「夫(妻)が不倫した」「夫のDVで心身ともに限界…」。
もしあなたが今、そうした精神的な苦痛に耐えながら、離婚後の経済的な不安を抱えているなら、どうか一人で抱え込まないでください。
配偶者の不貞行為等の行為により精神的苦痛を被って離婚に至った場合、あなたは慰謝料を請求できる可能性があります。
この記事では、弁護士が精神的苦痛による離婚慰謝料の請求可否、相場、そして慰謝料を獲得するために必要な証拠や手続きの流れを、具体的なケースを交えて解説します。
あなたの苦しみを終わらせ、新しい人生の一歩を踏み出すために、ぜひこの記事を参考にしてください。
ここを押さえればOK!
慰謝料額は、有責行為の程度、婚姻期間、子どもの有無などを考慮し、ケースバイケースで算定されます。例えば、不貞行為が原因で離婚に至った場合の、裁判上の慰謝料相場は100万円~300万円程度です。
DV(身体的暴力)や悪意の遺棄(生活費を渡さない、一方的な別居など)、不貞行為は、慰謝料が認められる可能性があります。しかし、単なる夫婦間の意見の対立や性格の不一致だけでは慰謝料請求は難しいでしょう。
慰謝料請求には、証拠が重要です。DVなら診断書や写真、悪意の遺棄なら銀行取引履歴、不貞行為ならラブホテルに出入りする写真やメッセージ記録などが有効です。
手続きは、まず証拠収集と準備から始まり、協議、調停、そして必要に応じて訴訟へと進みます。
慰謝料だけでなく、あなたの心身の健康のためにも、精神科医やカウンセラー、配偶者暴力相談支援センターなどの専門機関も活用しましょう。
離婚は大きな決断です。一人で抱え込まず、アディーレ法律事務所にご相談ください。
精神的苦痛が理由で離婚する場合、慰謝料は請求できる?
離婚慰謝料は、離婚によって被る精神的苦痛を慰謝するために金銭的賠償です(民法709条、710条)。
慰謝料請求が認められるためには、配偶者に不貞行為などの有責行為が存在しなければなりません。
また、配偶者の有責行為の他、それが婚姻関係の破綻の原因になったこと、離婚により精神的苦痛を受けたことなどの条件が必要です。
慰謝料額を算定する基準は何?
慰謝料は、精神的苦痛に対する金銭的賠償です。ただ、有責行為の程度、離婚までに至る家庭や事情、個々人によって受ける精神的苦痛の程度は異なります。
したがって、法律で、客観的に一律の基準が定められているわけではありません。
次のような事情を考慮して、ケースバイケースで慰謝料を算定します。
- 有責行為の程度
- 精神的苦痛の程度
- 婚姻期間
- 子どもの有無 等
不貞行為が原因で離婚に至った場合、裁判上の慰謝料の相場は100万円~300万円程度です。交渉では、この相場より低いことも高いこともあります。
不貞行為の慰謝料の相場について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
離婚慰謝料が認められる具体的なケースとは
精神的苦痛による慰謝料が認められるのは、その苦痛が配偶者の不法行為によって引き起こされた場合です。
具体的には、以下のような行為が該当します。
(1)DV(身体的暴力)
DV(ドメスティックバイオレンス)、殴る蹴るなどの身体的暴力は、代表的な有責行為です。
DVが原因で婚姻関係が破綻して離婚した場合には、DVの程度やケガの程度など事情によって金額は異なりますが、慰謝料請求が認められる可能性があります。
身体的暴力とは評価できない粗暴な言動については、慰謝料が認められる可能性は低くなります。
(2)悪意の遺棄(生活費を渡さない、一方的な別居など)
悪意の遺棄とは、正当な理由なく同居・協力・扶助義務(民法752条)などの夫婦間の義務を守らない行為を指します。
ここでいう「悪意」とは、単なる無関心では足りません。配偶者を見捨てたりして、積極的に婚姻関係を壊そうとするか、それを認容する意思が必要だと考えられています。
また、一時的な行動ではなく、長期間にわたって継続的であることも必要です。
たとえば家庭を顧みずに長期間家を空けて同居義務を果たさない、長期間にわたって生活費を払わずに家族の生活を困窮させる、などの行為が該当します。
条件が厳しいので、悪意の遺棄の成立が争いの点になると、裁判で認められることは難しいかもしれません。
(3)不貞行為
不貞行為は、夫婦間の貞操義務に反して配偶者を精神的に傷つける行為であり、慰謝料請求の最も典型的なケースです。
不貞行為は、基本的に肉体関係を伴う浮気が該当し、単発のデートやプレゼントを渡す行為などは不貞行為とはなりません。
慰謝料の金額は、婚姻期間、不貞行為の期間や頻度、未成熟子(経済的精神的に独立していない子)の有無、夫婦関係への影響などの事情によって変動します。
精神的苦痛があっても慰謝料が認められないケース
離婚により精神的苦痛を受けたとしても、全てが慰謝料の対象となるわけではありません。
夫婦間の些細な意見の対立や性格の不一致
夫婦であれば誰にでも起こりうる程度の言い争いや、単なる性格の不一致では、配偶者に有責行為があるとは言えないので、慰謝料は認められません。
精神的苦痛で慰謝料を請求するために必要な証拠
精神的苦痛による慰謝料請求において、最も重要になるのが証拠です。
証拠がなければ、たとえ相手の行為で深く傷ついていたとしても、相手が行為を認めなかった場合、有責行為があったことを証明できないためです。
次のように、有責行為の種類によって、集めるべき証拠は異なります。
