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個人再生で住宅ローンを「巻き戻し」できる条件とは?同意は必要?

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住宅ローンを組む時、銀行などのローン債権者は、購入する不動産に抵当権(ていとうけん)を設定します。また、住宅ローンの保証人として保証会社が付き、その保証会社が不動産に抵当権を設定する場合もあります。抵当権を設定するのは、ローンの返済が滞った時に、所有者・居住者の同意なくローン債権者または保証会社がその不動産を売却して、残りのローンの返済に充てられるようにするためです。

抵当権の設定されている状況で住宅ローンの返済が滞ってしまったとき、抵当権を設定したローン債権者等は、裁判所に競売を申立てるなどして抵当権を実行し、または、保証会社から残ローンを代わりに弁済してもらい(代位弁済)、保証会社が抵当権を実行することになります。
そうなれば、所有者は抵当権の実行(不動産の強制競売など)に「待った!」をかけられないのが原則です。債務者が自己破産や民事再生の手続きを行う場合でも、抵当権は「別除権」として手続外で行使することができるため、同様です。

もっとも、例外的に、民事再生の手続において「住宅資金特別条項」を利用することができれば、自宅に抵当権が設定されていても、住宅ローンは支払を継続することでその不動産を維持したまま、他の債務を大幅に減額できる可能性があります。
さらに、住宅ローンの返済が滞り、保証会社によって代位弁済された後であっても、「巻き戻し」という制度で住宅を手放さずに済む可能性があります。
今回は、弁護士が個人再生における「巻き戻し」を解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2010年弁護士登録。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。現在、東京弁護士会所属。

民事再生(個人再生)

「個人再生」とは、住宅等の財産を維持したまま、債務の総額や保有している財産の額などから法律に基づき定められた返済額を、原則として3年間で分割して返済していくという手続です。
大きな財産等がなければ、大幅に返済額を減縮できる可能性があります。
減額後の借金を完済すれば、再生計画の対象となった借金については、原則として法律上返済する義務が免除されます。
住宅ローンを支払っている人が住宅を手元に残したい場合、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用できるか検討します。

住宅資金特別条項でできること

住宅資金特別条項でできることについて解説します。

(1)住宅ローンをそれまでどおり支払い、家を残すことができる!

住宅ローンも「借金」であり、その借金を担保するために抵当権が設定されている場合、住宅ローン債権者等は自由に抵当権を実行することができます。
また、個人再生の手続が開始されると、債務者は、個人再生の対象となる借金については、再生計画の定めるところによらなければ返済することができませんので、家を残したいからといって自己判断で住宅ローンだけそのまま払うといったことはできないこととなります。
そのため、支払の遅れによって一括払いの義務を負い、抵当権が実行され、債務者は住宅を失ってしまうことになるのが原則です。

しかし、住宅資金特別条項を利用できる場合には、裁判所から一部弁済の許可を得ることにより、住宅ローンについてはそれまで通りの返済を続けていくことができます。
そして、住宅ローンの支払いを基本的に滞りなく行うのと並行して、減額されたほかの債務を完済することができれば、民事再生後も、住宅を手元に残すことができます。

(2)住宅の競売手続きが開始していても停止させられる!

住宅資金特別条項を利用して個人再生を行える見込みのある場合、住宅の競売手続きが開始されていても、申立てにより、裁判所に一定期間競売手続きを停止してもらえる可能性があります(民事再生法197条1項)。
ただし、競売手続きが開始されるなど、滞納期間が長期に及ぶと、滞納している分の住宅ローンや遅延損害金も支払わなければならなくなり、結局、個人再生手続きの負担が重くなりかねません。
そのため、住宅ローンの返済を滞納するよりも前に弁護士に相談することをおすすめします。

(3)住宅ローンの返済期間を延長できる!

