『労役場留置』という言葉を聞いたことはありますか?
日常生活では、あまり聞きなれない言葉ですよね。
『労役場留置』とは、刑事事件の裁判で罰金刑や科料刑を受けた時に出てくる言葉です。
裁判で罰金刑や科料刑を受けたけれども、納付(=支払い)ができない時はどうなるのでしょうか。
結論から言うと、一定期間『労役場』で強制的に作業をさせられることになります。
それが『労役場留置』です。
罰金や科料をどうしても支払えないとしたら『労役場留置』は免れません。
『労役場留置』を免れるためには、何としても罰金や科料を納付するしかありません。
そのためには、罰金や科料以外の借金などについては「債務整理」をして返済の負担を軽減することで、罰金や科料を捻出しましょう。
今回は、次のことについてご説明します。
- 罰金を支払えない場合はどうなるのか
- 労役場留置とは何か
- 債務整理の種類
早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
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『労役場留置』ってなに?
『労役場留置』とは、刑事裁判で罰金刑や科料刑を受けたけれど支払えない人が、裁判で定められた1日当たりの金額が罰金額(科料額)に達するまでの日数分、『労役場』で所定の作業をしなければならないことです(ただ、科料は「1000円以上1万円未満」の刑ですので、科料刑で労役場留置処分になるケースはそれほど多くありません。労役場留置処分になるのは、「1万円以上」の罰金刑が主です)。
『罰金』や『科料』とは、刑罰の一種です。
罰金刑や科料刑が科されるということは、公開の法廷で裁判を受けるか、略式手続(非公開で行われる簡単な裁判手続)で裁判所の命令を受けるかしているはずです。
「略式手続」ってなんですか?
100万円以下の罰金又は科料に相当する事件について、被疑者に異議がない場合、公開の法廷による裁判ではなく、検察官の提出した書面により審査する裁判手続です。被疑者は、裁判所に出向く必要はありません。
罰金刑で一般の方に多いのは、交通事故(過失運転致死傷罪)などによる罰金でしょうか。
『科料』は、例えば軽犯罪法違反の場合などが多いです。
罰金刑を受ける時の主文は、大体、次のとおりです。
科される刑が罰金刑や科料刑だけという場合であれば、略式手続で刑を受けることが多いと思いますが、罰金額と1日換算される金額について、略式命令を今一度確認してみてください。
罰金刑を受ける時は、必ず『労役場留置』のことも書いてあるはずです。
もしも、罰金を支払えない場合、何日程度、労役場に留置されるのでしょうか。
例えば、10万円の罰金刑を受けたとしましょう。
10万円程度の罰金であれば、だいたい金5000円を1日に換算した期間、被告人を労役場に留置する、となっているかと思います。
ということは、10万円の罰金を支払えない時は、1日5000円に換算する期間、つまり
10万円÷5000円=20日
の20日間、『労役場』に留置されることになります。
ただし、『労役場留置』の期間は、法律上、1日以上2年以下と決まっています。
ですから、脱税事件などで罰金が数千万以上になると、1日に換算する金額も数十万円など、びっくりするような金額になります。
通常であれば、金5000円かせいぜい金1万円を1日に換算されているのではないでしょうか。
『労役場留置』Q&A
労役場留置について、よくある疑問についてご説明します。
『労役場留置』って刑罰なんですか?
『労役場留置』は、刑罰ではありません。
あくまでも、刑罰は罰金刑や科料刑であって、それを支払わない場合に労役場に留置して作業をさせるだけです。
『労役場』ってどこにあるんですか?
『労役場』は、刑事施設、つまり全国の刑務所や留置所に併設されています。
『労役場』では何をするんですか?
室内での軽作業です。封筒や紙袋を作ったり、ハンガーなどを作ったりします。
『労役場』からは出られないんですか?
留置期間は出られません。
ただ、1日当たりの金額を換算して残っている罰金を納付すれば出られますよ。
『労役場』に行くと前科がつくんですか?
『労役場留置』という前科がつくというより、もともとの罰金刑なり科料刑なりの前科はつきます。
『労役場留置』ではお金がもらえるんですか?
『作業報奨金』はつきますが、1ヶ月留置されてせいぜい数百円程度でしょう。
罰金や科料を支払って、普通に働いた方がよほどお金は貯まりますよ。
『労役場留置』までの流れ
罰金刑や科料刑を科された時は、まずはその金額を納付しなければなりません。
『労役場留置』は、基本的には最後の手段です。
裁判で罰金刑や科料刑を受けると、検察庁からその金額を支払うようにという通知と納付書が送られてきます。
ここで所定の金額を支払ってしまえば、もう手続きは終わりです。
その時点で支払わなければ、さらに督促状が送られてきます。
それでも、どうしてもお金が準備できない時や、検察庁からの連絡を無視していた時には、最終的に『労役場留置』となります。
罰金刑・科料刑の言渡しを受けてから労役場に留置されるまでの流れは、おおむね次のとおりです。
※検察庁からの連絡を無視し続けた場合です。
※財産がある場合には、労役場留置ではなく、財産の差押えを受けることもあります。
検察庁からの連絡は無視してはいけません。
罰金や科料は一括納付が原則です。
税金などに比較して、分割納付の壁はものすごく高いので、ほとんどの場合には分割納付は認められません。それでもどうしても罰金(科料)が納付できないという場合には、まずは検察庁に相談しましょう。
支払えないからと言って検察庁からの連絡を無視すると、ある日突然、検察庁職員(場合によっては警察官も同行します)が、『収容状』を持って自宅や勤務先に来て、身柄を拘束されることになります。
どのくらいの人が『労役場留置』になっているの?
