「エステの体験に行ったらすごく良かったから全身脱毛をローンで契約したけれど、ちょっと支払いが厳しいな…。払えなくなったらどうしよう?」
脱毛エステなど、エステは継続して通うことを勧められることが多い上、費用も決して安くはありませんから、エステローンを組んで通う方も多いです。
エステローンとは、エステ会社が提携しているローン会社などでエステ料金分のお金を借りることです。
エステローンは金利が高いため分割回数を多くすれば利息の負担も重くなり、最終的に支払いが困難になる方も少なくありません。
そこで、今回は次の内容について弁護士がご説明します。
- エステローンとクーリングオフ
- エステローンと中途解約
- エステローンが支払えない時のリスク
- エステローンが支払えない時の対処法 など
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
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契約から8日間はクーリング・オフができる!
脱毛エステなどをローンを組んで契約した場合、エステローンの契約書を受け取ってから8日以内であれば、「クーリング・オフ」をしてエステの契約自体をなかったことにできる可能性があります。
「クーリング・オフ」とは理由を問わずに、客の側から一方的に契約を解除できる制度です。
クーリング・オフをすると、脱毛などの施術を受けていたとしても払ったお金は返金されます。
次の2つの条件を満たすエステサービスの契約である場合、「特定継続的役務提供」としてクーリング・オフの対象となります(特定商取引法41条、政令11条)。
- 契約金額が5万円を超える
- 契約期間が1ヶ月を超える
ただし、クーリング・オフの手続は、次の条件を満たす必要があります(特定商取引法48条1項)。
- エステローンの契約書を受け取った日から8日以内(※)であること
- 書面で行うこと
(※)ただし、書面に不備がある場合は、まだ契約書面を受け取っていないものとみなされます。そのため書面に不備がある場合は、契約書を受け取ってから8日過ぎていてもクーリング・オフができます。
契約書を受け取った日も含めて8日ですか?
そのとおりです。
例えば契約書を受け取った日が4月1日の場合、4月8日までに手続を行う必要があります。
この期間を過ぎてしまうと、基本的にはクーリング・オフができなくなるので気を付けましょう。
クーリング・オフの書面を受け取ってもらえなかったらどうしたら良いですか?
クーリング・オフは「発信主義」と言って、書面の発送だけで有効です。ですから、エステ業者が受け取らなかったり、「届いていない」と言ったとしても、書面を発送すれば、有効なクーリング・オフができます。
ただ、後から「発送したかどうかも分からない」などと言われないために、内容証明郵便で出すことをお勧めします。
また、クーリング・オフができない場合でも、別の理由により取消し・途中解約をして一定額のお金を取り戻せる場合がありますので、国民生活センターや弁護士などに相談しましょう。
なお、エステに関連する商品(美容液や脱毛クリーム)などをすでに使用している場合、一定の条件を満たさない限り、この関連する商品をクーリング・オフできなくなります(特定商取引法48条2項ただし書)。まだ使用していない商品は使用しないままにしておきましょう。
参照:あなたの契約、大丈夫?|消費者庁
参照:全国の消費生活センター等|独立行政法人国民生活センター
施術が終了する前なら、中途解約も可能
エステローンの契約書を受け取ってから8日を超えてしまった場合であっても、脱毛などエステの施術が全て終了する前であれば、エステ契約を解約できる可能性があります。
脱毛エステなどのエステの中途解約は、クーリング・オフと同じく特定商取引法で認められていますので、クーリング・オフと同じく、次の条件を満たす必要があります。
- 契約金額が5万円を超える
- 契約期間が1ヶ月を超える
エステ契約の中途解約は、将来に向かって契約をなくすものですので、脱毛などの施術を受けた分については返金を受けることはできません(特定商取引法49条1項)。
また、中途解約の場合には、エステ業者から、解約時期によって所定の金額を請求される可能性があります(特定商取引法49条2項)。
サービス開始前 | 2万円 | |
サービス開始後 | 2万円 | いずれか低い金額 |
未使用のサービス料金の 10%相当額 |
なお、既に脱毛などの施術を受けて支払っていない料金があれば、その分も請求されます。
他方、脱毛などの施術を受けた分と上記の金額以上の料金をエステ業者が受け取っている場合には、エステ業者は中途解約に伴い、返金をしなければいけません。
エステローンを組んでいる場合、受けた施術の料金とローンの支払金額が必ずしも一致していないことも多いです。
エステの中途解約をした時点で、施術を受けていないのにローンの支払が先行している場合には、上記の金額を差し引いた金額についてエステ業者から返金を受けられます。
他方、脱毛などの施術が先行している場合には施術を受けた分の支払いはする必要があります。
クレジットカードでエステローンを組んでいる場合、中途解約をしたことはクレジットカードにも伝えましょう。その後、エステローンの引落が続くようだったら、支払を停止するように求める(「支払停止等の抗弁」と言います)必要があります。
参考:エステの契約をしたが、途中で解約できるか|独立行政法人 国民生活センター
消費者庁によると、「脱毛エステ」は20歳代など若い方からの相談が多く、その多くが解約に関する事例です。脱毛エステを中途解約したのに清算金が返金されないなど、店舗とトラブルになりそうな時は、まずは消費者ホットライン「188」に連絡してみてください!