住宅資金特別条項を利用した個人再生をする場合、住宅ローンの滞納がなければ、当初の契約どおり住宅ローンの返済を続けていくのが通常です(そのまま型・正常返済型)。
住宅ローンを滞納している場合には、将来の返済分は当初の契約どおりに返済し、滞納分(元本・利息・損害金)については再生計画に定める返済期間内(原則3年・最長5年)に支払うことができます(期限の利益回復型)。住宅ローンの滞納金額などが多く期限の利益回復型では支払が不可能な場合には、70歳までに完済することを条件として住宅ローンの返済期間を最長10年間延長できる可能性があります(リスケジュール型)。さらに、住宅ローン以外の借金の額が多額であるなどで、リスケジュール型での支払も不可能な場合には、それに加え、再生計画に定める期間内は元本の一部の返済の猶予を受けることができる可能性もあります(元本猶予期間併用型)。
上記の住宅資金特別条項を定めるに当たっては、住宅ローン債権者との協議が必要ですが、必ずしも住宅ローン債権者の同意は必要とされていません。
住宅ローン債権者の同意があれば、上記の条件とは異なる特別条項を定めることもできることとされています(合意型)。

さらに詳しく住宅資金特別条項について知りたい方はこちらの記事をご確認ください。

民事再生法の住宅資金特別条項でマイホームを残す方法

住宅ローンの「巻き戻し」とは?

それでは、今回の本題である住宅ローンの「巻き戻し」の内容を解説していきます。

(1)「巻き戻し」はどんな場面で使われる?

銀行などのローン債権者は、ローンの返済が滞ったときに備えて、保証会社をつけるのが通例です。保証会社とは、ローンなどの返済が滞った時に債務者に代わって債権者に支払いをする会社のことです。保証会社の債権者への支払いを「代位弁済」といいます。

簡単な事例を想定してみましょう。

X社で住宅ローンを組み、住宅を購入したAさん(Aさんの住宅には、X社の抵当権のみ設定されています)。ショッピングでリボ払いを利用してしまったのをきっかけにAさんの借金は膨れ上がっていき、ついに住宅ローンの返済まで滞るようになりました。そして、Y社から「代位弁済通知」が届いたのです。
Aさんは弁護士に相談して、個人再生をすることになりました。

この事例における代位弁済とは、代位弁済時点におけるローンの残債全額をY社がX社に対して支払うことです。通常、Y社はX社が有していた抵当権を取得し、不動産を売却するなどしてX社に対して支払った分のお金を回収することとなります。

このような場面において「待った!」をかけるのが「巻き戻し」制度です。

(2)「巻き戻し」とはどんな制度?

巻き戻しは、住宅資金特別条項を利用するために代位弁済をなかったことにする制度です。

代位弁済が行われた場合には住宅資金特別条項を利用できないのが原則です(民事再生法198条1項)。
しかし、住宅ローンの利用時には保証会社が付くのが通常なので、この原則のままでは住宅ローンを残せるケースはごく限られた数になってしまいます。
そこで、一定の条件を満たせば代位弁済が既になされていた場合でも住宅資金特別条項を利用できることとされているのです(民事再生法198条2項)。

もう少し専門的に解説しましょう。
民事再生法198条2項では、次のように規定されています。

保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行した場合において、当該保証債務の全部を履行した日から六月を経過する日までの間に再生手続開始の申立てがされたときは、第二百四条第一項本文の規定により住宅資金貸付債権を有することとなる者の権利について、住宅資金特別条項を定めることができる。

引用:民事再生法198条2項

また、民事再生法204条1項では、次のように規定されています。

住宅資金特別条項を定めた再生計画の認可の決定が確定した場合において、保証会社が住宅資金貸付債権に係る保証債務を履行していたときは、当該保証債務の履行は、なかったものとみなす。

引用:民事再生法204条1項

つまり、「巻き戻し」とは

  • 保証会社が保証債務を全額代位弁済した日から6ヶ月を経過する日までに
  • 民事再生法にのっとった再生手続開始の申立てをする

ことで、たとえ保証会社による代位弁済がなされた後でも、住宅資金特別条項を定めることが可能になるということです。
また、裁判所が住宅資金特別条項を定めた再生計画を認可し、確定すると、保証会社による代位弁済がなかったことになります。

なぜ巻き戻しが必要なの?

