夫に多額の借金が発覚したとき、妻はどのように対応すべきでしょうか。
借金問題は家庭生活に深刻な影響を与え、夫婦関係を揺るがす可能性があります。
しかし、正しい知識と適切な対応により、夫婦でこの困難を乗り越えることができるかもしれません。
本記事では、弁護士の視点から、夫の借金に関する妻の法的責任の有無や対処法について詳しく解説します。
この記事を読んでわかること
- 夫の借金について妻に返済義務が生じるケース
- 夫の借金が発覚した際の対処法
- 借金問題解決のための手段
- 借金を理由とした離婚の成立可能性
ここを押さえればOK!
夫の借金が発覚した際は、冷静に状況を把握し、夫婦間で話合いを行うことが重要です。必要に応じて専門家(弁護士、司法書士、ファイナンシャルプランナーなど)に相談することも有効です。
借金問題の法的な解決方法として、任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理があります。
離婚は、夫婦の合意があればどんな理由でも可能です。
一方が離婚に応じない場合、借金が家庭生活に重大な影響を及ぼし、夫婦関係を破綻させるほどの深刻な問題となっている場合には、法定離婚事由のひとつである「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するとして裁判所が離婚を認める可能性があります。
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早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
夫の借金についての妻の法的責任
夫の借金問題は、多くの家庭に深刻な影響を与える可能性があります。しかし、妻の法的責任については誤解も多く、正確な知識を持つことが重要です。
一般的に、夫が単独で借り入れた債務について、妻には原則として返済義務はありません。
夫婦とはいえ別の人間であり、夫がした借金であれば、借金をした本人である夫にしか返済義務が生じないのが民法上の原則だからです。
しかし、特定の状況下では妻にも返済義務が生じる可能性があります。
例えば、妻が借金の保証人となっている場合や、借金が夫婦の共同生活のために使用された場合などです。
妻に返済義務が生じるケース
妻が夫の借金の返済義務を負うこととなり得る例外的な2つのケースをご紹介します。
(1)妻が保証人になっている場合
夫の借金に対して妻が法的責任を負う最も一般的なケースは、妻が保証人になっている場合です。
保証人とは、主債務者(この場合は夫)が債務を履行できない場合に、代わりに債務を負担する人のことを指します。
妻が夫の借金の保証人となると、夫が返済できない場合に妻が返済義務を負うことになります。
そして、「連帯保証人」となる場合は特に注意が必要です。
連帯保証人の場合、債権者は主債務者に請求せずにいきなり連帯保証人に対して返済を求めることができます。
(2)借金が夫婦の共同生活に利用された場合
夫の借金であっても、その資金が夫婦の共同生活のために使用された場合、妻にも返済義務が生じる可能性があります。これは「日常家事債務」と呼ばれ、民法第761条に規定されています。
第761条
参照:民法|e-Gov 法令検索
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。
例えば、家族の生活費、子どもの教育費、家賃や光熱費の支払いなど、夫婦の共同生活に必要な経費に充てるために借金をした場合が該当します。
このような借金は、夫婦が共同で負担すべき債務と考えられるため、妻にも返済責任が及ぶことがあるでしょう。
ただし、借金の額が日常的な範囲を超えている場合や贅沢品の購入など、必ずしも共同生活に必要とはいえない支出であれば、妻の返済義務が認められない可能性もあります。
夫の借金が発覚した際の対処法
次に、夫の借金が発覚した場合に、妻が取るべき行動について解説します。
(1)冷静に状況を把握する
夫の借金が発覚した際、まず重要なのは冷静に状況を把握することです。パニックに陥らず、客観的に事実を整理することが問題解決の第一歩となります。
具体的には、借金の総額、借入先、金利、返済期限などの詳細を確認しましょう。また、借金の原因や使途についても明らかにする必要があります。夫から正直な説明を求め、可能であれば関連する書類や通帳なども確認すべきです。
さらに、家計の現状を把握することも重要です。収入、支出、貯蓄、資産などを洗い出し、返済能力を客観的に評価します。この過程で、自身の法的立場(保証人になっているかなど)も確認すべきでしょう。
