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慰謝料の請求相手が自己破産!どうすれば支払ってもらえる?

作成日:更新日:
リーガライフラボ

「不倫相手を許せない。慰謝料をもらって責任を分からせたい。」

「不倫が原因で離婚することになった。夫に対しては慰謝料を請求したい。」

肉体関係を伴う不倫で精神的苦痛を受けた場合、被害者は、不倫の当事者である配偶者と不倫相手に対して、慰謝料を請求することができます。

当事者に責任を分からせるためにも、不倫を終わらせるためにも、しっかり支払ってもらいたいものです。

しかし、慰謝料を請求しようと考えていたら、不倫相手や離婚した元配偶者が自己破産してしまった場合はどうなるでしょうか。

不倫相手や元配偶者の負っていた債務(慰謝料を支払う義務)が原則として帳消し(免責)になる結果、もはや慰謝料を払ってもらうことはできなくなってしまうのでしょうか。

実は、相手方が自己破産すると免責され、もはや慰謝料を支払ってもらえなくなることが多いのですが、事情によっては請求することができる場合があります。

そこで今回の記事では、次のことについて弁護士が解説します。

  • 相手方が自己破産して免責されると、慰謝料を支払ってもらえないことが多い
  • 相手方が自己破産して免責されても、その後の話し合いにより慰謝料の支払いに合意できることもある
  • 相手方が自己破産すると具体的に何をすればよいのか
この記事の監修弁護士
弁護士 池田 貴之

法政大学、及び学習院大学法科大学院卒。アディーレ法律事務所では、家事事件ドメイン(現:慰謝料請求部)にて、不貞の慰謝料請求、離婚、貞操権侵害その他の男女トラブルを一貫して担当。その後、慰謝料請求部門の統括者として広く男女問題に携わっており、日々ご依頼者様のお気持ちに寄り添えるよう心掛けている。東京弁護士会所属。

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相手が自己破産で「免責」されると、慰謝料を支払ってもらえなくなる可能性がある

離婚や不倫等に伴って発生する、慰謝料を請求することのできる権利のことを、「慰謝料請求権」といいます。

「慰謝料請求権」は、法律的には、不法行為(民法709条)に基づく「損害賠償請求権」に該当し、債権(支払ってもらう権利)の一つに含まれます。

自己破産の申立てをして、裁判所から免責許可決定を受けて確定すると、申立人が抱えている債務(債権者に支払う義務)については、基本的に免責され、支払い義務がなくなります。

肉体関係を伴う不倫(不貞行為)の慰謝料請求権は、一般に免責対象となるケースが多い傾向にあります。結果として、残念ながら慰謝料を請求することは困難です。

慰謝料が免責されない場合もある

しかし、慰謝料が免責対象とならない場合もあります。

そこで次では、自己破産の申立てをしても、慰謝料が免責されない主なケースについて説明していきます。

(1)「免責不許可」になると、慰謝料も免責されない

裁判所に自己破産を申立てた場合でも、申立てをすれば必ず免責が許可されるというわけではありません。
裁判所が、自己破産の申立人(自己破産を申立てた人)に「免責不許可事由」があると認めた場合、原則として免責は許可されず、自己破産は失敗することになります。

免責不許可事由は、破産法252条1項に列挙されています。
代表的なものとしては、債務超過となった原因が、浪費行為やギャンブル(条文上は「賭博その他の射幸行為」)であった場合(4号)、換金行為(2号。クレジットカードで商品を購入後、買い取り業者などに安く売って現金を手に入れる行為)であった場合などがあります。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

しかしながら、実際には免責不許可事由があっても、裁判官による「裁量免責」によって免責されるケースがほとんどです。
裁量免責については、免責不許可事由を列挙した破産法252条1項に続く、同条2項で規定されています。

前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

引用:破産法252条2項|e-gov 法令検索

ただし、裁量免責も認められず、「免責不許可」となると、自己破産はできず、申立人の債務は免責されません。
したがってこの場合は、債務者として、債権者に対する慰謝料の支払い義務を継続して負うことになります。

(2)慰謝料が「非免責債権」になると、免責されない

「非免責債権」って何ですか?

「免責許可」決定が出ても、支払義務がなくならない債権です。借金などは「免責許可」決定が出たら支払う必要がなくなりますが、「非免責債権」は支払う義務が残ります。

どのようなものが非免責債権にあたるかについては、破産法253条1項1~7号に列挙されています。

代表的なものは、租税です(1号)。所得税、住民税、贈与税などは、免責許可を受けても、非免責債権として支払い義務が残ります。

不倫の慰謝料は、税金と同じような非免責債権なのですか?

