に返済できなくなっても、「再和解」で差押えなどを回避できる可能性がある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 任意整理後に返済できなくなってしまうと、残額を一括請求されたり、給与や預貯金などを差し押さえられてしまうリスクがある。
- 任意整理の再和解とは、一度目の任意整理で和解をまとめた債権者と、再び返済の条件について交渉をすること。
- 任意整理の再和解を考えたほうがよい典型的なケース:今のままでは返済できなくなるおそれがあるが、個人再生や自己破産を避けたい事情があるケース
- 任意整理の再和解をしなくてもよいケース:返済遅れが1ヶ月分だけのケースや、一度目の任意整理で手続きの対象から外した債権者について追加介入すれば足りるケース
- 任意整理の再和解や追加介入をしたとしても、返済できる見込みがないケースでは
→個人再生や自己破産を検討
任意整理後に返済が苦しくなってしまったときには、再和解をするか自己破産・民事再生を検討することになります。一般的に2回返済が遅れてしまうと、一度任意整理をしていても借金の残額を一括で請求されてしまうので、返済が滞らないように注意して、万が一返済が滞ってしまいそうなときには、なるべく早く弁護士に相談するようにしてください。
2回目の任意整理は簡単ではありませんが、弁護士が対応すれば 再和解に応じてもらえる可能性が高くなります。弁護士に相談すれば、 再和解などが厳しく、個人再生や自己破産などを検討しなければならない状況であっても、引き続きサポートを受けることができます。
ですので、任意整理後に支払っていけるか不安になった場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
アディーレ法律事務所では、所定の債務整理手続きにつき、所定の成果を得られなかった場合、原則として、当該手続きに関してお支払いいただいた弁護士費用を全額ご返金しております(2022年10月時点)。
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