「借金返済、だんだん返済期日を乗り切るのがつらくなってきた……給料を差し押さえられたらどうしよう……自己破産で何とかできる?」
借金の返済が苦しくなって、このような不安を持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、借金について給与差押えが始まってしまっても、裁判所での自己破産の手続が始まれば差押えをストップすることができるのです。
また、差押えを受けるよりも前に手続を始めれば、そもそも給与差押えを受けずにすむ可能性も上がります。
今回は「自己破産と給与差押えの中止」について弁護士が解説します。
この記事を読んでわかること
- 差し押さえられる給与の範囲
- 給与差押えを受けると起こること
- 自己破産の手続で、給与差押えが止まるタイミング
- 早期に自己破産の手続を始めることによって、給与差押えを回避できる可能性 など
ここを押さえればOK!
給与差押えの範囲は、借金の場合は手取り給与の4分の1まで、養育費の不払いの場合は手取り給与の2分の1までです。給与差押えが行われると、勤務先に借金の滞納が知られることになりますが、借金や給与差押えを理由に解雇されることは基本的にありません。
自己破産手続きには「管財事件」と「同時廃止」の2種類があり、それぞれで給与差押えが止まるタイミングが異なります。管財事件では破産手続開始決定から給与を満額受け取れるようになり、同時廃止では破産手続き開始決定から差押え分がプールされ、免責許可決定が確定すると、プール分と給与が満額受け取れるようになります。
早期に自己破産手続きを始めることで、給与差押えを回避できる可能性が高まります。借金返済が困難と感じたら、早めに弁護士に相談することが推奨されます。アディーレ法律事務所は、自己破産についてのご相談は無料ですので、1人で悩まず一度ご相談ください。
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早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
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給与の差押えを受けるとどうなる?
まず、給与差押えを受けると起こることを説明します。
借金の滞納から給与差押えまでの流れについて詳しくはこちらをご覧ください。
(1)給与は全額差し押さえられるわけではない
「給与差押えって、給与の全額が差し押さえられるの?」
そんなことはありません。たとえ給与差押えとなっても、給与の全額が差し押さえられてしまうわけではありません。
差し押さえることのできる給与は、債務者の今後の生活のため、法律上の上限があります。
(1-1)【借金】の滞納が原因で給与差押えを受ける場合
【借金】が原因で給与差押えを受ける場合、差押えが可能な給与の範囲は、次のとおりです。
- 原則、手取り給与額の4分の1まで
- ただし、手取り給与額が44万円(※月給の場合)を超えるときは33万円を超える部分
月給だけでなく、ボーナスや退職金も給与差押えの対象となります。
また、アルバイトやパートの方の給与や日払いの給与も差押えの対象です。
例えば、手取りの月給が32万円であった場合は、8万円が差押えの上限です。
また、ボーナスの手取りが60万円であった場合、33万円を超過している27万円が差押えの上限となります。
ただし、差し押さえた1ヶ月分の給料の金額が、債務名義で認められた金額に満たない場合には、その金額に満ちるまで差押えは続きます。ひとたび給与差押えを受けると、(手取り給料が44万円以下の方であれば)手取り給料の4分の1を受け取れない状況が続きますのでご注意ください。
(1-2)【養育費】の不払いが原因で給与が差し押さえられる場合
【養育費】の不払いが原因で給与を差し押さえられる場合、差押えが可能な給与の範囲は、次のとおりです。
- 原則、手取り給与額の2分の1まで
- ただし、手取り給与額が66万円を超えるときは33万円を超える部分
【養育費】の不払いの場合、【借金】が原因の給与差押えよりも差し押さえられる範囲が広いので、注意が必要です。
例えば、手取り給与額が24万円の場合、【借金】が原因で給与差押えを受ける場合には、差し押さえられる金額は6万円までですが、【養育費】が原因の場合には12万円まで差し押さえられます。
(2)給与が差し押さえられると、会社に借金などの滞納がバレてしまう!