2017~2020年までの4年間で、労役場留置処分となった件数は次のとおりです。
【罰金刑の場合】(「最高検、高検及び地検管内別 罰金刑執行件数及び金額」より)
罰金刑執行件数 | 労役場留置処分 | |
---|---|---|
2020年 | 17万9581 | 2941 |
2019年 | 20万3314 | 3617 |
2018年 | 23万239 | 3952 |
2017年 | 25万218 | 4285 |
罰金刑を受けて『労役場留置』となったのは、全体の1.7%程度ですね。
【科料刑の場合】(「最高検、高検及び地検管内別 科料刑執行件数及び金額」より)
科料刑執行件数 | 労役場留置処分 | |
---|---|---|
2020年 | 1446 | 7 |
2019年 | 1604 | 14 |
2018年 | 1851 | 7 |
2017年 | 1935 | 11 |
科料刑の場合は、1%未満です。
これは、先ほどお話したとおり、科料刑の金額は1000円以上1万円未満ですから、どうしても支払えない、という人はそう多くないからです。
どちらかと言えば、「支払えない」人よりは「支払わない」人が『労役場留置』になっています。
『労役場留置』を免れる方法はないの?
『労役場留置』を免れる方法は、罰金や科料を支払うことです。
罰金や科料を支払わない以上、基本的に『労役場留置』を免れる方法はありません。
『自己破産』をしてもダメですか?
罰金や科料は『非免責債権』ですから、自己破産をして免責が認められたとしても支払義務は免除されません。
罰金の支払いを最優先して、借金は『債務整理』で減らしましょう
罰金の納付ができないという方の中には、他に借金などがあり、その返済に苦しんでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
借金を減額したり、支払いに猶予を持たせたりすることにより、借金の返済に追われる生活から解放されるための手続きを『債務整理』と言います。
『債務整理』には、主に『任意整理』『民事再生』『自己破産』があります。
これまでご説明したとおり、罰金や科料が納付できない場合、最終的には検察庁に身柄を拘束されて、強制的に『労役場』で作業をさせられることになります。
『労役場留置』の期間は、当然、普段の仕事はできません。
数日程度であればまだしも、数十日にわたって『労役場留置』になる場合、同じ職場で働き続けることも難しくなってしまう可能性があります。
罰金以外の借金などについて、良い『債務整理』の途がないか、まずは弁護士などに相談してみてください。
『債務整理』を弁護士などに依頼した場合、弁護士から各債権者に対して『受任通知』を送ります。
『受任通知』には、
- 債務整理の依頼を受けたこと
- 今後、取立て行為をしないこと
などが記載されますが、受任通知を受けた債権者は、一旦、借金の請求をストップします。
この間に、それまで借金の返済などに充てていた分を罰金や科料などの納付に充てるなどの対応が可能です。
いろんなところから借金をしていて、一見、もうどうにもならないと思われる状態であったとしても、中には、利息を払いすぎている場合(いわゆる過払い金)があって、計算し直すと借金が大幅に減る方がいらっしゃいます。その結果、計算し直した後の借金を「任意整理」などで返済していくことが可能となるケースがあります。
「任意整理」とは、今後発生する利息(将来利息)をカットしてもらい、残った元本だけを分割で払っていくことを、債権者と交渉する手続きです。
「任意整理」は、基本的には弁護士に交渉を依頼するだけで、ご本人の負担もそれほどありません。
「民事再生」とは、裁判所の認可決定を得たうえで、借金などの負債の額を5分の1程度(負債や保有資産等の金額によって減額の程度は違います)まで減額してもらい、減額された負債を原則として3~5年ほどかけて返済していくという手続きです(刑事事件の罰金や、税金など一部の負債は認可決定を得ても減額されません)。
自己破産は、免責が認められると原則全ての負債の支払義務が免除され、それ以上支払わなくても良い(※税金など、非免責債権は除きます)という手続きです。高額な財産は処分されてしまうおそれがありますが、3つの手続きの中で最も支払いの負担を軽くできる可能性があります。
ただし、罰金や科料は自己破産で免責が認められても、支払義務は残る『非免責債権』です。
罰金刑や科料刑を受けて、支払いに窮している方は、
- 払い過ぎの利息はないか、
- 他の借金について『債務整理』の途はないか
について、まずは弁護士などに相談することをお勧めします。
【まとめ】罰金を支払えない時は強制的に『労役場』で作業をさせられる『労役場留置』処分となる
今回の記事のまとめは、次のとおりです。
- 刑事裁判で罰金刑や科料刑を受け、その納付(支払)ができない時は、強制的に『労役場』で作業をさせられる『労役場留置処分』となる。
- 労役場留置の期間は、判決や命令で定められた、1日当たりの金額が罰金額(科料額)に達するまでの日数分である。
- 「労役場」は、全国の刑務所や拘置所に併設され、『労役場留置』となっている間は、労役場を出ることができず、室内で軽作業に従事しなければならない。
- 罰金や科料を支払わず、検察庁からの連絡も無視し続けていると、いずれ検察庁の職員が自宅や職場にやって来て、収容状に基づいて身柄を拘束され、労役場に留置される。
- 罰金や科料は最優先で納付し、他の借金については、弁護士などに相談し、次のようなことを確認するのが良い。
- 過払い金がないか
- 『債務整理』で返済の負担を軽減できないか
罰金や科料を支払わないままでいると、労役場留置を受ける可能性が高いです。労役場留置を受けないようにするためには、何とかして罰金や科料を支払うようにしましょう。
「支払おうにも、借金返済が大変で到底無理!」という方の場合、『債務整理』で返済の負担を軽減できれば、罰金や科料を捻出できる可能性も見えてきます。
ですので、借金があるという方には、債務整理がおすすめです。
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