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親の借金を相続したくない!生前に相続放棄はできない?

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将来、親の借金を相続して自分が返済することになるのか分からなくて不安な方や、両親が元気なうちに手を打つことができないか悩んでいる方もいらっしゃると思います。
親だけでなく、配偶者や兄弟の借金も相続する可能性はあります。

そのため生前に相続放棄をしたいと考える方も多いですが、実は生前に相続放棄をすることはできません。

相続放棄を希望する場合は亡くなった後にすることになります。

この記事では、

  • 相続放棄はいつできるか
  • 借金を相続しないために、あらかじめできること
  • 相続放棄の方法

について解説します。

借金を相続放棄したくても、生前はできない

存命の方について、相続放棄を行うことはできません。
民法では、相続放棄が可能な時期及び期間について次のように定められています。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

引用:民法第915条1項

裁判例でも、被相続人(亡くなった方)の生前に相続放棄の意思を表明しても法律上無効であり、そのような意思を表明したことがあっても相続発生時に相続権を主張することは妨げられないと、判断されています(東京高決昭和54年1月24日判例タイムズ380号158頁)。

いつから相続放棄できるか

 被相続人(となる予定の方)の存命中に相続放棄をすることはできませんが、被相続人が亡くなった後は相続放棄をすることができます。もっとも相続放棄には期限があります。
相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から、3ヶ月以内に手続きしなければなりません(民法915条1項)。

このように相続放棄の期限のカウントダウンは「自己のために相続の開始があったことを知った時」からスタートすると定められています。もっとも、知った時期はあいまいで後で争いになることもあることから、「亡くなった時から3ヶ月」と考えておくことが無難です。

精神的にショックを受けており、葬儀等で忙しい時期に、相続するか放棄するかの難しい判断をする必要があります。

相続放棄をすると、マイナスの財産(借金)だけでなくプラスの財産(資産)も相続できなくなります。そのため相続放棄をした方が得になるのかか判断する必要がありますが、その判断をするためには、現金や預貯金、不動産などのプラスの財産と同時に、借金等のマイナスの調査も必要です。

家族に秘密の借金や、友人の保証人になっていた等の事情が隠されている可能性もあるため、注意深く調査する必要があります。

生前にできること

生前に相続放棄を行うことはできません。
もっとも、家族で、事前に相続について話し合い、事前準備しておくことで、相続の際の負担を減らすことは可能です。

ここからは、事前に準備できることを解説します。

(1)親の財産を把握しておく

相続放棄と相続のどちらを選択するかの判断のためには、プラスの財産とマイナスの財産を正確に把握することが不可欠です。

家族で話し合って、預貯金や株、投資信託、不動産や生命保険といったプラスの財産がどこにいくらあるのか、借金などの負債がある場合は、誰ににいくら支払わねばならないのかをまとめておきましょう。

財産がプラスの場合は相続の話し合い、マイナスの際には相続放棄することが通常です。

(2)債務整理をしてもらう

借金が多く、返済が困難になっている場合には、本人が存命中に、本人にて債務整理をしてもらうことを勧めるという方法もあります。

例えば、借金を適性な利率に基づき返済額を計算し直しみると、借金がなくなるどころか、戻ってくる過払い金があるということもあります。

また、計算し直しても借金が残る場合であっても、任意整理や個人再生といった債務整理手続を行うことで返済の負担を減らしたり、自己破産をすることにより原則として借金の支払い義務をなくしたりできることもあります(ただし、税金など一部の負債については、債務整理をしても減らしたりなくしたりできません)。

被相続人(となる予定の方)のご存命中は、たとえ将来相続をする立場にある方であっても、本人の債務整理を代わりに行うことは原則できません。

もっとも、年齢や病気などで本人の判断能力が不十分な場合、「法定後見制度」を利用して債務整理をすることができる可能性があります。

法定後見制度とは、家庭裁判所に申立てて本人が経済的な不利益を被らないようサポートしてくれる人を選任してもらう制度です。
本人の判断能力がどの程度残っているかに応じて、法定後見人がサポートできる範囲が変わります。

