離婚率の上昇の影響もあり、離婚や死別などによりシングルファーザー(父子家庭)として子育てをしているご家庭が増えています。
母子家庭の貧困が社会問題化しているのに対し、父子家庭は母子家庭に比べて金銭的に余裕があると思われがちです。
しかし実際にはシングルファーザーならではの苦労も多いのです。
例えば、家事を妻に任せていた分、勝手が分からず初歩的なことにいちいち躓いていたり、子どもの急病を理由に仕事を休むといった場面でも今の日本の社会では男性親が休むことに理解が得られなかったりといった有様です。
そのうえ、今まで通りには仕事もできなくなるため収入が減り、金銭的な苦労を抱えることもあります。
国や自治体は、ひとり親家庭を対象にさまざまな支援を行っています。
以下に紹介する支援制度の利用をぜひ検討してみてください。
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
- シングルファーザーも手当や経済的支援を受けることができる
- シングルファーザーが受けられる手当(1)児童扶養手当
- シングルファーザーが受けられる手当(2)ひとり親家庭等医療費助成
- シングルファーザーが受けられる手当(3)就学援助
- シングルファーザーが受けられる手当(4)家賃補助
- シングルファーザーが受けられる手当(5)自立支援教育訓練給付金
- シングルファーザーが受けられる手当(6)保育料負担軽減制度
- シングルファーザーが受けられる手当(7)交通費の割引制度
- シングルファーザーが受けられる手当(8)上下水道の減免制度
- シングルファーザーが受けられる手当(9)ひとり親控除
- 【まとめ】シングルファーザーの経済的支援や手当でお悩みの方は管轄の自治体窓口にご相談ください
シングルファーザーも手当や経済的支援を受けることができる
ひとり親家庭では子育ての負担が重く、現在の日本の労働環境では長時間労働や責任あるポストで働くことが難しくなっています。
経済的な支援が必要なのはシングルファーザーもシングルマザーも同じことです。
シングルマザーのためだけの制度というわけではないので、条件が合えば支援を受けることも可能です。
シングルファーザーが受けられる手当(1)児童扶養手当
ひとり親家庭支援として最もポピュラーなのが「児童扶養手当」です。
以前は児童扶養手当は、母子家庭のみが対象でした。
しかし児童扶養手当法の改正により2010年8月からは、父子家庭も利用できるようになっています。
この改正により、以下のいずれかに該当する子ども(18歳に達する日以降の最初の3月31日までの子ども、障害児の場合には20歳未満)を監督し、かつ、その子どもと生計を同じくする父は、新たに手当を受けることができるようになっています。
- 父母が離婚を解消した子ども
- 母が死亡した子供
- 母が一定程度の障害の状態にある子ども
- 母の生死が明らかでない子ども
- その他(母が1年以上遺棄している子ども、母が1年以上拘禁されている子ども、母が婚姻によらないで懐胎した子どもなど)
参考:児童扶養手当法の改正(父子家庭の父関連)について Q&A|厚生労働省
(1)シングルファーザーへの手当・支援の条件
児童扶養手当は、離婚や未婚、死別などにより、配偶者のいない状態で18歳未満(中程度以上の障害がある場合は20歳未満)の児童を育てる母や父が受給できます。
児童扶養手当は、受給者の扶養する子どもの人数に応じた所得制限があります。
そのため、シングルファーザーである養育者の所得が一定以下であることが条件になります。
例として、児童扶養手当の全額を支給する「全部支給」の場合に、子どもが1人であれば、収入ベースで160万円が所得制限額となります。
子どもの人数によっても異なりますし、収入ではなく所得ベースの算定方法もありますので、以下の厚生労働省の通知をご参考ください。
(2)手当・支援の金額
では、支援として受けられる金額はどれくらいでしょうか。
支給される金額は収入によって異なります。
(2020年4月現在)
全額支給の場合、子供1人目:4万1160円
一部支給の場合は、所得に応じて4万3150~1万180円まで10円単位で変動
子供2人目の加算額は、全部支給の場合1万190円
一部支給の場合は、所得に応じて1万180~5100円まで10円単位で変動
児童扶養手当の額は、物価の変動等に応じて毎年額が改定されます(物価スライド制)。
(3)手当・支援の申請先
お住いの地方自治体の役所窓口となります。
必要書類は、戸籍謄本やマイナンバーを確認できる書類、印鑑、請求者の預金口座番号などです。
離婚届受理証明書や公的年金給付等受給証明書、障害者手帳などが必要な場合もあります。
あらかじめ自治体ホームページで確認するか、電話で問い合わせておくとよいでしょう。
申請時には、申請書の記入と職員との面談があり、父子家庭になった理由、現在の預金額、月々の収入、養育費の有無、家賃などを確認されることになります。
シングルファーザーが受けられる手当(2)ひとり親家庭等医療費助成
ひとり親家庭の保護者や子どもの治療費を自治体が代わりに支払ってくれる制度です。
(1)シングルファーザーへの手当・支援の条件
シングルファーザー(養育者)の所得制限があります。
所得要件等は、区市町村により異なることがあるため、直接各区市役所・町村役場へお問い合わせください。
参考:ひとり親家庭等医療費助成制度(所得限度額)|北区
参考:ひとり親家庭等医療費助成 所得制限|相模原市
参考:ひとり親家庭等医療費助成事業 所得制限限度額|川崎市
その他の支給対象者としての条件として以下のようなものがあります。
- 自治体から受け取った福祉医療証を病院の窓口で提出していること
- 生活保護を受けていないこと
- 他の医療費助成事業によって医療費の支援を受けていないこと
(2)手当・支援の金額
治療費のうち自己負担分全額、または一部となります。
各自治体によって異なります。
