「このまま借金を滞納し続けたら、自分だけでなく子どもの財産まで差し押さえられてしまうのではないか?」
このような不安を感じる方は少なくありません。
確かに、借金や税金を滞納し続けていると、差押えを受けるリスクが高まります。
しかし、差押えの対象となるのは基本的に「滞納している本人の財産」です。
子どもを含めた家族の財産が差押えの対象となってしまうのは、「名義は家族のものだが、実質的に滞納している本人の財産といえる」などの、例外的なケースにとどまることが多いです。
もっとも、「そもそも差押え自体を受けずに済む」のがベストです。
なるべく早めに対処すれば、差押えを回避できる可能性が高まります。
そこで、この記事では次のことについて弁護士が解説します。
この記事を読んでわかること
- 差押えの対象となる財産
- 子どもの財産を差し押さえられた場合の対処法
- 差押え自体を回避する方法
ここを押さえればOK!
借金の滞納による差押えを回避したい場合、債務整理を検討するとよいでしょう。 債務整理を行うことで、差押えのリスクを下げることができます。 債務整理には任意整理、個人再生、自己破産の3種類があり、借金返済の負担軽減が期待できます。 公租公課の滞納による差押えを回避したい場合、役所の窓口で相談することをおすすめします。
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早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
差押えの対象となる財産は主に給与や預金
まずは、差押えの概要や差押えの対象となる主な財産について説明します。
(1)そもそも「差押え」とは?
差押えの意味は、次のように定義されています。
金銭債権を強制執行できるようにするため、債務者が財産譲渡などの事実上または法律上の処分をすることを禁じる目的で行われる手続き
引用:三省堂編修所(編集)『デイリー法学用語辞典』三省堂 P.236
借金などの民事上の支払義務が滞った場合には、裁判所における強制執行として行われます。
また、税金などの公租公課の納付が滞った場合には、徴収職員などによる滞納処分として行われます。
差押えが実行される日時が、事前に通知されることはありません。債務者が差押えを回避するために、財産を隠匿・処分することを防ぐためです。
しかし、通常は差押えに至るまでに段階を踏むため、差押えが切迫していることはある程度察知できます。
借金を滞納した場合と公租公課を滞納した場合とで、差押えの流れは異なります。
それでは、それぞれについて見ていきましょう。
借金を滞納した場合
借金の滞納から差押えに至るまでの流れは通常次のようになります。
<差押えの流れ>

借入先から催促や一括請求を受けたり、裁判所から「訴状」や「支払督促」などの書面が届いたりした時に、このまま対応しないでいると差押えに至るということが分かります。
差押えに至る流れについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
税金などの公租公課を滞納した場合
公租公課の滞納から差押えまでの流れは通常次のようになります。
<差押えの流れ>

滞納が起こると督促状が送られるのですが、発送から10日経過しても支払われないとき、役所は、差押え(滞納処分)をしなければならないこととされています(国税通則法40条、地方税法331条1項1号)。
実際には督促状の発送と差押えの間にもう一度催告がなされる場合もありますが、督促状が届いたら差押えまでは基本的にあまり間がありません。
滞納処分に関しては借金の場合と異なり裁判所での手続きも不要なため、借金の場合以上に早期に差押えに至るリスクがあります。
(2)差押えの対象となる財産
差押え可能な財産は不動産、動産、債権の3種類に分かれますが、主な差押えの対象は、給与や預貯金です。
特に借金の場合に、給与や預貯金が差し押さえられることが多いのは、次のような理由からです。
- 借入れの際に勤務先や融資先口座を申告していることが多い
- 動産や不動産の差押えと異なり売却してお金に換える手続が必要なく、比較的簡単である
(2-1)給与差押えについて
給与差押えの場合、給与の全額が差し押さえられてしまうわけではありません。
債務者の生活保障のため、差押えが禁止されている範囲があります(民事執行法第152条1項2号、同施行令第2条1項1号)。
原則として、借金を滞納した場合に差押え可能な範囲は次のとおりです。
- 手取り金額が44万円以下………4分の1まで
- 【月給やボーナス】手取り金額が44万円超え………33万円を超える部分
なお、月給やボーナスだけでなく、退職金も差押えを受けるおそれがあります。

