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【2024年版】確定申告と年末調整の両方が必要なケースとは?違いと注意点を徹底解説 

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s.miyagaki

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

確定申告と年末調整。この2つの言葉を聞いて、頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか? 

特に、会社員の方にとっては「年末調整だけで十分」と思われがちですが、実は確定申告を行うことで、税金の還付を受けられる可能性があります。 

本記事では、確定申告と年末調整の違いから、会社員でも確定申告が必要なケース、さらには確定申告でのみ受けられる所得控除まで、わかりやすく解説します。 

あなたの税金、本当に適切に処理できていますか?一緒に確認していきましょう。 

この記事を読んでわかること 

  • 確定申告と年末調整の違い 
  • 会社員でも確定申告が必要なケース 
  • 転職・退職後の確定申告 
  • 確定申告と年末調整を両方するときの注意 

ここを押さえればOK!

確定申告と年末調整はどちらも所得税に関する手続きですが、目的や実施主体、対象者が異なります。

年末調整は会社が従業員の所得税を精算する手続きで、毎年12月に行われます。
一方、確定申告は個人が1年間の所得と税額を申告する手続きで、2月16日から3月15日までに行います。

会社員でも確定申告が必要なケースには、副業の所得が20万円を超える場合、複数の会社から給与を受け取っている場合、給与の年間収入が2000万円を超える場合などがあります。
また、医療費控除や住宅ローン控除、ふるさと納税の控除を受けたい場合も確定申告が有利です。
転職や退職後も確定申告が必要な場合があり、特に年内に再就職しなかった場合や退職所得の申告書を提出していない場合には注意が必要です。
年末調整と確定申告を両方行う際には、全ての収入を申告し、源泉徴収票を大切に保管し、控除の申告忘れがあっても5年間遡って還付申告が可能です。適切な手続きを行い、税負担を軽減しましょう。
この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

確定申告と年末調整の基本的な違いを理解しよう

確定申告と年末調整は、どちらも所得税に関する重要な手続きですが、その目的、実施主体、対象者が大きく異なります。

これらの違いを理解することで、自分にどちらの手続きが必要か、または両方必要かを判断できます。

以下、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

(1)年末調整は会社が行う所得税の精算手続き

年末調整は、給与を支払っている勤務先が、天引きした従業員の所得税の過不足を精算する手続きです。毎月の給与から源泉徴収された税金と、実際の年間所得に基づく税額との差額を精算します。

実施時期は毎年12月頃です。

(2)確定申告は個人が行う所得税の申告手続き

一方、確定申告は、個人が、1年間(1月1日~12月31日)の自身の所得と税額を申告する手続きです。

給与所得者の場合、年末調整だけで済む場合も多いですが、給与以外に収入があったり、特定の控除を受けたりする場合には確定申告が必要になることがあります。

実施時期は、2月16日から3月15日までです。

確定申告と年末調整の違いを理解することで、自身の状況に応じた適切な税務手続きを選択できます。一定額以上の副収入があったり、特別な控除を受けたりする場合は、確定申告が必要になる可能性が高いので注意しましょう。

会社員でも確定申告が義務になるケースを把握しよう

会社員の多くは年末調整で税務手続きが完了しますが、特定の状況下では確定申告が法律上義務付けられています。主なケースは以下の3つです。

  • 副業の所得が20万円を超える場合
  • 複数の会社から給与を受け取っている場合
  • 高額の賞与を受け取った場合

これらのケースに該当する場合、年末調整だけでは正確な税額計算ができないため、確定申告が求められます。自身の状況を正確に把握し、必要に応じて確定申告を行うことで、適切な納税が可能になります。以下、各ケースについて詳しく解説します。

(1)副業の所得が20万円を超える場合

副業やフリーランス活動による所得が20万円を超える場合、確定申告が必要です。

確定申告では、給与所得と副業所得を合算して総所得を計算し、適切な税額を算出します。

副業の収入ではなく、所得(収入 – 経費)が20万円を超えるかどうかが基準である点に注意しましょう。

(2)複数の会社から給与を受け取っている場合

2つ以上の会社から給与を受け取っている場合、主たる給与以外の収入が20万円を超えると、原則として確定申告が必要です。

(3)給与の年間収入金額が2000万円を超える場合

その年の給与額が2000万円を超える場合、確定申告が必要です。

年2000万円を超える場合、勤め先は年末調整をすることができませんので、税金が天引きされません。確定申告により、正確な税額を計算して納税します。

他に法律上確定申告が義務付けられているケースについて、詳しくは国税庁のサイトをご覧ください。

参考:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁

年末調整済みでも確定申告をした方が良いケースを知ろう

年末調整を済ませていて、法律上確定申告の義務はなくても、特定の状況下では確定申告を行うことで払いすぎた税金が還付される可能性があります。

主なケースは以下の3つです。

  • 医療費控除を受けたい場合
  • 住宅ローン控除を初めて受ける場合
  • ふるさと納税の自治体が多い場合

これらのケースでは、年末調整では反映されない控除や特例が適用できるため、確定申告を行うことで税金の還付を受けられる可能性が高くなります。自身の状況を確認し、これらの控除や特例が適用できる場合は、積極的に確定申告を検討しましょう。以下、各ケースについて詳しく解説します。

(1)医療費控除を受けたい場合は確定申告が有利

医療費控除は、1年間(1月1日~12月31日)の医療費が一定額を超えた場合に適用される所得控除です。この控除は年末調整では適用されないため、確定申告を行う必要があります。

実際に支払った医療費の合計額が10万円を超える場合、最高200万円まで医療費控除の対象となります(総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%)。

※保険金などで医療費が補填される場合は、その給付の目的となった医療費から差し引きます。

注意点:

