妻の不倫が発覚したとき、目の前が真っ暗になるほどの衝撃を受けるでしょう。信頼していたパートナーの裏切りは、怒り、悲しみ、絶望…さまざまな感情をあなたにもたらします。しかし、この困難な状況を乗り越え、新しい人生を歩むためには、冷静な対処と適切な知識が不可欠です。
この記事では、妻の不倫というデリケートな問題に直面した夫が、離婚を検討する際に知っておくべき手続、慰謝料、子どものこと、財産分与、そして何よりもあなたの未来について、弁護士が具体的な情報とアドバイスを提供します。
ここを押さえればOK!
その後、関係修復か離婚かを冷静に判断し、離婚を選択する場合は以下の5つの項目について検討します。
1.慰謝料: 離婚慰謝料の相場は100万円~300万円程度。
2.子どもの親権と養育費: 母親の不倫があっても、監護実績のある母親が親権を得やすい傾向にあります。
3.財産分与: 夫婦の協力で築いた財産は原則折半。
4.離婚までの生活費(婚姻費用): 別居中の夫婦には扶助義務があり、収入が低い方が高い方へ請求できます。妻の不倫が原因でも妻の収入が低い場合は夫が支払う義務が生じます。
5.年金分割: 婚姻期間中の厚生年金・共済年金の記録を分割する制度。不倫が原因の離婚でも適用されます。
離婚方法は協議、調停、訴訟の3種類があります。交渉を有利に進めるには、証拠準備、冷静な態度、法的知識、妥協点の模索、そして弁護士の活用がポイントです。
妻が不倫を認めない場合でも証拠があれば慰謝料請求は可能です。弁護士に相談することで、適切な慰謝料算定、親権・養育費・財産分与交渉を代わりにしてくれる、精神的負担を軽減できる可能性などのメリットがあります。
妻の不倫でお悩みの方は、一人で抱え込まず、アディーレ法律事務所へご相談ください。
妻の不倫発覚!まず夫がすべきこと
妻の不倫を知った時、怒りや悲しみで正常な判断が難しくなるのは当然です。
しかし、この段階での冷静な行動が、今後のあなたの状況を大きく左右します。
まず行うべきは、感情的な行動を避け、事実確認と今後のための準備です。衝動的に妻を問い詰めたり、不倫相手に連絡を取ったりすることは、かえって事態を悪化させ、証拠収集の機会を失う可能性もあります。
深呼吸をして、冷静に対処する第一歩を踏み出しましょう。
(1)証拠の確保が重要
不倫を理由に離婚を進めたり、慰謝料を請求したりするためには、証拠があることがポイントになります。感情的な訴えだけでは、「不倫なんてしていない」と言い逃れされてしまうリスクがあります。
例えば、以下のようなものが有効な証拠となり得ます。
- LINEやメールのやり取り:肉体関係があったことが分かる内容
- 写真や動画:不倫相手とラブホテルに出入りする様子など
- ICレコーダーによる録音:妻や不倫相手が不倫を認める発言や、不倫の事実がわかる会話
- クレジットカードの利用履歴:不倫相手との飲食代や宿泊費の支払い
不倫の証拠の集め方について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)離婚するのか、関係修復するのか冷静に判断する
不倫の事実を知った後、すぐに「離婚」と結論を出す必要はありません。
あなたの心の整理が最優先です。時間をかけて、妻との関係を今後どうしたいのか、冷静に判断しましょう。
(2-1)関係修復を選択する場合
妻が心から反省し、再構築に向けて努力する姿勢が見られるか、夫婦関係の問題点に真摯に向き合えるかなどが判断基準となります。
この場合でも、二度と不倫をさせないための誓約書を交わすなど、具体的な対策を講じることを検討してください。
(2-2)離婚を選択する場合
不倫によって夫婦関係が完全に破綻したと感じ、関係修復が不可能だと判断した場合は、離婚に向けて具体的な準備を始めることになります。
この決断は、あなたの今後の人生を左右する重要なものです。焦らず、そして後悔のない選択をするために、離婚の際に注意すべきことなどについて、弁護士に相談する事をお勧めします。
妻の不倫を理由に離婚する場合に決めるべき5つのこと
離婚する際には、決めるべきことがたくさんあります。特に重要な5つのことについて、説明します。
(1)離婚慰謝料を請求できる?その相場は?
