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確定申告の「青色申告」とは?白色申告との違いやメリットを解説

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s.miyagaki

※アディーレ法律事務所では様々な法律相談を承っておりますが、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。予め、ご了承ください。

「個人事業主として仕事を始めることになった。確定申告では青色申告をした方がいいって聞くけど、何がいいの?白色申告と何が違うの?」

実は、青色申告で確定申告を行うことは、節税対策になり得ます。

「青色申告」を行うことで、「青色申告特別控除」を受けることができたり、純損失の繰越し・繰戻しなどが認められたりするためです。

このことを知っておくと、確定申告の際に支払う税額を適切な方法で抑えることができます。

今回の記事では、次のことについてアディーレの弁護士が解説します。

  • 青色申告と白色申告の違い
  • 青色申告の対象となる人
  • 青色申告で受けることのできる5つのメリット
  • 青色申告で確定申告する際の注意点と必要書類
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

青色申告とは

確定申告の際には、「青色申告」という申告方法を選ぶことができます。

「青色申告」とは、複式簿記等の方式により日々の取引を記帳し、その記帳を基にして正確な所得金額や税額を計算し、確定申告を行うことです。

「青色申告」で確定申告を行うと、さまざまなメリットがあります。

青色申告のメリットについては、後で詳しくご説明します。

青色申告と白色申告の違い

「白色申告もあるって聞いたけど、青色申告とどう違うの?」

青色申告のほかに「白色申告」という申告方法もあります。白色申告とは、青色申告以外の方法によって確定申告を行うことです。

青色申告との主な違いは、白色申告のほうが帳簿のつけ方が簡単なことです。

青色申告では複式簿記等による記帳が必要ですが、白色申告では簡易な帳簿(一般的に、単式簿記や簡易簿記と呼ばれています)でかまいません。

ただし、白色申告で確定申告を行った場合、後でご説明する青色申告のメリットを受けることはできません。

青色申告の対象となる人

青色申告は、誰でもできるというわけではなく、青色申告の対象となるのは、次のいずれかの所得がある人です。

  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 山林所得

これらの青色申告の対象となる所得がある場合には、基本的には青色申告をすることがおすすめです。

青色申告には、これからご紹介するようなさまざまなメリットがあるからです。

青色申告をするためには、原則として複式簿記等による記帳が必要(※)ですが、市販の会計ソフトなどを活用することで、個人でも複式簿記等により帳簿をつけることは、以前と比べて非常に簡単になっています。

※後述のとおり、青色申告でも複式簿記等ではなく、簡易な記帳により行うことは可能ですが、10万円まで(所得金額の合計が10万円より少ない場合は、その金額が限度)しか控除を受けられなくなります。

青色申告で受けることのできる5つのメリット

「『青色申告』という言葉は聞いたことがあるけれども、なんだか難しそう……」

個人事業主として確定申告をする際には、「白色申告」と「青色申告」の2種類の方法があります。

「青色申告」というと、複雑な手続きが必要そうで敬遠される方も多いかもしれません。

しかし、青色申告を選んで確定申告を行うことで、さまざまなメリットを受けることができます。青色申告によって受けることのできるメリットには、次のようなものがあります。

  • 青色申告特別控除を受けることができる
  • 純損失(赤字)の繰越しや繰戻しが認められる
  • 青色事業専従者への給与を必要経費として計上できる
  • 貸倒引当金を一括して必要経費に計上できる
  • 30万円未満の少額減価償却資産について一括で必要経費に計上できる

(1)メリット1|「青色申告特別控除」を受けることができる

青色申告をすることで、「青色申告特別控除」を受けることができます。

「青色申告特別控除」とは、所得金額から最高で65万円を控除することができるという青色申告者のための特典です。所得金額から最高で65万円を控除することができることによって、納める税額を減らすことができます。

