あなたの法律のお悩み一発解決サイト
リーガライフラボ

偏頗(へんぱ)弁済とは?問題となるケースとその回避方法や注意点などについて解説

作成日:
リーガライフラボ

自己破産を弁護士に依頼すると、すべての債権者に対する支払いをストップしなければなりません。しかし、支払いをストップしたことで経済的に余裕がでると、お世話になった友人や家族に対していくらか返済したいと思うのが人間の性(さが)かもしれません。しかし、実際に一部の人に借金を返済してしまうと「偏頗弁済(へんぱべんさい)」として問題が生じます。
今回は、「偏波弁済」について詳しく、弁護士が解説します。

免責不許可事由とは?

個人の自己破産手続きにおける最終的なゴールは、借金の返済義務を免除してもらうこと(借金の帳消し)です。これを「免責(許可)」と呼びます。免責不許可事由がなければ、免責が認められます(破産法252条1項)。

免責不許可事由の1つとして、次の事情が定められています(破産法252条1項3号)。

裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。

引用:破産法252条1項3号

これを「偏頗弁済」といいます。

偏頗弁済とは特定の債権者を優遇する詐害行為のこと

偏頗弁済とは、債務者が特定の債権者だけに返済したり、担保を提供したりすることです。

たとえば、次のようなケースが偏頗弁済にあたります。

1000万円の借金を抱えて弁護士事務所を訪れたAさん。弁護士からは自己破産が相当であると案内されましたが、30万円ローンの残っている自動車を債権者に引き揚げられてしまうと聞き、その場で弁護士に依頼することができませんでした。その後、Aさんは車のローン以外の返済を止め、車のローンを繰り上げ自ら返済して完済し、再び弁護士事務所を訪ねました。

ローンを完済すれば、自動車の価値が20万円未満である限り、手元に残せる可能性が高いでしょう。Aさんはそれを狙って、車のローンだけ支払ったのです。この期間、車のローン会社以外の債権者は借金の返済を受けられていませんので、その利益を害されたといえます。
このように偏頗弁済は、破産上のルールである「債権者平等の原則」に反します。

自己破産における偏頗弁済のリスク

偏頗弁済をすると、どのようなリスクが生じるのでしょうか。

(1)免責が認められない可能性がある

偏頗弁済は、免責不許可事由なので、せっかく自己破産を申立てても借金の返済義務が帳消しにならない可能性があります。さらに、最終的に免責が認められるとしても、簡略化された同時廃止ではなく、裁判費用(少なくとも20万円)・弁護士費用の高額な少額管財で手続きを進めなければならなくなるのが原則になります。

(2)管財人により偏頗弁済を否認される可能性がある

破産手続きでは、管財人が破産者のうち比較的価値の大きい財産を処分してお金に換えて債権者に配当します。
もし本来あるべきものが破産者の財産として存在しなければ、管財人は回収も担当します。

たとえば、次のようなケースを想定してみましょう。

奥さんと一緒に弁護士事務所に訪れたBさんは、弁護士に自己破産手続きを依頼しました。弁護士から債権者に対して返済しないように言われていたにもかかわらず、その次の日、Bさんは奥さんに対して借金全額(50万円)を返済しました。

Bさんの行為がなければ、破産開始決定時に50万円以上Bさんは持っていたはずです。
そこで、管財人は債権者のために50万円を回収しなければなりません。
それを可能とする管財人の権利を「(偏頗行為)否認権」といいます(破産法162条1項)。
管財人が否認権を行使すると、50万円は管財人の管理する財産へと戻り、配当の原資となります。

否認の対象となる偏頗行為は、次の3つの条件を満たすものです。

  1. 特定の債権者への返済等であること
  2. 支払不能になった後または破産手続申立てがあった後の行為であること
  3. 債権者(受益者)が債務者の支払不能状態などを知っていたこと

弁護士に自己破産を依頼して各債権者に対する支払いをストップすることを「支払停止」といい、支払い停止があると「支払不能」になったものと推定されます(破産法162条3項)。
今回のケースでは、弁護士に依頼した後、特定の債権者に対して返済しており、さらに奥さんはBさんの支払不能状態を当然知っていたので、否認権を行使できるというわけです。

(3)弁済した分の積み立てを求められる可能性がある

何らかの理由があって支払ったお金を取り戻そうとすると、厄介な問題が生じるもしれません。

たとえば、次のようなケースを想定してみましょう。

自己破産を弁護士に依頼したCさんは、会社からお金を借り入れ、毎月給与天引きで返済していました。弁護士から会社に対して自己破産の受任通知を送ったものの、給与天引きは止まらず、借金(15万円)を完済しました。

このケースで、管財人は会社に対して否認権を行使して、15万円を回収することができます。もっとも、実際に回収されるとCさんの会社での立場は危うくなるかもしれません。
自己破産手続きにおいて大切なことは、破産者の財産を本来の状態にすることです。会社から15万円を支払ってもらわなくても、破産者が15万円を支払えれば基本的に問題ありません。
そこで、管財人から否認権を行使できる相当の金額について、積立てを求められることもありえます。

