「もうすぐ離婚後の共同親権が認められるようになるらしいけど、そうなったら養育費はもらえなくなるの?」
そのような疑問や不安を抱えている方も多いようですが、結論から言えば、離婚後の共同親権の導入により、養育費の支払義務がなくなることはありません。
むしろ、離婚後は子どもと離れて暮らすことになった親が負う養育費の支払義務は、強化される方向です。
現在離婚を検討中で、適切な金額の養育費を受け取れるのかについてお悩みの場合は、離婚前から養育費についての知識を蓄えておくことをおすすめします。
この記事を読んでわかること
- 共同親権とは
- 共同親権と養育費の関係
- 養育費未払いへの対処法
ここを押さえればOK!
共同親権とは、子どもの親権を両親が共同で持つ制度であり、これまで日本では離婚後の共同親権は認められていませんでしたが、世界的には離婚後の共同親権を認めることが多数派となっています。
共同親権が導入されても、養育費の支払義務はなくなりません。養育費は親権の有無にかかわらず親である以上負うものだからです。
養育費の算定方法としては、裁判所が公表している「養育費算定表」が広く利用されており、両親の収入や子どもの年齢、人数などを基に標準的な養育費の額を算出します。
特別な事情があれば個別の事情を考慮して養育費の額が決定されることもありますし、両親の合意があれば自由に養育費の額を定めることも可能です。
養育費についての話合いがまとまれば公正証書を作成することが推奨されます。
強制執行認諾文言付きの公正証書があれば、将来的に養育費の未払いが発生しても、裁判手続を経ずに強制執行の手続に移行することが可能だからです。
話合いがまとまらない場合は、調停や審判などの裁判手続を経ることになるでしょう。
最終的には、強制執行によって給料などを差し押さえる手続に移行することになります。
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慶應義塾大学卒。大手住宅設備機器メーカーの営業部門や法務部での勤務を経て司法試験合格。アディーレ法律事務所へ入所以来、不倫慰謝料事件、離婚事件を一貫して担当。ご相談者・ご依頼者に可能な限りわかりやすい説明を心掛けており、「身近な」法律事務所を実現すべく職務にまい進している。東京弁護士会所属。
共同親権とは?
日本でももうすぐ離婚後の共同親権が導入されることが決まり、ニュースなどでも共同親権について取り上げられることが多くなりました。
そこで、まずは共同親権について簡単に解説します。
(1)共同親権の概要
共同親権とは、子どもの親権を両親が共同で持つ制度のことです。
両親が結婚している間は両親がその間に生まれた子どもの親権を共同して親権を行使しますが、日本ではこれまで、離婚後の共同親権は認められていませんでした。
つまり、未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、両親のどちらかを親権者と定めなければならない単独親権が採用されています。
しかし、世界的には、離婚後も共同親権を認めることが多数派となっています。
そして、日本でも離婚後の共同親権が導入されることが決まりました。
(2)日本でも導入が決まった離婚後の共同親権
2024年5月17日、離婚後の共同親権を可能とする改正民法が可決・成立しました。
同月24日に公布されたこの改正民法は、公布の日から起算して2年以内に施行される予定です。
つまり、この改正民法の施行後は、共同親権か単独親権かを基本的には自由に選べるようになります。
共同親権の導入で養育費はどうなる?