ローンの支払ができなくなったときの流れ
脱毛エステなどエステローンを組んだ分の施術が全て終了した場合や、エステの有効期間が終了してしまったようなケースでは、エステの中途解約はできません。
そこで、次は、エステローンだけが残ってしまい、支払いができないケースについてご説明します。
エステローンを滞納すると、次のようなリスクがあります。
- 遅延損害金を含めたローンの残額を一括で請求される
- 滞納の事実が信用情報機関に登録される
- 給料の一部などが差し押さえられる など
エステローンも「借金」です。そのため、ローンの支払ができなくなったときには、借金の返済ができなくなった場合と同様、通常は次のような流れを辿ります。
ローン会社から催促の電話がくる
催告書などが送られてくる
ローンの残額を一括請求される
裁判所からの書面が届く
差押え
- 支払予定日を数日過ぎると、支払のできない事情を確認する電話がかかってきます。
また、遅れた日数分の遅延損害金も上乗せされます。 - 「督促状」や「催告書」と書かれた書面が届きます。
- 支払が遅れている分だけでなく、残ったエステローンの残額全てを一括で支払うことを求める書面が届きます(目安は、滞納から2~3ヶ月程度)。
同じころ、通常は支払の遅れについて事故情報を信用情報機関に登録される(いわゆるブラックリスト)ため、クレジットカードやローンなどの利用に支障が生じる可能性もあります。 - 一括請求に対処せずにいると、ローン会社が裁判所での手続を始めます。裁判所での手続きが始まると、通常は裁判所から「訴状」または「支払督促」などと書かれた書面が届きます。
- 「お金を払いなさい」という判決や「仮執行宣言付支払督促」が確定した後も支払わずにいると、給料の一部や預貯金などの財産を差し押さえられる可能性があります。
それでは、エステローンを滞納した時のリスクについて、それぞれご説明します。
(1)遅延損害金を含めたローンの残額を一括で請求される
エステローンには、通常、支払いが遅れた時の遅延損害金が決められています。
遅延損害金とは、約束の支払日までに支払えなかった時のペナルティで、支払日の翌日から実際に支払いが終わるまで、日々発生します。
さらに、ローンの滞納は、通常「期限の利益」を喪失する事情として契約で定められています。ですから、ローンの支払を滞納すると、その時点で期限の利益を喪失して、残っているローンの残額を一括で請求されるおそれがあります。
「期限の利益」とは、ローン代金を分割払いにして、毎月の支払日までは支払わなくても良いという利益のことです。どのような場合に期限の利益を喪失するかは契約書をご確認ください。
1日でもエステローンの支払いが遅れたら、全額請求されますか?
契約上は、1日でも遅れたら請求できると規定されることが多いです。
ただ、きちんとローン会社に連絡をして事情を説明したり、その後の期限を守って支払をすれば、いきなり残額を請求してくることは多くないでしょう。
いきなり全額請求されても支払えない、という場合にはローン会社からの連絡は無視せず、誠意をもって対応することが大切です。
期限の利益について詳しくはこちらをご覧ください。
(2)滞納の事実が信用情報機関に登録される
エステローンの支払が2~3ヶ月遅れると、そのことが信用情報機関の信用情報に登録される(いわゆる「ブラックリスト」に載る)可能性があります。
信用情報機関に滞納の情報(いわゆる「事故情報」といいます)が登録されると、新たにお金を借りたり、クレジットカードを作れなくなる可能性が高いです。
なぜ、新たにお金を借りたりクレジットカードを作れなくなるのですか?