税金など公租公課についての差押えの場合、給与から納税のための金額や一定の生活費などを差し引いて差押え可能額が算出されます。
なお、この生活費は生活保護世帯が基準とされています。
給与の差押えは、原則として未払額が解消するまで将来にわたり継続します。
(2-2)預金差押えについて
預金の場合、未払い額と差押えにかかった費用の限度で口座の全額が差押えの対象です。
たとえば、借金の未払い額と差押えにかかった費用が合計25万円で、口座の残高が15万円という場合には、15万円全額が差押えの対象となります。
年金や生活保護費など、差押えが禁止されている債権(差押禁止債権)であっても、口座に入金されれば差押えの対象となってしまいます。
差押禁止債権の範囲の変更の申立てを裁判所に対して行えば、こうした「実質的には、差押禁止債権に対する差押えと同じ差押え」を防ぐことができる可能性があります。
なお、国税の滞納処分の場合は、実質的に差押禁止債権への差押えと同視できるような預金差押えは行わないこととされています。
参考:差押禁止債権の範囲変更申立てQ&A|裁判所 – Courts in Japan
(3)「差押禁止財産」とは?
債務者の生活や仕事、福祉などの面から、一定の財産への差押えは禁止されています。
これが差押禁止財産です。
たとえば、生活に欠かせない衣服や家具などが差押禁止財産にあたります。
差押禁止財産について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
子どもの財産は基本的には差押え対象にはならない
差押えは、支払いを滞納している本人の財産が対象となるのが原則です。
子ども(家族)であるというだけの理由で、子どもが本人に代わって支払義務を負ったり差押えを受けたりすることはありません。
子ども名義の預金でも、「子どものもの」と認められないケースがある
一方、本人以外の子ども名義の財産であったとしても、実質的には本人の財産といえる場合には、差押えの対象となるおそれがあります。
子ども名義の預金口座に、子ども自身がもらったお小遣いなどを貯金していれば、子どものものと認められる可能性が高いでしょう。一方で、親が自分の財産を、子ども名義の預金口座に毎年100万円など振り込んでいるような場合はどうなるでしょうか。
親の財産を子どもに無償で渡す行為は「贈与」に該当し、原則として有効ではあります。
しかし、差押えを逃れるための財産隠しとして子どもに贈与を行った場合には、債権者に「詐害行為取消権(さがいこういとりけしけん、民法第424条1項)」を行使されて取り消され、結局差押えを受けることとなる可能性があります。
詐害行為取消権は、次の要件を満たした場合に行使が可能となります。
- 詐害行為より前の原因に基づいて債権が発生したこと
- 債務者が無資力であること
- 債務者が債権者を害する行為(詐害行為)を行い、その行為が財産権を目的としていたこと
- 債務者が詐害行為を行った当時、債権者を害することになると知っていたこと
- 詐害行為の受益者が、詐害行為の時点で債権者を害することになると知っていたこと
したがって、親も子も財産隠しについて承知の上で贈与を行った場合、債権者による詐害行為取消権の行使により贈与の効果が取り消される可能性があります。
また、財産隠しを行った場合、強制執行妨害目的財産損壊等罪(刑法第96条の2)や滞納処分免脱罪(国税徴収法第187条1項)などで刑事罰を受けることになりかねません。
差押えを免れるための財産隠しは絶対にやめましょう。
子どもの財産を差し押さえられてしまった場合の対処法

