「収入がなく借金もある…生活保護を受けて借金返済できないかな」と考える方もいるかもしれません。
しかし、生活保護受給中の借金は、生活保護の制度の趣旨に反し、様々なリスクを伴います。
借金がある場合は隠さず申告し、返済に保護費を使用することは避けるべきです。
また、生活保護申請前の債務整理も検討しましょう。適切な対応と弁護士など専門家への相談が、問題解決の鍵となります。
ここを押さえればOK!
生活保護受給者が借金を抱える主な理由には、失業や病気による収入減少、ギャンブルや浪費癖、予期せぬ出費などがあります。しかし、生活保護受給中の借金は保護費の減額や停止などのリスクを伴い、不正受給とみなされる可能性もあります。
生活保護費を借金返済に充てることは許されず、発覚した場合は厳しい処分を受ける可能性があります。借金がバレるケースとしては、福祉事務所の定期調査、金融機関からの連絡、第三者からの通報などがあります。
借金がある場合は、福祉事務所に事前に申告・相談することが重要です。状況によっては自己破産の検討も必要になるかもしれません。生活保護の受給を検討している場合は、現状を冷静に見つめ直し、公的支援の可能性を探ることが大切です。債務整理を検討する場合は、弁護士に相談することをおすすめします。
借金問題でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。
生活保護制度の基本
まずは、生活保護とはどういうものなのかについて簡単にご紹介します。
(1)生活保護制度とは
生活保護制度は、日本国憲法第25条に基づく社会保障制度の一つです。
この制度は、生活に困窮している国民に対して、国が必要な経済的支援を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助けることを目的としています(生活保護法第1条)。
具体的には、収入や資産が一定基準以下の世帯に対して、生活費、住居費などが支給されます。
受給にあたっては、厳格な審査があり、資産の活用や親族からの援助の可能性なども考慮されます。
また、受給中は就労支援などを通じて、可能な限り自立を目指すことが求められるでしょう。
生活保護は、最後のセーフティネットとして機能し、誰もが人間らしい生活を送る権利を保障するという重要な役割を果たしています。
(2)生活保護費の内訳と使いみち
生活保護費は、受給者の最低限度の生活を保障するために、複数の扶助から構成されています。
主な扶助の種類は次のとおりです。
扶助の種類 | 内容 |
---|---|
生活扶助 | 日常生活に必要な食費や衣料、光熱費などの費用 |
住宅扶助 | アパートなどの家賃 |
教育扶助 | 子どもが義務教育を受ける学用品などの費用 |
医療扶助 | 医療サービスを受ける費用 |
介護扶助 | 介護サービスを受ける費用 |
生業扶助 | 就職するために必要な技能の修得などにかかる費用 |
ほかにも、出産扶助や葬祭扶助があります。
これらの扶助は、受給者の状況、世帯構成、居住地域などに応じて個別に算定されます。
支給された保護費は、原則として受給者の裁量で使用できますが、その使途は生活に必要な範囲内に限られます。
贅沢品の購入や遊興費への使用は基本的に認められず、後述のとおり借金の返済にも充てることはできません。適切な使用が求められ、不正受給や目的外使用が発覚した場合は、保護の停止や返還命令などの処分を受ける可能性があります。
生活保護受給者と借金の実態
借金を抱えることになる主な理由や、生活保護受給中に借金をするリスクについて解説します。
(1)借金を抱える主な理由
生活保護受給者が借金を抱える理由はさまざまですが、主に次のようなケースが挙げられます。
【失業や病気による収入減少】
突然の収入低下に対応できず、生活費を借金で補う状況に陥ることがあります。
【ギャンブルや浪費癖による金銭管理の失敗】
これらは依存症につながる可能性もあり、深刻な借金問題を引き起こしがちです。
【予期せぬ出費や家族の介護費用】
これらの急な支出増加も、借金の原因となることがあります。
(2)生活保護受給中に借金するリスク
生活保護受給中に借金をすることは、非常に大きなリスクを伴います。
まず、生活保護制度は最低限度の生活を保障するものであり、保護費に借金返済のための余裕はありません。
そのため、借金返済によって生活がさらに困窮する可能性が高くなります。
また、借金の事実が福祉事務所に発覚した場合、生活保護費の減額や停止につながる可能性があります。
借金で得たお金が「収入」として扱われ、その分保護費を減額されると考えられるからです。
さらに深刻なのは、借金の事実を隠蔽していた場合、不正受給とみなされるリスクです。
不正受給と判断されると、生活保護を打ち切られることや、過去に受け取った保護費の返還を求められることもあり得ます。
このように、生活保護受給中の借金は、大きなリスクを伴います。
(3)生活保護費で借金を返済することは許されない
生活保護費を借金の返済に充てることは許されません。
生活保護費は、受給者の最低限度の生活を保障するために支給されるものであり、生活保護制度の目的に反するためです。
生活保護費を借金返済に使用した場合、不正受給とみなされる可能性があり、保護の停止や減額、過去の保護費の返還命令などの厳しい処分を受ける可能性があります。
なお、生活保護の受給者は収入と支出を報告する義務があるため、隠れて借金を返済していても、報告内容との食い違いを指摘されるリスクは高いでしょう。
