「自分が自己破産なんてしたら、妻の財産まで処分されてしまうのでは?」
自己破産の手続きで、自分だけでなく配偶者や家族の財産まで処分されてしまうのではないかと不安に思っている方は少なくありません。
しかし、自己破産の手続きにおいて配偶者や家族の財産に影響が出る場面は、ごく限られています。
裁判所での自己破産の手続きで処分の対象となる財産は、財産隠しが疑われる場合などを除いて、原則として自己破産の申立てをした本人のものに限られるからです。
この記事を読んでわかること
- 自己破産すると、配偶者の財産や収入に影響はあるのか
- 自己破産の手続きで、配偶者の通帳の提出を求められることがある理由
- 浮気が「犯罪」になってしまうケース
- 配偶者が自分の負債について(連帯)保証人となっている場合、どのような影響があるか
ここを押さえればOK!
ただし、例外として配偶者名義の財産が実質的に本人のものである場合や、財産隠しが疑われる場合には、配偶者の財産も処分される可能性があります。
また、配偶者が連帯保証人である場合には、配偶者が一括請求を受けることになるでしょう。
自宅が夫婦の共有名義である場合、破産者の共有持分は処分されるため、住み続けることが難しくなる可能性があります。
しかし、配偶者や親族が持分を買い取れば住み続けることができます。
債務整理に関するご相談は何度でも無料!

費用の不安を安心に。気軽に相談!3つのお約束をご用意
国内65拠点以上(※1)
ご相談・ご依頼は、安心の全国対応

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
自己破産で、配偶者の収入・財産に影響はあるのか
夫が借金がかさんで自己破産することになりました。妻である自分の収入や財産も失うのでしょうか
旦那さんが自己破産することになり、不安を感じている方もいらっしゃると思います。
夫が自己破産した場合、妻の収入や財産へ影響するのか説明します。
(1)自己破産して失うのは本人の財産
夫が自己破産する場合、最終的に失うことになるのは夫本人の財産です。
そして、夫の財産すべてが処分されるわけではなく、一定の財産は夫の元に残されます。それ以外の財産をお金に変えて、債権者に平等に配当します。
どのような財産を失うかについて詳しくは、破産財団とは?該当する財産や手元に残せる財産についてもくわしく解説をご覧ください。
それでも借金(債務)が残っている場合には、裁判所がその支払義務をなくして免責するかどうかを判断し、免責されると借金(債務)はなくなります。
ただし、税金など一部の債務は自己破産してもなくならないことに注意が必要です。
(2)配偶者の収入・財産には原則影響しない
このように、破産手続で手放すこととなるのは、原則として自己破産の申立てをした本人の財産です。配偶者の収入や財産は配偶者のものですので、夫が自己破産したからと言って、妻がその収入や財産を失うことは基本的にありません。
しかし、次のような例外もあります。
(2-1)例外1|配偶者名義だが、実質的には破産する本人の財産
配偶者名義財産であっても、実質的には本人のものであると判断されると、失うことになる可能性があります。
たとえば、「配偶者名義の定期預金口座だが、本人がお金を出し(出捐し)、本人の預金とする意思で預金していた」ケースがあげられます。
(2-2)例外2|財産隠しが疑われるもの
破産手続前に配偶者に財産を渡すと、破産管財人に否認権を行使されて、結局本人の財産とされることがあります。
破産管財人は、破産手続きが開始される前に破産者本人がした行為の効力を否定して、債権者に配当されるべき本人の財産を取り戻すことができるのです。
否認対象となるのは、財産を不当に低い価格で売却した、無償で贈与した、特定の債権者のみに返済したなどの行為です。
例えば、「自己破産を申し立てる直前に、本人の口座から配偶者の口座に、合理的な理由もなく高額を振り込んだ」ケースがあげられます。
否認権や否認対象となる行為についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
自己破産すると、配偶者の通帳も裁判所に提出するのはなぜか

裁判所には妻の通帳も出さないといけないと聞きました。やっぱり妻の預金も失ってしまうのでは?
通帳には、収入や支出が詳しくわかる情報が詰まっていますので、妻の通帳も提出するとなると、不安になる気持ちも理解できます。
自己破産の手続きでは、裁判所から、破産する本人だけでなく同居している配偶者の通帳の写しも提出を求められることがあります。この主な目的は、破産する人の家計状況を全体として把握することにあります。
もし、破産する本人から配偶者へ何の必要もないのに高額が振り込まれているなど、本人の財産を減少させたり、無償で贈与したとされる行為があると、否認権を行使されて、本人の財産として手放さねばならなくなる可能性もあります。
しかし、このような例外に当てはまらない限り、配偶者の預金まで処分を受けることは基本的にありません。通帳について詳しくは、自己破産では通帳提出が必要!通帳がない場合の対処法も解説をご覧ください。
子ども名義の預金口座は大丈夫?