また、判断能力が十分なうちに、本人があらかじめ任意後見人となる人を決めたり、頼みたいことの範囲を決めておける「任意後見制度」というものもあります。

後見制度について、詳しくはこちらもご覧ください。

相続放棄手続の流れ

相続放棄を検討する際の手続の流れについて見ていきましょう。

(1)相続財産の把握

まずは、相続放棄するか否かを決めるために、相続財産の全体を把握します。

マイナスの財産が多く、借金が残ってしまうときに、相続放棄を検討することになります。

プラスの財産とマイナスの財産のどちらが大きいか判然とせず、相続放棄してしまうことにためらいが残る場合には、「限定承認」という制度もあります。

限定承認とは、マイナスの財産である負債があった場合、プラスの財産の価額の範囲内でのみ引き受けるというものです。

ただし、限定承認は手続きが複雑です。

相続放棄か限定承認かでお悩みの方は、弁護士に相談するとよいでしょう。

(必要な場合には)熟慮期間の伸長手続

相続放棄や限定承認の手続は、自分に相続があったことを知ってから、3ヶ月以内にしなければなりません。

しかし、財産調査には時間がかかることも多く、3ヶ月では足りないことも考えられます。
このような場合には、家庭裁判所に対し、3ヶ月の期間を延長を申し立てることも可能です(民法第915条1項ただし書き)。

詳しくはこちらをご覧ください。

(2)相続放棄に必要な書類と費用の準備

相続放棄を行う場合、必要な書類は以下のとおりです。

  • 相続放棄の申述書
  • 申立添付書類
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附表
  • 相続放棄する人の戸籍謄本

また、相続放棄に必要な費用類は、

  • 戸籍類の取寄せ時の交付手数料
  • 裁判所への申述の際の収入印紙800円分(申立てを行う人1人あたり)
  • 家庭裁判所からの連絡用の郵便切手

です。

参照:相続の放棄の申述|裁判所 – Courts in Japan

(3)家庭裁判所に申述する

相続放棄の申立先は、被相続人(亡くなられた方)の住所地を管轄している家庭裁判所です。相続人(自分)の住所の管轄裁判所ではありません。

相続放棄の申述を、自分が相続人であることを知った時から3ヶ月以内(熟慮期間の伸長を行った場合には、その期間内)に行う必要があります。

なお、期限を過ぎてしまった場合であっても、特別な事情があれば相続放棄を認めてもらえる可能性はあります。お困りの方は、早期に弁護士にご相談ください。

(4)家庭裁判所からの照会

相続放棄の申述を行うと、家庭裁判所から「相続放棄の照会書」が送付されます。
これは、申述を行った人が本当に自分の意思で相続放棄しようとしているのかを確かめるためのものです。

これに対する回答を記入して、家庭裁判所へ返送します。

(5)家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届く

家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が送られてきます。相続放棄の申述を家庭裁判所が受理したことを通知するものです。

被相続人の債権者から返済を求められた場合には、相続放棄を行った旨を伝え、通知書をコピーして提出します。

また、債権者からの求めがあった場合等には、家庭裁判所に申請して「相続放棄申述受理証明書」を発行してもらい、提出することになります。

(6)他の相続人に放棄したことを伝える

自分が相続放棄すると、別の親族が相続人になったり、他の相続人の負担が重くなったりする可能性があります。

迷惑をかけることになるので、相続放棄を検討するときは、早めに、相続人になる可能性のある方に告知しましょう。

【まとめ】遺産に借金が多そうな場合には期間内に相続放棄を検討

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 親の借金がある場合でも生前に相続放棄しておくことはできない
  • 親の借金や相続について生前にできる対処法として、財産の正確な把握や債務整理などがある
  • 相続放棄は、まず相続財産を把握し相続放棄にメリットがあるか否かを判断。
  • 相続放棄をする場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てて行う
  • 相続放棄は、原則として相続があったと知ってから3ヶ月以内にしなければならない

相続放棄は、3ヶ月という短期間のうちにしなければなりません。
また、綿密に財産調査を行う必要があり、自力で行うことが困難な場合もあります。

相続放棄について不安のある方は弁護士に相談することをお勧めします。