巻き戻しは、申立人(先ほどの事例におけるAさん)の住宅を失わずに経済的再生を図りたいという希望と、保証会社などの代位弁済を行った第三者の利害との調和を図った制度であるといえるでしょう。

保証人などの債務者のために弁済を行った者は、民法499条の規定により、債権者に代位することになります。しかし、住宅資金特別条項を定めることができる住宅ローン債権から、そのような代位によって取得した債権は除外されています(民事再生法198条1項本文)。
これは、そのような第三者に再生計画に従って長期間にわたってお金を回収することを強いるのが酷だからです。

一方、住宅ローンには保証会社の保証が付いているのが通常であり、住宅ローンの返済が滞納すると保証会社による代位弁済が行われることになります。そのような場合にまで上記のように住宅資金特別条項を定めることができないとすると、多くの場合、特別条項の適用が困難になりかねません。
しかも、保証会社であればもともと住宅ローン債権者のリスクを負担することを業として行っているため、特別条項が適用されることが必ずしも酷だとはいえません。

そこで、保証会社が住宅ローンを代位弁済した場合には、住宅資金特別条項を定めることが認められているのです。

民事再生(個人再生)における「住宅ローンの巻き戻し」の条件

巻き戻しをすることができる条件を詳細にみてみましょう。

まず、巻き戻しが認められるためには、代位弁済をしたのが保証会社でなければなりません。

保証会社とは、住宅ローン債権に係る債務の保証人であり、保証を業とする者に限られます(民事再生法196条3号)。
債務者の親類や知人が保証人として代位弁済をした場合には、保証会社に当たらず、巻き戻しを利用することはできません。

次に、巻き戻しが認められるためには、保証会社が住宅ローンの全額を代位弁済した日から6ヶ月を過ぎるまでの間に再生手続開始の申立てをしなければなりません。
申立てに当たり、保証会社の同意を得ることは必要とされていません。

個人再生における「巻き戻し」の3つの注意点

巻き戻しを利用するにあたっての注意点をみてみましょう。

(1)代位弁済された日≠代位弁済の通知を受け取った日

保証会社が代位弁済した日から6ヶ月以内に個人再生手続の申立てをしなければ、巻き戻しを利用することができません。保証会社が代位弁済した日と債務者が保証会社から代位弁済の通知を受け取った日は、必ずしも同じではないので注意してください。
いつ代位弁済がされたのか、正確な年月日を確認しておく必要があります。代位弁済の通知を受け取るのが遅れたからといって、巻き戻しの期限が延長されることはありません。

(2)期限内に申立てが受理される必要がある

保証会社が代位弁済した日から6ヶ月以内に個人再生を弁護士に依頼しただけでは足りず、必要な書類を揃えたうえで申立書を裁判所に提出し、受理されなければなりません。
個人再生を依頼する弁護士に申立ての期限を確認し、住宅ローンの契約書や住宅の登記簿謄本など必要な書類をなるべく急いで集めてください。
期限までに必要書類の全てを集めることができなければ、最低限必要な書類のみを申立書に添付して申立てをし、申立ての後で不足書類を追完するという方法もありますので、個人再生を依頼した弁護士にアドバイスを求めましょう。

(3)「巻き戻し」ができない場合もある

巻き戻しを利用できるのは、住宅資金特別条項を利用できる場合に限られます。
住宅資金特別条項を利用するためには、様々な法律上の要件を満たしている必要がありますので、詳しくは、弁護士にご相談ください。
要件について詳しくはこちらの記事もご覧ください。

民事再生法の住宅資金特別条項でマイホームを残す方法

個人再生における住宅ローンの返済方法

住宅資金特別条項を利用した個人再生手続きでは、当初の契約どおり住宅ローンの支払いを続けていくケースが多いでしょう。しかし、巻き戻しが利用されるケースでは、一定期間住宅ローンの支払いが滞っているため、滞納している分の住宅ローンや遅延損害金等も含めて支払っていけるよう再生計画の内容を十分に検討する必要があります。

【まとめ】個人再生の申立てでお悩みの方はアディーレ法律事務所にご相談ください

住宅ローンを滞納して一括返済を求められている場合でも、住宅資金特別条項を利用した個人再生の申立てをすることにより、住宅を維持したまま借金の返済を行うことができる可能性があります。
また、住宅ローンを滞納し、既に保証会社による代位弁済がなされた後であっても、「巻き戻し」を利用することにより、権利関係が代位弁済前の状態に復帰し、住宅資金特別条項を利用した個人再生の手続きを進めることができる可能性があります。
個人再生は自分で申立てることもできますが、住宅資金特別条項を利用した個人再生の手続きを申立てるためには多くの法律知識を要しますので、個人再生の申立てでお悩みの方はアディーレ法律事務所にご相談ください。

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この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2010年弁護士登録。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。現在、東京弁護士会所属。

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