「離婚することになったけど、子どもの養育費はどのように取り決めたらいいの?もし途中で支払われなくなったらどんな手続きができるの?」
このような悩みを持つ方は少なくありません。
養育費については、離婚前によく話し合っておくことをおすすめします。
きちんと備えておけば、たとえ支払いが滞ったとしても、すみやかに強制執行などの手続きをとれる場合があるからです。
この記事を読んでわかること
- 養育費の金額の目安
- 養育費の取り決め方法
- 養育費が不払いのとき・増額したいときの手続き
慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
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養育費ってなに?
「養育費」ってなんですか?
親が離婚した場合、子どもを直接育てる親(監護親)は、子どもと離れて暮らす親(非監護親)に対して、子どもを育てていくための養育に要する費用を請求することができます。この費用が「養育費」というものです。
離婚をしたとしても親として当然支払ってもらうべき費用ということになります。
「養育費」はいつまでもらえるのでしょうか?
養育費が請求できるのは、原則、子が20歳になるまでです。
大学進学率も高くなっていますので、大学卒業するまで養育費を支払うとする場合もあります。
「生活に余裕がなく払えない」といわれた場合にはどうすればいいんですか?
子どもと離れて暮らす親(非監護親)の生活に余裕がない場合でも養育費の支払いを拒むことはできません。
養育費は、非監護親が「生活が苦しいから払えない」という理由で支払義務を免れるものではなく、生活水準を落としてでも払う必要があるお金となります。
「子供と会わせてくれないのであれば、養育費は支払いたくない」といっています。この場合は、子供と会わせないといけないのでしょうか。
子供と会わせることを拒否した場合であっても、養育費を請求することができます(相手は養育費の支払いを拒否することはできません)。
もっとも、養育費を支払う以上、子供と定期的に交流(面会交流)をもちたいと考える親は少なくなく、養育費の支払いと面会交流を認めるのかについては一緒に話し合うこともあります。
養育費はいくらもらえる?
養育費の具体的な金額は、裁判所が公表している「養育費算定表」が参考になります。
「養育費算定表」とは、調停や裁判で養育費を決めるときに参考にされるものです。
夫婦で話し合って養育費を決める場合には、必ずしも「養育費算定表」に従わなければならないというわけではないのですが、話し合って決める場合にも目安や基準として参考にすることが多いです。
例えば、子どもが1人、0~14歳の場合で、夫妻が双方会社員である場合には年収に応じて次のように計算されることになります。
養育費の支払いがどのくらい見込めるのかを知りたい方は、「養育費かんたん自動計算ツール」から、受取額の目安をチェックすることができます。
養育費の金額について詳しくはこちらをご覧ください。
養育費の取り決め方法は?
養育費の取り決め方法は、
- 夫婦で話し合う
- 家庭裁判所での調停もしくは審判
という2つ方法があります。
(1)夫婦で話し合う
養育費については、まず夫婦で話し合って決めることから始めます。
養育費について話し合っておくべきことは、次のとおりです。
- 養育費の金額(例:毎月〇万円など)
- 支払い時期(例:月末にするなど)・支払い方法(例:振込など)
- 支払い期間(例:大学を卒業するまでなど)
- 臨時の費用(例:突然のケガや病気による治療費が必要なとき)
特に、「臨時の費用」については忘れがちなので注意が必要です。
子どもには突然、高額な費用(例えば、学校の入学金、突然のケガや病期の治療費など)が必要になることがあります。
そういった場合には、都度支払いを求めるのかなどについて話し合っておくと良いでしょう。
養育費は、通常、月々の分割払いであることが多いです。
一方、養育費を一括請求するケースも存在しますので、詳しくはこちらをご覧ください。
(2)家庭裁判所での調停もしくは審判
養育費の話し合いがまとまらない場合や、そもそも話し合いができない場合には、家庭裁判所での調停もしくは審判で決めることになります(離婚前であれば「離婚調停」、離婚後であれば「養育費請求調停」を申立てることになっています)。
裁判所と聞くと、裁判官が法廷で判決を下す裁判のイメージがあるかもしれませんが、「調停」とは、あくまでも話し合いの手続きとなります。
養育費請求調停での話し合いがまとまらない場合には、裁判官が養育費について決定(審判)することになります。
離婚調停での話し合いがまとまらない場合には、離婚訴訟を提起し、離婚の可否をはじめ、養育費などの離婚条件が判決において決定されることになります。
参考:養育費に関する手続|裁判所 – Courts in Japan
夫婦で話し合った内容は公正証書にしておくことがおすすめ!
養育費について夫婦の話し合いがまとまった場合には、「離婚協議書」として書面に残しておきましょう。
さらに、養育費や慰謝料などのお金の支払いを含む取り決めには、強制執行認諾文言付きの公正証書の形で作成しておくことがおすすめです。
「公正証書」ってなんですか?
