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慰謝料の請求相手が自己破産!どうすれば慰謝料を支払ってもらえる?

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配偶者に不倫をされてしまったら、大きな精神的ダメージを受けるのが通常でしょう。

そうした場合、それで完全に癒されるわけではないでしょうが、せめて精神的損害に対する賠償金、すなわち慰謝料ぐらいはきっちり支払ってもらいたいものです。

そう考えていたところ、慰謝料の支払い義務を負う、不倫相手あるいは離婚した元配偶者が自己破産してしまった場合はどうなるでしょうか。
債務者の負っていた債務が原則として帳消し(免責)になる結果、もはや慰謝料を払ってもらうことはできなくなってしまうのでしょうか。

実際、不貞・離婚の慰謝料請求権は相手方に自己破産されると免責され、もはや支払ってもらえなくなることが多いのですが、事情によっては請求することができます。

慰謝料の請求相手が自己破産したとき、どのような場合になお支払ってもらうことができ、どのような場合にはもはや支払ってもらえなくなるのか、解説していきます。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。2016年弁護士登録。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。現在、東京弁護士会所属。

相手が自己破産で「免責」されると、慰謝料を支払ってもらえなくなる可能性がある

離婚や不倫等に伴って発生する慰謝料請求権は、法律的には、不法行為(民法709条)に基づく「損害賠償請求権」に該当し、債権(支払ってもらう権利)の一つに含まれます。

自己破産の申立てをすると、申立人が抱えている債務(債権者に支払う義務)については、基本的に免責(支払い義務を免除)されることになります。

不倫や浮気といったいわゆる不貞行為の慰謝料請求権は、一般に免責対象となるケースが多い傾向にあります。
しかし、免責対象とならず、請求する側が慰謝料を獲得できる場合もありますので、以下では、慰謝料が免責にならない主なケースについて説明していきます。

(1)自己破産が「免責不許可」になると、慰謝料も免責されない

自己破産を申立てた場合でも、申立てをすれば必ず免責が許可されるというわけではありません。
裁判所が自己破産の申立人に「免責不許可事由」を認めた場合、原則として自己破産は失敗することになります。

免責不許可事由は、破産法252条1項に列挙されています。
代表的なものとしては、債務超過となった原因が、浪費行為やギャンブル(条文上は「賭博その他の射幸行為」)であった場合(4号)、換金行為(2号。クレジットカードで商品を購入後、買い取り業者などに安く売って現金を手に入れる行為)であった場合などがあります。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

免責不許可事由とは?該当すると自己破産できないって本当?

ただし、実際的には免責不許可事由があっても、裁判官による「裁量免責」によって免責されるケースがほとんどです。
裁量免責については、免責不許可事由を列挙した破産法252条1項に続く、同条2項で規定されています。

前項の規定にかかわらず、同項各号に掲げる事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可の決定をすることができる。

引用:破産法252条2項

裁量免責も認められず、自己破産の申立てに対する「免責不許可」が決定すると、自己破産はできないわけですから、当然ながら申立人の債務は免責されません。
したがってこの場合は、債権者に対する慰謝料の支払い義務も、債務者(自己破産の申立人)は継続して負うことになります。

(2)慰謝料が「非免責債権」になると、慰謝料は免責されない

免責不許可事由と似た概念として「非免責債権」というものがあります。
非免責債権とは、債務者が自己破産をしても支払義務が免除されない債権のことをいいます。

「免責不許可事由」が、それがあると自己破産による免責が認められない可能性のある事由のことをいうのに対し、「非免責債権」は、免責の可否とは関係なく、すなわちどのような事情があっても、そもそも免責されない債権のことをいう、という点に違いがあります。

どのようなものが非免責債権にあたるかについては、破産法253条1項が、1~7号までを列挙する形で規定しています。

例えば、1号では「租税等の請求権」と規定されており、これには所得税、贈与税、相続税などが該当します。

2号には、「破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権」が挙げられています。
これは、道義的に非難される行為をした人に対しては制裁を科さねばならないという趣旨で、上記のような債権を非免責債権とした規定です。

ここでは「悪意で加えた不法行為」とは何かが問題となりますが、近年の裁判例で、東京地裁判決平成28年3月11日が、「そこでいう「悪意」とは故意を超えた積極的な害意をいうものと解するのが相当である。」と判断しています。