自己破産しても、配偶者名義の財産と同様で、原則として、子ども名義の預金には影響ありません。
子ども名義の預金は子どもの財産であって、自己破産する本人の財産ではないからです。
ただし、例外的に、子どもの口座の預金が実質的に本人の預金と判断できる場合や、破産手続直前に合理的な理由なく子ども名義の口座に送金するなど財産隠しが疑われる場合などでは、子ども名義の預金を失う可能性があります。
家族のクレジットカードやローンの利用は影響を受けない
自己破産の手続きをした本人は、5~10年程度クレジットカードやローンの利用が困難となりますが、家族にまでこのような支障が出ることは基本的にありません。
「自己破産で財産を失うなら配偶者に渡してしまおう」はNG
夫名義の車があり、夫が自己破産して車が処分されるとなると、生活に困ります。自己破産前に、妻名義に変えてもらうことはできますか?
夫が自己破産した場合、一定の財産を残すことはできますが、不動産や車などの財産は基本的に処分されることになります。
自宅や車を失うと家族が生活に困ってしまうため、自己破産前に、名義を妻である配偶者に変えられないか、と思うかもしれません。
しかし、このような名義変更は行ってはいけません。
名義変更をしても、破産手続きにおいて破産管財人に否認権を行使されれば、結局本人の財産として失うことになります。
さらに、このような名義変更には免責不許可のリスク、詐欺破産罪のリスクという大きな2つのリスクがあります。
(1)自己破産しても免責が認められないおそれ
自己破産を申し立て、債務を返済することができない状態であることが認められても、必ず免責され、債務が帳消しになるわけではありません。
法律には、免責が認めらない可能性があるケースについて定められており、免責が許可されなければ債務が残ってしまうのです。
車の名義を配偶者に変更することは、本人の財産を隠匿する行為とされて、免責されないおそれがあります(破産法252条1項1号)。
仮に名義変更により車が維持できても、財産隠しとされて免責が認められなければ、借金は残り生活を立て直すことができません。
(2)犯罪になるおそれ
また、このように財産を隠匿する行為は、詐欺破産罪という犯罪が成立するおそれがあります(破産法265条1項)。
本人だけでなく、事情を知りながら財産隠しに関与した人も、処罰されるおそれがあります(破産法265条1項後段、2項)
破産する本人の名義の車の価値が20万円以下でローンも残っていなければ、裁判所にもよりますが、手放さずにすむ可能性が高いです。他に車を残す方法もありますので、債務整理に詳しい弁護士などに相談してみるとよいでしょう。
旦那さんが破産するのに、旦那さんの財産の名義を勝手に配偶者に変えるのは、絶対にやめましょう。
自己破産して失うのは、原則として本人の財産ですが、配偶者が影響を受けるケースもあります。
自己破産して配偶者が影響を受けるケース
自己破産して失うのは、原則として本人の財産ですが、配偶者が影響を受けるケースもあります。
(1)配偶者が(連帯)保証人になっている
第1に、配偶者が(連帯)保証人になっているケースです。
(1-1)(連帯)保証人である配偶者は一括請求を受ける
自己破産の手続きで無事に免責許可決定が出れば、自己破産の手続きをした本人は原則全ての負債の支払義務から解放されます。
しかし、本人が支払義務から解放されても、(連帯)保証人の義務はそのまま残ります。
そのため、本人から回収することのできなくなった債権者は、通常、(連帯)保証人への一括請求を行います。
(連帯)保証人になってくれていた配偶者は、債権者から一括請求を受けることとなるのです。
(連帯)保証人が受ける影響について、詳しくはこちらをご覧ください。
(1-2)配偶者への一括請求を避けるには任意整理を検討する
(連帯)保証人となっている配偶者への一括請求を避ける方法としては、本人が「任意整理」をするというものがあります。
任意整理の場合、全ての債権者に対して滞りなく支払っていける見込みがあれば、個々の債権者について手続きの対象とするかどうかを選択することができます。
そのため、配偶者などの迷惑をかけたくない人が(連帯)保証人となっている負債について手続きの対象外とし、それ以外の負債について返済の負担減を図るという柔軟に対処できる可能性があるのです。
任意整理では、まず、利息制限法の上限金利(15~20%)を上回る金利で借入れをしていた場合、取引開始時にさかのぼって利息制限法の上限金利に引き下げて再計算することで、負債の額を正確に算出します。
