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弁護士が解説!離婚を検討する前に知っておきたい基礎知識

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「最近、パートナーと離婚をするか悩んでいる。離婚を真剣に検討する前に知っておいたほうがいいことはある?」

離婚を検討するにあたっては、離婚の良し悪し(メリットやデメリット)を見極めて、離婚がベストな選択肢なのかどうか、様々な角度から熟考しなければなりません。
そのためには、あらかじめ、離婚によって生じるメリットやデメリットを知っておくことが重要です。

また、離婚の際には、様々な事柄を夫婦間で話し合って決める必要があります。どのような事柄を話し合う必要があるのかをあらかじめ知っておくことも大切です。

本記事では、

  • 離婚に必要な基礎知識や心構え
  • 離婚により生じるメリット、デメリット

などの離婚前に知っておきたい基礎知識について、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。

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離婚を検討したい……離婚に必要な基礎知識・心構え

実際に離婚するとなると、離婚後は、当然ですが現在の配偶者とは別々の人生を送ることになります。
また、離婚に伴い、様々な手続きが必要になることもあります。
離婚後に、「こんなはずじゃなかった」と後悔しないように、離婚前に必要な基礎知識を持ち、離婚の心構えや準備をすることが必要です。

(1)離婚後の生活についてのイメージを持つ

現在の配偶者のいない、離婚後の人生を考えてみましょう。
考える主なポイントは、生活ができるか、仕事と子どもへの影響があるかということが多いです。
専業主婦(夫)の場合、離婚後は、一般的に経済的に自立していない年齢の子ども(「未成熟子(みせいじゅくし)」といいます)がいる場合に相手方から養育費をもらえるだけですので、基本的には、自分の生活費は自分で稼がなければなりません。
ですから、仕事を探したり、実家の援助を得られないか相談したりする必要があるでしょう。

子どもがいる場合で子どもを引き取るときは、仕事と子どもへの影響も考えましょう。
フルタイムで働きながら子どもの世話を見られるのか、時短勤務が可能か、などが検討事項となるでしょう。
離婚している知人がいたら、相談してみるとよいかもしれません。経験者ならではの、はっとするようなアドバイスがもらえるかもしれません。

(2)離婚の条件や時期について検討し、話し合う

離婚したいけれどパートナーが離婚に同意してくれない場合には、離婚自体について話し合う必要があります。
離婚自体に合意できたら、離婚の条件や時期についても話し合う必要があります。
離婚の話し合いの際には、一般的に、次のような事柄を検討し、話し合うことが多いです。

(2-1)お金について

離婚にあたっては、お金の話は避けて通れません。離婚にあたり解決しておくべきお金の問題は、主に次のとおりです。

財産分与

夫婦が婚姻期間中に協力して形成した財産については、夫婦が共有する財産として、離婚時に分与を求めることができます。
これを財産分与といいます。
プラスの財産もマイナスの財産(借金)も、すべて半分にするイメージです。
住宅ローンを組んでいる場合には、住宅の名義、ローンの名義、ローン残高、住宅の現在の資産価値など現状を確認したうえで、売却するか、維持してどちらがローンを支払うかなどを話し合う必要があります。

慰謝料

また、例えば、不貞行為や悪意の遺棄など離婚原因が一方にある場合などでは、相手方配偶者に離婚慰謝料を請求できるので、慰謝料の額についても話し合います。

年金分割

さらに、年金の処理についても忘れないようにしましょう。
離婚しても、婚姻期間中の夫(妻)の厚生年金・共済年金の納付記録の分割を受けることができるケースがあります。
分割できるのは厚生年金・共済年金のみで、国民年金は対象になりません。

年金分割制度には、3号分割(相手方配偶者の合意が不要)と合意分割があります。
国民年金の第3号被保険者((例)配偶者が会社員の専業主婦(夫)など)は、3号分割の制度を利用することができます。
しかし、3号分割の対象となるのは、平成20年4月以降の記録のみですので、それ以前から結婚している場合には、それ以前の期間について、別途、分割割合について合意する必要があります。

まずは、管轄の年金事務所に対して、年金分割のための情報提供の請求をしましょう。すると、「年金分割のための情報通知書」が交付されるので、納付記録などを確認してみるとよいでしょう。
年金分割は、離婚日の翌日から2年経つと請求できないため、注意するようにしましょう。

