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国民年金の納付が免除になる年収ってどのくらい?免除や猶予制度の方法について

作成日:更新日:
リーガライフラボ

※この記事は、一般的な法律知識の理解を深めていただくためのものです。アディーレ法律事務所では、具体的なご事情によってはご相談を承れない場合もございますので、あらかじめご了承ください。

「私の年収で、国民年金の納付を免除してもらえる?」

本人(場合によっては世帯主、配偶者も)の年収が一定以下の場合、国民年金の納付が免除される可能性があります。

また、特定の状況に置かれた場合に利用できる特例制度もあります(失業等による特例免除や産前産後期間の免除制度など)。さらに、利用できる制度がない場合でも、滞納している金額を分割払にできる可能性もあります。

この記事では、

  • 国民年金保険料の免除や猶予の制度
  • 免除や猶予の制度を用いると、将来受け取れる年金の額が減ること
  • 免除や猶予の制度を利用するメリットとデメリット
  • 免除や猶予の制度の申請方法
  • 免除や猶予の制度を利用できない場合の対処法

について弁護士が解説します。

この記事の監修弁護士
弁護士 谷崎 翔

早稲田大学、及び首都大学東京法科大学院(現在名:東京都立大学法科大学院)卒。2012年より新宿支店長、2016年より債務整理部門の統括者も兼務。分野を問わない幅広い法的対応能力を持ち、新聞社系週刊誌での法律問題インタビューなど、メディア関係の仕事も手掛ける。第一東京弁護士会所属。

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国民年金保険料の支払が免除されたり、猶予されたりすることはある

経済状況が厳しい人ために、国民年金には納付をしなくてもよくなる免除制度や、納付の時期を後にしてもらえる猶予制度があります。
免除や猶予の対象となるのは、学生、フリーター、自営業、フリーランスなどをしている20歳以上60歳未満の人(第1号被保険者)で、経済的に保険料を納付するのが困難な方です。

免除制度や猶予制度の種類と内容について解説しましょう。

(1)国民年金保険料の免除制度

本人、世帯主、配偶者の前年所得(1~6月までに申請する場合は前々年所得)が一定額以下の場合に、本人の申請が承認されれば保険料の支払が免除されます。
免除される額は、次の4種類で、それぞれ基準となる年収の額が異なります。

  • 全額
  • 4分の3
  • 半額
  • 4分の1

保険料が免除された期間であっても、年金の受給資格期間に算入されます。
しかし、後でご説明しますが、保険料を追納しない限り、将来受け取れる年金の金額は下がるため、注意しましょう。

国民年金保険料の納付が免除になる年収はいくらか?

免除される金額に応じて、基準となる年収額が異なります。

免除される割合前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
全額免除(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(※)
(※)令和2年度以前は22万円
例えば、2021年度時点では、扶養家族がいない場合は67万円まで、扶養家族が1人いる場合には102万円までです。
4分の3免除88万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は78万円
半額免除128万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は118万円
4分の1免除168万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は158万円

源泉徴収票・確定申告控等で「扶養親族等控除額」「社会保険料控除額等」を確認しましょう。

※地方税法に定める寡婦やひとり親、障害者およびの場合、基準額が異なります。詳しくは、日本年金機構へお尋ねください。

参照:国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度|日本年金機構
参考:国民年金保険料の納付が困難な方へ 国民年金保険料の免除・納付猶予申請が可能です!|日本年金機構

(2)国民年金保険料の納付猶予制度

本人、配偶者の前年所得(1~6月までに申請される場合は前々年所得)が一定額以下の場合に、本人の申請が承認されれば支払が猶予されます。
免除制度と異なるのは、本人の年齢が20~50歳未満でなければならない一方、世帯主の所得が考慮されないことです。

納付猶予の期間は、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金を受け取るために必要な受給資格期間にカウントされます。しかし、保険料を追納しない限り、その期間の年金額に反映されない(年金額については、その期間払っていないとして計算される)ので、注意しましょう。

参照:国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度|日本年金機構

国民年金保険料の納付が猶予される年収はいくらか?

国民年金保険料の納付が猶予されるのは、本人及び配偶者の前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であることです。

(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(※)
(※)令和2年度以前は22万円

(3)その他の免除制度

また、他の免除の制度を利用できる可能性もあります。

主な制度は次の4つです。

  • 失業等による特例免除
  • 学生納付特例制度
  • DV被害に関わる特例免除
  • 産前産後期間の免除制度

それでは、これらの制度を詳しくご紹介しましょう。

(3-1)失業等による特例免除

次の条件のいずれかを満たす方が利用できるのが、失業等による特例免除です。

  • 震災、風水害、火災などの災害により、被保険者本人や世帯主、配偶者もしくはこれらの人の属する世帯が住宅や家財などの財産につき一定の損害を受けた
  • 失業により保険料を納付することが困難と認められる

※国民年金保険料を連帯して支払う義務を負っている配偶者や世帯主がいる場合には、これらの人に対し、一定の所得以下であるなどの条件を満たす必要があります。

配偶者や世帯主も一定の条件を満たしていないといけないなら、失業等による特例免除のメリットって何ですか?