3号は、「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」は非免責債権にすると定められています。
3号では、2号と違って、請求権の原因となった不法行為について、「悪意」をもってしたことまでは要求されていません。他方で、「人の生命または身体を害する」場合に限定されています。

一般的に、不倫や浮気といった不貞行為の慰謝料請求権は、非免責債権とはならず、債務者が自己破産すると免責されるケースが多数を占めています。

不貞行為は「人の生命又は身体を害する不法行為」ではありません。ですから、不貞行為に基づく慰謝料請求権が非免責債権にあたるとすれば、2号に該当する場合ということになります。

2号の要件を満たすためには、破産者が不法行為を「悪意で加えた」ものであることが必要ですが、この悪意は、「故意を超えた積極的な害意」のことをいうとされているのはすでに述べたとおりです。
つまり、ただ相手に配偶者がいると知りながら性的関係を持ったという「故意」を超えて、例えば、夫婦の平穏な家庭生活を破綻させることを意図して、第三者が夫婦の一方と性的行為に及んだようなレベルの「積極的な害意」が必要となるのです。
このハードルはかなり高いとみられ、上記した東京地裁判決でも、不倫をされた妻(原告)からの、自己破産した不倫相手の女性に対する慰謝料請求が棄却されています。

もっとも、当該慰謝料債権が非免責債権と扱われるかどうかは、個別の事情や状況に応じて裁判所が判断するため、一概にはいえない側面もあります。

こうしたケースでお悩みの場合は、法務知識やノウハウを持ち合わせた専門家に相談することをおすすめします。

(3)話し合いによって相手が慰謝料を支払ってくれる可能性はある

債務者の自己破産で慰謝料請求権が免責されてしまっても、その後に債務者(自己破産の申立人)が任意で慰謝料を支払うことに関する法的制約はありません。

債務者側と話し合いができれば、相手の自由意思で、慰謝料を支払ってもらえる可能性はありうるでしょう。

自己破産をしても養育費や婚姻費用は免責されない

自己破産をしても支払義務が免除されない「非免責債権」は、破産法253条1項に規定がありますが、すでに説明した1~3号に続き、4号以下にも列挙されています。

破産法253条1項4号では、夫婦間における、相互協力扶助義務(民法752条)に基づく請求権(4号イ)、婚姻費用分担義務に基づく請求権(4号ロ)、親族や子どもの扶養義務及び監護義務に基づく請求権(4号ハ)などが、非免責債権として挙げられています。

例えば、婚姻生活を維持するための生活費、医療費などは4号イに、子どもの養育費は4号ハに該当します。

養育費がなぜ非免責債権にあたるのかについて、少し詳しく説明しましょう。

民法877条1項は、

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

引用:民法877条1項

と規定していますから、親は、自分の子どもに対して、扶養義務を負っています。

一方で、離婚によって親権や監護権を失ったとしても、子どもの親であることに変わりはない以上、法律上の扶養義務を継続して負うことに変わりはありません。

したがって、親権者はもちろん、離婚によって親権者でなくなった方の親も、その扶養義務を具体化するものとして、子どもの監護や教育のために必要な費用、すなわち養育費の支払義務を継続して負うことになります。

そして、親が子どもに対して負う扶養義務は、子どもが生きていくための最低限度の生活を親に存する余力の範囲内で保障すれば足りるようないわゆる「生活扶助義務」ではなく、自分と同程度の生活水準で未成年の子どもを養育する「生活保持義務」であるとされています。

生活保持義務は「いわば一碗の飯も分かち合う性質のもの」とも表現されます。
養育費は、こうした生活保持義務に基づく費用であるという性質上、親は時に自分の生活レベルを下げてでも、自らの未成熟子の監護・教育に責任を持つべきであるとして、自己破産をしたとしても支払い義務が免除されない「非免責債権」にあたるとされているのです。

養育費や婚姻費用の不払いがあった場合は、債権債務の存在を証明する公正証書等があれば、給与等の差押えを裁判所に申立てると良いでしょう。

公正証書とは、公証人(事実や契約行為などの証明や認証を公証役場で行う公務員)が作成する公的な文書のことをいいます。
公正証書は通常の契約書よりも証明力が高く、トラブルになったときには有力な証拠となります。

公正証書がない場合は、「養育費請求調停」や「婚姻費用の分担請求調停」をまず申立て、調停や審判で支払い義務が確定したにもかかわらず不払いが続く場合には、差押えの申立てが可能となります。