(2-2)子どもについて

未成熟子がいる場合には、どちらが親権を持つか、面会交流についての取り決め(月の回数、時間、方法など)、養育費の額、いつまで養育費を支払うか、塾や私立学校に行く場合の学費をどうするかなどを、話し合う必要があります。

養育費の決め方や金額について詳しくはこちらの記事をご確認ください。

離婚時に取り決めるべき養育費の内訳は?養育費算定表の仕組みも解説

(2-3)氏(名字)について

結婚で氏(名字)を変えた配偶者は、離婚により原則として元の氏に戻ります。
婚姻中の氏を継続して利用したい場合には、離婚後3ヶ月以内に、役所に対して「婚氏続称届」を提出する必要があります。
婚姻中の氏を継続して利用するためには、相手方の同意は不要です。ですので、相手方が反対したとしても、婚姻中の氏の継続使用は可能です。

また、未成年の子がいる場合には、子どもの氏(名字)をどうするかも考える必要があります。
母親が結婚に際して氏を変え、未成年の子がいて離婚するケースで、母親が元の氏(名字)を名乗る場合、子も当然に母親の元の氏となるわけではありません。子の氏の変更には、家庭裁判所による許可が必要です。

参考:子の氏の変更許可|裁判所 – Courts in Japan

家庭裁判所では、特段の事情がなければ、即日許可が出ます。その後、許可書を持参して、市町村役場に対して、「子の母の氏を称し母の戸籍に入籍する」旨の入籍届を提出します。これにより、母と子は同じ戸籍で、同じ氏を称することができます。

(2-4)話し合うべきことは夫婦それぞれ

他にも、夫婦ごとに、話し合うべきことは様々です。
婚姻期間中に共同で購入したものをどうするのか(売却するのか、どちらかが引き取るのかなど)、清算していなかった結婚式の費用をどうするのかなどの話し合いが必要になる夫婦もいます。
後々争いにならないように、離婚の際に話し合いが必要な事項についての知識を深めたうえで、十分な時間を確保して話し合いの場を設けるようにしましょう。

(3)離婚に伴い必要となる手続きの準備をする

離婚前に、離婚に伴い必要となる次のような手続きについての基礎知識を得ておくとよいでしょう。

  • 離婚届の提出
    証人2人の署名押印が必要です。離婚の事実を把握している成人であればよく、両親や兄弟、知人に頼む人が多いようです。
  • 転出届取得・転入届提出
    離婚に伴い引っ越しをし、別の市町村に住むときに必要となる手続きです。
  • 各種名義変更
    離婚後、氏が変わるのであれば、各種名義変更手続きが必要です。変更手続きについて調べたり問い合わせたりして一つ一つ行います。名義変更が必要とされる主なものとしては、次のとおりです。国民年金、印鑑、印鑑登録証、クレジットカード、銀行口座、運転免許証、パスポート、各種保険、各種会員カード。
  • 離婚後の医療保険
    妻が夫を世帯主とする国民医療保険に加入している場合や、夫が健康保険に加入していて妻が被扶養者の場合は、妻は、離婚して別世帯になり、被扶養者の資格も喪失するので、新たな医療保険に加入する必要があります。国民医療保険に加入する場合には離婚後に役所で手続きをしましょう。
  • 子どもに関する手当
    離婚後も子どもと同居して世話をするのであれば、収入額によっては児童扶養手当が受給できます(離婚せずに別居中でも受給できるケースもあります)。具体的な手続きについては、役所に問い合わせるとよいでしょう。地域によっては、児童扶養手当以外の福祉制度がある場合があるので、その点も確認するようにしましょう。

(4)お互いの意見がズレたときの対応法(協議離婚が成立しないケース)

話し合いで離婚や離婚の条件について合意ができた場合はよいのですが、離婚自体応じてもらえなかったり、離婚の条件に折り合いがつかなかったりした場合はどうしたらよいのでしょうか。

その場合は、協議離婚ができないので、離婚するためには長期戦を覚悟する必要があります。
具体的には、まず、家庭裁判所に離婚を求めて調停を申立てて、引き続き話し合います。
しかし、調停を申立てても、無視して出席しない相手方もいるし、出席しても、離婚条件に折り合いがつかない場合もあります。

そうすると、調停は不成立となり、基本的に調停手続きでは離婚することはできません。
次に、家庭裁判所に離婚を求めて離婚訴訟を提起します。
離婚訴訟では、法定離婚事由が存在することを、証拠を示して証明する必要があります。
法定離婚事由について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