失業等による特例免除の場合、「本人の前年所得」が審査において問題となりません。これが、国民年金保険料の通常の免除制度との大きな違いです。

参考:被災された被保険者の皆さまへ、国民年金保険料の免除についてのお知らせ|日本年金機構
参考:国民年金保険料の納付が困難な方へ 国民年金保険料の免除・納付猶予申請が可能です!|日本年金機構

(3-2)学生納付特例制度

次の条件をいずれも満たす方が、利用できるのが学生納付特例制度です。

  • 本人が大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校及び各種学校、一部の海外大学の日本分校に在学中であること
  • 学生本人の所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であることです。
    128万円(※)+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等
    (※)令和2年度以前は118万円
    家族の収入は、関係ありません。

学生納付特例制度を利用できる方は、障害年金受給者などの法定免除を除き、通常の免除や猶予の制度、その他一部の特例免除の制度を利用することができません。

参考:国民年金保険料の学生納付特例制度|日本年金機構

(3-3)DV被害に関わる特例免除

次の方が、利用できるのがDV被害に関わる特例免除です。

  • 配偶者からの暴力(DV)により、配偶者(DV加害者)と住居が異なる方

配偶者の所得にかかわらず、本人の前年所得が一定以下であれば、保険料の全額または一部が免除になります。ここで基準となる年収の金額は、次の表のとおりです。

免除される割合前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
全額免除(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(※)
(※)令和2年度以前は22万円
4分の3免除88万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は78万円
半額免除128万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は118万円
4分の1免除168万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は158万円

※学生の場合、配偶者からDV被害を受けた場合でも先ほどの「学生納付特例制度」を利用することとなります。そのため、これらの免除は受けられません。

場合によっては、世帯主(両親など)の年収が考慮されます。

参考:配偶者からの暴力を受けた方の国民年金保険料の特例免除について|日本年金機構

(3-4)産前産後期間の免除制度

2019年4月から開始されたのが産前産後期間の免除制度です。

2019年2月1日以降に国民年金第1号被保険者が出産する際に、

出産予定日又は出産日が属する月の前月から4ヶ月間

の国民年金保険料が免除されます。

※任意加入をしている方は対象外です。

多胎妊娠の場合は、出産予定日又は出産日が属する月の3ヶ月前から6ヶ月間の国民年金保険料が免除になります。

また、届出を行う期間について、すでに通常の免除や猶予、学生納付特例制度が承認されている場合でも、産前産後期間の免除制度と併用することができます。

参考:国民年金保険料の産前産後期間の免除制度|日本年金機構

国民年金保険料の免除・納付猶予でもらえる年金額が減るのか?

国民年金の保険料の支払いを免除されると、受給額は減額されますが次の割合で年金を受給できます。

※産前産後期間の免除制度を利用した場合、受給額は減りません。

  • 全額免除の場合……免除された期間は、保険料全額を納付した場合の年金額の2分の1(※平成21年3月分までは3分の1)
  • 4分の3免除の場合……免除された期間は、保険料全額を納付した場合の年金額の8分の5(※平成21年3月分までは2分の1)
  • 半額免除の場合……免除された期間は、保険料全額を納付した場合の年金額の8分の6(※平成21年3月分までは3分の2)
  • 4分の1免除の場合……免除された期間は、保険料全額を納付した場合の年金額の8分の7(※平成21年3月分までは6分の5)

一方、納付猶予の場合は、納付を一時的に猶予されているにすぎませんので、猶予期間後に追納しないと、追納しない場合に比べ、年金の受給額は減額されます。

もし減額されたくないのであれば、10年以内に追納することになります。
ただし、保険料免除・納付猶予を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料に一定の金額が加算されるので、注意しましょう。いわば利子のようなものです。
追納した場合には、追納した期間は「納付」期間として取り扱われます。

参考:国民年金保険料の追納をおすすめします!|日本年金機構

免除制度や猶予制度を利用するメリットとデメリット

それでは、免除制度や猶予制度を利用するメリットとデメリットをお伝えします。

(1)メリット

免除制度や猶予制度を利用する主なメリットは、次の3つです。

  • 免除された期間があっても、老齢年金を受け取ることができる
  • 納付猶予期間中であっても、受給資格期間としてカウントされる
  • ケガや病気、障害や死亡といった不慮の事態が発生した場合、障害年金や遺族年金を受け取ることができる

(2)デメリット

保険料を全額納付した場合と比べて、もらえる年金額が少なくなるのがデメリットです。

ただし、すでにご説明したように、一定期間内に追納すれば、年金額の減少を防ぐことができます。

免除制度や猶予制度の申請方法

申請先は住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口または最寄りの年金事務所です。申請書と必要書類を郵送するか直接持っていきましょう。