冷静な状況把握は、今後の対応策を考えるうえで不可欠です。感情的にならず、冷静に行動することが、問題解決への近道となります。
(2)夫婦間で話合いをする
冷静に状況を把握したら、次に重要なのは夫婦間で真剣に話合いをすることです。話し合いは、問題解決への第一歩であり、今後の方針を決める重要な機会となります。
話合いの際は、夫に借金について詳細な説明を求めると同時に、妻の気持ちや不安も率直に伝えるべきです。
また、今後の生活設計や返済計画についても話し合う必要があります。家計の見直し、支出の削減、追加収入の方法など、具体的な対策を一緒に考えましょう。
この話し合いを通じて、夫婦が協力して問題に取り組む姿勢を確認し合うことが大切です。ただし、夫が非協力的な場合など、建設的な話合いができないのであれば、専門家の介入を検討することが必要かもしれません。
(3)専門家に相談する
夫の借金問題に直面した際、専門家への相談は非常に有効な手段です。弁護士や司法書士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家は、法的な観点や財務的な視点から適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。
専門家に相談することで、自身の法的立場の確認、夫の借金問題の解決方法、返済計画の立案など、具体的な解決策を見出すことが期待できます。
借金問題解決のための手段
借金の解決方法として債務整理があり、債務整理は主に次の3つです。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
それぞれについて説明します。
(1)任意整理
任意整理は、個々の債権者との個別交渉を通じて借金の返済条件の変更を目指す方法です。任意整理は裁判所を介さずに行うため、比較的柔軟な対応が期待できます。
任意整理の主な目的は、返済期間の延長、将来利息のカットなどを通じて、返済負担を軽減することです。債務者(この場合は夫)と債権者が合意に達すれば、新たな返済計画に基づいて支払いを進めることができます。
任意整理のメリットは、自己破産などと比べて社会的な影響が少ないことです。
ただし、債権者の合意が必要なため、交渉が難航する可能性もあります。
(2)個人再生
個人再生とは、借金を返済できないおそれがあることを裁判所に認めてもらい、大幅に減額された借金を3年(原則)から5年で返済していく手続です。
条件を満たせば、ローンの残った自宅を手放さずに、借金を大幅に減額できる可能性があります。
借金の額が大きく、完済は難しいけれど、処分されたくない高価な財産(主に住宅)がある場合に利用されることが多い手続です。
(3)自己破産
自己破産とは、借金返済の見込みがないこと(支払不能)などを裁判所に認めてもらい、原則として借金の支払義務を免除してもらう手続です。
裁判所から支払義務の免除が認められれば(免責許可)、借金返済の義務が免除されます。
ただし、養育費や税金の支払義務など一部の債務は免除されません。
借金を理由とした離婚の成立可能性
まず前提として、夫婦が合意すればどんな理由であっても離婚は可能です。
しかし、一方が離婚に応じない場合、最終的には裁判所に離婚を認めてもらう必要があります。
民法では、5つある法定離婚事由のひとつとして「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」が挙げられています(民法第770条1項5号)。
夫の借金が家庭生活に重大な影響を及ぼし、夫婦関係を破綻させるほどの深刻な問題となっている場合、これに該当する可能性があります。
特に、借金が浪費や賭博によるものである場合や、借金により生活が著しく困窮している場合などであれば、離婚の理由として認められやすいといえるでしょう。
法定離婚事由について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【まとめ】原則として、夫の借金を妻が返済する義務はない
夫の借金問題は、家庭生活に大きな影響を与える深刻な問題です。
本記事の重要なポイントは以下の通りです。
- 妻の返済義務は、保証人になっている場合や共同生活のための借金の場合に生じる可能性がある
- 借金発覚時は冷静な状況把握と夫婦間の話合いが重要
- 専門家への相談が問題解決の鍵となる
- 任意整理などの法的手段を検討することも有効
借金問題は複雑であるため、借金をした本人が弁護士などの専門家に相談し、適切な対応を検討することが重要です。
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