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事業の失敗で借金を抱えてしまったら?とるべき選択

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事業に失敗すると、多額の借金を抱えてしまう場合があります。
事業が好転すれば、借金の返済ができるようになるかもしれませんが、必ずしも期待する通りには事業が好転しないこともあります。

事業の失敗で借金を抱えてしまった場合にとるべき選択について、弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2010年弁護士登録。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。現在、東京弁護士会所属。

事業に失敗して借金を抱えてしまう経緯

経営が順調にいっているときはいいのですが、残念ながら経営者が事業に失敗して借金を抱えてしまう場合があります。
経営者が事業に失敗して借金を抱えてしまう経緯を説明します。

(1)事業を営むにあたって借り入れを行う場合がある

新規事業に必要な資金を準備するために、借入を行うことも少なくありません。

また、最初は事業がうまくいっていても、徐々に利益が減り、事業を継続するために借り入れをおこなうケースもあります。

さらに、適切な資金管理をおこなわなかったために、借り入れをすることになるケースもあります。

(2)収入が思うように増えなければ、借金返済が困難になる

人件費や仕入れ、オフィスの賃料、光熱費などの出費なしに事業を営むことが難しいことがほとんどです。
売上が少なくなっても一定の固定費などの出費は必要です。
そして、売上が少なくなるにつれて、事業を継続するための出費だけに追われ、借金の返済が難しくなってきてしまうことがあります。
このような場合、自身の生活費を削ることで事業をなんとか継続しようとする経営者もいます。
なかには、闇金のような違法業者に頼ってしまい、取り立てに苦しむ人もいます。

事業に失敗して借金を抱えてしまった人がやるべきこと

事業に失敗して借金を抱えてしまったときに経営者がやるべきことをご紹介します。

参考:第3部 中小企業・小規模事業者が担う我が国の未来│中小企業庁

(1)事業継続か廃業かを考える

まず、事業を継続すべきか、事業を畳むべきかを考えましょう。
「せっかく始めた事業を畳みたくない」と現状維持を考えたくなるかもしれませんが、まずは「借金を返済できない状態」の改善に取り組むべきケースが多いです。

もしどうしても事業を継続したい場合は、戦略を練り直し、返済の目途がつくのか検討することが大切です。

事業を畳んで資産を売却した場合にも借金が残るケースがあるので注意が必要です。

継続すべきか廃業すべきか悩んだ場合は、各地域の商工会議所の相談窓口や税理士などの専門家に、財務状況を鑑みた経営相談に乗ってもらうのも一つの手段です。

(2)債務整理を検討する

高額な借金を抱えている場合は、債務整理で法的に借金を減らしたり、なくしたりできないか検討してみましょう。
債務整理には、主に次の3つの種類があります。

任意整理
民事再生
破産

(2-1)任意整理

任意整理とは、

  • 一定の負債につき利息制限法の上限金利(15~20%)に金利を引き下げて再計算(引き直し計算)した上で、
  • 残った債務につき、貸金業者と利息カット・長期分割を目指して交渉し、
  • 和解が成立すればこれに従って返済をしていく

手続きです。
※払いすぎた利息が多い場合には、負債がなくなるどころか、負債を差し引いてもなおも払いすぎになっている利息を(元)借入先から返還請求できることもあります。

必ずしも裁判所を通す必要はないため、次の個人再生と比較すると内容の自由度は高いのですが、個人再生と比べると、負債の減額幅は小さいことが多いです。
後述の破産のような資格制限などの制約はありません。

任意整理をすると信用情報機関に債務整理をしたなどの信用情報(事故情報)が登録され、最長で完済してから5年を経過するまで、当該記録が残る可能性があります(信用情報機関により、登録内容・期間は異なります)。
当該事故情報が登録されている間はクレジットカードを作ったりローンやキャッシングを利用したりすることが原則できず、保証人になる事も原則できません。

なお、任意整理の対象となった借入先やそのグループ会社では、社内に半永久的に任意整理をした情報が載り続ける可能性がありますので、当該借入先やそのグループ会社では今後借り入れなどができなくなる可能性があります。

(2-2)民事再生

民事再生とは、裁判所を通す手続きであり、債務者が原則として事業の継続をしながら(※)、認可された再生計画(借金の支払計画)に基づいて、事業や経済生活の再生を図る手続です。
※ただし、必ず事業が継続できるというわけではありません。

民事再生には、次の3種類があります。

  • 通常再生
  • 小規模個人再生
  • 給与所得者等再生

法人の場合は、通常の再生のみ利用できます。
個人の場合は、通常の再生だけでなく、より簡易化された小規模個人再生や給与所得者等再生(個人再生)の利用も可能です。
通常再生は個人再生に比べ、手続きが複雑であることから、裁判所に払う費用が高額になりますし、弁護士に依頼した場合の弁護士費用も高額になる傾向があります。

そのため、個人再生を利用できる要件を満たしている場合は、通常再生ではなく個人再生を利用することが一般的です。

借金の額や保有している資産の額などによって異なりますが、通常は、任意整理よりも大幅に負債が減額されることが多いです(公租公課など減額されない負債が一部あります)。
基本的には保有している財産の総額に相当する額以上の返済が必要となります。
なお、一定の少額の財産は、この支払うべき財産総額から控除されます(何がいくら控除されるかは申立てをする裁判所によって異なります)。
後述の破産とは異なり、資格制限はありません。