生活保護受給中の借金がバレるケース
具体的に、生活保護受給中の借金(およびその返済)がバレるケースを具体的に挙げてみます。
(1)福祉事務所による定期的な調査
福祉事務所は、生活保護受給者の生活状況を把握し、適切な支援を行うために定期的な調査を実施します。たとえば、収入や資産の状況、生活実態などです。
これらの調査を通じて、借金の存在や返済状況が発覚する可能性があるでしょう。
借金があるのであれば、まずは正直に申告することが重要です。福祉事務所は受給者の自立支援も行うため、借金問題についても相談に乗ってくれる場合があります。
(2)金融機関からの連絡
生活保護受給者の借金が発覚するケースとして、金融機関からの直接的な連絡があります。たとえば、返済が滞った場合、金融機関は債務者に対して督促状を送付したり、電話で連絡を取ったりします。
これらの連絡や督促状が、ケースワーカーの家庭訪問時に発見されたりすることで、借金の存在が明らかになる可能性があります。
(3)第三者からの通報
生活保護受給者の借金が発覚するケースの一つに、第三者からの通報があります。
たとえば、受給者の周囲の人々が、借金の存在や不適切な金銭管理を知り、福祉事務所にその情報を提供するといったケースがあります。
通報者となり得るのは、近隣住民、親族、知人、あるいは元配偶者などです。
彼らが受給者の生活状況や金銭の使い方に疑問を感じた場合、福祉事務所に通報することもあるでしょう。
このような通報は、借金の存在を直接的に明らかにする可能性が高いため、注意が必要です。
生活保護受給中に借金を返済するには?
生活保護受給中の借金返済について、考え得る対応策を紹介します。
(1)借金について事前に申告・相談する
生活保護受給中に借金がある場合、最も重要なのは福祉事務所に事前に申告し、相談することです。隠し立てせずに正直に状況を説明することで、不正受給の疑いを避けることができます。
福祉事務所は、借金の状況を把握した上で、適切な支援策を提案してくれる可能性があります。
たとえば、債務整理や返済計画の立て方などについてのアドバイスを受けられることがあります。
また、事前申告により、福祉事務所との信頼関係が崩れることを防ぎ、今後の生活保護受給や自立支援においてもスムーズな対応が期待できます。
(2)自己破産を検討する
生活保護受給中に多額の借金を抱えている場合、自己破産を検討すべき場合があります。
自己破産は、裁判所の手続きを通じて借金の返済義務を免除してもらう制度で、債務整理のうちの一つです。
ただし、自己破産には資格制限などのデメリットもあるため、弁護士などの専門家に相談し、自身の状況に最適な方法を選択することが重要です。
その場合には、福祉事務所とも相談しながら進めることをおすすめします。
生活が苦しく生活保護の受給を検討している方へ
生活に困窮し、生活保護の受給を検討されている方は、まず現在の状況を冷静に見つめ直すことが重要です。自分の収入、支出、資産、借金などを詳細に把握し、自力での生活再建の可能性を検討してください。
利用できそうな公的支援について調べてみてもよいでしょう。
公的な支援制度について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
もし生活保護の申請を決意された場合、借金がある状態でも申請は可能です。ただし、借金の存在を隠さず、正直に申告することが極めて重要です。福祉事務所は、借金の状況も含めて総合的に判断し、適切な支援を検討します。
生活保護の申請前に、可能であれば債務整理を行うことも検討してください。
借金問題を解決してから生活保護を受給するという選択肢もあります。
いずれの場合も、一人で抱え込まず、福祉事務所や法律の専門家に相談することをおすすめします。
債務整理を検討しているなら弁護士に相談
債務整理は、主に次の3種類です。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
すでに生活保護を受給中の場合は、基本的には自己破産を選択せざるを得ないでしょう。
(1)任意整理
任意整理は、将来利息のカットや長期分割払いの交渉をカード会社等と個別に行い、毎月の返済を楽にする手続です。
(2)個人再生
個人再生とは、借金を返済できないおそれがあることを裁判所に認めてもらい、大幅に減額された借金を3年(原則)から5年で返済していく手続です。
条件を満たせば住宅などの財産を維持したままできる手続であるため、借金の金額が大きく、すべて返済することは難しいけれど、手放したくない住宅を所有している人が選択する傾向にあります。
(3)自己破産
自己破産とは、財産や収入が不足して借金返済の見込みがないことなどを裁判所に認めてもらい、借金の支払義務を免除してもらう手続です。
任意整理や個人再生は、一定期間返済を続けることが前提の手続であるため、生活保護を受給中の場合は、基本的に自己破産を選択することになるでしょう。
【まとめ】
生活保護受給中の借金は、制度の趣旨に反し、さまざまなリスクを伴います。
借金がある場合は、隠さずに福祉事務所に申告・相談することが重要です。
また、借金返済に生活保護費を使用することは禁止されています。
借金返済で生活が苦しく、生活保護の受給を検討中の場合、解決には債務整理が有効な場合があります。
借金問題でお悩みの方は、アディーレ法律事務所にご相談ください。