離婚は人生の大きな転換点であり、多くの人にとって不安と困難を伴う経験です。特に子どもがいる場合、その影響はさらに大きくなります。
「離婚後の生活はどうなるの?」「子どもの将来は大丈夫?」そんな不安を抱えている方も多いでしょう。
子どもがいる場合の離婚慰謝料の相場は100~300万円、養育費の相場は月数万円となります。離婚慰謝料や養育費をきちんと受け取っておくことはあなたと子どもの将来の安定につながります。
このコラムでは、離婚慰謝料の請求可能な状況、金額の決め方、養育費の期間や金額の相場などを弁護士が解説いたします。このコラムを通じて、あなたが最善の決断を下し、より良い未来へ進むための一助となれば幸いです。
ここを押さえればOK!
養育費は離婚後、子どもを育てる親が受け取る費用で、基本的に子どもが自立するまで支払われます。養育費の相場は年収や子どもの数によって異なり、数万円程度が一般的です。離婚慰謝料や養育費に関するお悩みは、アディーレへご相談ください。
離婚慰謝料とは
離婚慰謝料とは、離婚によって受けた精神的ショックやストレスに対して払われるお金(慰謝料)のことをいいます。
(1)離婚慰謝料はどういうときにもらえるの?
離婚慰謝料は、離婚の際に必ず支払われるものではありません。たとえば、次のような場合に、有責配偶者に対して離婚慰謝料を請求することができます。
- 不貞行為(浮気・不倫)
- 暴力・DV
- 悪意の遺棄(経済的DVなど)
- 性交渉の拒否 など
一方で、離婚になってしまった原因が、性格の不一致や価値観の相違など夫や妻のどちらかが一方的に悪いわけではない場合には離婚慰謝料を請求することはできません。
(2)離婚慰謝料の金額はどうやって決める?
離婚慰謝料の金額は法律で決められているわけではありません。離婚慰謝料の金額は夫婦の話し合いで決めるのが原則です。話し合い次第で合意できればいくらでも構いません。
話し合いが難しい場合には、家庭裁判所での調停や裁判で、離婚慰謝料の金額を決めることになります。
離婚原因別の慰謝料相場とは|子どもがいることは金額に影響する?
離婚慰謝料の相場(裁判を通じて請求する場合)は、数十万~300万円程度となることが一般的です。相場に大きく幅があるのは、婚姻期間や夫婦の子どもの有無、離婚原因に至った理由などによって金額が大きく左右されるからです。
<離婚慰謝料の相場(原因別)>
- 不貞行為(浮気・不倫):100万~300万円
- 暴力・DV:数十万~300万円
- 悪意の遺棄(経済的DVなど):数十万~300万円
- 性交渉の拒否:数十万~100万円
夫婦の間に子どもがいる場合には、一般的に離婚慰謝料の増額理由にあたるとされています。夫婦の間に子どもがいるにもかかわらず、配偶者が離婚に至る原因を作ったということになれば、受ける精神的ショックも大きいだろうと判断されているからです。
(1)不貞行為(浮気・不倫)による離婚慰謝料の相場
不貞行為の離婚慰謝料相場は、100万~300万円となります。
不貞行為の期間や回数、婚姻期間の長さ、配偶者と不倫相手と間の妊娠の有無などによって金額は変動します。長期間の不貞行為や不倫相手が妊娠していた場合には、高額な慰謝料額になる傾向があります。
(2)暴力・DVによる離婚慰謝料の相場
DVを理由に離婚する際にもらえる慰謝料の相場は、数十万~300万円程度になります。
DVの程度や期間、頻度、けがの有無、婚姻期間などの要素によって、DVでの離婚の慰謝料額が決定されます。
(3)悪意の遺棄(経済的DVなど)による離婚慰謝料の相場
悪意の遺棄とは、正当な理由なく同居義務や協力扶助義務などを果たさないことをいいます。例えば、家庭を顧みずに長期間家を空けることや生活費を一切提供しないなどのことをいいます。
悪意の遺棄による離婚慰謝料相場は数十万円から300万円程度になることが一般的です。慰謝料額の決定には悪意の遺棄の期間や程度、被害者の精神的苦痛の度合い、経済的影響などが考慮されることになるでしょう。
(4)性交渉の拒否による離婚慰謝料の相場
セックスを拒否されてセックスレスになり、それが原因で離婚に至った場合には、離婚慰謝料を請求できる可能性があります。健康上の理由などがないにもかかわらずセックスを拒否が1年以上続いている場合には、慰謝料請求が認められやすい傾向にあるでしょう。
性交渉の拒否による離婚慰謝料の相場は数十万~100万円になることが一般的です。
養育費とは
養育費とは、離婚後に子供を養育する親(通常は親権者)がもう一方の親から受け取る子供の養育費用です。子供の生活費、教育費などに充てられます。
(1)養育費っていつまで受け取れるの?
