モラハラ(モラル・ハラスメント)による精神的苦痛は、離婚後も長く尾を引くことがあります。
しかし、多くの方がモラハラから早く解放されたいあまりに離婚成立を優先させ、モラハラの慰謝料については諦めてしまっているのが現状です。
そもそも、離婚慰謝料を離婚時にしか請求できないという決まりはありません。
この記事が自身の権利を守り、新たな人生を歩み出すための一助となれば幸いです。
ここを押さえればOK!
立証には日記、メッセージ、録音データなどの証拠が効果的で、第三者の証言や診断書も有用な場合があります。
慰謝料の相場は数十万から300万円程度ですが、ケースにより異なります。
離婚後の請求では相手の反論への対処や精神的ケアが重要です。他の離婚原因による慰謝料も同時に請求可能ですが、証拠が必要です。相手にしっかりと支払ってもらうために、強制執行認諾文言付きの公正証書の作成も検討すべきです。
モラハラによる慰謝料請求は離婚後も可能か
離婚後のモラハラによる慰謝料請求は、一定の条件下で可能です。多くの方が離婚する際に慰謝料請求を行いますが、離婚後には一切請求できなくなるわけではありません。
ただし、離婚後の慰謝料請求には注意点もあります。
まず、モラハラの事実と被害の立証が重要です。離婚前に比べて証拠収集が難しくなる可能性が高いため、日頃からモラハラについての記録を残し、それらを保管するようにしましょう。
また、時効にも注意が必要です。
詳しくは後述しますが、離婚慰謝料の時効は、基本的に離婚から3年です。
モラハラを理由に慰謝料請求するには
不倫(不貞行為)やDVだけでなく、モラハラも離婚の慰謝料請求の理由になり得るとされています。
モラハラが離婚の一因となっていたのであれば、請求を検討する余地はあるでしょう。
(1)慰謝料請求が認められる条件
モラハラによる慰謝料請求が認められるには、民法上の不法行為の要件を満たす必要があります。
まず、配偶者による人格を否定する言動といった精神的虐待などの加害行為が存在し、その行為によって精神的苦痛(損害)を受けたことを立証できなければなりません。
また、加害者に故意または過失があったことも示す必要があります。さらに、因果関係、つまりモラハラ行為と精神的苦痛の間に明確な関連性があることも求められます。
(2)モラハラの定義と具体例
モラハラとは、モラル・ハラスメントの略で、言葉や態度による精神的な攻撃、嫌がらせを指します。
具体的には、人格を否定する言動、常に批判や否定をする、無視や軽視、過度の干渉や束縛、経済的な制限などが挙げられるでしょう。
たとえば、「お前はダメだ」と繰り返し言う、実家や友人との付き合いを制限する、生活費を渡さないなどの行為です。これらの行為が継続的に行われ、被害者に著しい精神的苦痛を与える場合、モラハラと認定される可能性が高くなります。
モラハラは外見上わかりにくいため、日頃から記録を取っておくことが重要です。
(3)離婚の慰謝料請求の時効
モラハラを理由とする離婚慰謝料請求の時効は、一般的な不法行為の場合と同様に扱われます。具体的には、モラハラ行為の事実と加害者を知った時から3年間、または最後のモラハラ行為があった時から20年間のいずれか早い方が時効となります。
そして、配偶者に対する離婚慰謝料の時効は、「離婚の日」から3年です。
つまり、離婚後であっても離婚慰謝料の請求は可能ですが、離婚から3年が過ぎると時効にかかってしまいます。
離婚後の生活環境の変化に対応しているうちに、3年は意外とあっという間に過ぎてしまうため、証拠を整理し、なるべく早いタイミングで請求することが重要です。
モラハラの立証方法
モラハラに限らず、慰謝料請求には基本的に証拠が必要です。
そこで、モラハラ効果的な証拠や立証方法をご紹介します。
(1)効果的な証拠の種類と収集のコツ
モラハラの立証には、具体的かつ客観的な証拠が不可欠です。
効果的な証拠は、たとえば次のとおりです。
- モラハラ行為の日時・内容を記録した日記やメモ
- LINE等のメッセージ
- 録音データ
- 写真や動画
特に重要なのは、行為の継続性や悪質性を示す記録です。
収集のコツとしては、日々の出来事を具体的に記録すること、感情的にならず事実のみを淡々と記すこと、可能な限り第三者の証言を得ることが挙げられます。
また、証拠収集の際は相手に気付かれないよう注意し、必要に応じて弁護士に相談しながら進めることが賢明です。