  • 昔は医療費控除の確定申告では領収書の添付が必要でしたが、現在は、「医療費控除の明細書」の添付で済むようになりました(ただし、領収書は5年は保管するようにしましょう)。
  • セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入費用の控除)との選択適用が可能です。

(2)住宅ローン控除を初めて受ける場合

個人が住宅ローンを利用してマイホームの新築、取得、増改築した場合で、一定の要件を満たせば、一定額の控除を受けることができます。この控除を、住宅借入金等特別控除又は特定増改築等住宅借入金等特別控除といいます。

初年度は必ず確定申告が必要です。2年目以降は、年末調整の際に必要書類を提出すればよく、確定申告は不要です。

(3)ふるさと納税の自治体が多い場合は確定申告が必要

ふるさと納税は、自治体への寄附金控除として税金の還付を受けられる制度です。寄附先が5つ以下の場合はワンストップ特例制度の利用により確定申告不要で控除が受けられますが、6つ以上の場合は確定申告をして控除してもらう必要があります。

寄付金控除の金額の計算は次の通りです。

次の1又は2のいずれか低い金額-2000円=寄付金控除額

  1. その年に支出した特定寄付金の額の合計額
  2. その年の総所得金額等の40%相当額

控除の上限については、ふるさと納税を扱っているサイトでシミュレーションできることが多いので、一度シミュレーションしてみるとよいでしょう。

注意点:

  • ワンストップ特例制度を利用する場合、寄附金税額控除に係る申告特例申請書と必要書類を、寄付をする自治体に、それぞれ提出期限までに提出する必要があります。
  • 確定申告を行うと、ふるさと納税以外の寄附金控除も合わせて申告可能です。

他に法律上確定申告をした方がいい(控除を受けられる)ケースについて、詳しくは国税庁のサイトをご覧ください。

参考:No.2030 還付申告|国税庁

転職・退職後の確定申告の必要性を確認しよう

転職や退職の際には、通常の年末調整では対応できない税務上の問題が発生する可能性があります。特に注意が必要なのは以下の2つのケースです。

  • 年内に再就職しなかった場合
  • 退職所得の申告書を提出していない場合

これらの状況では、確定申告が必要となります。

転職や退職の際には、これらのケースに該当するかどうかを確認し、必要に応じて確定申告を行うことが重要です。以下、各ケースについて詳しく解説します。

(1)年内に再就職しなかった場合は確定申告が必要

年の途中で退職し、同年内に再就職しなかった場合は、確定申告が必要です。年内に再就職した場合には、通常、転職前の職場からもらった源泉徴収を転職後の職場に提出し、転職前の職場の収入も含めて年末調整を行います。しかし年内に再就職しない場合には、年末調整する機会がないので、確定申告が必要です。

(2)退職所得の申告書を提出していない場合

退職所得は、原則他の所得と分離して所得税が計算されます。

退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、退職所得から所得税等が源泉徴収されますので、原則確定申告は不要です。

しかし、この申告書を提出していない場合、退職金に対して一律20.42%の税金が源泉徴収税されますので、確定申告で適切な税額を計算する必要があります。

退職所得には退職所得控除額がありますが、勤務年数が20年以下と20年以上とでは計算方法が異なります。申告書を提出していない人は、確定申告により過納分の税金が還付される可能性がありますので、忘れずに確定申告するようにしましょう。

年末調整と確定申告を両方行う際の注意点を押さえよう

年末調整と確定申告を両方行う場合、以下の3つの重要なポイントに注意しましょう。

  • 全ての収入を申告する
  • 源泉徴収票をもらったら大切に保管
  • 控除の申告忘れは5年間遡って還付申告可能

これらのポイントを押さえることで、適切な税務処理を行い、不要な税負担を避けると同時に、受けられる控除を最大限活用することができます。以下、各ポイントについて詳しく解説します。

(1)全ての収入を申告する

年末調整と確定申告を両方行っても、二重に課税されることはありません。ですので、確定申告では全ての収入を正確に申告する必要があります。

注意点:

  • 給与以外の収入(副業、投資収益等)も漏れなく申告
  • 年末調整済みの給与所得も必ず申告書に記入
  • 源泉徴収票に記載された情報を正確に転記

(2)源泉徴収票をもらったら大切に保管

年末調整後に交付される源泉徴収票は、確定申告に必要な重要書類です。紛失しないよう大切に保管しましょう。

【源泉徴収票に記載される重要情報】

  • 給与の支払い金額
  • 給与所得控除後の金額
  • 所得控除額の合計額
  • 源泉徴収額
  • 配偶者(特別)控除の額
  • 社会保険料等の金額
  • 生命保険料の控除額
  • 地震保険料の控除額
  • 住宅借入金等特別控除の額 など

注意点:

  • 源泉徴収票は確定申告に添付不要だが、5年は紙やデータで保管しておく
  • 源泉徴収票を紛失した場合は、勤務先に再発行を依頼する

(3)控除の申告忘れは5年間遡って還付申告可能

控除の申告を忘れた場合でも、5年間は遡って還付申告を行うことができます。これにより、過去の年度分の税金還付を受けられる可能性があります。

例えば、2018年分については、2019年1月1日から、2023年12月31日までの期間、還付申告することが可能です。

年末調整と確定申告の違いを理解し、適切な手続きを行おう

確定申告と年末調整の違いを理解し、自身の状況に応じて適切な手続きを選択することが重要です。

特に、副業がある場合や医療費控除、ふるさと納税などの特別な控除を受けたい場合は、確定申告が必要になります。適切に確定申告を利用することで、税負担を軽減できる可能性があります。

自身の収入状況や支出を見直し、確定申告が必要かどうか確認しましょう。

不明点がある場合は、税理士や税務署に相談することをおすすめします。適切な税務処理で、あなたの大切なお金を守りましょう。