あなたの法律のお悩み一発解決サイト
リーガライフラボ

住宅ローンの巻き戻しは民事再生(個人再生)で自宅を維持する制度

作成日:
リーガライフラボ

今回採り上げる法律相談はこちら―――。

先生、お恥ずかしい話なのですが、私たちの場合、もうとっくに住宅ローンを支払えなくなってしまっているんです。それで、1週間前、住宅ローンの保証会社というところから、「代位弁済通知」が届きました。もう私たちは住宅を手放すほかないんでしょうか?住宅ローンを滞納してしまった以上、民事再生とやらは難しいですよね?
(弁:民事再生は支払いを続けていく手続きですが、今後のお支払いは大丈夫ですか?)
はい、ようやく主人の再就職先が見つかり、私も社員に登用していただけそうですので、これからの支払いはなんとかなりそうです。

住宅ローンの支払いを滞納してしまうと、住宅資金特別条項(住宅ローン条項)を利用した個人再生をするハードルが上がることは間違いありません。しかし、住宅を手放さずに済む可能性が全くないわけでもありません。それが今回弁護士が解説する「巻き戻し」です。

民事再生(個人再生)では住宅を維持したまま借金を減額可能

民事再生とは、住宅等の財産を維持したまま、大幅に減額された借金を(減額の程度は、借金の額、保有している財産などによって異なります)、原則として3年間で分割して返済していくという手続です。減額後の借金を完済すれば、再生計画の対象となった借金については、原則として法律上返済する義務を免除されます。
民事再生では、自己破産のように借金全額の返済義務がなくなるわけではありませんが、手続きの条件を満たせば自己破産のように高価な財産(主に住宅)が処分されることもありません。

個人で行う民事再生のうち、住宅ローンを除いた借金の総額が5000万円を超えない場合に、簡略化された手続きで進められるものを個人再生といいます。

住宅資金特別条項を利用した個人再生をすると、住宅ローン債権者を一般的な再生債権としての対象から外すことができ、住宅ローンの支払いを基本的に滞りなく行うのと並行して、減額されたほかの債務を完済することができれば、個人再生後も、住宅を手元に残すことができます。

民事再生(個人再生)で使われる「住宅ローンの巻き戻し」とは

住宅ローン契約を締結する際、借主(債務者)がローンの返済をできなくなってしまったときに、代わりにその残金を支払うと保証する会社がつくことが通例です。そして、実際ローンの返済ができなくなったときには、住宅ローン債権者の求めに応じて保証会社が代わりに支払い(代位弁済)をします。また、通常、保証会社は、債務者に対して残代金を一括で返済するように求め、債務者が残代金を支払えなければ住宅を競売にかけるなどしてお金を回収しようとするでしょう。

では、代位弁済がされてしまうと、一律に住宅を手放さざるを得ないのでしょうか。
代位弁済がされても一定の条件の下で住宅を残せる「巻き戻し」について詳しくみていきましょう。

(1)代位弁済から6ヶ月以内ならまだ間に合う!?

住宅資金特別条項を利用した個人再生の標準形態は、当初の約束どおりに住宅ローンを返済していくものです。しかし、住宅ローンの滞納があったとしても、その滞納分を含めてきちんと支払えるのであれば、住宅を手元に残せる可能性があります。

もっとも、代位弁済をされたケースで厄介なのは、債権者が当初の住宅ローン債権者から保証会社に変更することです。一般的な保証会社は、住宅ローン債権者と異なり、長期間にわたってお金の回収を請け負う人的資源がありません。それにもかかわらず、債務者がきちんと住宅ローンを完済してくれると“信じて“長期間ローンの返済に付き合ってほしいとするのは保証会社に酷です。一方、住宅ローン債権者であればもともと長期間の返済計画に付き合う予定だったのであり、また、長期間にわたって債権を管理する人的資源もあります。
そこで、一定の条件の下で債権者が変更しないとしたのが「巻き戻し」です。

民事再生法198条2項では、次のように規定されています。

保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合において、当該保証債務の全部を履行した日から六月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、第二百四条第一項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について、住宅資金特別条項を定めることができる。この場合においては、前項ただし書の規定を準用する。

引用:民事再生法198条2項

また、民事再生法204条2項では、次のように規定されています。

前項本文の場合において、当該認可の決定の確定前に再生債務者が保証会社に対して同項の保証債務に係る求償権についての弁済をしていたときは、再生債務者は、同項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなった者に対して、当該弁済をした額につき当該住宅資金貸付債権についての弁済をすることを要しない。この場合において、保証会社は、当該弁済を受けた額を同項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなった者に対して交付しなければならない。