ここで、個人再生である小規模個人再生と給与所得者等再生についてもう少し詳しくご説明します。

【小規模個人再生】
小規模個人再生手続を利用できるのは、少なくとも次の要件をいずれも満たす方です。

  • 住宅ローン等を除いた借金等の総額が5000万円以下
    例)事業のために金融機関から借りた負債残高 300万円
    住宅ローンの残高 5000万円
    ⇒住宅ローン等を除いた借金等の総額が5000万円以下の要件を満たす
  • 将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みのある

借金の額や保有している資産の額などによって最低限弁済すべき金額は異なりますが、任意整理よりも大幅に負債が減額されることが多いです(公租公課など減額されない負債が一部あります)。
基本的には保有している財産の総額に相当する額以上の返済が必要となりますので、保有している資産の額が負債額より多い方などの場合は、負債額が減額されない、申立てても手続きが開始されない場合もあります。
なお、一定の少額の財産は、この支払うべき財産総額から控除されます(何がいくら控除されるかは申立てをする裁判所によって異なります)。

小規模個人再生手続きにおいては、原則として3年間の間に返済するという再生計画にする必要があります。
ただし、特別の事情がある場合は、最長5年間の間に返済するという再生計画にすることも可能です。

小規模個人再生の場合、再生計画案を認可してもらうためには、「再生計画案の決議」が必要となりますが、同意しない債権者が半数未満で、その債権額の合計が全債権者の債権総額の2分の1以下であれば可決とみなされます。
なお、不同意により否決となった場合には、それまでの手続きは廃止となるため、改めて後述の給与所得者等再生、あるいは自己破産の申立てを検討することになるのが一般です。

【給与所得者等再生】
給与所得者等再生を利用できるのは、少なくとも次の要件をいずれも満たす方です。

  • 住宅ローン等を除いた借金等の総額が5000万円以下
  • 給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあり、かつ、その額の変動幅が小さいと見込まれる

給与所得者等再生を利用する要件を満たすことが多い典型例はサラリーマンです。

給与所得者等再生では、小規模個人再生と同様に、借入額と資産の額に応じて、最低限返済すべき金額が決まっているほか、当該返済額が

  • 「可処分所得」の2年以上

である必要があります。

可処分所得とは債務者の収入や家族構成等を基に算出されるものであり、年収から一定の生活に必要な費用を差し引いた額になります(※いくら差し引けるのかは法令により細かく定められています)。
可処分所得の額によっては、給与所得者等再生の方が、小規模個人再生をするときよりも弁済額が高額になることがありますが、任意整理をするよりは負債が減額されることが多いです(ただし、保有している資産額、可処分所得等によっては負債が減額されないこともあります)。

給与所得者等再生では、「再生計画案の決議」は不要です。

【個人再生のその他の特徴】
個人再生では、一定の要件を満たせば、住宅を手放すことなく借金を減らすことが可能です。
また、個人再生をすると官報に氏名などが掲載されます。

そして、個人再生をすると約5〜10年程度の間、信用情報機関に個人再生をしたという記録が残ることがあります。
当該記録が残っている間はクレジットカードの作成やローン、キャッシングを原則利用できず、保証人となる事も原則できません。
なお、個人再生の対象となった借入先やそのグループ会社では、社内に半永久的に任意整理をした情報が載り続ける可能性がありますので、当該借入先やそのグループ会社では今後借り入れなどができなくなる可能性があります。

参考:新型コロナウイルス感染症の影響により借金等の返済が困難となった方へ|法務省

(2-3)破産

「破産」とは、裁判所を通す手続きであり、返済ができないような状態に陥った方が裁判所から免責許可決定を得た上で、負債の返済義務を免れる手続きです。
※公租公課など、返済義務が免除されない負債が一部あります。

債権者に対する配当に充てるため、基本的に高額な財産は処分されます。
例えば、債権者に対する配当に充てるため、基本的には、市場価値のある住宅・貴金属などは処分されます。
また、一定額以上の保険金・車などの財産が処分されます。
※いくら以上であれば処分されるのかは裁判所や個々のケースにより異なりますが、例えば東京地裁の場合、20万円以下の車両でローンがなければ基本的には維持できます。

一定の生活必需品や99万円以下の現金については処分の対象外となるので、身ぐるみ剥がされるというわけではありません。

破産開始決定後から免責許可決定の確定までの間、一定の資格制限がされます(警備員、生命保険募集人など)。
資格制限がされると、一定の資格について登録等ができなくなったり、資格が取り消されたりすることがあります(業種によっては資格取り消しが必須ではない(取消しが任意の)場合もあります)。

破産をすると官報に氏名が掲載されます。
また、金融機関など信用情報機関に加盟している借入先からの負債がある状態で、破産をすると約5〜10年程度の間、信用情報機関に破産をしたことについて記録が残ります。

当該記録が残っている間はクレジットカードの作成やローン、キャッシングを原則利用できず、保証人となる事も原則できません。
なお、破産の対象となった借入先やそのグループ会社では、社内に半永久的に任意整理をした情報が載り続ける可能性がありますので、当該借入先やそのグループ会社では今後借り入れなどができなくなる可能性があります。

参考:自己破産の申立てを考えている方へ|裁判所 – Courts in Japan

【まとめ】事業失敗による借金のお悩みは弁護士などにご相談ください

以上のように、事業失敗により借金の返済に困った場合には、

  • 戦略を練り直す
  • 事業を畳む
  • 債務整理を検討する

等の対策が必要となります。
事業の失敗による借金のお悩みは、まずは弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2010年弁護士登録。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。現在、東京弁護士会所属。

※本記事の内容に関しては執筆時点の情報となります。