法律上の「5つの離婚の条件」と離婚協議書を作成する際の注意点

裁判中に、和解で離婚が成立する場合もありますが、和解できなければ、判決まで1年以上かかることもあります。

離婚によって生じるデメリット5つ

人によっては、離婚後に生じるデメリットがあります。
離婚することで想定される、生活に生じる可能性があるデメリットを説明します。

(1)子どもの生活に影響が出てしまう

離婚に伴って夫婦が別居したり、引っ越して生活環境や学校・保育所などが変わったりすると、子どもが精神的に不安定になることがあります。
幼い子どもでも、親に心配をかけまいと気丈に対応することがあるので、親が気付かないこともあります。
親が直接把握できない、学校生活や生活態度に影響が出るかもしれないので、注意してみる必要がありそうです。
もちろん、子どもによっては、離婚しても精神的影響を受けないケースもあります。これは、離婚前の夫婦関係や、子どもの性格によるところが多いようです。

(2)収入(世帯年収)が下がる

離婚後も、子どもを引き取って育てる側は、基本的に、相手方に対して養育費を請求することができます。
しかし、養育費は、相手方収入の一部分にすぎず、子どものための費用に充てるものであるから、生活費自体は自分で稼ぐ必要があります。
離婚により、ほとんどのケースで世帯収入が下がります。したがって、離婚後も離婚前と同じような生活レベルを維持することは困難です。
離婚後の収入に合わせた生活をする必要があります。
食費や交際費、通信費など、節約できる部分の見直しをするようにしましょう。

(3)子育てと仕事の両立

仕事をしながら一人で子育てをするのは、精神的にも肉体的にも大変です。
ですが、離婚後自立して生活するためには、仕事は必要になるでしょう。
仕事をしている場合には、時短勤務など、職場の使える制度を利用することを検討しましょう。
両親や兄弟の助けを得たり、地域のボランティアなどの利用も考えたりして、一人で孤立して頑張りすぎないようにしましょう。

(4)慰謝料や養育費の支払いが必要なことも

自身に不貞行為などの離婚事由があって離婚するに至った場合、相手方は、精神的苦痛を被ったとして、自分に対して慰謝料の支払いを請求することができます。不貞行為などが事実であれば、一定程度の慰謝料を支払う義務があります。

相手方が子どもを引き取って育てる場合、相手方は自分に対して養育費の支払いを請求することができ、親である以上、一定額の養育費を支払う責任を負います。
養育費の額は、話し合って決めることが多いですが、妥当な額がわからない場合には、裁判所が公表している養育費算定表を参考にするとよいでしょう。
お互いの収入額と子どもの年齢、数により、裁判所が適当と考えている養育費が算定できます。

参考:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所 – Courts in Japan

(5)子どもと離れてしまう可能性

離婚後、子どもを引き取って育てるのは、親権及び監護権を持つか、親権はないが監護権を持つ側(親権と監護権の分離)です。
離婚後は、お互いに別々の家で暮らすことになりますから、子どもを引き取って育てるのでなければ、子どもと離れて暮らすことになります。
面会交流の話し合いができたとしても、一般的に面会交流の頻度は月に1度程度であることが多いです。
人それぞれですが、かなりの喪失感を抱える方もいます。

離婚することで得られるメリット5つ

離婚はデメリットばかりではありません。次のように、離婚により得られるメリットもあります。

(1)ストレスや不満を溜めないですむ

育ってきた環境が異なり、生活習慣や価値観の異なる人と結婚生活を送ることは、多少なりともストレスを生じさせます。
愛情があれば許容できることでも、離婚間近で夫婦関係が修復困難な状況に陥っていると、許容できず拒絶反応が出ることもあります。
ストレスは、発疹、帯状疱疹、過呼吸、拒食、過食など、身体的な症状としてあらわれることもあります。
離婚すると、パートナーと同居することで生じるストレスや不満から解放されます。

(2)自分のために使える時間が増える

パートナーのために使っていた時間(喧嘩や家事など)を自分のために使うことができるようになります。
時間がなくてできなかった趣味を再開したり、友達付き合いを再開したりする人もいます。

(3)夫婦関係を取り繕う必要がなくなる

喧嘩を避けるために、自分の意見は二の次にして、パートナーの顔色を見ながら生活している人は少なくありません。
また、パートナーの言動には賛成できなくても、パートナーとしての責任感から、周囲に対してパートナーの言動の尻拭いをしている人もいます。
離婚すればそのような気を遣う必要もなくなります。