引用:民事再生法204条2項

つまり、「巻き戻し」とは保証会社が保証債務を全額代位弁済した日から6ヶ月を経過する日までに、民事再生法にのっとった再生手続開始の申立てをすることで、たとえ保証会社による代位弁済がなされた後でも、住宅資金特別条項を定めることが可能になるということです。また、裁判所が住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可を確定すると、保証会社による代位弁済がなかったことになります(民事再生法204条1項)。

(2)「巻き戻し」のあとの住宅ローンはどうなるか

巻き戻しにより、代位弁済はなかったこととなり、債権者は当初の住宅ローン債権者となります。また、保証会社の保証債務も復活し、保証会社は保証人の地位に戻ります。

では、もし債務者やその保証人が保証会社にお金を支払っていたなら、どうなるでしょうか。

支払主体お金の行方
債務者保証会社から住宅ローン債権者に交付される(民事再生法204条2項)
保証人保証会社は保証人にお金を返す

いずれにしても保証会社がそのままお金を受け取っておくことはできません。

保証会社の地位が長期間不安定になることのないように、代位弁済後6ヶ月間に限って、巻き戻しをすることができるとされているのです。

民事再生(個人再生)における「住宅ローンの巻き戻し」の条件

巻き戻しをすることができる条件をみてみましょう。

まず、巻き戻しが認められるためには、代位弁済をしたのが保証会社でなければなりません。
保証会社については、民事再生法196条3号で定義されており、次の2つを満たす者です。

・当該債権又は当該債権に係る債務の保証人
・保証を業とする者

引用:民事再生法196条3号

債務者の親類や知人が保証人として代位弁済をした場合には、保証会社に当たらず、巻き戻しを利用することはできません。この場合には、親類や知人と返済計画を立てる必要があるでしょう。

次に、巻き戻しが認められるためには、保証会社が住宅資金貸付債権の全額を代位弁済した日から6ヶ月を過ぎるまでの間に再生手続開始の申立てをしなければなりません。

民事再生(個人再生)における「住宅ローンの巻き戻し」の注意点

巻き戻しを利用するにあたっての注意点をみてみましょう。

(1)代位弁済された日≠代位弁済の通知を受け取った日

保証会社が代位弁済した日から6ヶ月以内に個人再生手続の申立てをしなければ、巻き戻しを利用することができません。保証会社が代位弁済した日と債務者が保証会社から代位弁済の通知を受け取った日は、一般的に同じではないので注意してください。
いつ代位弁済がされたのか、正確な年月日を確認しておく必要があります。代位弁済の通知を受け取るのが遅れたからといって、巻き戻しの期限が延長されることはありません。

(2)期限内に申立てが受理される必要がある

保証会社が代位弁済した日から6ヶ月以内に個人再生を弁護士に依頼しただけでは足りず、必要な書類を揃えたうえで申立書を裁判所に提出し、受理されなければなりません。
個人再生を依頼する弁護士に相談して、申立て時期の目途を尋ねましょう。また、住宅ローンの契約書や保険の解約返戻金の計算書など必要な書類をなるべく急いで集めてください。
最低限必要な書類のみを申立書に添付して申立てをし、申立ての後すぐに不足書類を追完するということで受理される場合もあります。個人再生を依頼した弁護士にアドバイスを求めましょう。

(3)「巻き戻し」ができない場合もある

巻き戻しを利用できるのは、住宅資金特別条項を利用できる場合に限られます。
そのため、そもそも住宅資金特別条項そのものを利用できない場合には、巻き戻しも利用することができません。

住宅資金特別条項について詳しくはこちらの記事もご確認ください。

民事再生法の住宅資金特別条項でマイホームを残す方法

【まとめ】民事再生(個人再生)での「巻き戻し」についてはアディーレ法律事務所にご相談ください

住宅ローンの返済が滞って保証会社から代位弁済されてしまったとしても、一定の条件の下で、住宅を手放さずに済む可能性があります。具体的には、保証会社が代位弁済した日から6ヶ月を経過する日までに民事再生法に則った再生手続開始の申立てをすることで、保証会社による代位弁済がなされた後でも住宅資金特別条項を定められることがあります。

住宅を手放さずに済む可能性があるとはいえ、巻き戻しには期限があります。
また、民事再生が認められない可能性が高いケースや住宅資金特別条項を利用できないケースでは、やはり住宅を諦めざるを得ません。弁護士に相談すれば、ご自身のケースで何が最善策なのか適切にアドバイスをもらえるはずです。

借金問題で困っている方は、アディーレ法律事務所にお気軽にご相談ください。

よく見られている記事