妻の不貞行為(肉体関係を伴う不倫)が原因で夫婦関係が破綻し、離婚となった場合には、受けた精神的苦痛について、妻に対して離婚慰謝料を請求できます。
(1-1)慰謝料の相場と請求時に考慮すべき要素
離婚慰謝料の金額は、ケースによって異なりますが、裁判上は100万円から300万円程度が相場とされています。
以下の要素が慰謝料の金額に影響を与えると考えられています。
- 不倫の期間や頻度:長期間にわたる不倫や頻繁な不貞行為は、高額になる傾向があります。
- 婚姻期間:婚姻期間が長いほど、慰謝料が高くなる可能性があります。
- 幼い子ども:幼い子どもがいる場合、慰謝料の増額理由とされることがあります。
- 不倫の悪質さ:不倫相手が積極的に婚姻関係を破壊する言動をとったなど、特に不倫が悪質な場合には、増額理由となることがあります。
- 不倫による妊娠:不倫により不倫相手が妊娠・出産した事情がある場合、慰謝料の増額理由となることがあります。
請求額が相場と比べて高すぎると、かえって交渉がまとまらない原因にもなりかねません。適正な金額を見極めるためには、事前に弁護士に相談し、個別の状況を踏まえたアドバイスを受けることが賢明です。
(1-2)不倫相手への慰謝料請求も可能か
不倫を理由とする慰謝料請求は、大きく次の2つに分かれます。
- 不貞慰謝料:不貞行為で被った精神的苦痛を慰謝するお金
- 離婚慰謝料:不貞行為により離婚して被った精神的苦痛を慰謝するお金
妻の不倫相手に対して、「不貞慰謝料」を請求できる可能性はありますが、「離婚慰謝料」は基本的に請求することができません。
離婚した原因に不倫相手が関係していても、離婚を決断したのは夫婦の問題なので、原則として離婚に不倫相手は関係ないと考えられるためです。
不貞慰謝料と離婚慰謝料の違いについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)子どもの親権と養育費について
未成年の子どもがいる場合、離婚の際には両親のどちらが親権者になるか決める必要があります。
話し合いで決められない場合には、調停や裁判で親権者を決めることになります。
※改正民法施行後(令和8年5月ころまでに施行予定)は、共同親権も選べるようになります。
(2-1)妻の不倫があっても親権は母親が有利な理由
妻が不倫をした事実があっても、子どもの親権は母親が有利となる傾向にあります。
これは、子どもを主に監護しているのが母親であることが多く、親権者を決める際にそれまでの監護実績が考慮されるためです。
これまで主に子どもを養育してきた親(多くの場合、母親)が引き続き養育するのが、子どもの環境変化による負担が少ないと考えられています。
母親の不倫は、親権の判断において全く考慮されないわけではありませんが、それだけで親権が父親に移る、ということではありません。
(2-2)父親が親権を獲得できるケースとは
父親が親権を獲得できるのは、以下のようなケースと考えられます。
- 母親が、親権を父親が保有することに同意した場合
- 母親に、育児放棄や虐待などの重大な問題がある場合
- 父親が専業主夫など、これまで子どもの主たる監護者であった場合
- 夫婦が別居しており、子どもが父親と長期間安定した生活を送っている場合
- 子どもが15歳以上で、父親との生活を強く希望している場合 など
これらの状況に当てはまる場合でも、父親が親権を得るためには、自身のこれまでの監護実績や、今後の監護の意思や能力を具体的に示し、子どもにとって父親と暮らすことが最善であると裁判所に納得させる必要があります。
親権についての基礎知識や、父親が親権を得るための交渉ポイントなど、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2-3)養育費の算定基準と支払い義務
養育費は、子どもの生活や教育のために必要な費用であり、親が不倫をしたかどうかに関わらず、子どもを監護しない親が支払う義務を負います。
養育費の金額は、主に以下の要素で算定されます。
- 夫婦双方の収入(学歴や職歴も考慮される)
- 子どもの年齢と人数
裁判所が公表している「養育費算定表」が一般的な目安となります。
離婚後も子どもが経済的に困窮しないよう、適切な養育費を取り決めることが重要です。
養育費の相場や、金額の決め方など、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(3)夫婦の財産分与について