(3)手当・支援の申請先
お住まいの自治体の役所の保険年金課保険係です。
シングルファーザーが受けられる手当(3)就学援助
ひとり親家庭に限らず、小・中学校に就学する子どもがいる家庭で経済的に困窮している家庭に対して自治体が給食費や学用品費を支援する制度です。
一般的な奨学金とは異なり、貸付ではなことから返還する必要がありません。
(1)手当・支援の条件
収入が一定以下で、小学校、中学校へ通う子どもがいることが条件となります。
(2)手当・支援の金額
学校生活に関わる資金(教科書代、修学旅行費、給食費などの実費)です。
(3)手当・支援の申請先
役所または学校です。
自治体によって異なるため、直接各区市役所・町村役場へお問い合わせください。
シングルファーザーが受けられる手当(4)家賃補助
自治体が家賃を補助してくれる制度です。
勤務先で家賃補助や手当がなくても、地方自治体によっては支援してくれるところもあるため、お住いの自治体で補助が受けられるか確認してみましょう。
(1)手当・支援の条件
家賃補助を設けている自治体によって条件は異なりますが、ほとんどが所得制限を設けているようです。
(2)手当・支援の金額
補助額は収入によっても違います。
ひとり親家庭の住宅手当を設けていない自治体もあるので、詳しくは役所のホームページなどで確認しましょう。
(3)手当・支援の申請先
お住いの地方自治体の役所窓口になります。
シングルファーザーが受けられる手当(5)自立支援教育訓練給付金
専業主夫をしていたシングルファーザーが経済的な自立をすることを支援する制度です。
また、家事と両立するために、今までの仕事とは違った働き方が必要となる場合にも活用できますね。
シングルファーザーが、教育訓練の対象となる講座を修了した際に、かかった費用の60%(上限は20万円)を給付するというものです。
教育訓練の対象となる講座は、雇用保険制度の教育訓練給付の指定教育訓練講座と、その他都道府県等の長が地域の実情に応じて対象とする講座です。
例えばWEBクリエイター試験やTOEICなどがあります。
参考:母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について|厚生労働省
(1)シングルファーザーへの手当・支援の条件
母子家庭の母又は父子家庭の父であって、現に児童(20歳に満たない者)を扶養し、以下の要件を全て満たすことが必要です。
- 児童扶養手当の支給を受けているか又は同等の所得水準にあること
- 就業経験、技能、資格の取得状況や労働市場の状況などから判断して、当該教育訓練が適職に就くために必要であると認められること
(2)手当・支援の金額
かかった費用の60%(上限は修学年数×20万円、最大80万円)が支給されます。
(3)手当・支援の申請先
お住いの地方自治体の役所窓口となります。
シングルファーザーが受けられる手当(6)保育料負担軽減制度
ひとり親家庭に限らず、子育て家庭の保育料の一部を軽減する制度です。
2017年3月31日に公布された「子ども・子育て支援法施行令の一部改正」による、幼児教育の段階的無償化に向けた取り組みとして、各自治体が保育料負担軽減制度の拡充をしています。
(1)シングルファーザーへの手当・支援の条件
年収の額による所得制限のある自治体のほか、課税世帯か非課税世帯かによって、軽減額が異なる自治体もあります。
また、自治体の認証保育所の利用者に限られます。
(2)手当・支援の金額
自治体によって異なりますので、お住いの自治体の窓口にお問い合わせください。
(3)手当・支援の申請先
お住いの地方自治体の役所窓口となります。
シングルファーザーが受けられる手当(7)交通費の割引制度
公共交通機関の定期券を割引価格で購入できる制度です。
(1)手当・支援の条件
児童扶養手当を受給していることを条件としています。
(2)手当・支援の金額
JRの通勤定期乗車券は3割引きで購入できます。
市営や私鉄でも割引を実施しているところがありますので、お使いの交通機関が割引の対象になるかどうかご確認ください。
(3)手当・支援の申請先
ご利用の交通機関にお問い合わせください。
シングルファーザーが受けられる手当(8)上下水道の減免制度
水道の基本料金を免除してくれる制度です。
制度があるかどうかは自治体によって異なります。
(1)手当・支援の条件
児童扶養手当を受給していることが必要になります。
(2)手当・支援の金額
支援額は、自治体によって異なるため、問い合わせが必要です。
(3)手当・支援の申請先
お住いの地方自治体の役所窓口になります。
シングルファーザーが受けられる手当(9)ひとり親控除
納税者がひとり親である時に一定の金額の所得控除を受けられる制度です。
(1)手当・支援の条件
以下の条件があります。
- 離婚または死別していて、その後婚姻をしていないこと
- 生計を一にする子がいること
その場合の子は、総所得金額等が48万円以下で他の人の扶養親族・同一生計配偶者になっていない場合に限られます。 - 所得が500万円以下であること
(2)手当・支援の金額
控除額は35万円です。
(3)手当・支援の申請先
役所、税務署、会社の給与担当者になります。
【まとめ】シングルファーザーの経済的支援や手当でお悩みの方は管轄の自治体窓口にご相談ください
シングルファーザーならではの苦労は多いことと思います。
もともとは母子家庭が対象であった支援制度も、近年、シングルファーザーを対象に拡充されてきています。
子どもの将来のためにも、ぜひ利用したいところです。
いろいろな支援制度がありますが、居住地域に該当する制度があるのか、条件に漏れていないのかなど、確認すべき事項が多いのが少々厄介です。
支援を受けるためには申請が必要となりますから、申請窓口で聞いてみましょう。
シングルファーザーの経済的支援や手当でお悩みの方は、まずは自治体ごとの申請窓口で相談すると良いでしょう。