養育費は、基本的には子どもが経済的・社会的に自立するまで支払われることになります。
しかし、法律で明確に「子どもが○○歳になるまで」と定められているわけではありません。
ただ子が未成熟子である間は養育費をもらえるというのが基本です(※)。大学卒業するまで養育費を支払ってほしいと希望する場合には、夫婦で話し合いの上「22歳に達した後の3月まで」(大学卒業時の年齢)など明確に決めておくようにしましょう。
※養育費は、子が未成熟であって経済的に自立することを期待することができない場合に支払われるものです。子が成年に達したとしても、経済的に未成熟である場合には養育費を支払う義務を負うことになります。
(2)養育費の金額はどうやって決めるの?
離婚慰謝料の金額は法律で決められているわけではありません。離婚慰謝料は夫婦の話し合いで決めるのが原則です。話し合い次第で合意できればいくらでも構いません。
話し合いが難しい場合には、家庭裁判所での調停や審判もしくは裁判で、離婚慰謝料の金額を決めることになります。
(3)養育費の不払いに備えて何かできることある?
離婚するときに養育費についても決めていても、「払い続けてもらえるの?途中で不払いになったりしない?」と不安な気持ちになるかもしれません。
養育費が不払いとならないようにするためには強制執行認諾文言付きの公正証書の形で作成しておくことがおすすめです。
公正証書とは、公証人が法律に従って作成する公文書のことをいいます。公正証書に「債務を約束通りに履行しなかったときは、直ちに強制執行を服することを承諾する」との強制執行認諾文言をいれておくと、約束通り支払われなかった場合には、相手の財産を指し押さえるなどの強制執行をすることができるのです。
養育費の相場とは|年収別・子どもの人数別に紹介
次に、養育費の相場は数万円程度となることが一般的です。
ここでは、厚生労働省による全国ひとり親等調査結果報告に基づく相場と養育費の金額を決める際に参考にする算定表による相場を見ていきます。
(1)全国ひとり親等調査結果報告による相場
厚生労働省による全国ひとり親等調査結果報告によれば、養育費の相場は父子世帯よりも母子世帯の方が高く、子どもの数3人をピークに養育費を増える傾向があることがわかります。
<養育費を現在も受けている又は受けたことがある母子世帯・父子世帯の養育費(1世帯平均)の状況(令和3(2021)年度全国ひとり親等調査結果報告)>
母子世帯(1世帯平均金額) | 父子世帯(1世帯平均金額) | |
平成28(2016)年 | 43,707円 | 32,550円 |
令和3(2021)年 | 50,485円 | 26,992円 |
<子どもの数別の養育費の状況(1世帯平均金額)(令和3(2021)年度全国ひとり親等調査結果報告)>
子1人 | 子2人 | 子3人 | 子4人 | 子5人 | 不詳 | |
母子世帯 | 40,468円 | 57,945円 | 87,300円 | 70,503円 | 54,191円 | 39,062円 |
父子世帯 | 22,857円 | 28,777円 | 37,161円 | - | - | 10,000円 |
(2)養育費算定表による相場
養育費算定表をもとに、養育費を支払うほうの親の年収と子どもの人数別の養育費の相場をまとめました。養育費を支払うほうの親は再婚しておらず、養育費を受け取る親の年収は0円と想定しています。
<年収400万円・子ども1人のケース>
子どもの年齢 | 養育費の目安 | |
親が給与所得者 | 親が自営業者 | |
0~14歳 | 4~6万円 | 6~8万円 |
15歳以上 | 6~8万円 | 8~10万円 |
<年収400万円・子ども2人のケース>
子どもの年齢 | 養育費の目安 | |
親が給与所得者 | 親が自営業者 | |
どちらも0~14歳 | 6~8万円 | 10~12万円 |
第1子15歳以上 第2子0~14歳 | 8~10万円 | 10~12万円 |
どちらも15歳以上 | 8~10万円 | 10~12万円 |
<年収500万円・子ども1人のケース>
子どもの年齢 | 養育費の目安 | |
親が給与所得者 | 親が自営業者 | |
0~14歳 | 6~8万円 | 8~10万円 |
15歳以上 | 8~10万円 | 10~12万円 |
<年収500万円・子ども2人のケース>
子どもの年齢 | 養育費の目安 | |
親が給与所得者 | 親が自営業者 | |
どちらも0~14歳 | 8~10万円 | 12~14万円 |
第1子15歳以上 第2子0~14歳 | 10~12万円 | 12~14万円 |
どちらも15歳以上 | 10~12万円 | 14~16万円 |
<年収600万円・子ども1人のケース>
子どもの年齢 | 養育費の目安 | |