次に、残った負債について、今後発生するはずだった利息(将来利息)のカットや、長期分割にすることで月当たりの支払額を減らすことなどによる支払いの負担の軽減を目指して、個々の借入先と交渉します。
任意整理は基本的には数年間支払い続けることが前提の手続きですが、月々の返済額を軽減したり、返済の負担を減らせる可能性があります。
どうしても配偶者への一括請求を避けたいときは、自己破産ではなく、任意整理ができるかどうか、債務整理に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
任意整理では対応できない、という時には、自己破産を選択したうえで、(連帯)保証人である配偶者に対する請求をどうするかを別途考えることになります。
(1-3)配偶者の債務整理が必要になることも
一括請求を受けた配偶者は、配偶者自身の財産または破産をする本人以外の第三者からの援助によって一括で支払えるときは支払います。
一括で支払えないときは、債権者と分割交渉をすることになります。
債権者によりますが、配偶者に安定した一定の収入があるようなケースでは、分割払いに応じてもらえる可能性はゼロではありません。
分割払いに応じてもらえなかったり、債権者と交渉するのが難しい場合には、放置しないで、なるべく早く債務整理を検討するようにしましょう。
まずは、任意整理をして返済負担の軽減を目指し、任意整理が難しいとなれば自己破産を検討します。
配偶者が連帯保証人となっている場合は、本人が弁護士などに自己破産の相談をするときに、ご自身も債務整理が必要なのかどうか相談してみるとよいでしょう。
(2)自宅が夫婦の共有名義になっているケース
第2に、自宅を夫婦の共有名義としているケースがあげられます。
共有者の一人が自己破産したら、配偶者にどのような影響があるのでしょうか。
住み続けられるのかどうかも説明します。
(2-1)自己破産すると破産者の共有持分は処分される
本人の共有持分は、破産すると原則として処分されてしまいます。
もし、持分を不動産業者などの第三者が買い取れば、住み続けることは難しいかもしれません。
なぜなら、第三者は、共有物である自宅の分割を請求することができ(民法256条1項)、話し合いが調わないときは、裁判所に共有物分割訴訟を起こし(民法258条1項)、一定の場合に共有物の競売ができるからです(民法258条3項)。
共有物が競売されると、配偶者の持分も含めて売却されますので、自宅に住み続けるのは困難です。
(2-2)配偶者や親族が持分を買い取れば住み続けられる
配偶者が自らの財産によって破産する本人の持分を買い取れば、自宅の名義はすべて配偶者になりますので、そのまま住み続けることができます。また、親族に持分を買い取ってもらって、話し合いのうえで住まわせてもらうこともできます。
【まとめ】自己破産で配偶者の財産に影響が出る場面は限られている!
今回の記事のまとめは次のとおりです。
• 自己破産の手続きで手放すこととなる財産は、原則として本人の財産の中でも一定の範囲のものに限られる。
• 例外的に、配偶者名義になっていても実質的に本人の財産であると評価されるものや、財産隠しが疑われるものは手放さねばならなくなる可能性がある。
• 自己破産の手続きで、本人だけでなく配偶者の通帳も提出を求められることがあるが、これは家計を全体として把握し、財産隠しなどの不審なお金の動きがないかをチェックするためのもの。そのため、配偶者の預金まで処分を受けることは上記のような場合を除き原則としてない。
• 配偶者が(連帯)保証人となっている場合、本人が自己破産の手続きをすると配偶者が一括請求を受けることとなる。場合によっては配偶者も債務整理を検討する必要が出てくる。
自己破産の手続きをするからといって、配偶者や家族の財産まで処分されてしまうことは、基本的にありません。
自己破産で家族への影響を考えて一人で不安になっているかもしれませんが、自己破産に詳しい弁護士に相談して、正確な情報を集めて今後について考えてみませんか。
アディーレ法律事務所では、自己破産についてのご相談を無料で受け付けております。
また、アディーレ法律事務所では、万が一免責不許可となってしまった場合、当該手続きにあたってアディーレ法律事務所にお支払いいただいた弁護士費用は原則として、全額返金しております(2024年4月時点)。
自己破産するかどうかについてお悩みの方は、自己破産を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。