必要書類

常に必要なものは申請書および年金手帳(基礎年金番号通知書でも可)、印鑑です。

また、所得が審査される免除や猶予制度の場合には、次のような書類も必要です。

  • 前年(または前々年)所得を証明する書類
  • 所得の申立書

不安な方は、申請する前に市区町村役場の担当窓口か、年金事務所に問い合わせるのが良いでしょう。

失業等による特例免除の場合の必要書類

失業等による特例免除の場合、さらに次のような書類も必要となります。

雇用保険の被保険者であった方
  • 雇用保険受給資格者証の写しまたは雇用保険被保険者離職票等の写し
事業の廃止(廃業)または休止の届出を行っている方
  • 厚生労働省が実施する総合支援資金貸付の貸付決定通知書の写し及びその申請時の添付書類の写し
  • 履歴事項全部証明書または閉鎖事項全部証明書
  • 税務署等への異動届出書、個人事業の開廃業等届出書または事業廃止届出書の写し
  • 保健所への廃止届出書の控え
  • その他、公的機関が交付する証明書等であって失業の事実が確認できる書類

利用できる免除や猶予の制度がない場合の対処法

免除や猶予の制度を利用できない場合でも、国民年金の放置は禁物です。

国民年金を滞納してしまうと、延滞金が上乗せされたり、給与や預貯金などを差し押さえられてしまうリスクがあるからです。

それでは、国民年金の納付が困難な場合の対処法を説明します。

国民年金の滞納による差押えについて、詳しくはこちらをご覧ください。

年金の差押えとは?未納から財産の没収までの流れを解説

参考:国民年金保険料の延滞金|日本年金機構

(1)年金事務所などで分割払の相談

既に滞納してしまっている年金があり、一括での納付が厳しい場合には、分納(分割払)にできないか相談しましょう。

相談先は、年金事務所や、「ねんきんダイヤル」(日本年金機構の電話相談窓口)などです。

参考:電話での年金相談窓口|日本年金機構

(2)借金もしている方は、債務整理を検討

借金があるせいで年金の支払いにまで手が回らないという方には、借金の債務整理の検討をおすすめします。

債務整理をすると、借金の返済の負担が軽くなったり、無くなったりする可能性があります。

債務整理をしても国民年金の納付額を減らしたり無くしたりできるわけではありません。ですが、借金の返済の負担を軽減できれば、家計に余裕ができ、国民年金の納付もその分楽になる可能性があります。

【まとめ】年収が一定以下の場合、国民年金の納付が免除になる可能性がある

今回の記事のまとめは次のとおりです。

  • 本人、配偶者及び世帯主の年収が一定以下の場合、国民年金の納付を免除されたり、猶予される。
免除される割合前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
全額免除(扶養親族等の数+1)×35万円+32万円(※)
(※)令和2年度以前は22万円
4分の3免除88万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は78万円
半額免除128万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は118万円
4分の1免除168万円(※)+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
(※)令和2年度以前は158万円
    また、一定の状況になっている場合には、次のような特例制度を利用できる。

    • 失業等による特例免除
    • 学生納付特例制度
    • DV被害に関わる特例免除
    • 産前産後期間の免除制度
  • 国民年金の免除や猶予を受けると、将来受け取れる年金の額がその分減る(産前産後期間の免除制度の場合は減らない)。家計に余裕が出てきたら、追納を検討するのもおすすめ(期間制限あり)。
  • 免除や猶予の制度を利用する主なメリット、デメリットは次のとおり。
メリットデメリット
  • 免除された期間があっても、老齢年金を受け取れる

  • 納付猶予期間も、受給資格期間としてカウントされる

  • ケガや病気などの場合に、障害年金や遺族年金を受け取ることができる
  • 全額納付した場合よりも、受け取れる年金の額が減る(産前産後期間の免除制度の場合、減らない)
  • 免除や猶予は、住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口または最寄りの年金事務所に申請する。

  • 利用できる免除や猶予の制度がない場合でも、分割払にできないか相談することができる(相談先は年金事務所など)。借金も抱えている場合には、債務整理がおすすめ。

国民年金の保険料を納付できないなら、滞納する前に免除や猶予制度を申請しましょう。

また、借金を抱えて国民年金の保険料支払いに手が回らない、という場合は、債務整理を検討してみましょう。

アディーレ法律事務所では、所定の債務整理手続につき、所定の成果を得られなかった場合、原則として、当該手続に関してお支払いただいた弁護士費用を全額ご返金しております。

また、完済した業者への過払い金返還請求の場合は、原則として過払い金を回収できた場合のみ、弁護士費用をいただいておりますので、弁護士費用をあらかじめご用意いただく必要はありません。(2022年3月時点)

債務整理についてお悩みの方は、債務整理を得意とするアディーレ法律事務所にご相談ください。