給与が差し押さえられる際、勤務先には裁判所から『債権差押命令正本』が届きます。
債権差押命令正本を見れば、誰がどのような債務名義に基づいて、いくら分、給料を差し押さえることになるのかが分かります。
また、通常は債権者から勤務先の会社に対して直接取立てが行われます。
そのため、給与差押えには、次の注意点があります。
- 会社に借金などを滞納していたことがバレてしまう
- 取立てに伴い、会社に手間がかかることとなる
債権者は会社から直接取立てを行うので、例えば「消費者金融からの給与差押えということは、うちの社員は借金問題を抱えているのだな」というように、借金について会社に伝わることとなります。
また、差押えの分の金額を債権者に支払い、差し引いた金額を債務者(社員)に支払うこととなるため、給与の支払に関して会社に手間をかけることは避けられません。
会社をクビになることは基本的にない
「借金についてバレた上に、給与差押えなんてされたらクビになってしまうのでは?」そんな不安をお持ちの方もいらっしゃいます。
ですが、借金問題や給与の差押えを直接の原因として従業員を解雇することは、基本的には法的に認められません。
解雇を行うためには、労働契約を継続することが困難な事情がある(普通解雇)か、労働者が極めて悪質な規律違反や非行を行ったといえる(懲戒解雇)必要があります。
参照:しっかりマスター 労働基準法 解雇編 「解雇のルール」を確認しましょう|厚生労働省 東京労働局
借金をしたり、養育費を滞納していることは、あくまで私生活上のことです。
会社での勤務に問題点がなければ、借金の滞納などのみが解雇の理由となることは基本的にありません。
また、会社に給与の支払について手間が生じることも、労働契約の継続を困難にしたり、悪質な規律違反であるとまではいえないことが多いです。
借金や給与差押えが原因で解雇を言い渡されてしまった場合には、不当解雇として争える可能性があります。
不当解雇や対処法について詳しくはこちらをご覧ください。
もし給与が差し押さえられても、自己破産の手続でストップできる
給与が差し押さえられると毎月の収入が減少し、お金のやり繰りが一層困難になってしまいます。
返しきれないほどの借金を抱えている場合には、自己破産の手続によって、始まってしまった給与の差押えをストップすることができます。
裁判所での自己破産の手続の進め方には「管財事件」「同時廃止」の2種類があり、それぞれで給与差押えがストップするタイミングと給与を満額受け取れるようになるタイミングが異なります。
管財事件と同時廃止について詳しくはこちらをご覧ください。
(1)自己破産の手続の流れ
裁判所における自己破産の手続は、大まかに、次のようになります。
裁判所に自己破産を申立てると、裁判所は、申立てられた事件を『管財事件』として進行するか、『同時廃止』 として進行するかを判断します。
『管財事件』になるのは、基本的には債権者に配当するような財産がある場合や、債務者の免責を認めるかどうかについて破産管財人を選任して調査する必要がある場合です。
(2)管財事件の場合、給与差押えが止まるのはいつ?
管財事件の場合、原則として「破産手続開始決定」により給与の差押えは中止するとともに、給与を満額受け取れるようになります。
これは、破産手続開始決定によって、それまでの差押えが効力を失うためです(破産法42条1項)。
(3)同時廃止の場合、給与差押えが止まるのはいつ?