なお、離婚に伴う財産分与や解決金は、1~7号の中にはあてはまるものがなく、非免責債権と認められずに免責となる可能性があります。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

自己破産の非免責債権とは?免責不許可事由との違いも解説

慰謝料の請求相手が自己破産すると「債権者」として破産手続きに参加しなければならない

離婚や不倫等の慰謝料請求権は、法的な債権(支払ってもらう権利)の一つに含まれます。
したがって、支払義務者である相手側が自己破産を申立てると、慰謝料を請求する一人の「債権者」として破産手続きに参加しなければなりません。

この破産手続きでは、債権者として、裁判所から「免責についての意見書」「債権届出書」の提出等を求められます。
法務知識がない中でこれらの手続きを進めることに不安がある場合は、専門家に相談すると良いでしょう。

相手に一定基準を超える財産があり、自己破産が管財事件になった場合は、「債権者平等の原則」にしたがって、相手の財産を換価した現金が債権額に応じて分配(配当)されることになります。

管財事件とは、自己破産の手続きのうちの1つになります。

自己破産の手続きには、同時廃止事件と管財事件の2種類があります。
同時廃止事件とは、申立人に目立った財産や浪費等がなく、自己破産を認めても問題がないという場合に、破産手続きの開始決定と同時に破産手続きを終了させるという手続きのことをいいます。

これに対し、管財事件では、裁判所から破産管財人として選任された弁護士が、財産の調査、管理、処分、債権者への配当などを行い、さらに、破産を認めても問題ないかどうかという免責調査を行います。こちらは、破産が認められるまでに半年~1年程度を要することも珍しくありません。

また、「債権者平等の原則」とは、債務者が、すべての債権者に対して平等な取り扱いをしなければならないという債務整理における原則のことをいいます。
その結果、破産者に一定以上の財産があった場合は、債権額に応じて平等に分配されるということになります。

「非免責債権」に該当する慰謝料が支払われない場合は、裁判所に申立てを行なう

ここでは、非免責債権とされた慰謝料の支払いを相手に求める法的手段を説明していきます。

手続きは自分で行うことも可能ですが、書類の不備や手続き上のトラブルを防ぐためにも、法務知識やノウハウを持ち合わせた専門家に相談・依頼することをおすすめします。

(1)債務名義がある場合は「財産の差押え」を申立てる

債務名義とは、債務者に給付義務を強制的に履行させる手続き(強制執行)をする際に、その前提として必要となる、公的機関が作成した文書のことをいいます。
具体例としては、確定判決、和解調書、調停調書、強制執行認諾条項付きの公正証書等があります。

債務名義があれば、相手の財産(給料や預貯金等)を申立てによって差し押えることができます。

また、差押えは、裁判所が行う強制執行の一種で、債務者(支払い義務者)が支払いを滞納している債務を、債権者(支払いを受ける権利者)が回収するための法的手段です。

強制執行を受ける相手に不服があれば、相手は「請求異議」を申立てることになり、裁判所が差押えを認めるか(当該慰謝料請求権が非免責債権に該当するかどうか)を判断することになります。

(2)債務名義がない場合は「慰謝料請求調停」を申立てる

債務名義がない場合は、まず「慰謝料請求調停(もしくは訴訟)」を地方裁判所に申立て、非免責債権に該当するかどうかを判断してもらうことになります。

非免責債権に該当すると判断された場合、併せて、裁判所が個別の事情や状況に応じて慰謝料の金額を客観的に判断します。

調停や審判で支払い義務が確定したにもかかわらず非免責債権の慰謝料が支払われない場合は、1同様に財産の差押えを申立てると良いでしょう。

【まとめ】慰謝料請求に関するお悩みは弁護士にご相談ください

慰謝料請求権が非免責債権に該当しない場合、相手が自己破産をすると慰謝料の回収は現実的には難しいでしょう。

また、慰謝料請求権が非免責債権に該当するかどうかの判断や、該当する場合に支払いを求める法的手続き等を行うにあたっては、法務知識やノウハウがないと難しいことが多いでしょう。

非免責債権に該当しない場合も、債権者(慰謝料請求権者)として破産手続きへの参加が求められるため、非免責債権に該当する・しないにかかわらず、専門家に相談や依頼をした上で手続きを進めることをおすすめします。

この記事の監修弁護士
弁護士 林 頼信

慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。2016年弁護士登録。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。現在、東京弁護士会所属。

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