(1)DVのケース
- 暴力を受けてできたケガの写真
- 医師の診断書やカルテ
- 日記
- 暴力の様子が分かる録画・録音データ
- 暴力について第三者に相談したメッセージや記録
- 第三者の証言 など
(2)悪意の遺棄のケース
- 銀行の取引履歴(生活費を貰っていない証拠として)
- 住民票(別居の証拠として)
- メールやメッセージの記録
- 第三者の証言 など
(3)不貞行為のケース
- ラブホテルに出入りする写真(肉体関係があった証拠として)
- LINEなど不貞相手とのやりとり(肉体関係があったこと、不貞相手が既婚者と知っていたことの証拠として)
- ラブホテルなどの領収書、クレジットカードの利用明細
- 配偶者が不貞行為を自白した録音(書面) など
不貞行為の証拠について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
精神的苦痛について離婚慰謝料を請求する手続きの流れ
離婚慰謝料を請求する際の手続きは、主に以下のステップで進みます。
(1)証拠収集と準備
まずは、これまで説明してきたような客観的な証拠をできる限り多く集めます。
証拠が十分かどうかは、いくら請求するか、慰謝料の他の離婚条件などについては、後悔のない離婚のために、事前に弁護士に相談するとよいでしょう。
自分で交渉することも可能ですが、配偶者と交渉するのは労力と精神的負担がかかりますので、弁護士に交渉を依頼することも検討ください。
(2)協議・調停による話し合い
方針が決まったら、相手方と慰謝料について直接話し合い(協議)を進めます。
お互いが合意に至れば、合意書や離婚協議書を作成し、慰謝料の支払い方法などを定めます。もし協議で合意に至らない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
調停では、調停委員が間に入って離婚や慰謝料の話し合いを仲介し、双方が納得できる解決策を探ります。
調停で合意が成立すれば、調停調書が作成され離婚が成立します。調停離婚の成立日から10日以内に、調停調書の謄本とともに離婚届を提出する必要があります。
離婚調停について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(3)裁判で離婚を目指す
調停でも合意に至らなかった場合、最終手段として離婚訴訟を提起することになります。
訴訟では、裁判官が双方の提出した証拠に基づき、法律上の離婚原因の有無や慰謝料額などついて判断を下します。
裁判は時間と一定の費用がかかりますが、相手方が交渉に応じない場合には有効な手段です。
訴訟を提起する際は、事前に離婚が認められる可能性を検討する必要があり、書面の作成などの知識も必要となるため、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。
裁判離婚について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
新しい人生を歩むための相談先
精神的苦痛は、一人で抱え込まず、適切なサポートを求めることが大切です。
慰謝料請求だけでなく、あなたの心身の健康と新しい人生をスタートさせるために、以下のような相談先を活用しましょう。
(1)専門機関(精神科医、カウンセラーなど)
配偶者の行為が原因で心身に不調をきたしている場合は、精神科医や心療内科医の診察を受けることを検討しましょう。
適切な治療を受けることで、症状が改善し、精神的な安定を取り戻す助けとなるでしょう。また、カウンセラーに相談することで、心の整理をつけたり、ストレス対処法を学んだりすることも可能です。
これらの専門家は、あなたの症状や状況を客観的に評価し、診断書の発行や専門的な助言をしてくれます。
(2)行政機関(配偶者暴力相談支援センター、警察など)
DVで悩んでいる場合は、各自治体に設置されている配偶者暴力相談支援センター(DV相談ナビ #8008)に相談することができます。
ここでは、専門の相談員があなたの話を聞き、今後の対応策や関係機関の紹介、一時保護施設の案内など、様々な支援を行っています。警察に相談することも選択肢の一つです。暴力の危険がある場合は、迷わず警察に連絡しましょう。
(3)弁護士
慰謝料請求や離婚手続きを進める上で、弁護士はあなたの心強い味方となります。
弁護士は、法律の専門家として以下のサポートを提供します。
- 慰謝料請求の可否や相場の判断
- 必要な証拠の収集アドバイス
- 相手方との交渉の代行
- 離婚調停や訴訟手続きの代理
- 離婚後の生活に関する法的アドバイス など
離婚は、大きな決断です。1人で悩まず、一度、弁護士に相談してみてください。
【まとめ】配偶者の有責行為が原因で離婚したら慰謝料請求の可能性あり
配偶者のDVや不貞行為などの有責行為は、あなたの信頼を裏切り、希望を失わせてしまうほど辛いものかもしれません。
しかし、一度冷静になって、有責行為を原因とする離婚の際には、配偶者に離婚慰謝料を請求できるかどうか検討しましょう。受けた精神的苦痛について、あなたには慰謝料を請求できる権利があるかもしれません。慰謝料は、新しい人生をスタートさせるための経済的基盤となることもあります。
あなたの勇気ある一歩が、未来への扉を開くことになります。
離婚を検討されている方は、一度アディーレ法律事務所にご相談ください。