(4)別のパートナーと出会える可能性がある

家族や恋愛の形は多様化しており、離婚歴は恋愛する支障にはなりません。
離婚後、新たなパートナー探しをして、素敵な人物に出会える方もいます。

(5)子どもにとってプラスになる場合がある

両親が頻繁に喧嘩する状況下で子育てをするのは、子どもにとって望ましくありません。両親が喧嘩する声を聴くよりは、離れて暮らすほうがいいという子どももいます。
パートナーがDVやモラルハラスメントを行う場合、子どもに対して直接行うことはなくても、子どもの精神に影響すると考えられています。

親が殴られたり罵倒されたりしている状況が普通である状況で育った子どもには、精神面で悪影響がある可能性があります。
このような場合には、離婚することが子どもの健全な育成、将来にとってプラスになるかもしれません。

離婚について話し合うべきタイミング

離婚について話し合うタイミングについては、次のような事情を考慮して判断するようにしましょう。
相手方に不貞行為等の離婚事由がある場合には、離婚を切り出すと証拠隠滅される可能性があります。
離婚について話し合う前に、客観的な証拠(性交渉があったことが推認できる写真、メール、SNSのやり取りなど)を確保したほうがよいでしょう。
また、離婚の意向を伝えると、財産を隠されてしまうかもしれません。
パートナー名義の口座情報については、通帳の表紙や残高がわかる頁をコピーしたり写真を撮ったりして把握しておきましょう。給与明細や年末調整もコピーしておくとよいでしょう。

離婚するまでに、本当に離婚したほうがいいのか悩むのは当然です。悩んだ結果、離婚しないという判断をする人も多くおられます。
ですので、パートナーと離婚の話し合いをするのは、自分の中で離婚の決意が固まった後がよいでしょう。決意が固まる前に話し合ってしまうと、相手方の気持ちが離れてしまって、後々離婚したくなくなっても、関係修復が難しくなる可能性があります(夫婦によっては、離婚について話し合うことで反省し合って、夫婦としてより結束できる場合もありますので、人それぞれですが)。
離婚について合意できたら、細かな離婚条件について、一つ一つ話し合うようにしましょう。

【まとめ】離婚には入念な準備と時間が必要、離婚に関するご相談は弁護士へ

本記事をまとめると次のようになります。

  • 離婚にあたって、夫婦間でそもそも離婚をするかどうかについての話し合い、離婚をするとしてその時期や条件等についての話し合いなど、基礎知識を持ったうえで様々な事柄を夫婦間で検討し話し合う必要がある
    話し合いで離婚ができない場合には、調停や裁判をする必要があり、より時間と労力がかかる
  • 離婚によって世帯年収が低下したり、子どもの生活に影響が及んでしまうなどのデメリットがある
  • 離婚をすることによって発生するのはデメリットばかりではなく、結婚生活によるストレスから解放されたり、子どもにとってプラスになることもあるなどのメリットもある

離婚を検討するにあたっては、基礎知識を深めたうえで、離婚の良し悪し(メリットやデメリット)を見極めて、離婚がベストな選択肢なのかどうか、様々な角度から熟考すべきです。
熟考した結果、離婚することに気持ちが固まったら、離婚の話し合いについて、弁護士に依頼することもできます。
当事者同士で冷静な話し合いが難しい場合には、弁護士に依頼することも一つの方法です。
弁護士が代理で話し合うので、冷静に今後の生活を見据えて交渉することができるでしょう。

弁護士は、離婚の条件について、後々の争いを防ぐために、協議離婚の内容について書面を作成することもできます。慰謝料や養育費など、継続的な支払いが予定されている場合には、執行認諾文言のある公正証書を作成したほうが、自主的に支払われなかった場合に、強制執行することができるので、回収がしやすくなります。そのような効力を有する公正証書についても、弁護士が文案を作成することができます。

パートナーが不貞を行ったが、離婚はしたくない、不貞相手にだけ慰謝料を請求したいというような場合は、離婚せずに慰謝料請求だけすることも可能な場合もあります。
離婚するにあたって、不安なことがあれば、離婚を取り扱っている弁護士へご相談下さい。

アディーレ法律事務所では、離婚問題のご相談を承っております(※)。
(※なお、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。)

さらに、安心してご依頼いただけるよう、離婚問題について、ご依頼の目的を全く達成できなかったような場合には、ご依頼時にお支払いいただいた基本費用などを原則として返金いたしますので、費用倒れになることはありません(2023年6月時点)。

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