一方、同時廃止の場合、給与を満額受け取れるようになるタイミングが管財事件とは異なります。
同時廃止の場合は、次の図のようになります。
同時廃止の場合も、破産手続開始決定が出ることにより給与の差押えは中止されます(破産法249条1項)。
ただし、同時廃止の場合は、その時点ではまだ給与を満額受け取ることはできません。
破産手続開始決定後は、本来差し押さえられるはずだった部分のお金は、債務者にも債権者にも渡されることなく、基本的に次のいずれかの形でプールされることになります。
- 勤務先の会社が、社内で保管しておく
- 勤務先の会社が、「供託所」というところに預けておく
その後、免責許可決定が無事に確定したタイミングで、債務者は、満額の給与とそれまでプールされていた分の金額を受け取れることになるのです。
免責許可決定が確定したときに、差押えが正式に「効力を失う」(失効する)ためです(破産法249条2項)。
もっとも、債権者により差し押さえられた給与は、破産管財人が取り戻して財団に組み入れる必要のあるものとして扱われる可能性のある性質のものです。
そのため、給与の差押えがされている場合、そもそも同時廃止で進めていくことは難しく、管財事件になる可能性があることには注意が必要です。
なお、借金や養育費の滞納により給与の差押えを受けている場合と異なり、税金などの公租公課を滞納して『滞納処分』により給与を差し押さえられている場合、自己破産によっても給与の差押えをストップすることはできません!
自己破産でなく個人再生を検討されている方は、こちらの記事をご確認ください。
個人再生の申立てで給料の差押えをストップできる場合、できない場合について詳しくはこちらをご覧ください。
早期に自己破産の手続を始めれば、給与差押えを回避できる可能性も
ここまでは、既に給与の差押えを受けている場合に、自己破産によって差押えを止めることについて説明してきました。
ですが、給与差押えは受けずにすむのであればそれが一番よいです。
給与差押えを受けるよりも前の段階で自己破産の手続を始めれば、給与差押えを回避できる可能性があります。
給与差押えを回避できる可能性があるのは、主に次のような理由によります。
- 裁判所への自己破産の申立ての準備が滞りなく進んでいる限り、給与差押えなどの手続を一旦ストップする金融機関が少なくない
- 破産手続開始決定が出て以降は、新規の差押えも基本的にできなくなる(破産法42条1項)
「この借金は、もう返済しきれないのでは?」と感じたら、早期に自己破産の手続を始めることによって給与差押えを回避できる可能性があります。
借金の返済を滞納して給与差押えを受ける場合、通常、それ以前に貸主から訴訟を提起されたり、支払督促を申立てられたりしているはずです。
そうなると、給与の差押えの一歩手前にありますので、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。
自己破産が原因で会社をクビになることは基本的にない
自己破産の手続をとったからといって、会社を辞めさせられることは基本的にはありません。詳しくはこちらをご覧ください。
「制限職種」の場合の注意点
ただし、一定の職種については、裁判所での自己破産の手続の間、従事を制限されることがあります。
これを「制限職種」といいます。
制限職種に当てはまるのは、例えば公認会計士や税理士、警備員、生命保険外交員などです。
制限職種に該当する方は、自己破産以外の手続や、制限を受ける間の生計などについて検討する必要があります。
制限職種について詳しくはこちらをご覧ください。
【まとめ】借金滞納が原因の給与差押えは破産手続開始決定でストップできるが、すぐに給与を満額受け取れるとは限らない!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 借金の滞納が原因で給与差押えが始まると、原則として完済まで一定額(手取りの4分の1まで。月給とボーナスについては手取り額が44万円を超える場合、33万円を超過した部分)が差し押さえられ続ける。給与差押えとなると会社に借金について伝わることは避けがたいが、給与差押えや借金を理由に解雇されることは基本的にはない。
- 自己破産の手続で差押えがストップし、給与を満額受け取れるようになるタイミングは次のとおり。
管財事件の場合:破産手続開始決定から、原則として満額受け取れる
同時廃止の場合:破産手続開始決定から免責許可決定の確定まで、差押え分はプールされる。免責許可決定確定から、満額とプール分を受け取れる。 - 給与差押えを受けるよりも前に自己破産の手続を始めれば、給与差押えを回避できる可能性がある。
アディーレ法律事務所では、万が一免責不許可となってしまった場合、当該破産手続にあたってアディーレ法律事務所にお支払いいただいた弁護士費用は原則として、全額返金しております(2023年3月時点)。
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