(2)第三者の証言や診断書の活用
モラハラの立証において、第三者の証言が重要な証拠となることもあります。
第三者(友人、家族、同僚など)がモラハラ行為を目撃しており、その証言に信用性が認められる場合、その証言は有力な証拠になり得ます。
また、モラハラによる精神的苦痛を裏付けるため、医療機関の診断書も効果的です。うつ病や不安障害などの診断があれば、より具体的な被害の実態を示すことができるでしょう。
これらの証拠を活用する際は、証言の信用性や、診断結果とモラハラ行為との因果関係に注意を払い、弁護士と相談しながら慎重に進めることが重要です。
モラハラによる慰謝料の相場
モラハラによる慰謝料の相場は、ケースによって大きく異なりますが、裁判になった場合、一般的には数十万から300万円程度が相場です。
ただし、モラハラの程度や期間、被害者の受けた精神的苦痛の大きさなどによって金額は変動します。
具体的な金額は、裁判所が諸事情を考慮して決定します。慰謝料請求を検討する際は、弁護士に相談し、自身のケースに適した金額を見極めることが重要です。
離婚後のモラハラ慰謝料請求で注意すべきこと
モラハラを理由に離婚後の慰謝料請求をする際に予想される相手からの反論や、注意点について解説します。
(1)相手の反論や対抗措置への対処法
モラハラによる慰謝料請求を行う際、相手からの反論や対抗措置に備えることが重要です。
よくある反論として、「それは愛情表現だった」「相手も悪かった」などがあります。
これらに対しては、具体的な証拠を示しながら、行為の悪質性や一方的な加害性を立証することが有効です。
また、相手が逆に慰謝料を請求してくる可能性もあります。
このような場合、冷静に事実関係を整理し、相手の請求に根拠がないことを示す証拠を準備することが大切です。
感情的にならず、弁護士と緊密に連携しながら対応策を練ることで、相手の反論や対抗措置を効果的に退けることが期待できます。
(2)精神的ケアの重要性と専門家への相談
モラハラ被害者にとって、精神的ケアは慰謝料請求と同様に重要です。長期間のモラハラにより、うつ症状やPTSD、自尊心の低下など深刻な心の傷を負っていることが多いからです。
精神科医や心療内科医による診察とカウンセリングは、心の回復と自立を助け、新しい生活への一歩を踏み出す力となります。
また、医師による診断書は、慰謝料請求の有力な証拠にもなり得ます。
慰謝料請求などの法的手続きと並行して、適切な専門家に相談し、自身の心のケアを優先することが、長期的な幸福と健康な生活の実現につながるでしょう。
離婚後の慰謝料請求におけるよくある質問
(1)モラハラ以外の慰謝料も一緒に請求できる?
モラハラによる慰謝料請求時に、他の離婚原因による慰謝料も併せて請求することは可能です。
たとえば、配偶者の不貞行為や暴力(DV)などがあった場合、これらも慰謝料の対象となり得ます。
複数の理由を挙げることで、慰謝料の増額につながる可能性があります。
ただし、各々の事由について十分な証拠が必要です。
また、請求の際は各事由の具体的内容や期間、精神的苦痛の程度などを示すことが重要です。複数の請求事由がある場合、事案がより複雑になるため、弁護士に相談し、適切な請求方法や金額を検討することをおすすめします。
(2)相手に支払能力がない場合はどうすればいい?
相手に支払能力がない場合でも、慰謝料請求自体は可能です。ただし、実際の回収は困難になる可能性が高いと考えられます。
このような状況では、まず相手の資産状況を詳しく調査することが重要です。支払能力が本当にない場合、分割払いや支払い猶予などの柔軟な対応を検討しつつ、強制執行認諾文言付きの公正証書を作成することをおすすめします。
この公正証書があれば、約束した支払いが滞った際に、スムーズに給料の差押えなどの強制執行をすることが可能になります。
ただし、作成には相手の同意が必要なため、弁護士と相談しながら交渉の対策を講じることが重要といえるでしょう。
【まとめ】
モラハラによる離婚後の慰謝料請求は、適切に対応すれば可能です。しかし、証拠の収集や法的手続きの複雑さ、相手の反論への対処など、多くの課題があります。
また、精神的なケアも重要です。これらの問題に一人で立ち向かうのは困難なので、あなたの幸せな未来のために、専門家のサポートを受けることをためらわないでください。