いいえ。残念ながら、不倫の慰謝料が非免責債権となる可能性は低いです。

不倫の慰謝料が非免責債権となるためには、その慰謝料が「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」(2号)である必要があります。

ここでは「悪意で加えた不法行為」とは何かが問題となります。

従来、「悪意」の意味は、「相手を傷つけることを知りながらやる」という故意では足りず、他人を害する積極的な意欲を指すと考えられていました。近年の裁判例(東京地裁判決平成28年3月11日)でも、「そこでいう「悪意」とは故意を超えた積極的な害意をいうものと解するのが相当である。」と判断されています。

つまり、ただ相手に配偶者がいると知りながら性的関係を持ったという「故意」を超えて、例えば、夫婦の平穏な家庭生活を破綻させることを意図して、第三者が夫婦の一方と性的行為に及んだようなレベルの「積極的な害意」が必要となるのです。
このハードルはかなり高いと考えられています。

上記の東京地裁判決も、不倫の態様と不貞関係発覚後の不倫相手(被告)の対応からして、被告(不倫相手)の不法行為は「その違法性の程度が低いとは到底いえない」としていますが、不倫をされた妻(原告)の家庭の平穏を侵害する意図があったとまではいえず、積極的な害意までは認められないと判断しています。最終的に、自己破産した被告に対する慰謝料請求は、非免責債権ではなく、被告は法律的な責任を免れたとして棄却されています。

もっとも、当該慰謝料債権が非免責債権と扱われるかどうかは、個別の事情や状況に応じて裁判所が判断するため、一概にはいえない側面もあります。

こうしたケースでお悩みの場合は、自己破産や慰謝料請求を取り扱っている弁護士に相談することをおすすめします。

(3)話し合いによって相手に慰謝料を支払ってもらう

相手は自己破産で免責されましたが、その後は生活を立て直しているようです。それでも慰謝料を支払ってもらうことはできないのでしょうか。

債務者の自己破産で免責された債務は、消えてなくなるものではなく、債務者がその存在を認めて支払うことはできると考えられています。

したがって、債務者と話し合いをして、債務者が支払うことに同意すれば、慰謝料を支払ってもらえる可能性はあります。

ただし、免責された債務について、債務者が自主的に支払いに同意するかというと、ケースバイケースですがあまり期待することはできないでしょう。

自己破産をしても養育費や婚姻費用は免責されない

自己破産をしても支払義務がなくならない「非免責債権」は、他にもあります。

破産法253条1項4号では、

  • 夫婦間における、相互協力扶助義務(民法752条)に基づく請求権(4号イ)
  • 婚姻費用分担義務に基づく請求権(4号ロ)
  • 親族や子どもの扶養義務及び監護義務に基づく請求権(4号ハ)

などが、非免責債権として挙げられています。

例えば、婚姻生活を維持するための生活費(婚姻費用といいます)、医療費などは4号イに、子どもの養育費は4号ハに該当しますので、相手方が自己破産したとしてても、婚姻費用や養育費を請求して支払ってもらうことができます。

非免責債権について、詳しくはこちらの記事もご確認ください。

非免責債権とは?自己破産しても支払い義務があるものについてくわしく解説

慰謝料の請求相手が自己破産すると「債権者」として破産手続きに参加しなければならない

離婚や不倫等の慰謝料請求権は、法的な債権(支払ってもらう権利)の一つに含まれます。
したがって、支払義務者である相手側が自己破産を申立てると、慰謝料を請求する一人の「債権者」として破産手続きに参加しなければなりません。

慰謝料請求権は、法律的には、不法行為(民法709条)に基づく「損害賠償請求権」であり、債権(支払ってもらう権利)ですので、慰謝料を請求する側は債権者となります。

慰謝料を支払う側が債務者です。

債務者が、自己破産を申立てて破産手続きが開始されると、慰謝料を請求する側は、債権者としてその破産手続きに参加しなければなりません。

具体的には、裁判所から債権者に対して、「免責についての意見書」「債権届出書」の提出等を求められますので、書面作成や裁判所への書類提出などを行うことになります。

破産手続きの知識がなく、破産手続きに参加することに不安がある場合には、弁護士に相談すると良いでしょう。

相手に一定基準を超える財産があり、自己破産が管財事件になった場合は、「債権者平等の原則」にしたがって、相手の財産を換価した現金が債権額に応じて分配(配当)されることになります。