では、離婚後の共同親権が導入されたあと、それを選択した場合には、養育費の支払義務はなくなるのでしょうか。
養育費は、親権者となって子どもと一緒に暮らす親が、親権者とならなかった親から受け取ることが一般的であるため、このように誤解している方もいるようです。
しかし、冒頭で述べたように、離婚後も共同親権を選択したからといって養育費の支払義務がなくなることはありません。
養育費の支払義務は、親権の有無にかかわらず親である以上負うものだからです。
むしろ、この法改正により、養育費の支払義務は従来よりも強化されています。
たとえば、今回の改正により、養育費の取り決めをせず協議離婚した場合に、法定養育費を請求できるようになりました。
そのため、養育費の支払いを拒否されても、調停は必須ではなくなります。
とはいえ、養育費を支払う側も養育費の額に納得したほうが、自主的な支払いを期待できる面はありますし、後述する「養育費算定表」のほうが法定養育費より高いケースも考えられます。
したがって、改正法施行後も、調停の利用を検討すべき場合はあるでしょう。
養育費の算定方法
日本では、裁判所が「養育費算定表」が公表している広く利用されています。
この算定表は、両親の収入や子どもの年齢、人数などをもとに、標準的な養育費の額を算出しています。
また、特別な事情がある場合には、算定表の基準額から調整が行われることもあります。
たとえば、子どもが特別な医療費を必要とする場合などです。
このような場合には、家庭裁判所が個別の事情を考慮して養育費の額を決定することになります。
もっとも、両親の合意があれば家庭裁判所での手続は必要なく、算定表の基準額にとらわれることなく自由に養育費の額などの条件を定めることも可能です。
養育費の算定は、子どもの生活を安定させるために非常に重要なプロセスです。適切な養育費が支払われることで、子どもが健全に成長できる環境を整えることができます。
参考:平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について|裁判所
養育費未払いへの対処法
では、現在離婚に向けて話合いをしている場合や、離婚後の養育費の未払いに悩んでいる場合の対処法をご紹介します。
(1)話合いがまとまれば公正証書に
養育費の支払いについて両親の話合いがまとまった場合、その合意内容を公証人が作成する公文書である公正証書にすることをおすすめします。
強制執行認諾文言付きの公正証書を作成しておくことによって、養育費の未払いが発生した場合には、裁判手続きを経ずに強制執行(差押え)をすることが可能となるからです。
公正証書には、養育費の金額、支払い方法、支払い期間などの具体的な条件を明記します。
なお、公正証書を作成する際には、必要な書類や手数料について事前に確認しておくとよいでしょう。
(2)裁判所での手続を利用する
養育費の支払いについて話し合いがまとまらない場合、裁判所での手続きを利用することができます。家庭裁判所に調停を申し立てることで、第三者である調停委員が間に入り、両親の意見を調整しながら合意を目指します。
離婚前であれば離婚調停を申し立て、離婚条件の一つとして養育費について話し合うことになります。
離婚後であれば、養育費請求調停を申し立て、養育費について話し合います。
調停が成立すれば、その内容は調停調書に記載され、法的な効力を持ちます。
調停が不成立の場合は、審判手続に進み、裁判官が養育費の額や支払方法を決定します。審判で決定された内容は審判書に記載され、これも法的な効力を持ちます。
調停調書や審判書があれば、すみやかに差押えの手続に移行することが可能です。
(3)最終的には差押え
養育費について公正証書を作成していた場合や、調停や審判での取り決めがある場合にもかかわらず、養育費の支払いが滞ったのであれば、最終手段として給料などを差し押さえることになるでしょう。
なお、調停や審判で養育費について取り決めた場合には、家庭裁判所による履行勧告・履行命令の制度も利用できますが、実効性に乏しく、あまり利用されていないのが実情です。
しかし、履行勧告・履行命令は手続に費用もかからず、手続自体も簡単というメリットがあるため、差押えに移行する前に利用を検討してみるとよい場合もあるでしょう。
【まとめ】共同親権が導入されたことで、養育費の支払義務がなくなることはない
離婚後の共同親権が導入されたからといって、子どもと離れて暮らすことになった親の養育費の支払義務がなくなることはありません。
養育費は、両親の離婚後も子どもが健全に成長するためになくてはならないものです。
養育費の未払いに備え、養育費について公正証書を作成しておくことをおすすめします。
調停や審判などの裁判手続を経なくても、スピーディーに差押えの手続に移行できるからです。
もっとも、離婚に向けての話合いは難航することもあるうえ、話合いがまとまらなければ裁判手続が必要になることもあります。
そのため、離婚や養育費の未払いでお悩みの場合は、弁護士に相談するとよいでしょう。
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