「クレジットカードを使っているけれど、過払い金を請求できるのかな?」
過払い金と言えば、貸金業者からの借入を思い浮かべてクレジットカードは対象外だと思われる方もいるかもしれません。
しかし、クレジットカードによる借入についても過払い金請求ができることがあります。
過去にクレジットカードでキャッシングを利用していた方は、過払い金を請求できる可能性があります。
この記事を読んでわかること
- クレジットカードで発生する「過払い金」とは何か
- クレジットカードの過払い金を請求する条件
- クレジットカードの過払い金を請求する方法

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
クレジットカードで発生する「過払い金」とは?
「過払い金」とは、本来支払う必要がないのに、違法な金利のせいで貸金業者等に支払い過ぎてしまったお金のことです。
法律が改正された2010年までは、出資法が定める上限金利が利息制限法の上限金利を超えていました。
2010年頃までに契約した取引では、多くの貸金業者等は利息制限法の上限金利を超えて、出資法が定める上限金利の範囲内でお金を貸していました。
利息制限法の上限金利にあてはめて計算し直した場合に、利息としてお金を多く支払い過ぎていると、その分を返還するように請求することができます。
これが「過払い金請求」です。
クレジットカードによる過払い金を請求するための条件
私はクレジットカードを使っていただけなのですが、過払い金を請求できる可能性はありますか?
クレジットカードを使っていただけでも、過払い金を請求できる可能性はあります!
クレジットカードを使っていたことによって発生し得る過払い金を請求するためには、少なくとも次の条件にあてはまることが必要です。
- 過去にクレジットカードのキャッシングを利用していたこと
- 消滅時効が完成していないこと
これらについてご説明します。
※これらの条件にあてはまっていればただちに過払い金請求ができるということではないのでご注意ください。
(1)条件1|過去にクレジットカードのキャッシングを利用していたこと
クレジットカードの「キャッシング」とは、クレジットカードに付帯したサービスのことで、現金を借りられるサービスのことです。
2010年以前は、クレジットカードのキャッシングの利率は利息制限法の上限利率を超えていることが多くありました。
このため、2010年以前にクレジットカードのキャッシングを利用していた方は、過払い金を請求できる可能性があります。
(2)条件2|消滅時効が完成していないこと
仮に過払い金が発生していても、過払い金の「消滅時効」が完成していれば、もはや過払い金を請求することはできません。
「消滅時効」とは、何もしないままその期間を経過するともはやお金の請求などといった権利の行使ができなくなるという制度です。
過払い金の消滅時効期間は、基本的には、最後に取引をした日から10年です。
ただし、2020年4月1日以降に完済した場合には、最後に取引をした日から10年または過払い金請求ができることを知ってから5年が消滅時効期間となります。
たとえば、2001年4月1日にクレジットカードのキャッシングを使った借入れを開始し、さらなる借入や一部返済を繰り返しながら取引を続け、2018年4月1日に完済し、その後そのクレジットカード会社との間で新たな借入がなかった場合には、消滅時効が完成するのは10年後の2028年4月1日です。
この場合、2028年4月1日までに過払い金を請求しなければ、原則として、回収できる過払い金はゼロになってしまいます。
クレジットカードの過払い金を請求する方法とその流れ
クレジットカードの過払い金を請求する方法とその流れについて、ご説明します。
(1)流れ1|クレジットカード会社から取引履歴を取り寄せる
まずは、過払い金の有無を確認します。
過払い金の有無を確認するためには、クレジットカード会社との取引が全て記載されている取引履歴を取り寄せる必要があります。
クレジットカード会社との取引履歴は、取引をしていた本人やその依頼を受けた弁護士等がクレジットカード会社に対して請求することで、取り寄せることができます。
(2)流れ2|引き直し計算をする
次に、取り寄せた取引履歴に基づいて、「引き直し計算」をします。
「引き直し計算」とは、全ての借入れ・返済の取引について利息制限法の上限金利に直したうえで、上限金利を超えて返済したお金を借入れ元本に充てながら、法律に則った正しい借入残高に計算し直していくことです。
引き直し計算をすれば、過払い金が発生しているかどうかが分かります。
(3)流れ3|ショッピング枠の利用残高を確認する
引き直し計算の結果、過払い金が発生していても、クレジットカードのショッピング枠に支払わなければならない利用残高が残っていれば、ショッピング枠の利用残高と過払い金が相殺されます。
このため、あらかじめショッピング枠の利用残高がどれだけあるかを確認しておくことが大切です。
過払い金を請求したことで手元にお金が戻ってくるのは、ショッピング枠を利用しておらず利用残高がないケースや、ショッピング枠の利用残高よりも発生している過払い金の額のほうが多い場合に限られるということになります。
(4)流れ4|過払い金の返還請求書を送付する
クレジットカード会社に対し、過払い金の返還請求書を送付します。
(5)流れ5|クレジットカード会社との任意交渉もしくは裁判により解決
クレジットカード会社との間で任意交渉(裁判手続きによらない交渉)を行います。
クレジットカード会社は、請求している過払い金の全額をすぐに支払ってくれるわけではなく、減額交渉をしてくることが多いです。
金額に納得できれば、和解書を取り交わした後で過払い金が支払われます。
金額に納得できずに任意交渉が決裂してしまった場合には、裁判手続きを通じて解決を図っていくことになります。

クレジットカードの過払い金を請求できないケース
クレジットカードを利用していても、常に過払い金請求ができるというわけではありません。
過払い金が請求できないケースがあります。
(1)ケース1|クレジットカードのショッピング枠しか利用していない場合
クレジットカードのショッピング枠しか利用していなかった場合には、過払い金請求はできません。
クレジットカードのショッピング枠を利用することは、いわゆる「借金」をしたことにはならず、クレジットカード会社に立替払いをしてもらったことになるに過ぎないからです。
このため、クレジットカードのショッピング枠しか利用していない場合には、そもそも過払い金は発生しません。
ショッピング枠でもリボ払いであれば手数料がとられているので過払い金が発生するのではないですか?