公正証書とは、公証人が法律に従って作成する公文書のことをいいます。
公正証書に「債務者が本契約の債務を約束通りに履行しなかったときは、直ちに強制執行を服することを承諾する」との強制執行認諾文言をいれておくと、約束通り支払われなかった場合には、相手の財産を指し押さえるなどの強制執行をすることができるのです。
「公正証書」はどうやって作ることができますか?
「公正証書」は、公証役場に行き、公証人が立ち会うことで作成することができます。作成する際には、手数料(5000円~)も必要となります。
「公正役場」はどこにあるのでしょうか?
公正証書を作成できる公証役場は、全国に約300ヶ所あります。
住居のある市町村の公証役場を利用しなければならないわけではなく、全国の公証役場を利用することができます。
公正証書について詳しくは、こちらをご覧ください。
なお、調停や審判で養育費について取り決めをしたにもかかわらず、不払いがあった場合には、家庭裁判所からの支払の勧告や強制執行手続きを行うことができます。
養育費が不払いの場合はどうすればいい?
公正証書や調停・審判の取り決めはありません。
しかし、夫婦で決めた養育費が不払いになっています。どうすればいいですか?
まずは、直接相手に連絡して支払うように督促しましょう。
それでも支払いがない場合には、
・ 相手方に協力してもらい公正証書を作成する
・ 養育費の支払いを求める調停・審判を申し立てる
ことで、未払いに対して強制執行手続きがとれるようにすることになります。
公正証書や調停・審判の取り決めがあるにもかかわらず未払いの場合には強制執行手続ができると聞いたのですが、どうすればいいですか?
強制執行手続は、相手の住所の近くにある地方裁判所に申し立てることで行うことができます(なお、手数料が必要)。
強制執行手続では何ができるのでしょうか?
強制執行手続を行うことで相手の給料や預貯金を差し押さえて、そこから未払いの養育費を受け取ることができます。
ただ、相手の生活もありますので、給与で差し押さえられるのは、基本的に税金等を控除した残額の2分の1までとされています(民事執行法151条の2第1項3号、152条第3項)。
養育費が滞った際の対応について詳しくはこちらをご覧ください。
なお、調停や審判の取り決めがあるにもかかわらず、養育費の滞納があった場合には、強制執行手続以外に「履行勧告」という手続きをとることができます。
「履行勧告」とは、家庭裁判所から相手に支払いを促す手続きになります。強制力はありませんが、費用もかからず、手続きも簡単に行うことができます。
養育費を増額したいときはどうすればいい?
一度決めた養育費も、事情の変更があった場合には、増額できるかもしれません。
たとえば、子どもが大病を患って多額の医療費がかかるといった事情が生じたり、進学に特別の費用が必要になったりした場合には、養育費を増額できる場合があります。
養育費の増額は、当事者同士で話し合って合意すればいつでも行うことができます。
しかし、まとまらなければ裁判所に対して調停や審判を申立てる必要があります。
参考:養育費に関する手続|裁判所 – Courts in Japan
養育費の増額について詳しくはこちらをご覧ください。
逆に、養育費の減額を請求される場合もあります。
たとえば、1.非監護者(義務者)が再婚して子どもが生まれた=扶養家族が増えた、2.監護者(権利者)が再婚した、等の事情がある場合です。
この場合も自動的に減額されるわけではなく、合意や調停・審判がなければ減額することはできません。
【まとめ】養育費の取り決めは父母の話し合いが基本|不払いがあれば強制執行ができる場合も
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 「養育費」とは、子どもを育てていくための養育に要する費用のことをいい、離れて暮らす親に請求することができる
- 養育費を支払う側の親の生活に余裕がない場合でも、養育費の支払いを拒むことはできない
- 子どもと会わせることを拒否した場合であっても、養育費を請求することができる(相手は養育費の支払いを拒否することはできない)
- 養育費について話し合って決める場合には「養育費算定表」を養育費の金額の目安として参考にすることができる(「養育費算定表」より高額でもよい)
- 養育費の取り決め方法は、1.夫婦で話し合う、2.家庭裁判所での調停もしくは審判という2つの方法がある
- 養育費や慰謝料などのお金の支払いを含む取り決めには「公正証書」の形で残しておくことがおすすめ
- 「公正証書」は、公証役場に行き、公証人が立ち会うことで作成することができるが、作成する際には手数料(5000円~)が必要
- 養育費が不払いの場合には、相手の給与や預貯金を差し押さえる強制執行手続がとれる(強制執行認諾文言付きの公正証書や調停・審判の取り決めがある場合)。
- 養育費は、当事者同士で合意すれば増額(または減額)することができるが、合意できなければ裁判所に対して調停や審判を申立てる必要がある
養育費についての取り決めがまとまらずお困りの方は、離婚問題や養育費請求を取り扱っている弁護士にご相談ください。
アディーレ法律事務所では、現在養育費を受け取れておらず、養育費を請求したいという方からのご相談を承っています。
適切な額の養育費を請求することは、お子様の将来のためにもとても重要です。
養育費のご相談はお電話で可能ですので(フリーコール|0120-554-212) 、一度ぜひお問い合わせください。