それでは、自分の未払いで子どもの財産に差押えが及んでしまった場合や、子どもに影響が出てしまう場合にどうすればいいかを説明します。
(1)借金滞納による差押え
まず、借金の滞納が原因で差押えに至った場合の対処法を説明します。
(1-1)児童手当が入金された口座に、差押えを受けた場合
児童手当は差押禁止債権(児童手当法第15条)ですが、先ほど述べたように、差押禁止債権であってもひとたび口座に入金されれば預金差押えの対象となってしまいます。
実質的に児童手当が差し押さえられてしまうに等しい事態を避けるためには、借金が原因の差押えについては「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」(民事執行法第153条1項)を行います。
(1-2)子どもの財産が差押えを受けた場合:第三者異議の訴えを起こす
また、子ども名義の預金や物など、子どもの財産が差押えを受けてしまった場合には、子どもが「第三者異議の訴え」を起こすという方法があります。
第三者異議の訴えとは、差押えの対象となった物について、「所有権その他目的物の譲渡又は引渡しを妨げる権利」を持つ人が、差押えを阻止するためのものです(民事執行法第38条1項)。
たとえば、親が借金を滞納したことを理由に、債権者が子どもの預金を差し押さえたとします。
本来、差押えの対象となるのは滞納している本人(親)の財産ですから、子どもは「第三者」です。
子ども名義の預金で、親が財産隠しをしたわけでもない限り、子どもとしては異議を述べたいところです。
そこで、「いくら親とはいえ、私は借金については無関係の第三者です。私の預金を差し押さえられてしまっては困るので、『第三者として』異議を述べます」という第三者異議の訴えを起こすことができます。
「第三者異議の訴え」が裁判所から認容されれば、差押えを受けてしまった物は無事に返還されることとなります。
ただし、第三者異議の訴えを提起しただけでは差押えは停止しません。
「強制執行の停止の申立て」または「執行処分の取消し決定の申立て」(民事執行法第36条1項、第38条4項)をあわせて行う必要があります。
(2)公租公課の滞納による差押え
公租公課を滞納して差押えを受けた場合であっても、異議を申し立てる余地はあります。
具体的には、滞納処分について審査請求(行政不服審査法第2条)や取消訴訟(行政事件訴訟法第3条2項)を提起するなどの手段です。
しかし、公租公課の滞納が理由の差押えの場合、ひとたび差押えが始まってしまうと、その効果を否定することは基本的に困難です。
そのため、あとでご説明するように、「差押えを受けるよりも前に、役所の窓口で相談する」というのが現実的な対処法となります。
借金滞納が原因の差押えを回避したい:早めに債務整理を検討
差押えが近づくほど事態は切迫し、回避は困難になります。
しかし、「借金の返済が大変だ」と思ったらなるべく早めに「債務整理」を始めることで、差押えを回避できる可能性が高まります。
債務整理とは、借金などの負債について、支払いの負担を軽減するための手続きです。債務整理には、主に次の3種類です。
- 任意整理
…支払い過ぎた利息があれば、その分借金を減額。残った借金について、毎月の返済額を減らすことなどを目指して、個々の債権者と交渉。 - 個人再生
…裁判所の認可を得たうえで、基本的に大幅に減額された負債(ケースによるが任意整理以上に減額できることが多い)を原則3年間で分割払い。条件を満たしていれば、住宅ローンの残った自宅を守れる可能性あり。 - 自己破産
…裁判所が「免責許可決定」を出せば、原則全ての負債について支払義務が免除される手続き。
※どの債務整理でも、税金や養育費など、一部の支払義務は減らしたり無くしたりすることができません。
(1)債務整理を始めると、差押えリスクが下がる理由
早めに債務整理を始めれば、差押えを回避できる可能性があります。
たとえば任意整理では、弁護士など(※)が間に立っていることで、「十分実現可能な返済計画ができるのではないか?」と期待して、債権者が一旦差押えの準備を止めてくれることが少なくありません。
また、裁判所で行う個人再生や自己破産の場合、裁判所での手続きが開始するとそれまでの借金についての差押えが停止・失効するほか(タイミングはケースにより異なります)、借金についての新規の差押えもできなくなります。
そのため、申立ての準備が滞りなく進んでいれば、債権者は一旦差押えの準備を控えることが多いです。
※債務整理は、弁護士だけでなく司法書士に依頼することもできます。しかし、司法書士の場合、140万円を超える債権の債権者から裁判を起こされてしまった場合に代理人としての対応ができないなどの制約もあります。
(2)債務整理のその他のメリット
また、債務整理を弁護士などに依頼することには、次のようなメリットもあります。
- 借入先からの催促がストップする
- 家計を立て直せるきっかけが生まれる
債務整理の依頼を受けた弁護士は、債権者に対して「受任通知」という書面を送付します。
受任通知を受け取って以降、貸金業者が正当な理由なく債務者に対して直接の連絡や取立てを行うことは禁止されている(貸金業法21条1項9号)ため、借入先からの連絡によるストレスから解放されます。
債権者が受任通知を受け取ったあとでも、裁判を起こして差押えを図ることは法律上可能です。そのため、弁護士へ依頼後も迅速に手続を進めていく必要があります。
また、自身の収支や借金の状況などから最適な債務整理を選択し、借金返済の負担を軽減することは、家計を立て直して、再スタートを切ることにつながります。
借金問題は、返済が厳しくなって放置すればするほど、利息や遅延損害金で返済額が膨らみ、差押えリスクが高まるばかりで、解決からは遠ざかってしまいます。
返済が難しいと感じたら、なるべく早くに弁護士に相談しましょう。

税金など公租公課の滞納による差押えを回避したい:早めに役所窓口で相談を
債務整理を行っても、公租公課の支払義務を減らしたりなくしたりすることはできません。
しかし、納付が困難と感じてすぐに役所の窓口に相談すれば、たとえば「1年間差押えをしないでおいてもらって、その間に滞納分を分割払いする」など柔軟に対応してもらえる可能性があります。
また、借金返済と相まって納税が困難になっている場合、借金について債務整理を行い、その負担減を図ることによって、納付がより容易になる可能性があります。
公租公課のみならず借金返済も難しくなっている場合には、弁護士にも相談するとよいでしょう。
【まとめ】そもそも差押えを受けないようにするためには、早めの債務整理がおすすめ
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 差押えは主に、給与や預金等になされることが多い
- 差押えの対象となる財産は、支払義務を負っている人名義のものであり、財産隠しといった例外的な場合を除き子どもなど第三者の財産が差押えの対象となることはない
- 差押えに不服がある場合には、差押禁止債権の範囲の変更の申立てや第三者異議の訴えなどの争う手段がある
- そもそも差押えを受けないようにするためには、早期に債務整理を検討することが大切
- 公租公課の支払義務は債務整理によっても残るが、債務整理で借金返済の負担を見直すことで、無理なく納付できるようになる可能性がある
借金問題は放置するほど事態が悪化します。
また、借金と合わせて税金の納付も困難になっていれば、税金について差押えを受けるリスクも高まります。
お子様やご家族など、ご本人以外の財産まで差押えの対象となるケースは基本的には限られていますが、そもそも差押えを受けずに済むなら、それに越したことはありません。
差押えのリスクを下げ、返済の負担を軽減するためには、債務整理の検討が欠かせません。
どの方法が一番適しているかは人それぞれです。まずは、相談だけでもしてみませんか?
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(2024年3月時点)
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