参考:No.2072 青色申告特別控除|国税庁

青色申告特別控除の控除額

青色申告特別控除の控除額には、10万円、55万円、65万円の3種類があります。

65万円の「青色申告特別控除」を受けることができるのは、おおよそ次の条件を満たしている青色申告者です。

  1. 所得や経費などにつき「複式簿記」による記帳をしていること
  2. 「貸借対照表」と「損益計算書」を添付していること
  3. 期限内に「確定申告」していること
  4. 仕訳帳について一定の要件を満たした上で、「電子帳簿保存」を行っていること、または確定申告書等の提出を「e-Tax」を使用して行うこと

4番目の条件「電子帳簿保存またはe-Taxの使用」のみを満たしていない場合、青色申告特別控除の額は55万円となります。

さらに上で述べたような1~4の条件を満たしていないものの、所得や経費などにつき、一定の要件を満たした簡易な記帳をして、かつ、損益計算書の提出をする場合は、10万円の青色申告特別控除を受けることができます。

つまり、10万円の青色申告特別控除の場合、複式簿記等による記帳は必要ありません。

(2)メリット2|純損失(赤字)の「繰越し」や「繰戻し」が認められる

青色申告を行うことにより、「純損失(赤字)の繰越しや繰戻し」を行うことができます。これにより、年をまたいだ損益通算(利益から損失を差し引くこと)が可能になります。

純損失の繰越しや繰戻しは、青色申告を行っていない場合には認められませんが、青色申告を行えば認められます。

「純損失の繰越し」とは、当年に生じた純損失を、翌年以降の所得(黒字)から差し引くことで、過去の赤字を繰り越し、翌年の課税所得額を抑えることができる制度です。

例えば、翌年分の所得(黒字)が200万円、当年分の損失(赤字)が100万円の場合、次のような計算により、翌年の課税所得額を抑えることができます。

【繰越しの例】
200万円(翌年分の所得)-100万円(当年分の損失)=100万円(翌年分の課税所得額)

また、「純損失の繰戻し」とは、当年に生じた純損失を、前年の所得から差し引き、すでに納めた所得税の還付を受けられる制度です。

純損失の繰越しが認められるのは最長で3年分までで、純損失の繰戻しが認められるのは1年分までです。
また、純損失の繰戻しが認められるためには、前年分についても青色申告を行っていることが必要です。

(3)メリット3|「青色事業専従者」への給与を必要経費として計上できる

生計を一にしている配偶者その他の親族が納税者の経営する事業に従事している場合、そのような人に支払った給与は、原則として必要経費として計上することはできません。

しかし、青色申告を行った場合には、一定の条件を満たして実際に支払った給与(青色事業専従者への給与)の額を必要経費として計上することが可能となります。

「青色事業専従者」とは、青色申告者と生計を一にする配偶者やその他の親族であって、1年のうち6ヶ月を超える期間、その青色申告者の営む事業にもっぱら従事していることなどの一定の条件を満たした者のことです。

ただし、「青色事業専従者」給与の額は、労務の対価として相当と認められる額でなければなりませんので、過大に支払った部分については必要経費とはなりません。

参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁

(4)メリット4|「貸倒引当金」を一括して必要経費に計上できる

青色申告をしている個人事業主は、決算に際して、売掛金や貸付金などの金銭債権について、帳簿価格合計の5.5%(金融業の場合は、3.3%)までの額を「貸倒引当金繰入」として一括して必要経費に計上することができます。

「貸倒引当金」とは、取引先から売掛金や貸付金などを回収できなくなった場合に生じる貸倒損失によるリスクに備えて、損失となる可能性のある金額をあらかじめ計上しておく見積金額のことです。

白色申告の場合には、個別評価による貸倒引当金(ほぼ確実に回収不能であると見込まれる金銭債権についての貸倒引当金)しか経費に計上できません。

これに対して、青色申告の場合には、ほぼ確実に回収不能であるかどうかを問わず一律に一定割合を貸倒引当金として計上することができる点で異なります。

(5)メリット5|30万円未満の「少額減価償却資産」について一括で必要経費に計上できる

原則として、取得金額が10万円以上の資産は、減価償却資産として数年に分けて経費に計上しなければならないとされています。

これに対して、青色申告を行うと、取得金額が30万円未満の資産については「少額減価償却資産」として一括で必要経費に計上することが可能となります。

ただし、少額減価償却資産の特例の対象となるのは、2024年3月31日までの間に購入した減価償却資産に限られており、経費計上できる減価償却資産の上限は、年間300万円とされている点にご注意ください。