ショッピング枠のリボ払いでは過払い金は発生しません。リボ払いの手数料は、あくまでもお買い物の代金支払をクレジットカード会社に立て替えてもらったことに対する手数料であり、お金を借りたことに対する利息ではないため、「ショッピング枠でもリボ払いだから過払い金が発生する」ということにはなりません。
(2)ケース2|過払い金の消滅時効が完成している場合
過払い金の消滅時効が完成している場合にも、過払い金請求をすることはできません。
さきほどもご説明したとおり、過払い金を請求する権利は、基本的には最後に取引をした日から10年が経過することで消滅時効にかかってしまい、もはや過払い金を請求できなくなってしまいます。
※2020年4月1日以降に完済した場合には、最後に取引をした日から10年または過払い金請求ができることを知ってから5年が消滅時効期間となります。
このことから、完済日や最後の取引日を正確に把握することが大切です。
過払い金の消滅時効が完成するよりも前に過払い金を請求するようにしましょう。
クレジットカードの過払い金請求における2つの注意点
クレジットカードの過払い金を請求する場合に気をつけたい2つの注意点についてご説明します。
(1)注意点1|過払い金を請求した会社のクレジットカードが使えなくなる
過払い金を請求したクレジットカード会社のカードは使えなくなるのが一般的です。
このため、過払い金を請求したクレジットカード会社のカードをショッピング利用などで日常的によく使っているという場合には、過払い金を請求してそのクレジットカードが使えなくなっても差し支えないかよく検討するようにしましょう。
過払い金を請求したクレジットカード会社以外の会社が発行しているカードについては、基本的には使い続けることができます。
(2)注意点2|信用情報機関に事故情報が登録されることがある
過払い金が発生していたとしても、まだ借金を返済中であり、借金の残高のほうが過払い金の額を上回っている場合(クレジットカードであればショッピング枠の利用残高が上回っている場合も含まれます)には、信用情報機関に事故情報が登録されることがあります。
信用情報機関に事故情報が登録されるのを避けるためには、次のようにしましょう。
- 借金やショッピング枠の利用残高を完済してから過払い金を請求する
- ショッピング枠やキャッシング枠の利用額の合計が請求可能な過払い金の額を上回らないことを確認してから過払い金を請求する
過払い金の請求で信用情報機関に事故情報が登録される場合について、詳しくはこちらをご覧ください。
【まとめ】クレジットカードでもキャッシング枠の利用で過払い金が請求できることがある
この記事のまとめは次のとおりです。
- 「過払い金」とは、本来支払う必要がないのに、違法な金利のせいで貸金業者等に支払い過ぎてしまったお金のこと。
- 2010年以前からクレジットカードのキャッシングを利用していた方は、過払い金を請求できる可能性がある。
- クレジットカードの過払い金を請求するには、「クレジットカード会社から取引履歴を取り寄せる」「引き直し計算をする」「過払い金の返還請求書を送付する」などの手順を踏んで請求する。
- クレジットカードのショッピング枠しか利用していない場合などには、クレジットカードを利用していたとしても過払い金を請求できない。
「クレジットカードの利用で過払い金が請求できるの?」と疑問になるかもしれませんが、2010年以前にキャッシング枠を利用していれば過払い金が請求できる可能性があります。
2010年以前にキャッシング枠を利用していた場合には、過払い金が請求できるかどうか確かめてみるようにしましょう。
アディーレ法律事務所では、クレジットカードのキャッシングで発生した過払い金の請求も取り扱っています。
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また、完済した業者への過払い金返還請求の場合は、原則として、弁護士費用は回収した過払い金からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要はありません。
(2023年2月時点。業者ごとに判断します)
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