よくある!?偏頗弁済にあたる返済

どのようなケースが偏頗弁済にあたるのかをお伝えします。自己破産手続きを申立てるにあたっては、申立代理人である弁護士や裁判所、管財人が破産者のお金の動きを徹底的に調査するため、偏頗弁済を隠しておくことは不可能でしょう。

(1)知人や親族への返済

弁護士に破産手続きを依頼した時点で、知人や親族からお金を借りている場合、知人や親族に「お金を返す必要はない」と一筆書いてもらう(債権放棄をしてもらう)か、消費者金融等と同様債権者として手続きに加わってもらう必要があります。もし弁護士に依頼した後で知人や親族にのみ返済すると、偏頗弁済にあたります。返済した相手が破産手続きについて知っていれば、管財人が返済した金額を回収することになります。

自分が困っているときにお金を貸してくれた知人や親族から「今、お金に困っているからあのお金を返して欲しい」と頼まれたら、心情的に断りづらいでしょう。しかし、自己破産が認められないことになりかねませんので、絶対に返さないようにしましょう。自己破産をした後で経済的に余裕が出てくれば、恩返しとして援助してあげることはできます。

(2)車のローン会社への返済

ローンの残っている状況で自己破産を弁護士に依頼すると、車のローン会社は車を売却して、ローンの返済に充てるため、車を返して欲しいと要求してきます。これを回避するため、弁護士に依頼する前に車のローンだけまとめて返済する人がいます。しかし、場合によっては偏頗弁済にあたる可能性があります。

偏頗弁済にあたらない返済

特定の債権者だけに返済をした場合であっても、偏頗弁済にあたらないと判断される傾向にあるケースがあります。ただし、ここで挙げるケースであっても、事案によっては偏波弁済にあたると判断されるケースもあるので、あらかじめ弁護士に相談してください。

(1)滞納している家賃の支払い

滞納した家賃は、破産手続きによって返済を免除されます。
しかし、数ヶ月分の家賃を支払わなければその家に住み続けることはできなくなり、破産することの目的に一つである破産者の生活の経済的再生という観点からは問題が生じます。
そのため、一般的には裁判所に破産を申立てるまでに家賃の滞納を解消します。
この場合、大家という特定の債権者だけに払っていますが、偏頗弁済として問題視されない傾向にあります。
一方、転居前の家賃であれば退去を求められることもないので、他の債権と同様に扱います。
家賃を滞納した場合には、弁護士に相談して、今後の対応を検討しましょう。

(2)スマホや携帯電話に関する費用の支払い

家賃同様、生活に必要であるとの理由で支払えるのがスマホや携帯電話に関する費用です。
もっとも、家賃と異なり、滞納してしまった通信料を支払うと偏頗弁済となる可能性があります。
また、スマホ本体の代金も支払うと偏頗弁済にあたるので、注意しましょう。
本体代金を完済していない場合には、場合によっては解約になってしまうのを避けられかもしれません。

偏頗弁済を回避する方法と注意点

偏頗弁済を回避するための方法と注意点を解説します。
もっとも、偏頗弁済を回避する方法を取るにしても、100%の保証があるわけではありません。独断で対応した結果、偏頗弁済にあたると判断され、免責不許可や否認権行使などの問題が生じる可能性があるので、支払う前には弁護士に相談しましょう。

(1)知人や親族に事情を説明する

何事もきちんと話をすることで、相手の理解を得られる可能性が高まります。
知人や親族との信頼関係を壊したくないと思うならば、お金を返せなくなった理由をきちんと説明するほうが良いでしょう。また、破産手続き中であり、今返済すると後々管財人から回収されてしまうことも伝えることが大切です。
第三者弁済をしてもらう可能性があるならば、援助を求めるためにも話し合いましょう。

(2)第三者による弁済(第三者弁済)

偏頗弁済は、他の債権者に支払いをしていない状況で、破産者のお金で特定の債権者にだけ支払うことです。破産者の代わりに親族や知人など第三者が債権者に支払うならば、破産者の財産が減少しないので、偏頗弁済にあたりません。
第三者弁済をしてもらう場合には、知人から直接債権者に支払ってもらうなど偏頗弁済にあたらないことを証拠化しておくことが大切です。

【まとめ】自己破産を検討されている方はアディーレ法律事務所へ

他の債権者に支払いができなくなったにもかかわらず特定の債権者にだけ返済する(偏頗弁済をする)と、破産手続きを申立てたのに借金が帳消しにならないリスクが生じます。あるいは、支払ったお金を管財人が回収するかもしれません。
偏頗弁済を避けるために知人や親族に代わりに支払ってもらう方法もありますが、独断で対応せずに弁護士に相談することが大切です。借金の問題でお困りの方は、アディーレ法律事務所へご相談ください。

よく見られている記事