管財事件とは、自己破産の手続きのうちの1つになります。

自己破産の手続きには、同時廃止事件と管財事件の2種類があります。
同時廃止事件とは、申立人に目立った財産や浪費等がなく、自己破産を認めても問題がないという場合に、破産手続きの開始決定と同時に破産手続きを終了させるという手続きのことをいいます。

これに対し、管財事件では、裁判所から破産管財人として選任された弁護士が、財産の調査、管理、処分、債権者への配当などを行い、さらに、破産を認めても問題ないかどうかという免責調査を行います。こちらは、破産が認められるまでに半年~1年程度を要することも珍しくありません。

また、「債権者平等の原則」とは、債務者が、すべての債権者に対して平等な取り扱いをしなければならないという債務整理における原則のことをいいます。
その結果、破産者に一定以上の財産があった場合は、債権額に応じて平等に分配されるということになります。

自己破産されても、慰謝料を支払ってもらう方法

ここでは、自己破産した相手に慰謝料の支払いを求める法的手段を説明します。

手続きは自分で行うことも可能ですが、書類の不備や手続き上のトラブルを防ぐためにも、破産手続きや慰謝料請求を取り扱っている弁護士に相談・依頼することをおすすめします。

(1)債務名義がある場合は「財産の差押え」を申立てる

もし、慰謝料の支払いについてすでに「債務名義」を取得している場合には、地方裁判所に対して、相手方の財産(給料や預貯金等)の差し押さえを申立てることができます。

「債務名義」とは、債務者に給付義務を強制的に履行させる手続き(強制執行)をする際に、その前提として必要となる、公的機関が作成した文書のことをいいます。
具体例としては、確定判決、和解調書、調停調書、強制執行認諾条項付きの公正証書等があります。

ただし、強制執行を受ける相手が、「慰謝料請求権は免責されたから支払う義務はない」などと不服があって請求異議訴訟を提起すると、その訴訟の中で、裁判所が差押えを認めるか(その慰謝料請求権が非免責債権に該当するかどうか)を判断することになります。

慰謝料請求権が非免責債権とされると、強制執行は認められますが、免責債権とされてしまうと、強制執行は認められません。

(2)債務名義がない場合は「慰謝料請求訴訟」を提起する

債務名義がない場合は、慰謝料請求訴訟を地方裁判所(金額によっては簡易裁判所)に提起し、慰謝料が非免責債権に該当するかどうかを判断してもらうことになります。

慰謝料が免責債権と判断されると、敗訴します。逆に、慰謝料が非免責債権と判断された場合には、裁判所が個別の事情や状況に応じて慰謝料の金額を客観的に判断し、相手に支払いを命じる判決をします。

判決が出ても支払われない場合には、判決書を債務名義として、1同様に慰謝料を強制的に回収するために財産の差押えを申立てることを検討します。

【まとめ】相手が自己破産した場合の慰謝料請求は難しい

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 相手が自己破産して免責されると慰謝料の回収は難しい
  • 自己破産した相手に自主的な支払いを拒まれると、訴訟で争うことになるが、裁判所が非免責債権と判断する可能性は低い
  • 破産手続きが開始すると、債権者(慰謝料請求権者)として破産手続きへの参加が求められる

このように、相手に自己破産されてしまうと、慰謝料の請求は難しくなります。

しかしながら、仮に、慰謝料を請求した相手方が「破産するから支払えない」と言っても、実際に破産手続きが開始していないのであれば、ただ支払いたくないだけかもしれません。破産手続きが開始されず、相手方の対応も納得できないのであれば、一度弁護士に相談してみることをお勧めします。

また、破産手続きが開始された後に、また不倫をしたのであれば、その不倫の慰謝料は破産手続の免責対象外ですので、慰謝料を請求することができます。

アディーレ法律事務所では、不倫の慰謝料請求につき、相談料、着手金をいただかず、原則として成果があった場合のみ報酬をいただくという成功報酬制です。

原則として、この報酬は獲得した賠償金等からのお支払いとなりますので、あらかじめ弁護士費用をご用意いただく必要がありません。

また、当該事件につき、原則として、成果を超える弁護士費用の負担はないため費用倒れの心配がありません。

(以上につき、2022年12月時点)

不倫の慰謝料請求でお悩みの方は、不倫の慰謝料請求を得意とするアディーレ法律事務所へご相談ください。