金融機関がお金を貸したり、新たにクレジットカードを作る場合、その人に返済能力があるのか確かめるために、信用情報機関の信用情報を確認します。
その時、滞納などのいわゆる事故情報が登録されているということは、その人の経済的信用力が低いということになりますので、お金を貸したりしてくれなくなるのです。
事故情報を信用情報機関に登録された場合の影響について、詳しくはこちらをご覧ください。
(3)給料の一部などが差し押さえられる
先ほどご紹介したとおり、エステローンを滞納して、催促にも応じない場合、ローン会社はローンの支払を求めて次の手段に出る可能性があります。
- 裁判所に訴訟を提起する
- 裁判所に支払督促を申立てる
これらは、いずれも裁判所から「訴状」又は「支払督促」という書面が届きます。これらが届いたときは、絶対に無視をしてはいけません。
これらを無視して放置してしまうと、ローン会社は、いずれあなたの給料や預金などの財産を差し押さえられるようになります。
ローン会社が訴訟を提起したり支払督促を申立てる段階になると、あなたの財産が差押えを受けるリスクがとても高まっていると考えてください。
ですから、エステローンを支払えない場合には、そこに至る前に何とか対処する必要があるのです。
滞納から差押えまでの流れについて、詳しくはこちらをご覧ください。
エステローンを支払えない場合には早めに債務整理を検討する
エステローンを支払えない場合には、任意整理や個人再生・自己破産といった債務整理によって支払の負担を軽減できないか検討してみることをお勧めします。
早めに債務整理の手続を始めることによって、差押えを受けるリスクを下げることができます。
- 任意整理
支払い過ぎた利息がないか(負債が減らないか)、負債を再計算します。次に、将来つく利息を無しにすることや、月々の支払金額を減らすなどの支払負担の軽減を目指し、個々の債権者と交渉します。
- 個人再生
抱えている負債を支払えなくなってしまうおそれがある場合に、裁判所の認可を得たうえで、法律に基づき決まった金額を原則3年間で分割して払っていく手続です。
ケースにもよりますが、任意整理よりも大幅に総支払額を減らせる場合があります。
(※養育費、税金、住宅資金特別条項付個人再生を利用する場合の住宅ローン等例外的に免除されない債務もあります)
- 自己破産
債務者の収入や財産からは負債を支払えないことを裁判所に認めてもらい、原則全ての負債の支払を免除してもらうことを目指す手続です(※税金等、免除されない債務もあります)。
一定の財産は手放さねばならない可能性があるなど注意点はありますが、3つの手続の中で最も支払負担を軽くできる可能性があります。
なお、債務整理を行うと、先ほどご説明した滞納の場合と同様、その情報がいわゆる事故情報として、一定期間信用情報機関に登録され、新たな借金やクレジットカードの作成などが困難になります。
もっとも、すでに2~3ヶ月支払いを滞らせた(延滞)時点で事故情報が登録されている可能性はあります。
どの手続きが最適かは、まずは債務整理の実績が豊富な弁護士に相談しましょう。
【まとめ】エステローンを滞納すると、財産を差し押さえられてしまうなどのリスクがある
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 脱毛エステなど、次の条件を充たすエステの契約は、契約書を受け取ってから8日以内なら「クーリング・オフ」で契約をなかったことにできる。
- 契約金額が5万円を超える
- 契約期間が1ヶ月を超える
- 契約書を受け取ってから9日以降であっても、上記の条件を満たすエステの契約であれば、中途解約が可能。ただし、次の金額を請求される可能性がある。
- サービス開始前なら、2万円
- サービス開始後なら、2万円又は未使用のサービス料金の
10%相当額のいずれか低い方 - エステローンを支払えないまま放置していると、次のリスクがある。
- 遅延損害金を含めてローン残額を一括請求される
- 信用情報機関にいわゆる事故情報が登録される
- 預金や給料の一部など財産が差し押さえられる
- 財産を差し押さえられて場合の流れは次のとおり。
催告の電話→催告書→一括請求→裁判所からの書面→差押え - エステローンを支払えない場合には、債務整理を行うことで支払負担を軽減できる可能性がある。
体験に行って効果が実感できたり、エステティシャンのトークに流されたりで、勢いで高額なエステローンを組んで後悔する方は少なくありません。
自分を美しく磨くために通うエステ。それなのに、エステローンの支払いに追われてストレスをためるようなら、本末転倒です。
エステローンの支払いが苦しい時は、クーリング・オフや中途解約できるのであれば、エステ自体を止めることも一つの手です。
また、施術自体は終了してしまい、ローンだけが残ってしまったような場合は、早めの債務整理をご検討ください。
債務整理は、早めに行動すればそれだけ影響も少なくて済むことも多いです。
エステローンの支払いが苦しい…そんな時は弁護士にご相談いただければ、弁護士がどうすれば良いのか、あなたと一緒に考えます。
アディーレ法律事務所では、所定の債務整理手続につき、所定の成果を得られなかった場合、原則として、当該手続に関してお支払いただいた弁護士費用を全額ご返金しております(2022年12月時点)。
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