離婚の際には、夫婦が築き上げてきた財産についても、どう分けるか話し合う必要があります。
(3-1)財産分与の原則は折半
財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築き上げた財産を清算することを目的としています。
この際、夫婦それぞれの寄与度に応じて財産を分け合うことになりますが、特別な事情がない限り、原則として折半とされます。
例えば、夫が会社員で妻が専業主婦であったとしても、妻の協力が夫の収入に貢献したとみなされ、夫婦の財産は共同で築いたものと評価されます。
財産分与の基本、対象となる財産とならない財産など、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(3-2)不倫と財産分与は切り離して考える
妻の不倫の事実と財産分与は、基本的に関係ありません。
不倫は、夫婦関係を破綻させて精神的苦痛を受けたことに対する「慰謝料」の問題であり、財産分与は婚姻中に形成された「夫婦共有財産の清算」という、法的に異なる問題として扱われます。
そのため、妻が不倫をしたからといって、財産分与の割合が夫に有利になることは原則としてありません。
ただし、離婚原因などを考慮したうえで、一方の財産分与の割合を多くする、という事は話し合いにより可能です。
(3-3)財産分与の対象となる財産、ならない財産
財産分与の対象となる財産は、以下のものが挙げられます。
- 預貯金
- 不動産
- 自動車
- 有価証券
- 退職金
- 年金(年金分割)
結婚後に形成した財産は、たとえ一方の名義であったとしても、夫婦が協力して形成した財産という実質があれば、共有財産として財産分与の対象となります。
一方、財産分与の対象とならない財産(特有財産)は以下の通りです。
- 独身時代に貯めた預貯金や購入した財産
- 相続や贈与によって得た財産
これらの特有財産は、夫婦の協力とは無関係に形成されたものとみなされます。
独身時の預金が離婚でどうなるのか、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(4)離婚までの生活費(婚姻費用)について
離婚までに、別居を挟む夫婦は多いです。離婚が成立するまでの間、夫婦は互いに経済的に扶助し合う義務がありますので、別居中でも婚姻費用を負担する必要があります。
基本的に、収入が低い方が、収入が高い方に対して請求できます。
たとえ妻の不倫が原因で別居に至ったとしても、妻が夫よりも収入が少ない場合には、夫は妻に対して離婚が成立するまでの間、婚姻費用を支払う義務が生じることになります。
婚姻費用の金額は、養育費と同様に、夫婦双方の収入や生活状況に応じて算定されます。
婚姻費用の計算方法や請求手続きなど、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(5)年金分割について
妻がずっと専業主婦である場合、妻は自己名義の厚生年金に入っていないことになるでしょう。そこで離婚するにあたっては、会社勤めの夫の年金分割により、自分の年金を確保しようとします。
年金分割の仕組みと手続き
年金分割とは、夫婦が婚姻していた期間中に納めた厚生年金や共済年金の保険料記録を、夫婦共同で収めたことにして分割し、それぞれが自身の年金記録とした上で、将来年金を受け取れるようにする制度です。
特に、婚姻期間中に専業主婦であったり、パートタイムで働いていたりした妻にとっては、離婚後の生活保障として非常に重要な制度となります。
分轄の方法は以下の2とおりです。
- 合意分割:夫婦の合意または裁判所の決定により、按分割合(分割割合)を定める方法
- 3号分割:2008年4月以降の国民年金第3号被保険者(専業主婦など)期間について、相手の同意なしに2分の1に分割できる方法
妻の不倫が原因で離婚に至る場合でも、この年金分割の制度は適用されます。
将来の生活設計を考える上で、年金分割の具体的な手続きや、自分がどの程度の年金を受け取れるのかを確認することは非常に重要です。
離婚に伴う年金分割について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
離婚する方法は3種類|協議、調停、訴訟
夫婦間の話し合い(協議離婚)で離婚条件に合意できれば、それが最も円満かつ迅速な解決方法です。しかし、感情的な対立や条件面での隔たりが大きい場合、協議での解決は困難を極めます。その場合、以下の法的手段を検討することになります。
