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破産法で自己破産が認められる「支払不能」とは、どういう状態?

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自己破産に対する気持ちや自己破産に至る事情は、さまざまです。自己破産に対する心理的なハードルがそれほど高くない人もいれば、自己破産を絶対に避けたいという人もいます。
自己破産ができる(せざるを得ない)状況で自己破産を避けたいのであれば、個人再生をするなどしてなんとか借金を返済していくほかありません。これに対して、自己破産をしたくても自己破産ができる状況になければ、自己破産をすることはできません。
そこで、今回は弁護士が自己破産をできる条件、「支払不能」について解説します。

「支払不能」になっていないと、自己破産はできない

裁判所が自己破産手続きを開始するのは、主に次の4つの条件が満たされているときです。

  • 支払不能状態であること
  • 債務者(例:お金を借りた人)に破産能力があること
  • 破産障害事由がないこと
  • 申立権を有する人が提出した申立書に不備がないこと

このうち、実務上最も重要になるのは、「支払不能」か否かです。

(1)「支払不能」とは?

破産法15条1項では、次のように規定されています。

債務者が支払不能にあるときは、裁判所は、第三十条第一項の規定に基づき、申立てにより、決定で、破産手続を開始する。

引用:破産法15条1項

支払不能について、破産法2条11項で次のように定義されています。

この法律において「支払不能」とは、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態(信託財産の破産にあっては、受託者が、信託財産による支払能力を欠くために、信託財産責任負担債務(信託法(平成十八年法律第百八号)第二条第九項に規定する信託財産責任負担債務をいう。以下同じ。)のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態)をいう。

引用:破産法2条11項

「支払不能」とは支払能力がなくなったことで、本来であれば履行すべき債務を履行できなくなる状態をいいます。つまり、収入や資産がなくて返済期日の到来している借金を返せない状態のことです。
支払能力とは、その人にお金を支払えるだけの余力があるかどうかだと考えるといいでしょう。
一般的に、支払不能であるかどうかについては、借入総額を36(ヶ月)で割った金額が毎月の返済可能額を上回っているかが一つの判断の目安になるとされます。

(2)「支払停止」とは?

破産法上、「支払停止」であれば支払不能だと推定されます(破産法15条2項)。「支払停止」とは、債務者が資力欠乏のため、債務の支払いをすることができないと考えてその旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為のことです(最高裁判決昭和60年2月14日集民第144号109頁)。

たとえば、次の行為が支払停止にあたるとされています。

  • 弁済を継続できない旨債権者に通知する行為や貼り紙をしたり広告を貼ったりする行為
    (弁護士が債権者に自己破産を受任したことを通知する行為も支払停止にあたりえます)
  • 夜中にお店の什器を搬出したり、「閉店」の広告を貼る行為
  • 手形を2回不渡りにする行為(1回めの不渡りでも支払停止にあたりえます)

支払停止は支払不能を推認させるだけでなく、無償行為など否認対象行為となるかどうかを画する1つの基準です。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

破産管財人が否認権を行使するケースとその効果を解説

(3)「支払不能」と「支払停止」の違い

「支払不能」と「支払停止」の主な違いは次の2つです。

支払不能支払停止
どのような状態を指すか債務者の客観的状況債務者の行為
自己破産の条件か否か条件である(直接的な)条件でない

「支払停止」となった後に返済を一時的に再開した場合には、「支払停止」または「支払不能」が解消したものとして扱われ、自己破産の申立てが認められない可能性があります。
支払不能かどうかは、ケースバイケースなので、弁護士にご相談ください。

「支払不能」と認められるケース、認められないケース

では、具体的にどのようなケースが「支払不能」にあたるのかをみていきましょう。

(1)「支払不能」と認められるケース

具体例でみてみましょう。
AさんはOL、一人暮らし、めぼしい財産はないとします。

Aさん 借入総額350万
手取り月給18万円
家賃6万5000円 食費3万円 水道光熱費1万円 通信費1万5000円
ペット代1万円 交際費5000円 雑費1万5000円 月々の支出15万円

借入総額350万円を36(ヶ月)で割ると、約9万7000円です。しかし、Aさんが返済に充てられるのは18(万円)から15(万円)を引いた3万円です。借入総額を36で割った金額が毎月の返済可能額を大幅に上回っていますので、支払不能といえるでしょう。
注意すべきなのは、収入に見合わない支出があれば適正価格としたうえで計算するということです。たとえば、(日常生活に必須とは言えない)ゲーム課金月5万円を借金の返済に充てれば完済が可能な場合、支払不能とは判断してもらえない可能性が高いでしょう。

裁判所は、借金の総額、資産額、収入、年齢、家族構成などさまざまな面から支払不能状態にあたるかどうかを判断します。

(2)「支払不能」と認められないケース

財産・信用・労務のいずれかにより、債務を履行できる状況であれば、「支払不能」には当たりません。たとえば、専業主婦や学生など収入のない人であっても、父親などから相続した資産が借金の額を上回るようであれば、基本的に自己破産をすることはできません。

また、「支払不能」か否かは、原則として自己破産を申立てたときの状況で判断するので、将来返済しなければならない借金を多く抱えていたとしても、自己破産を申立てた段階では支払不能とは認められないでしょう。
たとえば、2022年8月30日に2000万円の借金を返済しなければならず、その返済の目途が立たない(客観的に支払不能といえる)としましょう。この場合でも、1年前の2021年8月30日の段階では支払不能だとは認められない可能性が高いといえます。

注意!「支払不能」後にしてはいけないこと

自己破産を依頼された弁護士は、依頼者に対して、いくつかの禁止行為をお伝えすることになります。

  • 受任後の借入れ、返済(携帯電話を使った後払いの決済を含む)
  • 自動車や住宅など一般的に高額とされる財産の処分(適正価格での売却として弁護士の了承を得た場合等を除く)
  • 浪費、ギャンブル等

これらの禁止行為は、おやめください。
この中でも特にご注意いただきたいのが、「一部の債権者に対する支払い」です。支払不能後に一部の債権者にのみ返済することは、破産法で禁じられている「偏頗(へんぱ)弁済」に該当します。
偏頗弁済を疑われると、手続きのための費用が高額になる(少額)管財事件となりうるばかりか、弁済を受けた人がお金を返金しなければならなかったり、自分で支払った分の金額を改めて用立てなければならなくなかったり、あまりにも悪質な場合、自己破産が認められなかったりするなどさまざまなリスクがあります。悪気などはなく良かれと思ってした行為であっても、お金を支払った相手に面倒をかけることになりかねないので、絶対にやめてください。
詳しくはこちらの記事もご確認ください。

偏頗(へんぱ)行為とは?自己破産における扱いと否認について解説

【まとめ】自己破産の手続きについてはアディーレ法律事務所にご相談ください

「借金問題を解決するには自己破産しかない」と思っても、自己破産ができる状態(支払不能)でなければ自己破産の手続きを進めていくことはできません。逆に「自分の状況では自己破産は無理だろうな」と思っても、実は支払不能状態に陥っており自己破産の手続きを進めていくことができる可能性もあります。支払不能状態かどうかは、ご相談を受けた弁護士が適切に判断しますので、まずはお話をお聞かせください。
借金問題でお悩みの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。