「夫のDVから逃げて、子どもと一緒に実家へ避難している。このまま離婚するつもりだけれど、DVで離婚した場合、慰謝料の相場ってどのくらい?」
DVが原因で離婚する場合、夫に対する恐怖心から離婚成立を急ぐあまり、慰謝料請求については後回しになったり、あきらめたりする方も多いようです。
しかし、被害者が慰謝料を請求できるのは当然の権利ですし、DVから逃れられても離婚後の経済的な問題で立ち往生してしまうのは避けたいところです。
この記事が、あなたが適正な慰謝料を獲得するための一助となれば幸いです。
この記事を読んでわかること
- DV離婚の慰謝料相場
- 慰謝料増額のポイント
- DVで高額な慰謝料が認められた裁判例
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
離婚による慰謝料請求の主なケースは?
そもそも離婚の際の慰謝料は、配偶者が不法行為(民法709条)に該当する行為を行い、それが原因で離婚することになった場合でなければ請求できません。
離婚の際に慰謝料を請求できるケースは、例えば次のようなものです。
- DVやモラハラ
- 不倫(不貞行為)
- 悪意の遺棄(生活費を一切入れない、など)
DV夫が怖いので早く離婚してしまいたいのです。
離婚してしまうと、慰謝料は請求できなくなるのですか?
いいえ。離婚後でも元夫に対して慰謝料を請求することはできます。
ただし、離婚の際の慰謝料は、離婚成立後3年で時効が成立し、原則としてそれ以降は慰謝料を請求できなくなります。先に離婚を成立させるつもりなのであれば、その点にご注意ください。
離婚慰謝料の時効について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
DVが原因で離婚となるケースの慰謝料相場と増額のポイント

DVが原因の離婚慰謝料の相場は、裁判になった場合、数十万~300万円の範囲内であることが一般的です。
もっとも、裁判には至らず、話し合いによって解決する場合には、相手が相場以上の金額を慰謝料として支払うことに同意するケースもあります。
少しでも高額な慰謝料を獲得するためには、増額事情について主張することが効果的ですので、次で紹介するような事情がないかご確認ください。
慰謝料金額の決定要素と証拠の重要性
慰謝料を増額する事情は、次のとおりです。
【増額事情の具体例】
- DVによって受けたストレスで精神疾患(PTSDなど)に発展してしまった
- DVによって受けた怪我によって長期治療が必要になったり、後遺症が残ってしまったりした
- 結婚していた期間が長く、DVを受けていた期間も長期間におよんでいる
- 未成熟子(まだ経済的に自立していない子ども)がいる、またはその人数が多い
このような事情が存在する場合、有益と思われる証拠があればできるかぎり確保しておくようにしてください。
例えば、DVが原因で病院を受診したことがあるのなら、診断書や診察代や薬代の明細書を保管しておくべきでしょう。
また、日記を付けているのであれば、DVを受けた日時やその内容・心情などを事細かに記載しておけば、DVを受けた証拠になる可能性があります。その際は、客観的な信頼性を担保するために、その日の天気や時事ニュースはもちろん、第三者にDVについて相談したのであれば、そのことを詳細に記載しておくとより良いでしょう。
なお、DVだけではなく、配偶者が不倫をしているのであれば、その証拠(配偶者が他の人と肉体関係を持ったことがわかるもの)も確保しておくことをお勧めします。
不貞行為(基本的には肉体関係をともなう不倫)も慰謝料請求の対象となりますので、慰謝料が上乗せされる可能性が高まります。
不貞行為の証拠について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
DVが原因で高額な慰謝料が認められた裁判例
実際に、DVによる離婚で高額な慰謝料が認められた例をご紹介します。
800万円の慰謝料が認められた裁判例
事案 | 夫からの暴力を原因とする慰謝料請求 |
認められた慰謝料の金額 | 800万円 なお、財産分与として100万円が認められ、合計900万円の支払いが命じられている |
婚姻期間 | 17年 |
子ども | あり(2人) |
請求相手 | 夫 |
概要 | ・夫は結婚当初から妻に対して暴力を匂わせる言動を行っていた ・妻の体調や意思を無視し、性行為を強要し、応じなければ暴力を振るっていた ・妻は自殺未遂を繰り返していた ・夫の暴力が原因で、妻はPTSDと診断された ・妻への暴力は、子どもの面前で行われた ・妻だけでなく、子どもにも暴力が及ぶことがあった |
ポイント | ・婚姻期間が17年と長期間に及ぶこと ・PTSDと診断されるなど、妻が受けていた精神的苦痛が大きいこと ・妻への暴力は子どもの面前でも行われ、子どもにも暴力が及ぶなど、子どもに対する悪影響も重大なこと |
参考:神戸地裁判決平成12年(タ)第114号|裁判所 – Courts in Japan
離婚後の生活について
DVがあってもなかなか離婚に踏み切れない理由として、経済的に自立しておらず、離婚後の生活に不安があるというものがあるようです。
しかし、ご紹介した裁判例からもわかるように、DVはときに本人だけでなく子どもたちの命にもかかわる恐ろしい行為であり、DVの加害者である配偶者とはできるだけ早く離れる必要があります。
離婚後の生活のためには、さまざまな機関が支援を行っています。
このような支援を活用し、ご自身やお子さんの身の安全を最優先してください。
生活資金の確保のためには、生活保護制度や児童扶養手当、生活福祉資金貸付制度、母子父子寡婦福祉資金貸付金制度、児童手当などがあります。
職業相談や就職のための訓練などは、ハローワークに相談することも考えてみてください。
母子家庭に対する支援について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
母子家庭の生活費については、こちらの記事もご覧ください。
【まとめ】DVによる離婚の慰謝料相場は数十万~300万円|怪我の程度など、事情によっては増額もあり得る
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 離婚の際に慰謝料を請求できるケースは、DVのほかにも、モラハラ、不貞行為、悪意の遺棄などがある
- DVが原因で離婚となるケースの慰謝料の相場は数十万~300万円程度だが、それより高額の慰謝料が認められる場合もある
- 慰謝料を増額するためにも、怪我をさせられた際の診断書等の証拠は確保しておこう
- 経済的な理由でDVがあっても離婚に踏み切れない人は、各種支援を利用しよう
DVの被害を受けている場合、配偶者と顔を合わせることすら怖いと感じるのは当然のことです。
しかし、被害者であるあなたが慰謝料を請求することは当然の権利です。
請求をためらって泣き寝入りするのではなく、配偶者に対し慰謝料を請求してはいかがでしょうか。
弁護士に依頼すれば、交渉窓口は弁護士になりますので、配偶者本人と直接接触する機会を大幅に減らすことができます。
DVによる離婚や慰謝料請求でお困りの方は、DV相談を取り扱っている公的機関や、離婚問題を取り扱っている弁護士に相談してみることをお勧めします。
アディーレ法律事務所では、離婚問題のご相談を承っております(※)。
(※なお、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。)
また、アディーレ法律事務所では、安心してご依頼いただけるよう、離婚問題について、ご依頼の目的を全く達成できなかったような場合には、ご依頼時にお支払いいただいた基本費用などを原則として返金いたしますので、費用倒れになることは原則ありません(2024年8月時点)。
離婚でお悩みの方は、離婚問題を積極的に取り扱っているアディーレ法律事務所(フリーコール|0120-554-212)にご相談下さい。