- 離婚調停:家庭裁判所に申し立てを行い、調停委員を介して話し合いを進める方法です。調停委員が中立的な立場で双方の意見を聞き、解決策を提示してくれます。話し合いの場が設けられるため、感情的になりやすい夫婦でも冷静に話し合える可能性があります。
- 離婚訴訟:調停でも合意に至らない場合、最終的な手段として裁判所に離婚訴訟を提起します。裁判官が双方の主張や証拠に基づき、法的な判断を下します。
調停離婚や離婚訴訟について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。
弁護士が教える!交渉を成功させるポイント
離婚交渉を有利に進めるためには、以下のポイントを意識することが重要です。
- 証拠の準備:慰謝料請求や親権獲得の根拠となる証拠を事前にしっかり準備しておくことが、交渉を有利に進めるための土台となります。
- 冷静な態度:感情的にならず、常に冷静な姿勢で話し合いに臨むことが大切です。感情的な言動は、相手を刺激し、かえって合意形成を遠ざける可能性があります。
- 法的な知識の理解:自身の主張が法的に妥当であるか、相手の主張は法的に根拠があるのかなど、基本的な法的知識を持つことで、粘り強く交渉できます。
- 妥協点の模索:全ての希望が叶うわけではありません。どこまで譲歩できるのか、何が絶対に譲れないのかを明確にし、柔軟な姿勢で妥協点を探ることも重要です。
- 弁護士の活用:弁護士は、あなたの代理人として交渉を代行し、法的な観点から最適なアドバイスを提供してくれます。相手方と直接交渉する必要がないので、ストレスの軽減にもつながる可能性があります。
「妻の不倫で離婚」に関するよくある質問(Q&A)
(1)夫が不倫していた場合、妻から慰謝料を請求できるのか?
はい、夫が不倫していた場合、妻から夫とその不倫相手に対し慰謝料を請求される可能性があります。
たとえ妻の不倫が発覚した後に夫が不倫をしてしまったとしても、それは別の不貞行為として扱われ、妻が夫とその不倫相手に対して慰謝料を請求する正当な理由となります。
お互いに不倫があった場合、双方で慰謝料を請求し合い、最終的に金額を相殺するという形になることもあります。
ただし、不倫をした時点で別居していて離婚の話し合い中であるなど、夫婦関係が破綻している場合には、慰謝料が発生しない可能性があります。
別居後の不倫で慰謝料が請求できるのかについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(2)妻が不倫を認めない。それでも慰謝料は請求できる?
不倫の自白は、不倫の証拠となります。
しかし、不倫の自白がない場合でも、肉体関係を伴う不倫があったことに繋がる証拠を確保していれば、最終的に裁判で慰謝料が認められる可能性があります。
確保できた証拠が慰謝料請求に十分な証拠か、事前に弁護士に相談すると、今後の見通しやアドバイスを受けることができるでしょう。
妻が不倫を認めないときの慰謝料請求について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
(3)弁護士に相談するメリットと費用について教えてください。
弁護士に相談するメリットは下記の通り複数あります。
- 適切な慰謝料額の算定と交渉: 過去の判例や実務に基づき、適正な慰謝料額を算定し、あなたに代わって相手方との交渉を行います。
- 親権や養育費の交渉: 子どもの利益を尊重しつつ、あなたの希望に沿った形で親権や養育費の決定をサポートします。
- 複雑な財産分与手続の支援: 不動産や株式など、分与対象となる財産を把握し手続を進めます。
- 精神的な負担の軽減: 感情的な対立を避け、冷静な交渉を行うことで、あなたの精神的な負担を軽減できる可能性があります。
まずは一度、弁護士に相談し、離婚や慰謝料の見通しや、解決までにかかる具体的な費用やサポート内容を確認してみることをおすすめします。
【まとめ】妻の不倫による離婚は一人で抱え込まず弁護士へ相談を
妻が不倫し離婚に至る状況で最も重要なのは、感情的にならず、証拠を確実に確保し、弁護士に相談することです。
これにより、慰謝料請求、親権、財産分与といった複雑な問題について弁護士があなたの意図を踏まえて適切な方針を経てて交渉することで、精神的な負担を軽減できる可能性があります。
未来は、あなたの手で切り開くことができます。
離婚をお考えの方は、まずは一歩踏み出し、アディーレ法律事務所にご相談ください。あなたの再出発を応援します。