参考:少額減価償却資産の特例|中小企業庁

青色申告で確定申告する際に注意すべき2つのこと

新たに青色申告で確定申告をしようとする場合には、あらかじめ税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。このほかにも、青色申告承認申請の際の注意点として次のようなものがあります。

  • 期間内に「青色申告承認申請」をしなければならない
  • 55万円または65万円の控除を受けるには「複式簿記」で記帳しなければならない

参考:[手続名]所得税の青色申告承認申請手続|国税庁

(1)注意点1|期間内に「青色申告承認申請」をしなければならない

「青色申告承認申請」には、提出時期が定められています。提出時期は、原則として、青色申告によって確定申告をしようとする年の3月15日までです。

ただし、その年の1月16日以後に新たに事業を開始するなどした場合には、その事業開始等の日から2ヶ月以内が提出期限となります。

(2)注意点2|55万円または65万円の控除を受けるには「複式簿記」で記帳しなければならない

ここまででご説明したように、青色申告特別控除には、55万円または65万円の控除があります。

55万円または65万円の青色申告特別控除を受けるためには、「複式簿記」という方法で記帳しなければなりません。

青色申告の必要書類

青色申告を行う時に必要となる書類には、次のようなものがあります。

  • 確定申告書B
  • 青色申告決算書

(1)確定申告書B

確定申告書は、各種の所得や控除の金額などを記入する書類です。

確定申告書にはAとBの2種類があり、青色申告を行う場合には確定申告書Bを使います。

確定申告書は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作成することができるほか、市販の会計ソフトを使って作成することもできます。

(2)青色申告決算書

青色申告決算書とは、記帳した帳簿の内容を決算書の形で記入する書類です。青色申告決算書は、損益計算書や貸借対照表などの計4枚から構成されています。

青色申告決算書も、確定申告書と同様に、市販の会計ソフト等で作成することができます。

確定申告に必要な書類について詳しくはこちらをご覧ください。

マイナンバーカードがなくても確定申告はできる?手続き方法を解説

【まとめ】青色申告で確定申告をすると最大65万円の青色申告特別控除などの特典を受けられる

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 青色申告とは、「複式簿記等」の方式により記帳し、その記帳を基にして正確な所得金額や税額を計算し、確定申告を行うこと
  • 白色申告とは、「青色申告以外の方法によって確定申告」を行うこと
  • 主な違いは、「白色申告のほうが帳簿のつけ方が簡単」なことと、「受けられるメリットの内容」
  • 青色申告の対象となる人は、「事業所得など所定の所得がある人」
  • 青色申告による確定申告をすることで、「最大65万円の青色申告特別控除を受けることができる」、「純損失(赤字)の繰越し・繰戻しが認められる」などのさまざまなメリットがある。これにより、節税につなげることが可能になる
  • 青色申告を新たに始める際には、「期間内に青色申告承認申請」をすることが必要。
  • 55万円または65万円の青色申告特別控除を受けるためには「複式簿記」で記帳することが必要
  • 青色申告の際の必要書類として、「確定申告書B」や「青色申告決算書」が必要

「青色申告は難しそうだし別にやらなくてもいいかな」と考えることがあるかもしれませんが、青色申告には節税につながるさまざまなメリットがあります。

納める税額は少しでも多く抑えたいですよね。そのためには、ぜひ「青色申告」で確定申告をすることをご検討ください。

青色申告に関して疑問な点がある場合には、所轄の税務署など税についての相談窓口にご相談ください。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。

※¹:2024年4月時点。拠点数は、弁護士法人アディーレ法律事務所と弁護士法人AdIre法律事務所の合計です。

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