親が給与所得者 | 親が自営業者 | |
0~14歳 | 6~8万円 | 10~12万円 |
15歳以上 | 8~10万円 | 12~14万円 |
<年収600万円・子ども2人のケース>
子どもの年齢 | 養育費の目安 | |
親が給与所得者 | 親が自営業者 | |
どちらも0~14歳 | 10~12万円 | 14~16万円 |
第1子15歳以上 第2子0~14歳 | 12~14万円 | 14~16万円 |
どちらも15歳以上 | 12~14万円 | 16~18万円 |
<年収700万円・子ども1人のケース>
子どもの年齢 | 養育費の目安 | |
親が給与所得者 | 親が自営業者 | |
0~14歳 | 8~10万円 | 10~12万円 |
15歳以上 | 10~12万円 | 14~16万円 |
<年収700万円・子ども2人のケース>
子どもの年齢 | 養育費の目安 | |
親が給与所得者 | 親が自営業者 | |
どちらも0~14歳 | 12~14万円 | 16~18万円 |
第1子15歳以上 第2子0~14歳 | 14~16万円 | 18~20万円 |
どちらも15歳以上 | 14~16万円 | 18~20万円 |
<年収800万円・子ども1人のケース>
子どもの年齢 | 養育費の目安 | |
親が給与所得者 | 親が自営業者 | |
0~14歳 | 10~12万円 | 12~14万円 |
15歳以上 | 12~14万円 | 16~18万円 |
<年収800万円・子ども2人のケース>
子どもの年齢 | 養育費の目安 | |
親が給与所得者 | 親が自営業者 | |
どちらも0~14歳 | 14~16万円 | 18~20万円 |
第1子15歳以上 第2子0~14歳 | 14~16万円 | 20~22万円 |
どちらも15歳以上 | 16~18万円 | 22~24万円 |
養育費かんたん自動計算ツールでは、必要事項をご入力・ご選択いただくだけで、あなたが受け取れる「養育費」を自動で計算できます。
離婚慰謝料と養育費についてよくある質問(Q&A)
最後に離婚慰謝料と養育費についてよくある質問をまとめました。参考にしてみてください。
(1)離婚慰謝料を払ってもらえないときはどうすればいい?
離婚慰謝料をとりきめたのに、離婚慰謝料を払ってもらえないときには、相手の財産を差押える強制執行ができる可能性があります。
強制執行をするためには、確定判決や調停調書、公正証書(執行認諾文言あり)などの債務名義が必要です。債務名義がない場合には相手の協力を得て公正証書を作成するか、相手の協力が得られない場合には調停や裁判を申し立てて債務名義を取得する必要があります。
「相手に財産がないから財産の差押えをしても意味がない!」という場合には、相手の給料を差押えて、そこから未払いの離婚慰謝料を回収する方法もあります。
(2)離婚慰謝料を受け取ったら、税金も払わないといけないの?
慰謝料は、原則として税金はかかりません。
ただし、例外として慰謝料額が不相当に高額過ぎる場合や慰謝料として不動産を譲渡する場合、慰謝料であることを証明できない場合などでは税金がかかる可能性があります。
(3)養育費として大学の学費も請求できる?
一度決めた養育費の学費でも親子をとりまく環境・事情の変化次第では、後になって養育費の金額を増額できる場合があります。例えば、大学の学費などで養育費が増えた場合などです。
この場合には、養育費の増額について夫婦で話し合うことになります。話し合いで合意がまとまらない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てて、調停員や裁判官などの第三者を入れて話し合いをすすめることになります。
【まとめ】離婚慰謝料は100万~300万円・養育費は数万円が相場|弁護士へ相談を
子どもがいる場合の離婚慰謝料の相場は100~300万円、養育費は月数万円程度です。
離婚慰謝料は不貞行為やDVなどの場合に請求可能で、離婚後子どもの養育する場合には養育費も受け取ることができます。慰謝料や養育費をきちんと取り決めておくことは、あなたと子どもの将来の安定につながります。
離婚に関する疑問や不安がある場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士のアドバイスを受けることで、より良い決断を下し、新しい人生のスタートを切ることができるでしょう。
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(※なお、具体的な事情によってはご相談を承れない場合もございます。)
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