コロナ禍の中で、「事業資金のやり繰りが苦しい!」と感じている個人事業主の方は少なくないのではないでしょうか。
借金の返済を経費に計上できれば相当税金の負担を軽くできるので、借金の返済を経費に計上したいとお考えの方も多いでしょう。
実は、利息の返済については、経費にすることができます。
そして、さらにご自身の状況に最も適した「債務整理」を行えば、借金の負担を軽減できる可能性があります。
この記事では、
- 個人事業主の借金返済を経費として計上できるか
- 個人事業主の借金の負担を減らすためどうしたらいいか
について弁護士が解説します。

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。
個人事業主による借金の返済は経費として計上できる?

まず、個人事業主の借金の返済を経費に計上できるかどうかについて説明します。
(1)借金の元金返済は経費として計上できない
結論からいえば、借金の元金(もともと借りた金額)の返済については、経費に計上できません。
というのも、個人事業主が経費として計上できるのは、売上を生み出すためにかかった費用です。
具体例として、店舗の賃料や消耗品費が挙げられます。
反対に、売上を生み出さない支出は経費として計上できません。
返済する借金のうち、元金の部分については、借りた金額をそのまま返すだけなので、売上を生み出したものといえません。
そのため、借金の元金の返済は経費には計上できません。
(2)利息部分は経費として計上できる
一方、利息の返済は経費にできます。
利息は、借りたお金そのものではなく、お金を貸すというサービスへの対価として払っているものだからです。
そして、この「借金」というサービスを利用することで、設備投資費用や仕入れ代などに充て、売り上げにつなげることができます。
したがって、個人事業主の方は、確定申告時に、その年に支払った利息分を経費として計上できます。

借金の負担を減らすための債務整理

「債務整理」を行うことで、借金の負担を軽減できる可能性があります。
債務整理には、主に次の3種類があります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
それぞれ、どのくらい支払額を減らせるかに違いがあります。
それでは、債務超過(抱えている負債の総額>資産の総額)の程度によって場合分けして説明します。
(1)債務超過が小さい場合
債務超過が小さい場合には、「任意整理」を利用できる可能性があります。
任意整理では、まず、支払い過ぎた利息がないか正確な負債額を計算します。
そして、残った負債について、将来発生するはずだった利息をなしにできないか、毎月の支払額を減らせないかなどと、個々の債権者と交渉します。
任意整理の大きな特徴が、
原則としてそれぞれの債権者ごとに、手続の対象とするかどうかを選べる
というものです。
そのため、支払っていける確実な見込みがあれば、次のように柔軟に対処できる場合があります。
- 住宅ローンや車のローン、迷惑をかけたくない保証人がいる負債について、手続の対象から外し、従来どおりの支払を続ける
- それ以外の負債について任意整理を行うことで、支払の負担の軽減を目指す
(2)債務超過が大きい場合
一方、債務超過が大きく任意整理が困難な場合には、任意整理よりも大幅に支払額を減らせる可能性がある「個人再生」や「自己破産」を検討します。
(2-1)個人再生
個人再生とは、裁判所を通して、支払義務を圧縮してもらうための手続です。(負債の総額や財産の総額などにより変わりますが、5分の1から10分の1にまで減額できる可能性があります)
決まった金額を3~5年かけて弁済すると、残りの支払義務は免除されます。
制限職種(自己破産の手続中、従事が制限される職業)だったり、深刻な免責不許可事由(自己破産で、負債の支払免除を認めてもらえない可能性のある事由)があるなどで、自己破産を選択できない人は、一般的に個人再生を利用します。住宅ローンを支払っていて自宅を維持したい人も、個人再生を利用する場合が多いです。
個人事業主が個人再生で事業を維持したい場合のポイントについて詳しくはこちらをご覧ください。
制限職種について詳しくはこちらをご覧ください。
免責不許可事由について詳しくはこちらをご覧ください。
(2-2)自己破産
自己破産とは、債務者の収入や財産からは負債を支払えないと裁判所から認めてもらった上で、原則全ての負債について支払を免除してもらうこと(免責許可決定)を目指す手続です。
※税金等の一部の負債の支払い義務は免除されません。
3つの手続の中で最も支払の負担を軽くできる可能性があります。
個人事業主の自己破産について、詳しくはこちらをご覧ください。
(3)どの債務整理が最適かは状況次第
どの債務整理が一番適しているかは、債務超過の程度や収支の状況、負債の返済に毎月いくら充てられるかなどによって変わってきます。
まずは、気軽に弁護士に相談することをおすすめします。
【まとめ】借金の利息の返済は経費になる
今回の記事のまとめは次のとおりです。
- 借金の返済を経費に計上できるかどうかは次のとおり。
- 元本:できない
- 利息:できる
- 抱えている借金について、債務整理をすると、借金の負担を軽くできる可能性がある。
アディーレ法律事務所では、所定の債務整理手続につき、所定の成果を得られなかった場合、原則として、当該手続に関してお支払いただいた弁護士費用を全額ご返金しております。
また、完済した業者への過払金返還請求の場合は、原則として過払金を回収できた場合のみ、弁護士費用をいただいておりますので、弁護士費用をあらかじめご用意いただく必要はありません(2021年8月時点)。
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